攻撃支持の本音を表明した日本
イラク情勢について、本音では米国のイラク攻撃を支持し、できればそれに参加して自衛隊海外派遣の実績を積み重ねたいと思いながらも沈黙を決め込んでいた日本政府が、ここにきて「米英のイラク攻撃支持」の姿勢を明確にしてきた。
国連安保理で2月18、19日の両日、非同盟諸国会議の要求でイラク問題についての公開討論が行われた。原口国連大使は、明確に米国が準備していた新決議採択、つまりイラクに対する武力攻撃を支持した。それまで国内では、国会答弁においても「仮定の話はできない」とか「国際協調が必要」とか、のらりくらりと明確な回答を避けていたにもかかわらず、国連の場でいきなり明確な態度表明をしてしまった。この安保理での公開討論では、多くの国が査察継続を支持し、新決議採択の必要性まで主張したのはほんの少数にとどまり、一気に日本の米英支持の姿勢が浮きたつ形になってしまった。
その後国内では、原口演説の英語の翻訳をごまかして曖昧にしようとしたりもしたが、結局この国連での態度表明の後、イラク攻撃支持を鮮明にし始めた。金の力にものを言わせて、非常任理事国に対して米英を支持するよう働きかける役回りまで演じるようになった。
北朝鮮情勢をイラク攻撃の理由に
世論の8割が米国のイラク攻撃に反対している中で、日本政府はイラク攻撃を支持する理由を説明する必要がある。最近やっと、好戦論者の論理がはっきりしてきた。つまり、@同盟国として米国を支持する責任があるA北朝鮮の「核」開発計画問題が焦点化してくる中で、「日本を守ってくれるのは米国だけ」、「イラクに対して毅然たる態度を示さないと北朝鮮に対して間違ったシグナルを送ることになる」−という2点である。北朝鮮を持ち出せばなんでもまかり通るような世論状況、マスコミ状況の中で、一定の説得力をもちうるので、これらの論理は、はっきりと論破しておく必要がある。
まず、当然のことであるが、イラク問題と北朝鮮問題はまったく別の問題である。北朝鮮の「核」が心配だからといって、そのスケープゴートとして多くのイラク市民が殺されていいはずはない。イラクの問題はそれ自体として議論されなければならない。最近、マスコミでも「国益」を前面に押し出すコメンテーターがまかり通るようになっていて、非常に危険だと感じている。正当かどうかは二の次で、「国益」のためには何でも許されるという考えは、大国のご都合主義、拡張政策をうみだす。米国の外交政策がまさにそれである。
次に、北朝鮮の問題は、状況を冷静に見極めつつ、基本的には国交回復をめざした外交努力をしていくべきである。北朝鮮の原子炉再開発状況は、日本の原発政策(多数の原発を持ち、再処理も行い、プルトニウムを大量に備蓄)からみたら、日本がとやかく言えた義理ではない(私の基本スタンスは、日本の原発にも北朝鮮の原発にも反対であるが)。冷静に考えると、外交的に要求できるのはイランのようにIAEAの査察は受けて公開性を保障せよということくらいである。北朝鮮のやることはなんでも危険だとして(今のマスコミ報道はそうなっている)、それを口実にすべてを正当化しようとする状況(北朝鮮に対する先制攻撃さえ容認しかねない雰囲気)は危険である。
実質的に動き出している米軍支援
日本政府が米国のイラク攻撃支持の姿勢を鮮明にしたのは最近であるが、実質的にはずっと以前から計画的に対米支援に動き出している。政府は12月9日、米のイラク攻撃を想定した支援策の骨格を発表したが、基本的にはそれに基づいて動いている。その内容は、@テロ対策名目のインド洋での間接支援A周辺国での難民支援など人道支援B戦後復興支援−の3点が柱である。「攻撃前」「攻撃開始後」「攻撃終了後」の3段階で、それぞれどのようなことができるか検討している。
「攻撃前」として、すでにテロ対策支援法に基づいてイージス艦をインド洋に派遣した。また現在、インド洋で米英以外の艦船にも給油活動ができるように、仏独などと文書の交換作業を進めている。
「攻撃開始後」として、@インド洋での間接支援継続Aイラク周辺国に流入した難民支援Bペルシャ湾での日本タンカー保護のための護衛艦派遣C在留邦人脱出のための輸送機派遣−を考えている。日本政府は米国の側面支援のため、ヨルダン政府への復興支援を早々と決めた。NATOで、イラク攻撃を前提にトルコ防衛の論議をするのは時期尚早とした仏・独・ベルギーとは、大きな違いである。
「攻撃終了後」として、@機雷除去のための掃海艇派遣A新法制定による多国籍軍への側面支援−をあげている。今後、まったく正当性のないイラク攻撃後の米軍を中心とするイラク占領に自衛隊が関与していくための新法が焦点化してくる可能性がある。また一時、イラク攻撃中の掃海艇派遣も検討されており、米軍の戦争への自衛隊参加の実績を積み重ねたい政府・防衛庁としては、また論議を蒸し返す可能性もある。
米国の傲慢なイラク攻撃が始まる前にそれをストップさせるため、また、日本に米国の戦争に協力させないため、日本からも世界の反戦のうねりに合流していこう。 (K)
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