目前に迫る消費税率15%--引き伸ばせば国家破産

 今、私達は消費税率15%目前にいます。しかし、自民党総裁選、自由・民主両党合同、総選挙を控えて、我が国は政治の季節を迎えていますが、政治家の誰一人としてこの問題への言及がありません。これは、政治を無責任な成り行き任せにしている証拠です。政治家こそ自分の身を削ってでも、政治に対する国民の信頼を取り戻さなければならない時に、この有様です。
 だが、奥田経団連会長が国会会期中にこの問題を提起したにもかかわらず、これに反応した政治家は誰一人としていませんでした。しかし、奥田さんはそんな無責任なことを言っていられる立場ではありません。彼は経済界を代表して政界にものを言う立場にある人物ですから、内外の投資家から様々な意見を聞いています。彼の独り言ではありません。
 このまま日本政府が国債の返済計画を先延ばしにすれば、日本国債を保有している内外投資家から、日本政府は返済の意思がないのではないかと疑われ、日本国債を売りに出すことを、奥田さんは恐れているからです。日本の国債残高は今年度末で760兆円に達しますが、これを半額に減らすとします。それを10%の消費税で賄おうとすると、10%の消費税税収は年間約25兆円ですから、これでも15年はかかります。
 これが今、私達の前に口を開けている深淵です。もし、日本人がこの深淵の前でたじろぎ、何時までも渡ろうとしないでいると、投資家は国債を売りに出します。そうなれば、国債価格の暴落、即ち政府の破産です。文字通り日本経済は今や「行くも地獄、退くも地獄」という事態に立ち至っています。株価が少々上がったところで、片が付く話ではありません。
 自民党内の小泉首相と抵抗勢力、彼と菅・小沢野党代表との国会を舞台にした議論、いずれをとっても、この深淵と比べれば「目糞、鼻糞の類」に過ぎません。この深刻な事実を国民の前で率直に語ろうとしない無責任政治家、これが日本の政治家=国会議員の姿です。
 小泉首相は次期総裁選立候補を前にして「郵政民営化」を公約に掲げていますが、郵便貯金の裏側は既に腐っており、これを取り除かない限り、民営化を受け入れる民間企業はありません。郵便貯金は財政投融資の原資になり、特殊法人に貸し出されています。財政投融資は国会に報告されるだけで、審査の対象から外していますから、政治家によるたかりの巣と化しています。
 その証拠に、健全な経営を続けているはずだった道路公団で、外部監査に委託した裏の決算報告書の存在が発覚し、健全経営だったはずのこの公団は60億円を超える赤字だったではありませんか。特殊法人に対する会計監査は財務省役人による内部監査に任せてきたので、この有様です。役人と政治家の食い物にされてきた特殊法人は他にも沢山あるはずで、道路公団だけが例外ではありません。小泉首相が「郵政民営化」を公約に掲げるなら、先ず郵便貯金の融資先である全ての特殊法人を外部監査に出し、ウミを全てさらけ出してからにすべきです。でなければ、郵貯を引き受けてくれる民間企業はありません。
 国民に15%の消費税を了解してもらおうと思えば、政治家のやらなければならないことはただ一つです。それは一部の特定企業や自分の身内だけを優遇する、納税者にとって訳の分からない政治を止め、全ての納税者に対して公平にサービスする政治です。政治家が自分の身についた錆や垢を殺ぎ落とさないでおいて、他人にだけ負担を求めていては、国民は消費税率15%アップを絶対に納得しません。
 私達は57年前に国家財政破綻を経験しました。母は私に2000円の徴兵保険を掛けていました。戦後、私が徴兵適齢期の20歳になり、満期になった2000円を渡してくれましたが、この間に貨幣価値は数百分の一に下がり、この2000円は私にとって1ヵ月分の奨学金に過ぎませんでした。破綻は財政のみに止まりません。年金、医療保険、失業保険、皆赤字です。57年前の再現は、今まさに私達の目前に迫っています。 (渡邊)

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