一口メモ--2002/12/16--

とめどない人類の傲慢―遺伝子技術はどこまで行くのか?
 遺伝子技術に関連する暗澹たる話が相次いでいる。まず、マスコミの話題にもなったのが、イタリアの医師が先月末に記者会見で「来年初めにも世界初のクローン人間が誕生する」と公表した件。この医師、法規制をくぐり抜けるこれまでのやり方や記者会見からしても、どう見たって「山師」、「不妊治療」なぞ嘘八百。
その2、ヒトゲノムの解読に初めて成功した米社の元社長やノーベル生理学・医学賞受賞の学者らが参加する研究グループが、自然界に全く存在しないタイプの生命体を人工的に作り出す計画に着手、米エネルギー省も300万ドルを提供。「非常に強力な生物兵器の開発に悪用される恐れ」とマスコミも憂慮。最後に、米スタンフォード大がクローン人間作りにつながる「ヒトクローン胚」作りを開始…。
 何十億年にもわたる生命の歴史に対する謙虚さなど微塵もなく、「科学技術信仰」に溺れる人間の愚かさ・傲慢さと言うしかないが、さらに指摘すべきは、「生物資源開発」「移植臓器研究」などのもっともらしい理屈では隠し切れぬ「金儲けの論理」と、3つとも米が主導或いは関係していること。ブッシュ自身は宗教的理由からクローン技術には反対と報じられているが、「世界の帝王」を気取りイラク攻撃に突き進むブッシュの愚かさ・傲慢さと前述の「科学者」共の愚かさ・傲慢さは、決して無縁ではない。
イラク申告書 一転の5ヵ国配布に批判 兵器援助、点検か
 安保理は6日の非公式会合で、申告書をUNMOVICとIAEAのチェック後に兵器製造情報などを除外した上で15理事国に配布すると決めていたが、その合意を一転させ、常任理事国5ヵ国に原本配布を認めた。申告書は国連に2セット提出されており、そのうち1セットが米国に手渡され、米で複製され他の4ヵ国に渡された。米国はCIAなどを中心に独自の分析と検証を開始した。米国が優先配布を求めた背景には、国連に先んじて申告書を分析し、安保理への報告内容に圧力をかける目的と、兵器大国の常任理事国が、公表前に自国が関わった可能性がある「イラクへの兵器援助」の記述をチェックする目的があると見られる。

米の環境政策 産業界寄り一段と 議会の共和党優勢背景
 発足時からエネルギー業界などの意向を環境政策に反映させる傾向の強かったブッシュ政権が、11月の中間選挙で上下両院とも制したことで、その傾向に一層拍車をかけている。*環境保護局が発電所や工場の排ガス規制緩和策を発表、*ホワイトハウスの科学技術政策局長が京都議定書に復帰しない姿勢を改めて強調、*内務省がメキシコ湾岸の絶滅が危ぶまれるウミガメの生息地に近い領域での油田掘削計画を承認、*上院の環境公共事業委員会、エネルギー委員会の委員長に、それぞれ過去に産業界寄りの発言を繰り返してきたことで知られる共和党議員が就任…等々。ニューヨークタイムズ社説は「ブッシュ政権と2年間戦い続けてきた環境保護推進派は、来年1月からの議会で本物の嵐に直面するだろう」と警告。
道路民営化委最終報告 委員長辞任、多数決で決着 押し切った建設抑制派
 12月6日、政府の道路公団4公団民営化推進委員会は、新規建設の抑制を主張する5委員の案を多数決で決定、小泉首相に提出した。一定の道路建設は必要としてきた今井委員長(新日鉄会長)が、多数決に反対して辞任するという混乱の結末。最終報告の骨子は以下の通り。

 *10年後メド道路買い取り。
 *通行料平均1割下げ。
 *通行料依存の建設認めず。
 *40年間の元利均等返済。
 *日本全国を5地域に。

 「料金のプール制と財投資金等の借入・償還を前提に新規路線を建設する現行方式はもはや限界」と報告にもある通り、高速道路建設に歯止めがかかったのは事実だが、道路族や都道府県の抵抗、小泉政権自体の存亡など、2004年の関連法案の提出まではまだまだ紆余曲折が予想される。
個人の自己破産最悪 リストラや倒産が影響
 最高裁のまとめによれば、全国の個人の自己破産申立て件数は1-10月で173,289件となり、最悪だった昨年1年間の総数を上回り、通年で20万件を超える最悪ペース。商工ローンなどで保証人となった人が追い込まれるケースや、債務者が追い込まれヤミ金融に手を出さざるを得なくなって破綻するケースが目立つ。背景には企業のリストラや倒産がある。破綻していない企業でも、不況克服のために人件費の圧縮を進め、収入減から「自己破産予備軍」がさらに増えているのが実情。
ハンナンが産地偽装―共産党、内部告発基に国会で追及
 ハンナングループの「ハンナン食肉」(大阪府羽曳野市)が、牛肉の産地偽装を行っていたことが内部告発で発覚、日本共産党の大沢議員が参院決算委員会で追及した。内部告発によれば、偽装が始まったのは昨年10月のBSE全頭検査開始の直後から。BSEの検査済み証明書に産地が表示してあることを悪用、「大阪で人気のある佐賀牛、宮崎牛、鹿児島牛など高級産地の検査済み証明書を事務所のコピー機で大量に増刷り、どこの産地の出荷箱かわからないのに、納品書に合わせてペタペタと張りつける」「他社の産地表示のシールが張ってある場合は、外箱も包装もシールをすべてはがし、高級産地の証明書に張り替えてしまったこともある」。

 追及に対して大島農水相は事実関係の調査を約束したが、「赤旗」の調査で、今年初めに実施されたBSE対策買い取り事業の保管牛肉の「抽出検査」の際、検査を実施した農水省の外郭団体がハンナン系倉庫に、どの牛肉をいつ検査するかを事前に通知していたことが明らかになっている。こんな癒着の中での「事実調査」にどれだけの実効性を期待できるか、はなはだ疑問?
《書 評》 今、マルクスを読んでみようとか全く思わない人に
「ポスト現代のマルクス」(御茶の水書房・的場昭弘著)
 40代より下の世代では、「マルクスって誰?」。50代のほとんどの人は「なんで今頃マルクスなの?」。どこへ行ってもあまりさえないマルクスですが、現代こそ、マルクスを読み直すべき時代なのだと、私は考えています。ろくに十分読んでこなかったのに、偉そうなことは言えませんが、答えを捜すためにではなく、自分達が生きている世界と時代を、自分の頭で捉え直すために、マルクスの思想が読み直されるべきなのではと思うのです。「社会主義」の崩壊は、そんな条件をむしろ整えたとも言えます。

 そんな時、偶然、本屋の書棚で出会ったのが、「ポスト現代のマルクス」(的場昭弘著、お茶の水書房刊)でした。この本の中で触れられている、マルクスのフォイエルバッハのテーゼ第11章の解釈を読んで、「へえー、そんなに読めるのか」と驚かされました。まあ、自分の不勉強を身をもって知らされたということなのですが、思索することの重要さを、改めて痛感したわけです。

 今、マルクスを読んでみようとかまったく思わない人に、是非読んでほしい一冊です。ほら、そこのあなたですよ。  (能勢農場・津田)

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