7月7日、東京株式市場で日経平均株価は瞬間的でしたが、1万円の大台を回復しました。これはNY市場の流れを受けたもので、5月ごろからNY市場で株価が上昇し始め、これに引っ張られる形で東京市場も上昇を続けていました。だが、この煽りを受けたのは金融市場でした。4日、東京債券市場で長期金利の指標となる10年物国債の利回りが急上昇(債券価格が急落)しました。これは、日米金融当局合作による「政治ショー」でした。何故、日米金融当局はこんな見え透いた田舎芝居を、この時期にブッシュと小泉にプレゼントしようとしたのでしょうか。
日米両国ともに「政治の季節」に入っています。ブッシュは来年の大統領選挙を控え、再選チームを既に立ち上げています。小泉首相も10月総裁選挙、11月総選挙が足元に迫っています。だが、両国首脳にとって頭が痛いのはデフレ経済です。経済に元気を取り戻さなければ、再選もままなりません。日米両国の経済界を覆っているデフレ払拭を狙って、日米金融当局が二人にプレゼントしようとしたのが、今回の株高相場でした。だが、この臭い田舎芝居は直ぐ見破られ、元に戻ってしまいました。金融市場に残っているのは、宴の後の空しさだけです。
先ず5月、日銀は円高阻止を狙って外国為替市場で4兆円という過去最大の介入を行い、米国債を買います。通常、日銀は為替相場介入で米国債を買い入れると、その分市場に出回った通貨を回収し、いわゆる不滞貨政策を実施しますが、今回はこれを放置したため、市場に巨額の通貨が滞留しました。6月26日、米FRB(連邦準備制度理事会)は、日本の公定歩合に相当するFF金利を1.25%から1%に引き下げ、デフレ阻止を鮮明にします。
この日米通貨当局の変化に敏感に反応したのが、株の短期売買で利鞘稼ぎを専門とするヘッジファンドでした。彼らは争って銀行から短期融資を受け、株の短期売買を繰り返した結果が、この株価急上昇でした。この煽りを受けたのが債券市場でした。これは、銀行がヘッジファンドに融資する際、保有していた国債を市場で一斉に売りに出したためでした。7月4日、東京債券市場で長期金利の指標となる10年物国債の利回りが急上昇(債券価格が急落)し、巨額の国債を抱いている銀行が冷や汗を掻くという、お粗末な一幕もありました。
問題はこの株価急騰劇の主役が逃げ足の速いヘッジファンドだ、ということです。彼らは株式の短期売買を身上としている集団です。個人投資家が市場に戻ってきているといいますが、彼らはまだまだ脇役に過ぎません。実体経済という経済の足元がふらついている限り、一夜の夢で終わりです。 (渡邉) |