米国の先制攻撃は国連憲章に違反
米ブッシュ大統領は日本時間20日午前11時30分頃、ついに国連の承認なしにイラク攻撃に踏み切りました。私たち編集部は、まったく正当性のないイラク侵略戦争に強く抗議するとともに、即座に戦争支持表明をおこなった日本政府に対しても、強く抗議します。
米国の行為は、国連安保理でのイラク武力攻撃決議が支持される見込みがなくなるや、決議を取り下げ、単独の軍事行動に走るという傲慢きわまりないものです。米国寄りと言われるアナン事務総長はこの間、戦争回避のために何ら積極的な発言や行動を行ってきませんでした。そのことは非難されるべきですが、そのアナン事務総長すらも「米国が安保理の枠外で行動するなら、国連憲章に違反する」と述べています。
3月7日に行われた国連査察団の安保理報告では、数ヵ月の査察継続が必要であると述べられています。国連査察団は、3ヵ月にわたる国連査察によって何一つ大量破壊兵器が存在する証拠を見つけることができませんでした。イラクは基本的には国連査察に一貫して協力していました(大統領宮殿に対する査察やU2偵察機による監視などといった、普通の査察では考えられないようなことまで受け入れていた)。
特に最後の1ヵ月は、大量破壊兵器とは何の関係もない中距離ミサイル「アッサムード2」の廃棄にも応じたり、科学者の単独事情聴取を促したりするなど、ブリクスUNMOVIC委員長も認めざるを得ないほど協力的になっていました。エルバラダイIAEA事務局長は、「核開発を進めている証拠は発見されなかった」と報告し、「あと数ヵ月あれば査察は完了する」と述べました。何ら、査察を中断する理由はなかったのです。
国連憲章7章第51条には「国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的または集団的自衛の固有の権利を害するものではない」と書かれています。つまり、他国に対する武力攻撃が許されるのは、武力攻撃を受けた場合と、安保理で決議された場合のみです。今回の米国の先制攻撃は、明らかに国連憲章に違反するものです。
米帝国の覇権主義に反対
今回の米国によるイラク攻撃を正当化する理由は、一切ありません。米国は初め、イラクがアル・カイダとつながりがあると言って、「反テロ戦争」として位置付けようとしていましたが、それは何の証拠もなく無理でした。次に言い出したのは、イラクの大量破壊兵器がテロ組織に渡って、米国を攻撃する恐れがあるので、自衛のために先制攻撃するという口実です。しかしこれは、安保理の中で、査察継続派が多数派で、理解を得ることができませんでした。そして最後に言い出したのが、米単独でもフセイン独裁政権を打倒してイラクを「民主化」し、イラク国民を解放してやるという傲慢な論理です。しかし、この傲慢な論理こそ、米国が最初から描いていた戦略です。
米国のフセイン政権打倒という戦略は、9・11事件以前からあったものです。それが9・11事件を契機にして、フセイン政権打倒はブッシュ政権内で最優先の政策になってしまいました。そしてブッシュ政権内で、米国の価値観に背くものに対しては先制攻撃で屈服させていくという、超保守的な「ネオコンサーバティブ」と呼ばれる集団が影響力をもつようになります。米国防政策委員会委員長リチャード・パールや米国防副長官ウォルフォウィッツなど、「アメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)」に結集する輩です。
今回の戦争は、中東に米国の覇権を打ち立てるための戦争です。20世紀初頭に大国が行った古典的な侵略戦争、帝国の戦争です。中東に親米政権を打ち立て、米国の価値を押し付け、市場化を推し進め、石油利権を確保するための戦争です。21世紀初頭の今、歴史を逆転させるような戦争を断じて許すことはできません。
朝鮮半島の緊張を促進する支持表明
小泉首相は、国連安保理の決議を経ない米国のイラク攻撃に対して、即座に支持表明を行いました。これは日本国憲法の「平和主義」や、外交政策の基本であった「国連中心主義」に背くものです。
今回の米国の侵略戦争にまったく正統性がないがゆえに、それを支持するために、小泉首相はかなり強引な論理を持ち出しました。第一に日米同盟を国際協調よりも優先したこと、第二に北朝鮮情勢を口実に用いたことです。無理な論理を用いたために、今後の日本の外交政策の幅を狭めることになりましたし、朝鮮半島における戦争の危険性を高めることになりました。
イラク攻撃の後、朝鮮半島情勢が緊迫することは必至で、今回の米国の出方を見ていると、北朝鮮に対する先制攻撃も充分ありえます。小泉首相は、日本は朝鮮半島での戦争を前提に行動しており、戦争になったら米国と一緒に戦うと表明したに等しいのです。
日本がとるべき道は、米国に追随していたずらに朝鮮半島の緊張を高めることではなく、北東アジア地域の問題を平和的に解決するという断固たる姿勢を示すことです。アジアの周辺諸国と協力して、北東アジアの平和構築のために、率先して努力しなければなりません。戦争で死ぬのは米国人ではなく、アジアの人々なのですから。朝鮮半島情勢について危機感を煽るだけでなく、国交正常化に向けて冷静に対応する必要があります。それが北東アジアでの戦争を避ける道です。
更なる反戦運動の高揚を!
イラク攻撃が開始されてから、世界の反戦運動は更に高まる勢いです。日本でも高校生をはじめ若い人たちが行動し始めています。ブッシュの横暴に多くの国や人々が抵抗した事実、そしてこれからもさらに反戦運動が継続し盛り上がることが、必ず将来の世界に反映してきます。一時、力の論理が勝利したように見えても、人々の心の中に根付いた反戦思想は、必ずやブッシュを追い詰めていくはずです。米国の侵略戦争を1日でも早く終結させるために更なる反戦運動を!
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