ひとくちメモ--2003/04/01号--

新ラウンド農業交渉決裂WTO「第二の国連化」の可能性
 3月最後の10日間、WTOはイラク戦争開戦の衝撃に続き3つの事件に揺れた。

 28日、EUが農産物、鉄鋼など40億ドルの対米制裁品目を正式に決めた。制裁額はWTO史上最高。EUが米国の輸出優遇税制を自由貿易ルール違反だとしてWTOに提訴し勝訴していた。これに対し、米議会での制度見直しが遅れていたため、WTOがEUの関税引き上げを承認していたもの。エッサーマン元米通商代表部(USTR)次席代表はフォーリン・アフェアーズで、通商紛争で超国家的裁定を重ねるWTOが実質的に多国間ルールの創出まではじめ、米国の制御を超えた力を持ちつつあると懸念する。

 WTOは26日に、EUや日本が訴えた鉄鋼のセーフガードの撤回を求める決定を米国に下した。しかし、米議会が敗訴後も法改正を渋る紛争案件は他にもあり、これではWTOの実効が薄れかねない。米国が敗訴しているにもかかわらず、法改正を渋っている案件は、1916反ダンピング法、小麦グルテン緊急輸入制限、著作権法、関税分配のバード修正法(パネルの最終報告段階)など。

 新ラウンドに対する姿勢でも米国とEUは対立。米国は、競争力に自信のある農業やサービス部門の自由化を求めるのに対して、EUは、「温暖化ガス削減や遺伝子組み替え作物の規制といった環境配慮を自由貿易に優先させるルール作り」「競争政策や投資保護原則の国際的統一」などの新しい価値の多国間ルールを導入しようとして対立している。

 31日の新ラウンド農業交渉決裂は、背景に根深いEUと米国の対立がある。ジョンソン米主席交渉官は「EUは交渉に参画する能力にかけている」、ミンチEU交渉代表は「我々の提案は極めて包括的で、前向きだ」と述べ、非難合戦に終始した。交渉決裂の遠因には、昨秋、仏独首脳がEUの共通農業予算総枠の削減凍結を決めたことがある。
世界水フォーラム 閣僚宣言採択し閉幕 水道投資倍増求める
  閣僚宣言は、ダムや上下水道整備などへの民間資金の積極的な投入を打ち出した。NGOは民間資金の上下水道施設への導入については、水の商品化が進み貧困層が水を手に入れられなくなると批判。宣言は、公的資金だけでは「安全な飲料水や衛生施設のない人の割合を2015年までに半減する」という国際目標の達成は無理として、民間資金の積極投入を打ち出し、官民合わせて投資の倍増を求めた。
「ふげん」運転終了 プルトニウム余剰に拍車
 新型転換炉「ふげん」が29日、24年間の運転を終了した。日本は現在、国内外に約38万トンのプルトニウムを保有しており、プルトニウムを燃料とする原子炉が軒並み行き詰まり、核燃サイクルの目処が立たない中で、核兵器の原料は増えつづけている。「ふげん」は、今後10年間で使用済み核燃料を搬出し、その後15年かけて解体する予定。原子炉廃炉は3例目。コスト高から実用化にいたらなかった。24年間で約4770億円が投じられ、売電収入は2065億円で2700億円の赤字。さらに解体費用は千数百億円とも言われている。

 推定36.8万トンの放射性廃棄物の処理も目処が立っていない。このうち4000トンは地中に埋設しなければならない高レベル放射性廃棄物や低レベル放射性廃棄物で、その処理場所は決まっていない。残り、36.4万トンの大部分はコンクリートで、核燃機構は原子力安全委の基準で放射性廃棄物に該当しないとして再利用を考えている。しかし核燃機構は、「商業ベースに乗るとは思っていない。自前の施設で使うことを考えたい」と言っている。
ホームレス 厚労省が実態調査
全国で2万5000人超 大阪府、最多7757人
 国は夏にもホームレスの問題について基本方針を作成し、これを受けて都道府県が来年度中にも行動計画を策定する予定。このため、厚労省が1月から2月にかけて調査したもの。調査は、目視によってホームレスと判断。ホームレスは581市区町村で2万5296人だった。都道府県別では、大阪が7757人、東京が6361人、愛知が2121人、神奈川が1928人の順。2163人に面接調査した結果、平均年齢は55.9歳。ホームレスになったきっかけは、仕事が減った35.6%、倒産・失業が32.9%など経済的理由が上位。64.7%の人が仕事をしており、廃品回収が73.3%と圧倒的に多かった。しかし収入は、1万〜3万円未満が35.2%、3万〜5万円未満が18.9%と低額。半数近くが体の不調を訴えたが通院したり薬を飲んだりしている人は約3割。8.9%の人が通行人の暴力に不安を感じている。
 大阪市は98年に独自に調査、そのとき8660人だったが、今回、それに比べて6603人と2000人以上少なく、NPOなどからは調査の精度に疑問の声が出ている。

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