一口メモ--2003/01/16・02/01合併号-- |
若者が日本脱出、避けられぬ年金改革論議 |
01年度「経済財政白書」は世代間格差に焦点を当て、各世代ごとの「受益と負担」が均衡していれば、日本経済は持続可能な成長が可能だが、このバランスが崩れれば不可能になるのではないか、との視点から検討しています。この試算によると、過去10年間で世代間格差は拡大を続け、現在では1世帯当たりで、60歳以上は2700万円の受益超過、団塊の世代はゼロまたはプラス、それ以下はマイナスに転じ、20歳代では1300万円の負担超過となり、20歳未満を指す将来世代は4200万円の負担超過となります。 これは現在の公共サービスを維持することを前提にした試算ですが、この試算は日本経済が持続不可能なほど世代間格差が拡大したことを示しています。この世代間格差を解消するため2100兆円の追加負担が必要として、二つの選択肢を提示しています。一つは将来世代だけに負担させるケースで、消費税率を90%まで引き上げなければなりません。もう一つは05年から全世代で追加負担するケースで、消費税率は23%となります。「エコノミスト」03年1月7日号で、久恒啓一・宮城大教授がこの試算を学生に示した時の彼らの反応について、次のように書いています。 「1年生の教室はシーンと静まり返ってしまったし、3年生は日本脱出を明言する学生がかなりいた。そういう借金は自分が作ったものではない、という言い分である。この問題は経済の問題に止まらず、世代間闘争という深刻な政治問題になっていくという予感もする。公共事業の推進と公債発行による財政負担の増大は、そのまま子供達の負担が加速度的に増えていくことを意味している。日本にとってこれ以上の大きな問題はないはずだが、こういったことをまともに議論する様子は見えない。日本経済が活力を取り戻すことができなければ、恐るべき未来が待っていることは確実である。私達に残された時間は少ない」 (渡邉) |
フィリピン、遺伝子組み換えコーンの商用栽培承認 |
昨年12月、フィリピン農業省の植物産業局が、モンサント社の開発した害虫抵抗性遺伝子組み換え(GM)コーンの商用栽培を承認した。数ヵ月先に栽培が始まりそうだというが、そうなればフィリピン、というよりアジア初の食用GM作物の商用栽培となる。 しかし、農民が実際にこの種子を使うことになるのかどうか、まだはっきりしない。この種子の価格は慣用の種子よりも相当に値段が高いからである。植物産業局は、種子購入のために利用できる財政援助を与えることになりそうだという。またモンサント社も現在、この種子が農民にもたらす有償・無償の便益を量的に確定、慣用種子との価格差を設定する作業を進めている。フィリピン・トウモロコシ連盟会長は、「慣用種子よりも50%高くても、農民は与えられた生産性改善の約束にプレミアムを払うつもりでいると」という。 途上国を最大のターゲットと定めたバイテク企業のGM作物売り込み戦略は、アフリカやインドのGM食糧援助拒否にみられるように、行き詰まりの様相を呈してきた。しかし、執拗に売り込みを続けてきた東南アジアで、突破口が開かれるのであろうか。今後数ヵ月の動きに注目する必要がある。 (「反GMイネ生産者ネット」インフォメーションより) |
生物大量絶滅時代に突入! |
米国の民間シンクタンクが発表した2003年版地球環境白書によれば、環境悪化により現在世界で9800種存在する鳥類の中で、絶滅していく種の割合が最近はかつての50倍以上になっており、過去500年間に絶滅した128種の鳥類のうち103種は、1800年以降の200 年間に集中。鳥の減少は地球上の生物全体の危機を反映しており、世界の哺乳動物の1/4が危機にさらされたり絶滅に瀕し、爬虫類の25%、両生類の21%、魚類の30%に絶滅の恐れ。白書は「現在、世界は6500万年前の恐竜絶滅時代以来の生物の大量絶滅期のただ中にいる」と警告。 |
史上最悪ばっかし?!・・・昨年度まとめの資料から |
◆世界主要市場 株式時価総額 550兆円減 IT不況響き1年で20% 投資・消費の減退要因に ◆「円」の地位過去最低 信用低下で前年の3.0%から1.9%に 国際市場の通貨別起債シェア2通貨体制鮮明に ドル建て45.2%・ユーロ建て41.9% ◆中国の輸出入急増 総額、前年比21.8%増、初の6000億ドル台を突破 対日貿易も1000億ドル突破 貿易黒字78億ドル増の303億5000万ドル ◆証券投資海外流出最高に 2002年度、12月までで16兆円超す 個人資金外債にシフト ●上場企業倒産戦後最多の29件 「不況型」が22件7割超 負債総額は1兆9432億円で戦後4番目 ●金融機関の破綻処理、今年3月までで国民負担1人10万円 預保機構、取り崩し11兆円へ ●銀行貸出4.7%減 昨年残高425兆円 6年連続前年割れ ●第三セクターの倒産・解散最多63社 地域開発会社が75% ■米原潜寄港10隻53回 前年比9回増 対テロ戦争の4隻も ▼安全、衛生、品質表示、異物混入など食品企業4割で不祥事 株主オンブズマンが調査 過去1年間 ▼食品偽装表示 雪印食品の事件契機に内部告発増え次々発覚 農水省の業務改善指示件数、昨年急増 ★出生、最低の115万6000人 2年連続マイナス 離婚最高、29万組超す 厚労省2002年統計 |
日本経団連会長「奥田ビジョン」骨子 |
◆社会保障改革の柱として、消費税率引き上げにより財源確保。2004-2014年度の間、税率を毎年1%ずつ引き上げ16%に。 ◆納税者背番号制を導入、税と社会保険料を一括徴収。 ◆少子高齢化による就業者減を補うため、永住を含め外国人の移民を受け入れ。 ◆行政権限を国から地方に移管、全国5-10ブロックの州制を導入。税源含め委譲。 ◆日本、中国、韓国と東南アジア自由経済圏の創設。 ◆企業の政治献金のための指針を策定。構想への貢献度で与野党の政策を評価。 |
通常国会の主な法案 |
◆有事関連3法案―武力攻撃への対応に関する基本原則や、有事における自衛隊の円滑な活動、安全保障会議の機能強化など。 ◆個人情報保護法案―行政機関や民間企業が個人情報を取り扱う際の罰則を伴う義務などを規定。 ◆人権擁護法案―人権救済機関として「人権委員会」を新設。 ◆産業再生機構設置法案(仮)―金融機関から不良債権を買い取り、企業の再生を図る「産業再生機構」を設立。 ◆雇用保険法改正案―保険料率を2005年度以降1.6%に引き上げ。 ◆食品衛生法改正案―危険な健康食品は、被害が出ていなくても禁止できるようにする。 ◆裁判迅速化促進法案(仮)―すべての裁判の1審判決を2年以内に出す「目標」を設定。 ◆教育基本法改正案―教育の基本理念として、愛国心や伝統の尊重などを新たに規定。 ◆外為法改正案―送金停止など北朝鮮への経済制裁を発動できるようにする。 ◆イラク復興支援法案(仮)―インフラ復旧や化学兵器の処理に自衛隊を活用。 |
<書評> イラク攻撃が石油利権をめぐる戦争であることを歴史的に 「イラクとアメリカ」 (岩波新書・酒井啓子著) |
イラク攻撃に突っ走ろうとする米と回避をねらう中露独仏の立場の違いが、マスコミの報道で顕著になってきた。「米欧場外乱闘」という見出しまである。その記事では、共和党の上院議員が「もし仏や露がフセイン政権崩壊後の石油の分け前を欲しいなら、軍事行動に参加すべきだ」と主張したとも述べている。 本著は、ブッシュが「アメリカの正義」という名のもとにおこなおうとしている対イラク戦争が、世界第2位の埋蔵量をもつイラクの石油利権をめぐる戦争であることを、1921年にオスマン帝国が解体され、委任統治のイラクが建国されて以降の歴史の中で明らかにしている。 また、イラクの石油が湾岸戦争後の経済制裁の中で、国連の活動資金と「イラク国民にとっての人道的に最低限必要な食料や医薬品の購入」のために「食料のための石油」として一部制裁を解除され、その「食料のための石油」でイラクに唯一認められていたのが輸出先の選定であり、その選定先として選ばれたのが露・中・仏であることや、これらの国にたいして油田開発の参入を認め、米英は排除されていることなども、わかりやすく書かれている。最初の米の議員の発言は、本書を踏まえるとよりよく理解できると思う。 著者は「あとがき」などで、冷戦構造や独裁体制や国家による個の管理といった「フセイン的な」独裁を、「われわれの社会」に内包された問題としていかに乗り越えるべきかというということを問題として提起しているが、石油利権をめぐるイラク攻撃が迫っている中で、世界全体の構造がこういったものをつくり出していることを世界中の人が知り始めていると思う。一読を。 (広瀬) |
[←back]