<<特集>>  イラク戦開戦後の状況--1日も早い米英軍の撤退を求める

  イラク戦争は20日、フセイン大統領の暗殺を狙ったバグダッド空爆で始まり、22日から本格的な空爆が開始された。21日、クウェートからイラクに侵攻した米英地上軍は一気にバグダッドの南80キロ周辺まで侵攻。しかし、激しい砂嵐と、延びきった補給線に対するイラク民兵のゲリラ戦、いったん制圧したと伝えられたナジャフやバスラなどでのイラク軍の反撃により、米英軍はカルバラ付近で足止めを食った。そのため米国内でも、国防長官に対する批判も出始め、国防総省は27日、急遽12万の地上兵力増派を決定した。
 予想されたイラク難民はほとんど発生しておらず、逆にイラクの出稼ぎ労働者が戦うために帰国し始めたり、聖戦を叫ぶ6000人とも言われるアラブ義勇兵がイラク入りしたりしている。29日には、初めての自爆攻撃が起こった。その後、敏感になった米軍によって、車に乗った女性と子ども7人が射殺されたりしている。
 市民団体「イラク・ボディ・カウント」の推計では、20日から28日の9日間で、イラク市民の犠牲者は376人、米英兵の死者は58人とのこと。住宅地や市場、病院なども空爆され多くの市民の被害者が出ている。これは決して「誤爆」などではない。また、批判の強いクラスター爆弾や劣化ウラン弾も使用されている。また、膨大な数のイラク兵が犠牲になっていると思われるが、彼らも侵略の犠牲者であることを忘れてはならない。
 米軍は4月に入って、イラク共和国防衛隊に対する本格的な攻撃を開始し、バグダッド中心部に迫っている。今後、激しい市街戦が予想され、犠牲者はさらに拡大するものと思われる。1日も早い撤退を求め続けたい。

◇米国 各国にイラク外交官の追放要求
  要求にこたえて、ヨルダンとフィリピンは一部のイラク外交官追放を発表。ヨルダンの外交官追放発表の直後、米国は対ヨルダンの1億8000万ドルの債務返済繰り延べを発表。米国のこの要求に対して批判が上がっており、日本政府もいまのところ静観。

◇イラク復興初期事業 米企業、受注独占の公算
 米政府の援助機関、国際開発局は初期復興事業の第一陣の受注元を決める予定。戦争で被害を受けた道路や橋、学校などの復旧事業が対象。身元審査を速やかに進めるという名目で当面は米企業に限定。チェイニー副大統領がCEOを務めたハリバートンの子会社などが含まれている。

◇復興資金確保へ石油採掘 担当に元シェル首脳有力
 米国は、戦後復興資金確保のため石油採掘権を握る方針を固め、石油生産担当責任者のポストに元シェル石油のフィリップ・カロール氏が有力視されている。同氏は、昨年まで米エンジニアリング会社、フルーアのCEOを務めていた人物。フルーアは米国際開発局が発注した初期復興事業の入札に参加した5社のうちの1社。石油を米政府の統治下に置くことに対して、英は難色を示しており、米政府内でもパウエル国務長官は「何らかの国際的正当性なしには石油も国際市場にまわすことは出来ない」と言っている。イラクの原油は、開戦前は生産量日量250万バレルで、うち200万バレルが輸出に振り向けられていた。輸出は主にロシアの石油会社が担当し、フランス、ロシア、中国の石油企業がフセイン政権と石油開発契約を締結していた。

◇米大統領 補正予算747億ドル要請へ
 約630億ドルが直接の戦費、約50億ドルが周辺国への支援、約35億ドルが戦後のイラク復興費、約40億ドルがテロ対策強化費。

◇イラクのウラン輸入疑惑 IAEA高官「米の証拠文書は偽造」
 IAEA高官は25日、米国が主張する「イラクがニジェールからウラン500トンを輸入しようとした」とする証拠文書について「(IAEAの)数時間の調査で偽造と判明した」と明らかにした。

◇米国 イラク後にらみ、シリア・イラクを牽制
 ラムズフェルド国防長官は28日、シリアがイラクに対して「夜間戦闘用暗視ゴーグルなどを輸出している」として、シリアに警告した。シリア側は、「他の国が武器を密輸したと非難することで、短時間でイラクに勝てなかったことを正当化しようとしている」と非難した。また同長官は、イランに拠点を置くイラク反体制派武装集団がイラク国内に入境しているとして、「フランクス中央軍司令官の指揮下にない部隊のイラク入境は潜在的な連合軍への脅威とみなす」と述べ、攻撃もありうることを示唆し、イラン側に強く取締りを求めた。シリア、イランは「全中東民主化計画」で、イラク後の標的になっており、それに向けた牽制の意味合いもある。

◇安保理 「石油・食料交換計画」の再開を全会一致で採択
 アナン事務総長は、イラクの石油を売却した代金での人道物資の優先的購入など計画実施の権限を45日間に限って与えられた。また、国連はこの計画とは別に、今後6か月分として、加盟国に22億ドルの追加援助を要請した。アナン事務総長は、米英軍の攻撃に対して明確な態度を表明しないまま人道支援の議論を優先させており、戦争を既成事実として認めるような立場をとっていると、批判も出てきている。「戦争をめぐる議論より援助」という姿勢が確定した以上、その成果が問われることになる。

◇トルコ イラク北部派兵見送り 米国務長官と合意

◇仏外相「イラク戦争 米英支持」表明 戦後復興で協調体制狙う

◇イラク戦後処理めぐり EUとNATO合同非公式外相 会議
 3日、イラクの戦後処理をめぐり、EUとNATOが合同の非公式外相会議を持った。パウエル米国務長官は「米英両軍が治安回復にあたり、国連事務総長任命の委員と協調して暫定統治し、イラク新政権誕生の準備をしたい」と述べ、あくまで戦後体制構築の主導性は米国が握り、その枠内で国連に一定の役割を担わせようとの意向を示した。米欧は「国連を含む国際社会の関与が必要」との認識を妥協の落とし所としたが、なお「米国主導か国連主導か」で対立している。

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