米中両国間の宇宙空間を巡る核搭載兵器開発競争で、中国が米国を凌ぎ、優位に立ちました。中国の宇宙空間における軍事的優位の確立が国際政治に及ぼす影響は、今後じわじわと出てくるでしょう。現在、「宇宙空間を制する国が世界を制する」と言われ、米国は巨額の予算を計上し、宇宙から地球を攻撃できる兵器の開発に躍起になってきました。しかし、国力の衰えは如何ともし難い、ということでしょう。
今年の元日、中国は1人乗りの人工衛星の打ち上げ・回収に成功しました。今年10月1日の国慶節に、2人乗りの3室からなる有人宇宙船を打ち上げる準備が着々と進んでいる、と伝えられています。更に、新聞はEUが計画している全地球測位システム(GPS衛星打ち上げ計画「ガリレオ計画」)に中国が参加することでEUと中国が合意した、と伝えています。
これまで、地球と宇宙空間とを往復できる宇宙船の打ち上げに成功した国は旧ソ連と米国だけでしたが、ソ連は解体し、現在米国だけです。その米国も昨年の宇宙船の爆発事故以降休止しており、未だ再開の目処は立っていません。そんな中での中国の宇宙空間進出に、米国はさぞ慌てていることでしょう。
私は中国がいつGPS衛星を打ち上げるか、注目していました。というのは、宇宙空間へミサイルを打ち上げる場合、GPSによる制御なしに不可能だからです。だが、中国が米国に向けて打ち上げるミサイルの制御を、米国のGPSに頼るわけにはいきません。しかし、中国単独でGPSを打ち上げれば、米国との関係がギクシャクしてくることは目に見えています。それで、中国はEUが計画しているガリレオ計画に参加ということになったのでしょうが、中国新指導部の外交は、6者協議のお膳立てといい、今回のガリレオ計画参加といい、その洗練されたやり方には驚きです。
これまで米国が独占してきた宇宙空間に中国が割り込んできて、しかも追い抜いたのですから、米国は心穏かではないはずです。しかし、EUと組んでいては正面切って中国に文句を言うこともできません。イラク問題で窮地に立つブッシュ政権は、さぞ頭が痛いことでしょう。6者協議でも北朝鮮への説得を中国に任せざるをえないブッシュ政権です。これが国際政治に及ぼす影響は、今後じわじわと出てくるでしょう。
日本も米国のMD(ミサイル防衛)配備を受け入れましたが、ほぞを噛む時がくるはずです。今、中国は6者協議成功のためキム・ジョンイルにこの実績を突きつけて、中国の「核の傘」の下に入るよう、全力を挙げて説得しているはずです。それで、中国は北朝鮮との国境警備を警察から2万人の軍隊に換え、国境を封鎖し、逮捕した脱北者を送り返し、硬軟使い分けてキム・ジョンイルの説得に乗り出しています。日本を取り巻く北東アジア地域の安全保障の今後を考えるうえでも、私たちは中国の核から目が離せなくなっています。 (渡邊)
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