ASEANが安保共同体へ脱皮 米に気兼ね 手を引く日本

 8日閉幕した東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議は、「東南アジア友好協力条約(TAC)」と「戦略的パートナーシップ宣言」を採択し、これまでの経済共同体に加えて安全保障共同体へと、新たな一歩を踏み出しました。
 この会議に参加した日本政府代表は、日米安保条約への配慮からTACへの加入を断りました。他方で、中国とインドはTACに署名し、ASEANとの協力関係を、経済面から安全保障面へと踏み込みました。軍事面で米国に遠慮してASEANから手を引いた日本、この隙に中国とインドが入り込んだ形です。めまぐるしく変化する国際情勢、これまでの腐れ縁で米国に遠慮している間に、この国は取り残されてしまいました。
 東南アジアにおける安全保障に、この地域の各国は小泉政権が思っているほど米国を必要としているのか、冷静に検討し、自らを省みるべきです。フィリピン、インドネシアは共に国内にイスラム過激派の武装勢力を抱えており、内戦中です。特にフィリピンは、米軍の応援で彼らを掃討しようとしましたが、失敗し、彼らとの和解を模索している最中です。インドネシアのスマトラ島北端、アチェ地方は石油の利権を巡って地方勢力と中央政府とが対立し、分離・独立を求める地方勢力はイスラム過激派の支援の下に、中央政府との間で内戦を続けています。
 このような深刻な問題を内部に抱えるASEANが、安全保障、イスラム過激派との戦いで、米国から距離を置こうとしています。自力でイスラム過激派と戦っているASEAN、これを外から支援しようという中国・インド。米国への気兼ねから傍観する日本。日本の外交は果たして、こんなことでいいのでしょうか。北朝鮮への説得は中国任せ、米国の軍事的圧力任せの日本では、他国の尻馬に乗るだけではありませんか。外交舞台における日本の姿は、米国という鎧の下に隠れて、ただゴソゴソしているだけです。これでは日本は、アジア諸国から軽蔑され、笑い者にされます。
 日本は軍事力こそ行使できませんが、イスラム過激派のテロを許さないのみならず、彼らと戦う国々を支えるとのメッセージを送るべきです。アラブ・イスラムの人々は、総じて親日派です。それは欧米人のように、私たちが彼らと戦ったことがないからです。そこへ、イラクへの自衛隊派遣です。これで彼らの親日感情が一変してしまうことを、私は恐れています。
 東南アジア各国には多数のイスラム教徒が暮らしています。彼らを過激派へ追いやらないために、日本は何がやれるのか、米国に遠慮して傍観者であり続けることは最早不可能です (渡邉)

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