一口メモ--2003/02/16号--

反戦デモ参加者数報道が示すマスコミの「戦争」へのスタンス
 イラク攻撃反対の闘いの世界的高まりを示す第一弾となった1月18日の反戦デモ、日本のマスコミ各紙の取り扱いが、それぞれのスタンスを如実に表していて面白い。
まず「日経」は完全に無視。そんなことよりイラク攻撃後、経済がどうなるかの方が重要問題、というところか。
大きく報道したのが「朝日」と「毎日」。

【朝日】対イラク戦 米首都、響く反戦の声 20万人が集会 世界つないだ「No War」
【毎日】対イラク攻撃 世界各地で反戦デモ 米で10万人 欧州、中東地域にも
 「読売」「産経」は記事の量でいうと1/2 〜1/3 。
【読売】イラク攻撃反対デモ 厳冬のワシントン数万人
【産経】世界各地反戦デモ アメリカ国内―ワシントンで3万人が気勢 欧州―開戦現実味なく盛り上がらず
 「産経」の「盛り上がらず」というのが、主観的願望そのままで何とも傑作。ちなみに、ワシントンのデモ参加者は主催者発表で50万人、現地の警察は「10万人以上は参加したと思うが、多すぎて把握できず」。
GM作物紛争で米国、対イラク戦争のためEU提訴を延期
 米国は、新たな遺伝子組み換え(GM)作物の承認のモラトリアム(一時停止)を続けるEUをWTOに提訴することを延期したようだ。米国は、かねてEUのこの行為をWTOのルールに違反する貿易制限行為と非難、これにより米国農民が年々多大な損害をこうむっているとして、WTO提訴をほのめかしてきた。

 1月初め、農業・バイテク企業やこれらの利害を代表する米国議会議員の圧力が高まるなか、米国通商代表・ロバート・ゼーリックは、EUの反バイテク・ルールは、意味のある科学的研究ではなく、理不尽な公衆の不安に対応するもので、米国農民に対する貿易差別に当るとして、数週間以内にWTOに提訴すると語っていた。ゼーリックは、EUの反科的態度は世界の他の国々にも拡散、アフリカ人の飢餓からの救出を妨げる原因にもなる「非道徳的」態度であり、19世紀イギリスの労働者の「ラダイト」(機械打ち壊し運動)にも似た態度であるとも非難していた。

 しかしゼーリックは、対イラク戦争に対するEU(及びその他の国際的)の支援の獲得を最優先する目下のホワイト・ハウスの支持を勝ち取ることができなかったようだ。2月3日に予定されたいたこの問題を討議する閣議レベルの会合はキャンセルされ、改めての会合のスケジュールもないという。要するに、提訴延期は、対イラク戦争を間近に控えてEUの怒りを買うことへのホワイト・ハウスの不安から生じたものであるということだ。ファイナンシャル・タイムズ(2/6)によれば、政府高官は、EUの政策を変更させることが必要であるという基本的考えに関して政府内には何の異論もない、ゼーリック支持を困難にしたのは「タイミング」であり、「もし1月初めに閣議を開けば」WTO提訴が決まっていただろう、という。提訴延期がこのような「便宜的」理由によるものであるとすれば、それによって基本的問題は何一つ解決されたわけではなく、近い将来の再燃は間違いないであろう。そのとき、問題はどう展開するのであろうか。 (「反GMイネ生産者ネット」インフォメーションより)
米04会計年度予算教書発表
 歳出規模は2兆2290億ドルで、前年度予算教書比4.7%増。財政赤字予測は03年度が3040億ドルで過去最大、04年度が3070億ドル。米本土防衛費410億ドルで、前年度予算教書比10%近い伸び。国防費は3991億ドルで前年度比4.4%、169億ドルの伸び。03年度から09年度の長期計画では、6年間で32%増の大幅な軍拡を見込んでいる。兵器調達が毎年数10〜100億ドル単位で大幅に増える。MD関連では15億ドル増の91億ドルを計上、地上配備の10基を配備。05年度には、地上配備10基追加に加えイージス艦に20基配備予定。なお、これらの予算の中には、イラク攻撃の戦費は含まれていない。
史上最悪ばっかし?!・・・昨年度まとめの資料から(2)
◆02年の近畿 倒産3年連続4000件超 中小企業増加 最悪、京都539、大阪2569件
◆看板頼み改革遅れ…老舗の倒産最悪 近畿の昨年1106件 10年で4.7倍
◆日建連加盟63社 建設受注、昨年8.5%減 15年ぶり14兆円台下回る
◆鉱工業生産1.4%減 9年ぶり2年連続低下
▼昨年の百貨店売上2.3%減 スーパー2.1%減 外食落ち込み過去最大5.6%減 
▼家電販売8.5%減 昨年、落ち込み幅過去最大 電機大型店調べ
▼住宅着工19年ぶり低水準 昨年115万戸 雇用悪化・所得減で
■労基署のサービス残業是正指導16,059件 過去最多
■失業率最悪、昨年5.4% 近畿、前年比0.4ポイント上昇の6.7%、全国10ブロックで最悪
■平均給与、5年連続減 不況直撃0.9%ダウン 昨夏ボーナスも8.5%下がる 府内の事業所14年度
■ヤミ金融摘発、昨年最多に 長引く不況背景に238件、被害者12万2000人 手口も悪質巧妙化
■昨年の生活経済事件 詐欺被害1890億円 女性7割、主婦4割
★自動車大手5社14年実績 海外生産最高を記録
★パソコン出荷、前年比11%減 日本、中国に抜かれ3位に転落 2年連続減
●首長汚職、昨年14人 1995年以降で最多
▲世界の穀物生産量、前年比3%減 2年連続で生産量が消費量下回る 穀物在庫1995年以来の低水準
 異常気象で小麦生産国に打撃 オーストラリア最悪58%減 カナダ28年ぶり40%減 アメリカ58%減
「路上死」年間213人--大阪市
 大阪府立大学・黒田教授らの研究調査によれば、大阪市で01年に「路上死」した人は213人(女性4人)。平均年齢は56.2歳、最高齢は83歳。全国平均と比べた病気別死亡率は、結核44倍、心疾患3.34倍、肺炎4.52倍、自殺6倍、平均で3.5倍。府内のテント生活者は現在、1万人を超えていると見られている。
サービス残業、初の逮捕者
 東京都羽村市の特別養護老人ホ−ムの職員に時間外手当を支払わず、サ−ビス残業をさせたとして、青梅労基署は2月3日、同園を運営する社会福祉法人の理事長を逮捕した。サ−ビス残業での逮捕は全国初。未払い賃金総額が1億円にのぼること、00年と昨年、是正勧告したが、虚偽の報告を繰り返したことから逮捕に至ったもの。

これに先立ち1月末にはトヨタが00年に続き2回目の是正勧告を受けている。その他、シャ−プ、三菱電機、近畿郵政局、武富士などのサ−ビス残業も明るみに出ており、サ−ビス残業は今や大小を問わず常態化。今回の逮捕は歯止め狙いの「見せしめ」と報道されているが、「見せしめ」ならば、1兆数千億円の巨利を得ながらサ−ビス残業を止めないトヨタの社長、奥田・日本経団連会長も逮捕したほうが効果があるのでは…。
<書評> ブラックホールへ吸い込まれていく現代中国
「中国現代化の落とし穴」 (草思社・何清漣著)
 何清漣著「中国現代化の落とし穴」を題名に惹かれて買いましたが、資料的裏付けもしっかりした本格的な学術研究書には驚きました。しかし、包括的に問題を扱いながら、臨海部と内陸部という中国の地域格差について触れられていないのは残念です。

 これを読んで私の感想は、この国の統治機構そのものに汚職・腐敗システムが既にビルドインされ、自力で取り除くことが不可能になっているということです。その結果、この国全体がブラックホールへと吸い寄せられつつあり、それを押し留めることは最早不可能ではないでしょうか。

 日本にとって中国は生産拠点の移転先であり、日本経済にとって加害国と見なされていますが、その加害国の行き着く先が日本と同じとは、暗然とせざるをえません。しかも、中国は世界人口の5分の1を占める大国で、その世界情勢に及ぼす影響は計り知れません。

 共産党幹部という閉鎖的な少数エリート集団主導による上からの市場経済化、政治の意思決定・執行のルールとそれを監視するシステムがないため、あらゆる公共機関で彼らによる公共財産の盗奪が蔓延しています。そこに付け入る血縁集団、ルールのない閉鎖社会の隙間に入り込み、「美味い汁」を吸い取ろうとして群がるヤクザ(黒社会)、等々。経済が膨れ上がると共に中国社会全体を蝕んでいく病人の姿が赤裸々に描かれており、437頁の大著ながら、読んでいて最後まで飽きることはありませんでした。

 それゆえ、この国の民衆は民主主義を渇望しています。だが、他方で、広大な国土、12億人の人口、しかも漢民族主体ながら多種類の少数民族を抱える国を統治するには強大な政治権力が必要であり、彼らの心はこの狭間の中で揺れています。

 妙案はありません。民衆の反乱を一服の清涼剤で終わらせないためには、人々の目的意識を持った絶えざる変革の営みが必要です。 (渡邉) 

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