過労死・自殺急増 リストラで労働環境過酷化
前号のニュースクリップで国内産業の空洞化と進行するリストラの動きを特集したが、その結果として職場の労働条件が急速に悪化しつつあることを示す調査結果などが相次いで報道されている。なお今号の資料サービスとして、史上最高の経常益をあげたトヨタや「奇跡のV字回復」ともてはやされている日産が、足下で如何に過酷で非人間的な合理化を強行しているかを明らかにした論文「自動車多国籍資本の戦略と『空洞化』」(「経済」11月号)を同封している。合わせてご参照を
- 過労が原因で死亡したり、脳・心臓疾患を患って労災認定されたのが、今年4月から9月までで115件。昨年度は1年間で143件。仕事が原因で精神疾患になったとして労災認定を受けたのが半年間で44で、うち自殺が20件。昨年度労災と認められた自殺は31件。
- 厚労省は、昨年末の認定基準緩和に加え「リストラの影響で仕事量が増えているのも一因」と分析、11月に残業実態に関する緊急調査を実施(ちなみに、総務省の7月の労働力調査では、残業時間が月80時間を超える男性社員の割合は全体の2割を超え、過去10年で最高)。
- 2001年1年間に正社員が取得した年次有給休暇の平均日数は一人当たり8.8日で、与えられた日数に対する取得率は48.4%と過去最低を更新。日数・率ともに6年連続の減少で、ピークだった1995年に比べ日数で0.7日減、率で7ポイント近くダウン。企業規模別では、従業員1000人以上の大企業は平均10.1日取得し、取得率51.7%だったが、100人未満の企業は7.5日取得、取得率45.6%と差が大きい。
- ほぼ3年に1回の人件費の調査では、福利厚生費を中心とした、給与を除いた人件費が3年前より11.1%の減。特に目立つのが住居費、食費などの「法定外福利費」で同23.5%減。「企業が給与だけでなく福利厚生費にも切り込んでいる実態を反映したほか、人件費削減のため、賃金や福利厚生費の低いパートを増やしたのも原因」と厚労省。
- 製鉄の現場で就労中の事故が多発し、経産省は日本鉄鋼連盟に対し、保安面の強化を求める異例の注意文書を出した。今年に入っての死亡事故は19件で20人。2ヵ月余りを残し、すでに00年と01年の年間発生件数を上回っており、大手の製鉄所内の事故が目立つ。製鉄業界では人員削減が急で、大手5社の従業員数は01年3月末に18万9382人だったのが、02年3月末には16万4367人まで減った。その一方で、今年に入って中国・韓国向け輸出が拡大、各社ともフル操業となっていることが、従業員への負荷を大きくしているとみられる。
|