§パレスチナ情勢§

◇アッバス新内閣成立

 パレスチナ自治政府の閣僚人事をめぐってアラファト議長とアッバス新首相の間で対立が続いていたが、組閣期限の23日、アラファト議長がアッバス氏の人事案に同意した。EUやロシアの特使がアラファト議長と会談し、「アッバス氏以外は首相として認めない」(EU特使)「アッバス氏が組閣できなければ、パレスチナ人の苦難が増す」(ロシア特使)と圧力をかけた結果、合意に至った。これを受けて、パレスチナ自治評議会は29日、アッバス氏を首相とする新内閣を賛成51、反対18、棄権3の賛成多数で承認した。閣僚の任命権はアラファト議長から首相に移される。アッバス氏は施政方針演説で、武装闘争放棄や「過激派」対策、汚職追放などを表明。内相を兼務するアッバス氏は「治安問題は内相の管轄である」と宣言した。

◇新中東和平案「ロードマップ」提示

 アッバス内閣の成立を受けて、新中東和平案「ロードマップ」が30日、米国、EU、国連、ロシアの4者により、パレスチナ自治政府とイスラエル双方に正式提示された。ロードマップの内容は−05年を期限に、和平計画を3段階に区分。今年5月末までの第1段階で、パレスチナ側はイスラエルの生存権を認め、暴力の即時無条件停止を宣言する。イスラエル側はパレスチナを生存可能な主権国家として認め、2国家併存を確認し、イスラエル軍を00年9月以前のところまで撤退させ、ユダヤ人入植活動を凍結する。今年6月から12月までの第2段階では、パレスチナ側が憲法を制定し、暫定的な国境線を持つ独立国家を樹立する。04〜05年の最終段階では、パレスチナ国家とイスラエルとの間で、エルサレムの帰属問題など最終的な地位協定を締結する−というもの。ハマスの精神的指導者ヤシン師は30日、「内容はイスラエル寄りであり、我々が拒絶する」と明言。イスラエル側も、難民帰還の権利の放棄などを第一段階から求めていくなど、ロードマップの修正を求めており、5月1日にはガザに軍事侵攻した。米議会では、「ロードマップ実施によってイスラエルの国益を損ねるべからず」という大統領当ての手紙への署名運動が進み、下院の7割、上院の8割を超える議員が署名済みという。今後、パレスチナ側に抵抗闘争放棄の圧力のみが高まってくる可能性が高い。

◇パレスチナ世論調査 「和平の進展望めず」 初代首 相に期待低く

 パレスチナ民間研究機関「エルサレム・メディア通信センター」が4月初旬に、西岸とガザ地区で18歳以上のパレスチナ人1200人に対して世論調査を実施。首相職新設について、68%が「外圧による」と回答、6%が「自らの利益になると考えた結果」と回答。アッバス氏の首相就任で「和平が進展する」と回答したのは30%、「何の影響もない」が45%、「後退する」が17%。政治家の支持率では、アラファト議長が21.1%で、昨年3月より6.8ポイント低下したものの依然トップ。2位はイスラム原理主義組織「ハマス」のヤシン師で9.7%、アッバス氏は7位でわずか1.8%の支持率しかない。

[←back]