<<特集>> イラク情勢--ゲリラ攻撃拡大で収拾不能の事態へ

 これまで米英軍に限定されていたゲリラ攻撃の対象が、国連や外国人勢力のすべてに拡大され、イラク情勢はまったく収集のつかない状態になっている。ヨルダン大使館や国連も米英軍による占領統治の協力者とみなされ、攻撃された。比較的安定していた南部でも、大規模デモが起こり、英軍やポーランド軍に対する襲撃も増加傾向にある。ゲリラ攻撃がイラク人民に依拠したものかどうかは不明であるが、ゲリラ勢力が手段を選ばず混乱状態を作り出し、米英占領軍に対する権威の失墜、不満の増大を生み出すという戦略をとり始めたのは確かだ。米軍の権威失墜の中で、国連と米軍の主導権争いが当面の焦点になりそうである。一方、統治評議会が動き出す中で、来年の憲法制定、総選挙に向けた動きは着実に進んでいる。

◇イラク統治評議会 21の専門委を設置
 イラク統治評議会が、省庁再編の基礎となる21の専門委員会を設置した。専門委員会は、統治評議会員が委員長になり、専門家を集めて新省庁設立の準備作業に当たる。米英占領軍当局も設置を了承。21の委員会は、内務・治安、外務、移民、電力、法務、教育、高等教育、宗教、自治、経済、財務、工業、石油、農業、情報・文化、社会労働、環境、人権・女性、復興、バース党排除、人種・人口政策是正の各委員会。

◇イラク統治評議会 憲法制定へ準備会発足
 イラク統治評議会は11日、憲法制定に向けた準備委員会を発足させた。委員には25人を選出。制憲会議の構成メンバーの選出方法や手続きの詳細を詰める。制憲会議は9月中に発足、来年夏までに新生イラクの憲法制定を目指す。

◇ヨルダン大使館前で爆弾事件 11人死亡
 バグダッドのヨルダン大使館前で7日、駐車していた小型バスが爆発。11人が死亡、65人が負傷した。

◇南部バスラで大規模デモ 英軍発砲 3人死亡
 バスラで9日、市民数千人がガソリンの値上がりや電力不足に抗議してデモを実施、英軍と衝突した。デモは10日、2日目に入り、英軍が発砲しイラク人2人とネパール1人が死亡した。

◇安保理 国連支援団(UNAMI)設立承認
 アナン国連事務総長が要請していたUNAMIの設立が14日、安保理で承認された。UNAMIの役割は、現在イラクで活動する国連諸機関を統合するもの。決議の内容は、@イラク新政府樹立の日程表には触れない、A米英暫定占領当局(CPA)が設立したイラク人による統治評議会を歓迎する、BUNAMIの役割を米英中心の復興・再建を認めた国連決議1483の範囲内に収める−となっている。イラク新政府樹立の日程表の公表を求めなかったので、米国が賛成に回った。

◇米軍、住民に発砲 市中心部から撤退
 サドルシティー(旧サダムシティー)で13日、米軍ヘリがシーア派の旗「アルマハディの旗」を撤去しようとしたのに対し、住民が反発。1000人前後の住民が抗議して米軍部隊に近づき始め、一部住民が投石したのに対して、米軍が発砲。米軍は当初これを否定していたが、住民からビデオを突きつけられ、米陸軍中佐の署名入り謝罪文が提示された。サンチェス米軍司令官は15日、「現地の司令官が住民に謝罪した」と認めた。16日、市中心部に展開していた米軍が撤退した。

◇石油パイプライン・送水管爆破 ゲリラ事件続発
 15日から16日にかけて、パイプライン爆破が続発した。16日には、キルクーク油田の石油をトルコに送るパイプラインが爆破された。ブレマーCPA代表によると、パイプライン火災で1日700万ドルの損失が出ており、修復には約1ヵ月かかる見込み。

◇米軍誤射 ロイター記者カメラマン死亡

◇バグダッド 国連現地本部爆破事件 デメロ国連特別代表、死亡
 19日、バグダッドの国連現地本部が自爆攻撃を受け、デメロ国連特別代表が死亡。少なくとも17人が死亡、100人以上が負傷した。今後の国連の関与の仕方や、米国と国連の主導権争いに影響してくるものと思われる。また、国連事務所の爆発を受けて、イラクへの自衛隊派遣について、来年以降への先送りが避けられない情勢となった。

◇CPA 民間防衛隊の早期発足要請
 ブレマーCPA代表は20日、統治評議会に対し、イラク人民兵による民間防衛隊の発足を急ぐよう求めた。統治評議会側は要請には同意したものの、権限をめぐって、米英軍の指揮下に置くと主張する米英軍と、あくまで「独立した組織」とする同評議会側の溝は埋まっていない。

◇米英 国連安保理に新決議案を説明
 国連安保理は21日、非公式協議を開き、米英が、現地での治安維持と再建により多くの参加を促す新決議案について、概要を説明した。まだ文案はなく、@加盟国に治安維持部隊への参加をより強く促す、A事務総長特別代表の権限を強化する、Bイラク人によって構成される統治評議会への支持をより強く示す−などが主な点とされる。あくまで米軍が指揮権を堅持する意向の米国と、国連の政治的役割拡大を求める仏独露の間に思惑の違いがある。

◇バスラ 英兵3人死亡 英兵の犠牲も増加
 バスラで23日、英兵が銃撃と手投げ弾による攻撃を受けて3人が死亡。5月1日の戦闘終結宣言以降の戦闘による英兵死亡は11人に上る。

◇トルコ イラク派兵先送り
 トルコでイラク派兵をめぐって22日、国家安全保障会議が開かれたが、決定は先送りされた。政府内には対米関係修復のために派遣したいとの意向があるものの、国民の間には反対が根強く、新たな国連決議採択の行方を見守る方針とみられる。派遣が決まれば、トルコ政府は約1万人の兵士を派遣する計画で、米英軍に次ぐ規模となる。




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