<<特集>> イラク情勢--力による占領に反発、ゲリラ攻撃頻発

 米英暫定占領当局(CPA)による統治が、力による占領の色彩を強めてきている。CPAのブレマー文民行政官が米英による直接占領統治の方向を打ち出し、仕事や給与が保障されないなど生活基盤が安定しない中で、占領統治に対する不満が高まっている。米軍に対するゲリラ的攻撃も頻発し、米軍の被害が拡大している。米軍が力による占領政策を取らざるを得なくなりつつあり、そうすれば余計に反発を買うというジレンマに陥り始めている。そうした中で、日本政府は明らかな憲法違反であるイラク新法を国会に提出し、占領軍へ加担するため自衛隊をイラクに派遣しようとしている。

◇イラク国民議会案、撤回 米英の指導強化

 CPAのブレマー文民行政官は1日、イラク国民議会を設ける計画を撤回し、少数の「政治評議会」を7月中旬に設ける方針を発表。政治評議会は25〜30人規模で、CPAとイラク人政治勢力が話し合って選ぶ。設立後、複数の「最高顧問」を任命し、22省庁を監督させる。しかし、政治評議会はあくまでCPAの諮問機関に過ぎない。また、憲法を起草するための代表者会議を7月中旬までに発足させ、新憲法起草委員会を選任する。政治評議会が新憲法の国民投票実施の責任をもち、憲法成立後に総選挙を実施するという方針。総選挙の時期は、少なくとも「1、2年後」との観測が出ている。これにより、米英の直接占領統治が長期化する可能性が出てきた。

◇イラク戦争 民間の犠牲、3000人以上 AP通信が 独自調査

 AP通信は10日、イラク戦争で少なくとも3240人の民間人が死亡したとする独自調査の結果を報じた。全国124の病院のうち、ほとんどの主要病院を含む60病院を訪れ、死者数を調査。軍人と民間人の区別をしていない病院の記録は除外。このため、実際の民間死亡者の数はさらに数千人多い可能性が高い。

◇イラク支援特措法案 政府が国会提出

 政府は13日、「イラク復興支援特措法案」と11月1日に期限が切れる「テロ対策特措法」を2年延長する改正案を閣議決定し、国会に提出した。自衛隊の活動分野は、@イラクへの人道・復興支援A治安維持活動に当たる米英軍への後方活動−の2分野とした。当初の案に入っていた「大量破壊兵器処理」は、いまだイラク国内で大量破壊兵器が発見されていないため削除された。イラクの了解なしで自衛隊を派遣するというもので、明らかに憲法違反の武力行使にあたる。政府は、「非戦闘地域」での活動というが、米軍に対する攻撃が続いており、米軍司令官自身「全土が戦闘地域」と認めるなど不安定な状態が続いている。早期成立をはかるため、武器使用はこれまでの基準を踏襲することとし、20日以内の国会承認を必要とし、4年間の時限立法とした。国会会期延長は7月28日までの40日間。
 防衛庁が検討しているイラクへの自衛隊派遣構想の概要によると、陸上、航空、海上自衛隊を合わせた派遣総数は1000人規模を想定。そのうち約500人の陸自をイラク国内に派遣し、米英軍等に燃料などを提供する補給基地の設置・運営を中心任務とする意向。

◇CPA 市民保有の武器を実力回収

 CPAは市民に自主的な武器提出を求めていた2週間の「猶予期間」が14日までに終わったとして、15日からバグダッド西方のファルージャなどで、武器を実力で捜索、回収する作戦に乗り出した。5月1日の戦闘終結宣言以降もゲリラ的な襲撃が続いており、米兵約40名が死亡している。

◇米軍「砂漠のサソリ作戦」 イラク民兵ら300人 以上拘束

 米軍に対するゲリラ攻撃が続く中、米軍は15日から「砂漠のサソリ作戦」を展開。イラク中北部でイラク民兵らの掃討が目的。少なくとも359人を拘束。

◇給与要求デモに米兵発砲 市民2人死亡

 バグダッドで18日、CPAに給与の支払いを求めたデモ隊に対して米軍が発砲し、市民2人が死亡した。市民約300人が押しかけ、一部が投石を始めたのに対して無差別発砲したもの。

◇新たに情報操作疑惑 CIA、イラクのウラン購入疑惑 「事実なし」を隠す

 ブッシュ大統領が一般教書演説で引用した「イラクのウラン購入疑惑」について、CIAが昨年、事実無根であることを突き止めておきながら、約1年間も隠していたことが分かった。「疑惑」は、イラクがニジェールから相当量の天然ウランを購入しようとした、というもの。英が取引を裏付ける「文書」を入手したとして、「イラクの核兵器開発を裏付ける証拠」と主張していた。エルバラダイIAEA事務局長は3月、「文書」は偽造で、少し調べればすぐにでも偽造だとわかる代物だと述べた。

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