<<特集>> イラク情勢--米国の単独行動主義に陰り
米英占領軍だけではイラクの治安が保てないことが、明確になってきた。戦費の増大等によって予想される財政赤字が膨らみ続け、米兵の死者が増え続ける中で、米国の単独行動主義に陰りが見え始めた。米国は他国の関与をしきりに求め、国連に多国籍軍の派遣を求める新たな決議案を安保理に提示した。しかし、多国籍軍の指揮権を国連に引き渡すことは、ブッシュにとって政治的敗北を意味し、ジレンマに陥り始めている。最新の米国内での世論調査によると、ブッシュの支持率は52%にまで落ち込んできて、大統領再選も危うくなってきた。
◇イラク民間人死者 戦闘終結宣言後も増加 最大で7830人
「イラク・ボディー・カウント」(IBC)は26日、イラク人の死者が少なく見積もって6113人、最大で7830人になると発表した。5月1日にIBCが発表した死者数は、最小で2180人、最大で2653人だったので、米英軍占領下で民間人の犠牲者が増大していることを示している。
◇英首相 独立司法委で証言
ブレア英首相は28日、英科学者ケリー氏の死に関わる独立司法調査委員会で証言。ケリー氏の氏名公表について「最終責任は私にある」と述べた。しかし、大量破壊兵器の脅威誇張疑惑に関しては全否定した。29日には、ブレア首相側近のキャンベル戦略広報担当官が、「世論操作の黒幕」との批判を受け辞任した。1日付のデーリー・ミラー紙の世論調査によると、イラクの駐留英軍の撤収を求める声が61%に。
◇イラク シーア派聖地ナジャフで爆弾事件ハキーム師死亡
イラク中部のシーア派聖地ナジャフで29日、自動車に積まれたと見られる爆弾が爆発し、イスラム革命最高評議会(SCIRI)の最高指導者ムハンマド・ハキーム師が死亡。死者は82人、負傷者は200人以上にのぼる。
◇イラク 暫定内閣が発足 首相職置かず
イラク統治評議会は1日、閣僚25人を発表した。首相職は置かず、行政上の決定権は今後も米英の暫定占領当局が握り続けると見られる。
◇アラブ連盟 イラク評議会を正式代表と承認
アラブ連盟は9日からの外相会議を前に8日、準備会合をカイロで開き、イラク統治評議会を正式なイラクの代表と認めることを決めた。9日の会議から、統治評議会の外相が会議に加わる。米国の強い圧力を受けて承認せざるを得なくなったもの。
◇米国 新決議案草案策定 安保理理事国と協議入り
米国は3日、新たな国連決議案の草案を安保理理事国に提示し、協議に入った。パウエル米国務長官は草案について、(1) 政権移譲への道筋 (2)
国連が承認する多国籍軍の展開−の2点が焦点になると説明。これに対し仏独両政府は9日、安保理常任理事国だけで開いた非公式協議で、イラク統治の在り方を根本的に見直す修正決議案を提示した。米英のイラク駐留軍の主導権を根こそぎ奪う内容。ロシアも別の修正案を提示した。
仏独の修正案の内容は、(1) 米英駐留軍は多国籍軍の一部として編入される (2) イラク統治評議会と暫定内閣への速やかな主権移譲 (3)
国連事務総長が統治評議会を支援するなど、戦後統治を国連主導とする (4) 石油など天然資源を含む民生部門をイラク暫定機構が管理−など。多国籍軍の指揮権とイラク人への主権移譲のタイムテーブルをめぐって今後、争点になっていく。
◇自衛隊イラク派遣 9月中旬に調査団派遣へ
政府は7日、イラク特措法に基づく自衛隊のイラク派遣について、治安が比較的良好なイラク南部で医療活動と浄水・給水活動を実施する方向で再調整に入った。政府調査団を9月中旬にイラクと周辺国に派遣する予定。米国の強い要請による。
◇ブッシュ大統領 イラク・アフガニスタン戦費870億ドル補正要求
ブッシュ米大統領は7日、イラク問題で全米にテレビ演説し、国連加盟国へ協力を要請。特に「欧州、日本、中東諸国」と、日本は名指しで協力を要請された。
また、イラク・アフガニスタンの戦闘、復興予算として870億ドルの補正予算を米議会に要求することを明らかにした。
◇英、イラクに1200人増派
◇ブッシュ支持率52% 前回調査(8月下旬)より7ポイント低下
12日付USトゥデーとCNNテレビ共同世論調査によるもの。 |