<<特集>> イラク情勢--米英軍の直接統治の色合い強まる
ブレマー氏が文民行政官に就任して以降、米英軍のイラク直接統治の色合いが強まっている。ガーナーORHA室長がイラク人による暫定統治機構立ち上げを優先させる方針だったのに対して、明らかに方針転換である。国連において、イラク制裁解除決議があがり、米英の占領統治が容認されたことにより、この傾向にいっそう拍車がかかるものと思われる。日本では、有事法制を成立させた後、イラク新法が焦点化してくる。
◆イラク暫定政権
7月半ば以降に
ブレマー文民統制官は5月21日、暫定政権を選ぶために開く国民会議は「7月半ばになるだろう」と発言。さらに日程が遅れる可能性も示唆している。米英の占領統治が長期化する可能性もあり、イラク反体制派組織の反発が高まる可能性もある。国民会議は約300人で構成する予定だが、メンバーの選出方法などは固まっていない。
◆米 バーレーンと自由貿易協定交渉 中東自由貿易 圏構想へ始動
米政府は21日、バーレーンと自由貿易協定の締結に向けて交渉を始めると発表した。
◆国連安保理 イラク制裁解除決議可決 米英の占領 承認
国連安保理は22日、米・英・スペインが提案した対イラク経済制裁解除決議を採択した。国連中心の復興を主張していた仏・独・露も妥協し賛成にまわった。シリアは採決に欠席した。決議の骨子は▽武器禁輸を除く経済制裁を解除▽国連事務総長が特別代表を任命し、人道・復興支援などを調整▽復興のためにイラク開発基金を設置し、米英の監督下で運用▽「石油と食糧の交換」は6ヵ月以内に終了▽1年以内に決議の履行状況を再検討する−というもの。
100ヵ所近い修正が加えられたものの、米英が占領統治を行い、石油を管理する基本構造は何ら変わっていない。国連の役割も人道支援の調整と統治機構設立の支援にとどまり、米英当局の下請け機関に甘んじている。国連による大量破壊兵器の最終的な検証も「課題」として先送りされた。
◆ブレマー文民行政官 イラク軍など解体し、新軍隊 の採用を開始
ブレマー米文民行政官は23日、バース党関係者を一掃する方針のもと、イラク軍や国防省、情報省、各治安機関などの組織をいずれも解体すると宣言。6月2日になって新たなイラク防衛軍兵士の採用を6月中に始めると発表した。イラク軍解体に伴って大量の失業者が発生し、バグダッドでは仕事を求めてデモが起きるなどしていた。防衛軍の規模は4万−5万人になる見込み。同行政官は、この他に清掃事業など地域行政に約70万ドル投入する計画を明らかにした。
◆イラク問題国連総長代表にデメロ氏を指名
アナン国連事務総長は23日、イラク問題事務総長特別代表に、ブラジル出身のセルジオ・ビエラ・デメロ氏を指名。米国連代表部は即座に「心からの歓迎の意」を表明した。
◆サウジ石油相 イラク生産350万バレルまで容認 OPEC脱退警戒
◆イラク 米英暫定行政局 反体制派50人を拘束
米英暫定行政当局(CPA)が最近、「イスラム革命最高評議会」のメンバーら50人を拘束し、一部の事務所を閉鎖させた。
◆イラク新法 6月半ばに国会提出の方向 イラクの 同意無しで自衛隊派遣
イラクに自衛隊を派遣するための「イラク復興支援法案」(仮称)の原案が固まりつつある。新法の内容は▽イラクでの自衛隊による米英軍への協力支援と被災民救済を可能に▽イラクの同意無しで派遣▽自衛隊員らの生命保護を目的に武器使用▽国会が20日以内に承認。不承認なら撤退▽活動地域は「非戦闘地域」に限定▽2年間の時限立法−になる見込み。6月半ば頃、国会に提出される見込み。早期成立を目指すため、武器使用基準を緩和せず、治安維持業務への関与は見送る方針。自衛隊派遣による米英軍によるイラク占領行政への加担は、集団的自衛権の行使である。
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