いつもと同じ夢


いろんな夢を何度も見てきた

いつまでたっても意地悪なわたし


「もうシンジなんかしらない!」
私はシンジの膝の一番端っこまで逃げる
「ごめんてば…もうアスカ機嫌直してよ」

さっきまでシンジの膝の上で甘えていた私
昨日、私がチェックしたシンクロテストの結果の話をしてあげる
あの3人の話…
シンジはやっぱりあのこのことが気になるみたい…
何回も「…ちゃんはどうだった?」って聞いてきて

もう!

シンジのお嫁さんは私でしょう!
ほんとに!もう!
神父様の前で永遠の愛を誓ったんでしょう!


大体あの子もあの子よ!
テストが終わって、いろいろめんどくさい報告書を仕上げ、私も帰ろうとしてたら
「あの…」

“あの”じゃないわよ!

シンジが目当てなんでしょう?!
だから言ってやったわよ
わざとらしく左手を見せながら

「シンジなら今日は来ないわよ」

うつむいちゃって…

「はい…」

まったく!

何よ!あんながきんちょ!

大体シンジもシンジよ!
いっつもあのこのこと気にして!

シンジはお兄さん気取りなんでしょうけど、あの子はシンジのこと…

ほんとにもう!


「ねえってばぁ、機嫌直してよアスカ」

「イヤ!」





目が覚めた
入院生活で昼夜逆転してしまったシンジはマンガを読んでいる

シンジの体はだんだん元に戻ってきている

脳が神経に
「本当は腕も足もちぎれてなんかいないんですよ」
って伝え、少しずつ機能を回復してきている

初日はまったく動かなかった左腕も、今は少しぎこちないくらいにまで回復した

「まるで感覚がない」って言っていた右足も、まだびっこを引くけど歩き回れるようになた

もう少し時間さえかければシンジの体は元に戻る


シンジは今、自宅からリハビリに通っている
私はシンジに付きっ切り

食事やお風呂やお勉強
リハビリから帰ったらシンジの指や足をゆっくり動かしてあげる
そうしてるうちにシンジは疲れて寝てしまう

そんな毎日

クラスの皆には
「シンジが交通事故にあって」
ってことにしておいた


でも
一回ちょっとヒヤッとした

見舞いに来た相田がシンジにしつこく何回も聞いてくる
「なあ碇、親父から聞いたんだけど、予備のエヴァってのが何回も出撃してるんだろ?で、そいつにも人が乗ってるらしいんだよ!担ぎ出されるパイロットての がいるんだろ?なぁ碇…それってお前なんだろ?教えてくれよ〜!友達だろう〜」

私はわざとらしくため息をついて
「ばっかじゃないの?」

「なぁ〜ラングレーも本当のこと教えてくれよ〜」

「ダミーシステム!私のデータを基にして作った遠隔操作装置!」

「いや、だからさぁ〜」

「ええ加減にせえやケンスケ」

「そうよ!大体碇君がパイロットなら一番に相田に自慢するに決まってるじゃない!?」

「みんな、考えてみろよ、ラングレーが出撃するたびに碇が怪我するか入院するかしてるんだぜ?不自然だろう?」

「その内の一回はお前のせいやろ!」


突然シンジが真顔で相田に向かう
「ケンスケ…皆…これはホンとに秘密だからね…」

息を呑む一同
私は焦ってシンジの口を塞ごうとする
「ばか!」
「いいから…アスカちゃん…もういいんだ…」
だめ!
絶対にだめ!

押し倒してでもシンジを黙らせなきゃ

あれ?
シンジの目が笑ってる?

ははぁ〜ん

私はわざとらしくシンジにしがみつく
「やめて…シンジ…私はどうなってもいいから!」

「もうやめよう…」

ヒカリたちが不安げな表情を見せる

私はシンジの胸で泣きまねをする

重苦しい声でしゃべりだすシンジ
「ケンスケの言う事は当たってる…」

「やっぱり!」
得意げなケンスケ

「…半分だけね」

「「「「え?」」」」
シンジの声にヒカリたちが反応する

「本当はアスカちゃんじゃなくて僕がエヴァのパイロットなんだ…ほら…ケンスケならこれが何かわかるだろ?」
シンジがお守りにしている私のヘッドセットを見せる

うんうん首を振る相田

「アスカちゃんは僕の存在を隠すのがその使命なんだ…」

顔を両手で覆い泣き崩れるふりをする私

「もうやめて…シンジ…」

うぅ〜ん、わたし
ナイス演技!

黙りこくるヒカリたち

「でもこのことは絶対人に言ってはいけないんだ…」

「わかったよ碇…絶対に誰にも言わない…」
相田は少しおびえたように震えた声で答える

天井を見上げるシンジ
「もうおそいんだ…さよなら、ケンスケ」

シンジの声にあわせて私は立ち上がり、機械のような表情で相田を見つめる

冷たい声でシンジがつぶやく
「処分だ…アスカ…」

シンジの声にあわせ
「はい…わかりました…」
私も冷たい声で答える

おびえた相田
「ままままなってくれよ!ホンとに誰にも言わないって!」

言い終わる前に相田の首を絞める
しかも力を入れて
ぎゅぅ〜っと
無表情で
虫でも殺すような目で

「やめて!アスカ!」
「碇先輩!アスカさんを止めてください!」
「なにしとんじゃ!」


ぷっ!
はは!
あははははははははははははは!

もう我慢できない!
シンジと私の笑い声が響く


「ビックリした?」

シンジが嬉しそうに

「ななななんや!冗談かい!」

「もうアスカ!脅かさないでよ!」

「せんぱぁ〜い」

あらら…霧島さん泣きだしそう
やりすぎちゃったかな?

「おい!暴力女!」

「なによ!」

「ケンスケ死んでまうぞ!」

あ!
首絞めたままだった!

あははははははははは!

結局それで、そんな話はどっかに飛んでいってしまった



マンガを読むシンジの胸に擦り寄る

「わぁ!ビックリした…アスカちゃんおきたんだ」
「うん、おはよう」
「おはよう」

シンジがわたしをそっと抱きしめてくれた

「もう左手は大丈夫だよ」

私の頭を左手でなでてくれる

時計を見るとまだ朝の5時前

「…ねえシンジ…」
「ん?なに?」

シンジからマンガを取り上げる

「あ!まだ読んでるのに」

シンジの上に馬乗りになる

「おもいよぉ…アスカちゃん」

寝巻き代わりのシャツを脱ぐ

「アスカちゃん?」

ショーツ一枚の私

「ねぇシンジ」
「なに?」
「シンジも脱いで」
「え?…うん」

シンジの寝巻きを脱がす

ベッドで寄り添う
シンジの体温が心地いい

大人みたいな事はしない
ただ二人で寄り添うだけ

シンジの手のひらが私の胸の間を撫でる
小さく残った胸の傷跡
クリスタルみたいな使徒との戦いでついた

私は
「勲章みたいなもんよ」
ってシンジにいったんだけど

シンジはずっと気にしてくれている

やさしいシンジ

ふふ…
「えっち」
「え?ちがうよ…」
「なにが違うの?」
「もう…アスカちゃんてば…」


私たちはゆっくり大人になる


急がない


急いだっていいことなんかない



シンジから聞いた
シンジはシンジのパパにそそのかされ使徒に立ち向かった
「われわれにはお前の力が必要だ…シンジ」

シンジはとても嬉しそうにそのときのことを話す
シンジのパパも何度もシンジのリハビリを見に来た
シンジはとても嬉しそう
シンジのパパはシンジに昔の日本の事を何度もしゃべってた


シンジの力?…

初号機とシンクロできることと
リリスに守られていること

いったい…

目的がわからない…


気分を変えよう!
来週からシンジは学校に行ける
それだけでもいいじゃない!
大人の目的が何だってかまうもんか!
シンジのことは絶対私が守るんだ!




一度、シンジのリハビリ中にリリスと会った

私が呼び出した

ちなみに待ち合わせ場所は駅じゃなかった


病院内の喫茶店
「ねえ綾波さん」
「…なに」
「入れすぎじゃない?」
コーヒーにスティックシュガーを次々と投入するリリス

「そお…」

10本目くらいでようやくやめる
見てて気持ち悪くなっちゃう

平然とコーヒー入りの砂糖を飲み干す
しかも一気に

やっぱり使徒って違うわね

リリスがコーヒーカップをウエイトレスさんに差し出す
コーヒーはお変わり自由

うーん
これが主婦感覚ってやつ?

お代わりのコーヒーにまた砂糖を流し込むリリス
もう好きにして…

「ねえ綾波さん」
「なに?」
「私に言ったわよね、この前」
「…なに?」

ああめんどくさい!

「次の使徒は昔の私だって」

また砂糖コーヒーを一気飲みするリリス
そしてコーヒーカップをウエイトレスさんに差し出す

「ええ…」
「どういう意味だったの?」

またお代わりのコーヒーに砂糖を叩き込むリリス

「あの子は一番あなた達に近い…他人を傷つけ…拒絶する」
「それで?」

カップを揺らすリリス
「あなたもそう…碇くんを傷つけ拒絶してきた」

「そんなことしてないわよ…だって…大切なシンジだもん」

「もうすぐわかる…あなたは碇くんを傷つけてきた」
砂糖コーヒーを一気飲みするリリス

絶対にそんな事ない…
リリスは何か勘違いをしてるんだ
だってこんなコーヒー飲むくらいだもん


結局リリスはテーブルに備え付けられている砂糖がなくなるまでお代わりを続けた

シンジのリハビリの話をしてあげると、リリスは楽しそうにカップを見つめ
「シンジがんばってる、かあさんあんしん」

本当に母親なんだろうな
一緒に暮らす事が出来なくても

少し胸がきゅっとなった

私がシンジと一緒にいれなくなったら
こんな風にやさしくしゃべれるかな?



半月ぶりの通学
まだ少し足をかばうようだけど
シンジは一人で歩く

リツコは本当にシンジに良くしてくれる

すごくやさしい人なんだな

リツコって

私が寝てる間に昼夜逆転したシンジの相手をしてくれていた
勉強やリハビリの

もちろんリツコにも仕事があるわけだし…
私が面倒見るから大丈夫だって言っても
「へいきよ、お弁当作るのに早起きしなくてすむ分夜起きてるだけよ」

まったく…
これじゃあ頭が上がらないじゃない


眠そうなシンジ
結局昨日も遅くまで起きてるから
ほんとにもう…

皆で通学
皆シンジのことをからかいながら
シンジも楽しそう

「なんや先生、フラフラしおって、もういっぺん轢かれてまうぞ」
そお言いながら鈴原はシンジの背中をドン!てはたく
シンジはつんのめって
焦って私が抱きとめようとしたんだけど

バタン!

私の横に居たヒカリを巻き込んで倒れてしまう

倒れたシンジが顔を上げると正面に
しりもちをついたヒカリ

「あ…や…ごめん、委員長」

ヒカリは自分の格好に気がつき焦ってスカートを直す

「え…うん…大丈夫、碇君」


もう!
「はい!二人とも!」
私は二人にそれぞれ手を差し伸べ立たせる

「オーすまんすまん、かんにんや」

パン!

いい音!

でも、ひっぱたいたのは私じゃなくて

「なにすんのや委員長!」
「碇君まだ病み上がりなんだから気を使いなさいよ!」

前から思ってたんだけど…
絶対ヒカリってシンジのことスキなのよね…
今だってシンジにスカートの中見られたわけだし

「あ…大丈夫だよ委員長」

シンジもいけない
誰にでもそおやって優しくするから
女の子はそういう風に優しくされると…

本当に悪い子


「シンジ」
「なに?」
シンジが振り向くと思いっきり肩を抱き寄せる

「ヒカリのパンツ、何色だった?」

顔をひくつかせ愛想笑いをするシンジ

「なんの…こと?」

このおばか!

思いっきりシンジにフロントフェイスロックを極める!

「いだだだだだだ!アスカちゃん!ごめんなさ…あ!割れちゃう!脳みそ出ちゃう!」

ほんとにもう!

あ、ちなみに後でシンジから聞きだした
パンツの色は淡いブルーだって



シンジは図書室によく行く

山岸さんともそこで知り合った

図書委員だった山岸さん
少しでも漢字を読めるようになりたいシンジにいろんな本を薦めてくれた

それこそ最初なんて、シンジが絵本持ってきたから何かと思っちゃった

シンジから事情を聞いて
それで私が図書室に「馬鹿にするにもほどがあるわ!」って怒鳴り込んで
そしたら山岸さんが
「私たちもこうやって字を覚えたの、碇君もまずそこから始めるべきよ」
って、大真面目に言い返してきて

それが原因で、最後まで私は山岸さんとはギクシャクしてた

でも、シンジのことは親身になってくれてたのはわかる
だからシンジが
「山岸さん転校しちゃうから…もう最後だから…」
って言われたときも

「あんまり遅くなるんじゃないわよ」

ってデートを許してあげた


多分…キス…くらいはしてきたと思う





シンジは山岸さんが転校してからもちゃんと図書室で本を借りて読んでいる
わからない漢字は私に聞きながら


シンジの机の引き出し
一番下の段
二段目に隠してる本が私に見つかって以来
こっそりエッチな本を隠してるさらにその下

一冊の絵本

見返しのページに

親愛なる碇シンジ様へ、あなたの友、山岸マユミより

後ろの見返しには

本が大好きなシンジ君へ
本が大好きな山岸より


本当は“本が”はいらないくせに


シンジの中であなたが思い出になるまで、あの絵本は見つけないであげる

だからってあんまりエッチな本を溜め込まれても困るけど


この浮気もの




夜、めずらしくって言うか、この前約束してたんだけど
リリスが遊びに来た

リリスが携帯電話を買ったらしく、使い方を聞きに

リツコがまたまた「晩御飯食べていきなさい」とか言い出して

それはともかく
あんな複雑な電話使いこなせるのに携帯がよくわからないって…

使徒って不思議


「綾波のケータイすごいなぁ」

勝手にいじくりまわすシンジ
「そう?わからない…」
「ほら!これ太陽光受電タイプだよ」
「そう…」
「電気要らずでずっと使えるんだ」
「…何年も?」
「綾波しらないで買ったの?」
「もらった…」
「もらったんだ!?僕と一緒だ、僕もりっちゃんから貰ったんだ」

多分私たちに付き合ってフラフラ出歩くようになったリリスに、組織が持たせたんだろう

「ねえ綾波さん」
「…なに?」
返事はしてもこっちは向かないリリス
まあ、もうなれたけどね

「本当にこれ、いいわよ」

この間の喫茶店の支払いは、私のカードで済ませた
どうせ私が払うわけじゃないし
そしたらリリスが

「だめ、こどもがそういうことしちゃ」

って私にお札を押し付けて帰った

そんで今日
やっぱりお金を返そうとしたんだけど

「だめ、そんなことしちゃ、シンジのともだちふりょう」

どうすりゃいいの?このお札

「ねえアスカちゃん」
「あぁ、シンジからも綾波さんにいって『お金はもらえない』って」

ん?シンジどうしたの?

「そうじゃなくて…そのお札、なんかちがうよ?」
え?

んん〜

あ!

本当だ!
イラストのおじさんが違う

使徒専用紙幣?

紙幣のなぞを解いたのは
「あら?!懐かしい!」
ってリツコの一言

つまりかなり前の日本のお札だってこと

リツコに事情を話すと

「いいじゃない、貰っておきなさい。レイちゃんには私からちょっと渡しておくから」

それにしても懐かしいわねぇだって
いつのお札?
平安京?平城京?

あ…やばい
リツコににらまれてる
いかに私でもオールレンジ攻撃は…


結局昔のお札はシンジが記念に貰ってしまった

リリスはちょっと複雑な表情で

「じゃあシンジにかあさんからおこずかい」

だって

変わりにリツコがリリスに持たせたのは、タッパーいっぱいのお惣菜
しかもいくつも

「シンジ君レイちゃんの家まで持っていってあげなさい」
って言うから私も一緒についていくことにした


時々ふらつくシンジを見守りながら私とリリスは駅へ向かう
リリスは私が設定してあげた待受け画面を満足げに見入ってる

シンジにリリスがくれた、シンジとシンジのママが笑顔で写っている写真

それをスキャナで取り込んで、リリスの携帯の待受けにしてあげた
満足げに眺めては

「かあさんとシンジ」

ってつぶやくリリス


どうしてもこの間の
私がシンジを傷つけるって言葉の意味を聞きたい

シンジは相変わらずヨタヨタ奮戦中
今なら大丈夫

「ねえ、綾波さん」
「…なに?」
「そりゃぁ私だって、いままで少しくらいシンジに意地悪したり怪我させたりしたけど…」

リリスはとても静かな声で話をさえぎった
「…ちがう」

「え?あぁ…そうよね、やっぱり綾波さんの勘違いでしょ?」

もう一度
「…ちがう」

私もちょっとムキになっちゃう
「正直に言うわ、最近自信があるの、シンジは絶対に私の元を離れない。だから私も少しくらいシンジがほかの女の事を…」

「…ちがう…あなたは碇君を傷つけ縛りつけた…」

「まぁ少しはそういうことも…」

「…ちがう…あなたは碇君を自分の一部のように見ているだけ」

「そりゃそうよ、だって大好きなシンジだもん」

「…ちがう…でも…すぐにわかる」



駅に着くとリリスはシンジからタッパーがぎっしり入った紙袋を受け取り、私たちが見えなくなるまで逆に見送ってくれた

最後に私にはっきりと

「それでもあなたたちは大丈夫」

って

とても悲しそうな顔で


言葉の意味を勘違いし、なぜかてれてるシンジを見るとちょっとホッとした




使徒来襲
衛星軌道上に陣取りこちらを見下ろしてきた

ミサトの立てた作戦は
自衛隊から接収しっぱなしの陽電子砲で地上から狙撃

電力はやっぱり日本中から集めるらしい




シンジはついにお役御免になった

今回はミサトたちと一緒におとなしく見学

ホッとした

これでシンジが傷つかなくてすむ



出撃前
シンジにおまじないをしてもらう
きゅってしてもらって
ちゅってしてもらう

最後に耳元で
「アスカちゃん、がんばってね」

ええ、がんばる
シンジがいてくれる限り私は絶対に負けない

ゆっくりとシンジがわたしを解き放つ
シンジの両手を握り締め
もう一度キスした

「じゃあいってくる!」

私はエヴァに向かって駆け出す
振り返れば笑顔のシンジ

もう一度誓うよ
シンジがいれば私は絶対に負けない




宇宙からでは丸見えなので、狙撃開始直前まで地下に潜む

充電は順調に進む

ミサトからの通信が入る
「いいアスカ、一撃でしとめるのよ」

「わかってる」
それにしてもあんな宇宙からリリスに接触なんて出来るのかしら?

オペレーターの声が響く
「充電完了!狙撃位置に移動します!」

狙撃に影響が出ないよう、ゆっくりとせり出す私のエヴァ

定位置に着く寸前
ミサトからの通信
「アスカ」
「なに?」
「私からのサービス!」
はい?
なんだろう?

「アスカちゃん」

シンジの声

「シンジ?そこにいるの?」
「うん、ミサトさんが入れてくれたんだ」
「そう、みんなの邪魔しちゃだめよ」
「わかってるよ、もう………」

ふふふ

「アスカちゃん」
「なに?」
「がんばってね」

うん


狙撃位置に着くとゆっくり狙いを定める
エヴァの目ではるか宇宙の向こうにいる使途に狙いを定める

見えた!

引金を引こう

その瞬間

使途が

わたしを見つめてきた




ミサトやオペレーターたちの声が聞こえる
「すぐに作戦を中止して!」
「エヴァを回収!急いでください!」
「だめです!反応しません!」
「心理グラフが!このままでは精神汚染が!」

シンジの声も聞こえる
「アスカちゃん!アスカちゃん!アスカちゃん!」






「アスカちゃん、ごめんなさい」
小さなころのシンジが現れた
「シンジはわたしのゆうとうりにしなさいっていつもいってるでしょう!」
小さなころの私と一緒に
「ごめんなさい…」
「だめ!」
何度も小さなシンジを叩く小さな私

やめて!

声に出して止めたいのに体が動かない
声が出ない

瞬きも出来ない

「もうアスカちゃんのだめっていったことはしないから」
何度も頭を叩かれ
泣きながら頭を抑えるシンジ
「あたりまえでしょう!かえるわよ!」
勝ち誇ったような私

「あの日、方耳が聞こえなくなったんだ…」

突然もう一人、小さなシンジが現れ私に語りかけてきた

「家に帰っておばさんビックリしたんだよ?いくら呼んでも僕が気づかないから」


やっと声が出る
「しらない!何の話よ!」


にやける小さなシンジ
「しらない?そう、アスカちゃんは知らないよ。だっておばさんに『ごめんなさいねシンジ…アスカの事は我慢してね…』って泣きながら言われたんだから」

「何の話よ!」

「おばさんがすぐに僕の耳の気づいてお医者さんに連れて行ってくれたからまた耳が聞こえるようになったんだよ」

「でたらめよ!わかったわ!あんたシンジじゃない!使徒ね!そうでしょう!」

小さなシンジが私の耳元でささやく
「ちがうよ…僕はシンジ…アスカちゃんのおもちゃ」

「だまれ!」
「またぶつの?また僕の鼓膜破るの?…あの日以来、僕はアスカちゃんに頭はたかれるのが怖くてしょうがないんだ…」


「だまれ!」


いやだよ…黙らない

また別のシンジが現れる

「ぼくが泳げないってわかるとアスカちゃん…僕の事無理やりプールに沈めるんだ」

まだ小さい私とシンジが現れる

「いいからわたしのいうとうりにするの!」
小さなシンジを無理やり頭を押さえつけてプールに静める
泣きながらそれを繰り返させられるシンジ

「もう本当に日本に帰りたかったんだ」
シンジがまた耳元でつぶやく

「見かねたプールのお姉さんにバタ足を教えてもらったんだよ…アスカちゃんには内緒でって言われて『アスカちゃんのことは我慢してね』って言われて」


「うるさい!ちがう!あんたは使徒よ!チクショウ!」


シンジは何人も何人も現れては私に過去を見せ付ける

本当は少し思い出してきた

全部

私が

私がシンジにやった事だ…



「やっと認めてくれたね、アスカちゃん」

「うるさい…あんたなんかシンジじゃない…」

まるで心が擦り切れたみたいになってしまった


「じゃあ私が見せてあげるわよ!」

わたしの目の前に立つのは


わたし



家に帰るとまだ、シンジもリツコも帰ってきていなかった
冷たい目で部屋を見渡すわたし

シンジの部屋に入ると引き出しをあさる

「…やっぱり」

冷たく言い放つわたし…


しばらくするとシンジが帰ってきた

「ただいまー」

どん!

シンジが居間に入るなり壁に押し付ける

「なに?…どおしたの?」

おびえた表情のシンジ

顎でテーブルをさす私
テーブルの上にはエッチな本

「あ…あれは…」

パン!

口答えするシンジの頬を思いっきり叩く

「処分して」
冷たく言い放つわたし

「あれはトウジので…その…借りてて」

パン!パン!パン!

何度も頬を叩かれしゃがみこむシンジ

「処分して」
それを見下ろし冷たく言い放つわたし



いや!こんなもの見せないで!
涙が溢れてくる
でも瞳を閉じる事が出来ない

一人のシンジが私の耳元でささやく
「もうはたかないって約束したのに…アスカちゃんのうそつき」


イヤァァァァァァァァァ!



シンジをエッチな本と一緒にベランダに放り出しライターを投げてわたす

「燃やすのよ、いいわね」

必死に涙をこらえうなずくシンジ

千切っては燃やし
千切っては燃やし

バケツの中で本が燃えていく

そのシンジの姿を冷たい目で見下ろすわたし

本の処分が終わるとシンジの襟首を持ってリビングに引きずり込む

「もうないわね?」

キスでもするような距離でシンジをにらみつける

黙ってうつむいたままのシンジ

ボン!

わたしが壁を蹴る

シンジは黙ってうなずく


「もういや…」
必死に私は目を瞑ろうとした
もう見たくない
私はシンジをいじめてばっかりじゃない…
これは使徒がわたしを苦しめているんだ…
現実なんかじゃ…


「だめだよアスカちゃん」
一人のシンジに私は後ろから抱きしめられ、目をやさしく見開かせられる

「全部本当のことなんだから」

目の前にはわたしにおびえるシンジの姿が

「ちゃんと見なきゃ…ね、アスカちゃん」



私はおびえるシンジの腕を取る
シンジの手はすすで汚れてしまっている

「シンジ、あんたあんなのが見たいんなら直接わたしに言いなさい」

シンジの手を自分の胸に押し付ける

「いい?わかったわね?」

シンジは黙ってうなずく

「わかったんならいいわ…」

シンジと自分を交互に見るわたし

「汚れちゃったわね…お風呂、はいろ」


うつむくシンジと湯船に浸かるわたし
とても上機嫌だ

シンジを綺麗に洗い、先に浴室から出す

そして私は湯船のお湯を抜いた

「あんなババアにシンジの浸かったお湯をさわらせるもんか」

そうつぶやきながら




「ひどいわねぇアスカ、私のことババア扱い?」
リツコまで現れる

「うるさい!あんたたち全部使徒だ!わかってるんだ!」

もう泣き声になってしまってる


「あら?でも全部本当の事じゃない?」

「うるさい!使徒め!」

「ふふふ…ねえ…アスカ?わたしあなたが入院してる間、シンジ君と一緒お風呂に入ったり添い寝してあげたりしてたのよ…しらなかったでしょう?」

「うるさい!だまれ!クソババア!」

「ほら…本音が出た…ねえアスカ、それも一回や二回じゃないのよ?…それにね…シンジ君…わたしのおっぱい…とても気に入ってくれたみたい」

「殺してやる!この変態年増!」



「ねえアスカ、じゃあ私は?」
いつの間にかリツコの横にヒカリが

「アスカが入院してるあいだ、結構碇君にお弁当作ってあげたの…おいしいって、とっても喜んでくれたの…嬉しかった、大好きな碇君と恋人になったみたい で」

「だまれ!この泥棒猫!恥知らず!それでも友達なの!」


「アスカさん、私も」
霧島さんまで

「アスカさんが入院中…私も先輩と何度かデートしたんです…先輩優しいんですよ…」

「だまれ!このませガキ!ぶち殺してやる!」



「だいぶ素直になったじゃないか、アスカちゃん」

私を抱きしめているシンジが耳元で優しくささやく

「黙れ!あんたなんかシンジじゃない!使徒だ!わかってるんだから!」
いつの間にか私は、涙声から雄たけびのような叫び声に変わっていた


「そうだよ…でもアスカちゃんが今、見たことや聞いたことはぜーんぶほんと」

いつの間にかたくさんのシンジに囲まれている

シンジたちの大合唱
「「「「「「「「「「じゃあ僕が一番嫌なアスカちゃんを見せてあげる」」」」」」」」」」



ベッドの上に二人
シンジを抱きしめる私
シンジも私もとてもしあわせそう

「ねえシンジ…」
「ん?」

シンジの頭をなでてあげる

「シンジもオナニーとかするの?」
「え!?」
ビックリするシンジ

「ねえ…するの?」

こまったようにうなずくシンジ

「なんで?」
するの?そういうつもりで聞いたんだけど

シンジは
「本とか…グラビアとか…」

勘違いして

だから私はちょっと意地悪をして

「わたしは?」
「え?!」
「ねぇ、わたしでもするの?」

おずおずとうなずくシンジ

私は調子に乗ってしまう
「みせて」
「え!嫌だよ!」
「ねえ…見せてよ」
「いやだ」

私は起き上がり寝巻き代わりのキャミを脱ぐ

「ねえ…みせて」
「いやだ!」
シンジを無理やり裸にする

「ほら…どこさわってもいいよ…だから見せて」
「いやだよ…やめてよ」

シンジは本気で嫌がっている

私に背を向けたシンジの股間に手を伸ばす

「やめてよ!やめてよ!」

いろんな武道を叩き込まれた私にかかれば、男の子だって身動きなんて取れなくなる

シンジのかわいいおちんちんを優しく愛撫する

「だめだって…やめてよ…」

だんだんシンジの息使いが変わっていく

「ねえシンジ気持ち良い?」

いじわるにささやく私

「やめて…やめてよ」

シンジはそう何回もつぶやきながら、私の愛撫で果てた

シンジは本当に嫌がっていたのはわかってる
だから何度も「ごめんね」ってあやまった
シンジが汚してしまったシーツも、わたしがふき取ってあげた
シンジの股間もわたしがぬぐってあげた




「やさしくしたじゃない!私はやさしくしたじゃない!」
なんでいまさらこんなもの見せるのよ!
ちょっと行き過ぎたいたずらじゃない!

私を取り囲んだシンジ達が冷たい目で私を見つめている

私を抱きしめているシンジがささやく
「あの時僕がなんて思ったか教えてあげるよ…アスカちゃん」



シンジの股間をぬぐう私
それを見下ろす冷たい目のシンジ

ちょっと微笑みながらシンジの股間をぬぐう私
シンジの唇が静かにうごく

それにあわせて私を抱きしめているシンジがささやく

「オ・マ・エ・ナ・ン・カ・キ・エ・テ・シ・マ・エ」





私の中の最後の一本がきれそうになる

「ねえアスカちゃん…僕はアスカちゃんがいないほうがしあわせなんだ…わかったでしょう?」

私の中の最後の一本がほどけてゆく

「だから…アスカちゃん…ぼくのために…」

私の中の最後の一本が…




ものすごい衝撃に襲われ、われに返る
周りを見渡す
要塞都市だ
現実に戻ったんだ…

倒れたエヴァを誰かが起してくれる
振り返れば

「シンジ…」

初号機が私を起してくれていた
シンジが私を突き飛ばし使徒の精神汚染から救ってくれた

でも…今わたしの心はシンジに対する恐怖とおびえでいっぱいだ

だから

「さわるなぁ!」

初号機を…シンジを突き飛ばす

しりもちをつく初号機
その腕には奇怪な槍が握られていた

「よこせ!」
わたしは感情のままに初号機から槍を奪い取る

ミサトの声が響く
「やめなさいアスカ!その槍は!」

全ての怒りを込め宇宙に漂う使徒めがけ、槍を放つ


そして使徒は槍に貫かれ果てた

槍はそのまま宇宙を突き進み、月面に突き刺さった



私を二度目の絶望が襲う

あの有様を

わたしの中のわたしの出来事全てが

エヴァを通して

指揮所のスクリーンに映し出されていた



皆見ていた…

ミサトも…

リツコも…

オペレーター達も…


そして


シンジも





エヴァは静かに格納庫に移動する

いろんな人たちが私に慰めの言葉をかけてくる
「きにしなくていい」
「皆なんとも思ってない」
「君はいつもがんばってくれる」
「だいじょうぶなんて事ないさ」

でも

そのなぐさめる声の中に

シンジの言葉はなかった




私はケージに格納されるとメディカルチェックにきたスタッフの間をいすり抜け、パイロット控え室に引きこもった


もう誰にも会いたくない

ドアをたたく音が聞こえる

リツコの声が

やさしく私を慰めてくれる声が

でも…いや…

ミサトの声も聞こえる

私を勇気づけてくれる声が

でも…だめ…


私はどうすればいいの!?
シンジにどんな顔してあえばいいの?

消えてしまいたい!

私はシンジを傷つけて生きてきたんだ

シンジが全部私のものなんて…思い上がりだったんだ
わたしがいればシンジがしあわせだなんて…ただの勘違いだったんだ

いやだ!もう消えてしまいたい!
結局、夢は全部私の思い描いた空想だったんだ
シンジは私との未来なんてきっと望んでないんだ



もういやだ…



シンジと会いたくない
絶対にいやだ…
逢ってしまうとシンジを傷つけてしまう

もういやだ…死んでしまいたい
シンジに嫌われてた人生なんて終わりにしたい


突然光がさした

ドアが開き誰かが入ってきた

思いっきり手元にあったカップを投げつける
中身入りのカップが人影に当たる
「誰も入ってこないで!」

顔も上げない
誰とも会いたくない
もう消えてしまいたい
それが私の願い

でも

本当は

この声が聞きたかった


「アスカちゃん…」



お願い…もういいの…出て行って…
私に近づかないで…だって私…シンジをきずつけるだけだもの
もう…シンジを傷つけたくない

泣くのは私一人でいい

「アスカちゃん」

私の求める声が聞こえる
使徒とはちがう優しい声が


でも


「いや…出て行って」

シンジは私の言葉にかまわず、私の前に立った
すぐそばにシンジの気配を感じる

「僕はなんとも思ってない…」


うそだ…
そんなはず無い


「アスカちゃんが一生懸命がんばってるの、いちばん近くで見てきたんだ」
シンジが隣に座る
私は小さく肩をちじこめる
まっすぐ下を向く
「耳のことだって、アスカちゃんだけが悪いんじゃない」

ちがう…わたしが悪い…私が悪い…

シンジが私を抱きしめる

私は体を硬くして抵抗する

もしここでシンジに甘えてしまったらまたシンジを傷つけるかもしれない

「この間の事も、僕もいけないんだ。アスカちゃん女の子なんだから、もっとアスカちゃんのこと考えて…あんな本、家に持って帰らなきゃ良かったんだ」

優しい声を聞くたび涙があふれてくる
どんなに我慢しても嗚咽がもれてしまう
だめ…
このままじゃまたシンジを傷つけてしまう

まっすぐ前を見る
壁をにらみつける
絶対にシンジを見ちゃだめ
どんなに涙があふれても
どんなに泣き声を我慢するのが苦しくても
絶対にだめ…
わたしが我慢しなきゃシンジがまた傷つく

強く抱き寄せられる
それでも前しか見ない
壁しか見ない
泣き顔になっても
絶対に声を出さない

シンジが私のLCLに濡れたの髪の中に顔をうずめる
「僕だって自分の弱さを優しさだって履き違えてた。だから、どんなに孤独がアスカちゃんを縛り付けても、どんなにアスカちゃんの心が傷だらけになっても… 僕はずっとアスカちゃんに一緒にいてほしい」

ずっと…ずっと…

ずっと一緒にいてほしい

アスカちゃんとずっと一緒がいい

優しい声が、私の心の中のきれそうだった最後の一本を強く結んでくれた

何度も繰り返すシンジ

声を上げて泣いた
天井を見上げ泣いた
大きな声で泣いた
シンジの胸で泣いた

何度も何度も泣いた
その度にシンジがつぶやく

「ずっと一緒にいよう」

使徒のつぶやきとは違う
とても暖かいシンジの言葉

悲しみは涙と一緒に流れて行った

強がる私は泣き声と一緒に飛んで行った

後にシンジを思う私だけが残った

私の心は傷だらけだ
私が孤独だったこともわかってる

でもシンジはずっと一緒だった
これからもずっと一緒だ
生まれ変わっても一緒だ
シンジとなら解り合える
心も何もかも
お互いに足りない部分を補なって
それでも埋まらないところは
それでいい


全てが繋がった

やっぱり夢は夢じゃなかった
だから私は
私は!

そう思うと瞳からしあわせがあふれてきた


瞳いっぱいのしあわせで世界がゆれる
シンジの手を引き立ち上がり
思いっきりシンジの胸に飛び込んだ
シンジがやさしく受け入れてくれた
瞳からしあわせが止まらない
とても気持ちいい


私は真っ赤に目を腫らし
プラグスーツを脱ぎ捨て
元気に着替えるとシンジの手を引き部屋を出る

心配そうな顔で何か言葉をかてくるミサト

ひどく憔悴した様子でうつむき目をそらすリツコ

だから私は思いっきり息を吸い込む
皆が元気になるように

「どいたどいた!アスカ様とシンジのお通りよ!」

泣きはらした声で
周りを蹴散らし
シンジの手を引き家路に着く

皆を振り返るとおもいっきり
「あっかんべーだ」
ってしてやった

みんなあぜんとして
ふふふ!




家に帰るとリツコからのメールを受信した
「安心しました、だから今日は帰りません」
短いメール

いつもグチャグチャながったらしいメール送るくせに

ホンとにもう



不思議な気分だ
ご飯も食べずに
お風呂にも入らず

ただ…シンジの胸の中でシンジの話に耳を傾ける

「本当はアスカちゃんのにおいじゃないんだ…本当は…」
「おかあさん?」
シンジはうなずく

「アスカちゃんのそばにいればかあさんのにおいがして…だからいつもそばにいんだ」
「…シンジのママの匂い?」
思わず自分の髪の毛の匂いをかいじゃう

「日本に来てわかった…母さんの…アスカちゃんの匂いって」
「エヴァのにおい?」
すこしシンジは照れくさそう

「いいよ…わたしシンジのママにはなれないけど」
シンジの胸にかをうづめる
「シンジの一番になって見せる」

シンジの鼓動が聞こえる

「ねえシンジ」

「なに?」
「もう『アスカちゃん』は嫌…」
「どうして?」
「だって『アスカちゃん』はシンジをたくさん傷つけた」
「気にしないよ」

「だめ…」

シンジをきつく抱きしめる


呼んで
私のこと
夢の中みたいに
ねぇ…


「じゃあ…今日から」
「うん」


「アスカって呼ぶ」


夢がかなった
夢の通りになった

あぁ…神様…


シンジにたくさんお話をしてもらった
私は私の知らないシンジの話をいつまでも聞き入っていた

そして
私は

「ねえシンジ」
「なに?」
「わたしのお願いきいて」
「いいよ」




「シンジとひとつになりたい」






放課後
ヒカリと教室の隅でシンジを待っている
シンジは図書室
私とヒカリは雑誌を読んでいた

「ねえヒカリ…」
「なに?アスカ」

クラスの皆は最近、不思議そうに私とシンジを見るようになった
「もう中二なんだから『チャン』付けはやめてもらったの!」
そういってもなんだか…

しってる…
みんな私たちがうらやましいんだ
少しずつしあわせに近づく私たちが

だから特別に親友のヒカリには教えてあげよう

「わたしシンジとしたんだ」

目を見開いて私を見つめるヒカリ

「ほんと?」
ヒカリは目をぱちぱちさせる

「うん…ほんと」
ちょっと予想外な反応かな?
それとも、お姫様がそんな俗物みたいな事してショックなのかな?

「…で…どうだったの?」

ははは…興味津々だ


したっていってもちょっとだけで
シンジを受け入れたわたしがあんまり痛がるから
シンジは私に入ったまま
動かしもせず私を抱きしめてくれただけ

だから「した」っていっても

まあ…続きはもう少し先の話かな

でもヒカリは満足したみたい
ははは

そこにシンジが戻ってきた
シンジの顔を見るなりヒカリは真っ赤になっちゃって
あはははは!

ちょっと不思議そうな顔したシンジが私に

「どうしたの?」

ってきくから

「なんでもない!」


ふーんって顔のシンジ
そしてシンジは私に手を差し伸べ
「かえろ、アスカ」

「うん!」


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