バタンと音を立てて、ドアが強く閉ざされた。
今この部屋の中にあるのは、二皿の冷めたスープ。そして、僕たちのコトバの残骸。
スパイス S-side
written by 霜月 梓
久しぶりにアスカと口論になった。原因は・・・
間違いなく僕だ。
すべてが終わり、Nervも解体するものと思われたけれど、戦自のとった行動に対し世界的批判を浴びた日本政府とゼーレを擁していたドイツ政府。さら
に、その二国の暴走を黙認した国連および全国家の与党に対し民衆が非武装蜂起し、国連の代替品としてNervを起用した。僕らチルドレンは特別階級にあっ
たため待遇管理に手間取り、アスカと綾波が二尉、僕が一尉となった。ちなみに、作戦部および技術部の主要メンバーはそれぞれ二階級特進され、ゼーレではな
いにしろ、旧姓碇、現六分儀指令の独裁体制は自らの意思で崩壊し、各国家の代表などによる総会で世界が動くようになった。
唯一、ミサトさんはグリーンランド支部に左遷されている。私情の渦がまいていたNervだけど、チルドレンを駒とみなしていたのはミサトさんだけ だった。父さんでさえ母さんが帰らないことがわかると、僕とアスカを呼び出し、涙を流して土下座した。
「すまない・・・。どう償っても埋め合わすことはできないが、もう君たちの幸せを壊すような真似は誰にもさせん・・・」
アスカも僕も、父さんのおかげで互いの思いを知ったようなものだからすべてをなかったことにした。
加持さんはミサトさんに殺されかけたけど、冬月現アメリカ代表の独断で救出され、身の安全のために子供のいない副指令の養子となった。だから今は 冬月リョウジなのだけど、やはりあの人を「冬月さん」と呼ぶのはなぜか引っかかるので、みんな今でも「加持さん」と呼んでいる。
その後、僕は日向さん、加持さんと作戦部外交方面専科に配属され忙しい日々をすごしている。アスカはその頭脳を買われ、リツコさんやMAGIカス パーにしごかれながらもめきめきとその頭角を現し、今ではマヤさんの地位を脅かしている。
僕らは戦いのさなか互いの思いを知り、世間一般からすれば恋人と言う関係になった。
でもこの頃の激務であまり顔も見ていない。残業という言葉は意味を成さなくなっている。
そんななかで今日、僕はすこし早めに上がれたので寄り道もせずに家に帰った。
アスカはすでに帰ってきていて、スープを作ってくれていた。
一口飲んで、僕は「不味い」と言った。馬鹿のことを言ったなと、今でも反省している。
二人とも続く残業で疲れていたせいか、その後コトバに歯止めが利かなくなった。
「アンタはいつも・・・」
「アスカだって・・・」
「そうやってすぐ・・・」
「なにさ!まったくキミは・・・」
そしてアスカは薄着のまま出て行った。外は寒いというのに。
改めてスープの味を見てみる。冷めているのか、やはり不味い。
台所に行ってみると、オレ○ジページが開いたまま置いてあった。表紙には「特集、疲れが取れる薄味スープ!」の文字。
「はあ・・・。いい加減バカだな僕も・・・」
いや、"僕たちは"と言ったほうがいいのかもしれない。
幸せになりたいだけなのに、些細なことでぶつかってしまう。
薄味ながらスパイスの効いたスープをすする。
そうさ、僕たちに今必要なスパイスは互いを思いやれる優しさの心なのかもしれない。今の僕たちにはたった一振りでずいぶん変わることだろう。
椅子の背にかけられたアスカのコートを持って、僕は彼女を追った。
あとがき
どうも、霜月 梓です。
あまり甘さのない作品となりましたが・・・、いかがでしたでしょうか?
ミサトがボロクソに扱われていますが、僕のストックにある作品では待遇がまちまちです。彼女はいろいろ使えて、逆に難しい人間ですね。
最後まで僕の駄文に付き合ってくださりありがとうございました!!A-sideで完結しますので、どうかそちらも読んでやってください。
では!!霜月さんからアスカとシンジのお話をいただきました。
ミサト‥‥はいなかったことにしましょう(何
何かと共同生活は喧嘩のタネですな。LASのタネでもありますが(笑
想いのスレ違いとか。
続きも心して待ちましょう。