■ひとくちメモ■
--2003/09/16号--


6項目の「共通認識」まとめ閉会 --北朝鮮核開発問題6カ国協議
 北朝鮮の核開発問題で、27日から29日にかけて北京で6ヵ国協議が行われた。6ヵ国協議は29日、北朝鮮が反対したため共同声明をまとめることができず、次回の日程も決めることができなかったが、代わりに6項目の「共通認識」をまとめて閉会した。6項目は、@核問題の平和解決、A朝鮮半島の非核化と北朝鮮の安全問題の解決、B段階的で同時並行の解決案づくり、C情勢を悪化させる行動の自粛、D共通認識の拡大、E6ヵ国協議継続と速やかな次回の日程確定。6ヵ国協議の間に、米朝直接協議、南北直接協議、3回にわたる日朝直接協議がもたれた。 29日に行われた3回目の日朝直接協議では、協議の継続で合意し、2国間の公式協議が復活する可能性も出てきた。
 米国務省高官は4日、6ヵ国協議で米国が、「ステップ・バイ・ステップ」の段階的な対応を認めていたことを明らかにした。米政府はこれまで、北朝鮮が完全に核を放棄した後でなければ北朝鮮の要求について考慮できないという立場であったが、核の放棄完了の前であっても、北朝鮮が「検証可能で逆行不可能な形」で核放棄に動けば、米国も段階的に北朝鮮の要求について検討、対応するという姿勢を示したもの。パウエル米国務長官も5日、北朝鮮の核問題をめぐる6ヵ国協議の次回開催に向けて、北朝鮮が求めている「安全の保証」を与える方法を検討していることを明らかにし、このことを追認した。一方北朝鮮は、次回6ヵ国協議を11月に北京で開催することに同意すると、ロシアに意向を伝えてきた。
人民元固定相場維持なら高関税 米議会で対中制裁法案
  中国の人民元安を批判する超党派の米議員団は、「中国が変動相場制への移行などで実質的な切り上げをしなければ、輸入品に高率関税を課す」とする対中制裁法案を提出した。中国製品の安値輸出で米国内の製造業が不利になり、雇用が奪われているというのが理由。法案提出でブッシュ政権への圧力を強める狙いもあるとみられ、法案が成立するかどうかは不明。また、欧州連合の対外関係担当者は記者会見で、中国の人民元安に対する米国などの懸念を共有すると表明した。

 〇APEC財務省会議 「人民元」切り上げ 将来に含み
 米国の強い意向で、中国人民元に対する切り上げ要求の圧力が高まっている。APEC財務省会議でも初めて正面から取り上げられた。5日に、将来的な切り上げに含みを残す「より柔軟な為替管理」という表現を盛り込んだ共同声明が採択された。来年の大統領選で再選をめざすブッシュ政権は、日本以上の貿易赤字相手である中国に対し、人民元切り上げ要求の圧力を強めるものと思われる。
パレスチナ情勢--イスラエル「アラファト議長追放」を決定
 米国が期待したアッバス自治政府首相は6日、アラファト議長に対し辞表を提出した。これを受けてアラファト議長は7日、PLOに対して、パレスチナ評議会議長のアハメド・クレイ氏を新首相に指名することを提案。PLOはこれを承認。クレイ氏も10日、次期首相の指名を受諾した。EUはすぐに支持を表明したが、米国は次期首相がどれだけ「アラファト議長から実質的な権限移譲を受けられるかどうか」見守る構え。
 イスラエルはハマスなどの活動家の暗殺作戦を連日続け、6日にはハマスの精神的指導者であるヤシン師を攻撃し負傷させた。これに対しハマスなどは自爆攻撃で対抗。9日に起こったテルアビブとエルサレム近郊での自爆攻撃に対し、イスラエル政府は11日、治安閣議を開き、アラファト議長を追放する方針を決定した。15日の国連安保理公開討議では、イスラエルの決定に非難が集中。しかし国連安保理で16日、アラファト議長の追放断念を求める決議案が米国の拒否権によって否決された。
 米国は、破綻しかけている「ロードマップ」を修復しようとしているが、イスラエル寄りの姿勢を改めず占領を放置しておいて、ハマスなどの抵抗組織の解体を全てに優先し、民主的選挙によって選ばれたアラファト議長を排除しようとしている。この姿勢を変えない限り、中東和平は軌道に乗らないであろう。
アルコール依存・乱用2200万人 米厚生省調査02年
 米厚生省は、薬物やアルコールの依存・乱用者が全米で2200万人にのぼると発表した。特に子どもや若者への広がりが深刻で、米国の病んだ一面を示している。違法薬物の使用者は1950万人で、12歳以上の人口の8.3%を占める。大麻が最も多く1460万人、次いで鎮痛剤や精神安定剤などの医療用薬物の目的外使用の620万人、コカインやヘロインといった「重い麻薬」の常用者も、種類ごとに17万〜200万人にのぼる。
遺伝子組み換え作物輸入規制 米欧紛争でパネル設置 WTO
 世界貿易機関(WTO)は29日、欧州連合(EU)の厳しい遺伝子組み換え作物の輸入規制は自由貿易ルール違反だと米国が申し立てた通商紛争で、紛争処理小委員会(パネル)の設置を決めた。パネルは来年前半にも結論を下す。EUは1998年から遺伝子組み換え作物の新規認可を凍結。最近になって現行の表示義務を一段と強化し、遺伝子組み換え作物を0.9%以上含む食品や飼料に拡充する法整備に動いた。生産から流通までの情報を管理し、経過を追跡できる体制の確立も打ち出した。一方、米政府は市場に出回っている組み換え作物の安全性は科学的に証明済みで、認可凍結はWTO協定が禁じる理由のない輸入規制だとの立場。
労働経済白書 増える非正社員/1年以上職なし127万人/生活保護 最多の87万世帯
  厚労省は26日、労働経済白書を公表。02年の就業者は6319万人。正社員は3489万人で就業者の55%、非正規雇用者は1451万人で23%、自営業などの非雇用者は973万人で15%。非正規雇用者が就業者の4人に1人の割合になった。内訳は、パート718万人、アルバイト336万人、契約社員・嘱託230万人、派遣労働者43万人。02年のフリーターの数は209万人で過去最高に、97年に比べて58万人増えた。今年行われた労基法改悪は、さらに不安定な非正規雇用労働者の増大に拍車をかけるだろう。

〇1年以上職なし127万人 完全失業者の3分の1 総務省調査
 総務省が発表した今年4-6月平均の労働力調査詳細結果によると、職を探しているものの1年以上もみつかっていない失業者の割合が過去最多の127万人にのぼった。同時期の完全失業者の3人に1人以上が「1年以上」も失業という深刻な事態。

〇生活保護 最多の87万世帯 リストラ・就職難響く 昨年度
 昨年度に生活保護を受けた世帯は約87万世帯となり、過去最多を更新した。半数を占める高齢者世帯の受給が増え続けているうえ、離婚の増加に伴い母子世帯も5年間で1.4倍に、中年や若年層が中心の「その他」世帯も1.7倍に急増、リストラや就職難の影響が出た。1ヵ月単位で平均すると、昨年度の受給世帯数は87万931世帯。前年度を8.2%、約6万5000世帯上回り、過去最多を更新。増加は10年連続。支給の急増に、厚労省は半世紀ぶりに制度の見直しを検討し始めた。
スギ花粉症を緩和の遺伝子組み換え米 農水省が商用化へ 厚労省は待った!
 農水省は、スギ花粉症の治療に効果のあるという遺伝子組み替え米の商業生産が07年度にも実現する見通しとなったことを明らかにした。「花粉症緩和米」は、アレルギーのもとになる物質を含み、それを数週間食べることによってアレルギー耐性ができるというもの。農業生物資源研究所、日本製紙、全農が共同開発しているもので、同省は来年度予算で45億8000万円を概算要求した。来年度に試験栽培を行い、動物実験や臨床試験で安全性を確認後、商業生産に入る計画。
 これに対し厚労省は、「花粉症緩和米」は「食品としては認められない」との考えを示した。スギ花粉症の原因物質を含むこの米が、アレルギーのもとになる物質を含まないという組み換え食品の安全性審査基準に抵触するため。花粉症でない人の口に入ったときの影響や他の米への花粉汚染など、心配される問題は多い。

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