《特集》イラク攻撃への支援態勢整える日本

  日本政府はイラク攻撃に対して、正当なのか不当なのか一度も論評することなく、戦争支援態勢を整えていっている。国民に対して、何のための戦争であるかを一言も触れずに、戦争に参加しようということである。マスコミはアメリカのイラク攻撃を前提とした報道を続けているが、前提そのものを正面から批判する記事は皆無である。また、日本の明白な参戦という事態に至ってもなお、「集団的自衛権行使に抵触する懸念も」と中立を装いながら政府を免罪し続けている。

◇イージス艦12月中旬派遣決定

 4日、石破防衛庁長官が小泉首相にイージス艦の派遣を要請、首相が了承した。イラク攻撃支援要請のため8日来日するアーミテージ米国務副長官との協議や、16日からの日米外交・防衛担当閣僚会議(2プラス2)に合わせて急きょ決定。アーミテージ米国務副長官は、「深く感謝」と語った。公明党は黙認。

◇防衛庁 イラク攻撃時 ペルシャ湾への掃海艇派遣を検討


 タンカーなどの安全確保を口実にしているが、戦時中の派遣になれば、米軍との一体的な作戦であることは明白。戦争状態終結後の残存機雷の除去にあたる可能性が強い。

◇イラク攻撃想定し 3段階支援策固まる

 政府は9日、米のイラク攻撃を想定した支援策の骨格を固めた。@テロ対策名目のインド洋での間接支援A周辺国での難民支援など人道支援B戦後復興支援−が柱。「攻撃前」「攻撃開始後」「攻撃終了後」の3段階で対応。「攻撃前」として、イージス艦を派遣(テロ対策支援法)。「攻撃開始後」として、インド洋での「間接支援」継続と、イラク周辺国に流入した難民支援(PKO法)、ペルシャ湾での日本タンカー保護のための護衛艦派遣(自衛隊法・海上警備行動)、在留邦人脱出のための輸送機派遣(同邦人輸送)。「攻撃終了後」として、機雷除去のための掃海艇派遣(同機雷除去)、新法制定による多国籍軍への側面支援をあげている。

◇イージス艦派遣

 海上自衛隊のイージス艦「きりしま」が16日、横須賀港を出港した。政府は表向きの派遣理由を、護衛艦「ひえい」との単純な交代であり、他の護衛艦より居住性が優れているからとしている。
(編集部)テロ対策措置法に基づくインド洋への護衛艦派遣自体が、すでに戦地への自衛隊の派遣であり、米軍との集団的自衛権の行使だと考える。イージス艦の派遣は、能力的にそれを一層鮮明にさせるという政治的効果がある。レーダー探知能力は300キロ以上に及び、同時に200の目標を追尾でき、18の目標に対して攻撃対処能力をもっている。データリンクシステムは米軍への戦闘情報提供を行っている。そもそも、「護衛艦」という名称がごまかしで、大型護衛艦は一般的には駆逐艦に相当し、空母や戦艦、巡洋艦を持たない日本では主力戦闘力である。

◇平和協力懇 「後方支援」へ新法整備 PKO参加5原則見直しも

 福田官房長官の私的諮問機関「国際平和協力懇談会」の報告書案で、▽国連決議をもとにする多国籍部隊への自衛隊の後方支援を可能にする新法整備▽PKO参加5原則を見直すPKO協力法の改正▽自衛隊法を改正してPKOを自衛隊の本来任務に−など提案していることが明らかに。
(編集部)イラク攻撃終了後の多国籍軍への参加を目論む政府方針に合致しており、意図的リークと思われる。

◇朝日新聞世論調査

 ▽イージス艦派遣に賛成40%、反対48%▽米国のイラク攻撃に賛成26%、反対65%▽イラク攻撃への日本の協力賛成29%、反対57%。

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