My name is woman

08話
CRAZY! I love you 3


written by フォークリフト

「アスカってあんまり感情とか表情に出さないよね」
「そーお」
「ほら」
「まーね」

ヒカリもつまらないこと聞いてないで…
鈴原とはどうなったの?


感情か…
何でだろう?
やっぱり一度目の私のせい?
ははは…きちがいの妄想ね

わたしはいいんだ…少しくらい無愛想で人付き合いが悪くても

わたしの喜怒哀楽をシンジは分かるわけだし…
シンジに通じれば…もうそれで十分よ


シンジ…
わたしがママにつれられて日本に来たのはまだ赤ん坊のとき

ママはゲヒルンだかシゲルンだかの職員でそれで日本へ
シンジのおばさまはゼーレから出向でそのデビルンだかに
私のママは私を生んですぐに離婚していて
だからシングルマザー同士、わたしのママとシンジのおばさまは意気投合して仲良くなったらしい

小さい頃のわたしはビビルンだかの保育所でシンジを追いかけ回して泣かしてたらしい

今と一緒ね

小さい頃からわたしは、どうしてもシンジを側においていおきたくて
ずっとつれまわしていた
ルンルンだかが発展的解散をし、ネルフに姿を変えおばさまはゼーレへと戻ってもさほどわたしたちの関係に変化はなかった
シンジの家はゼーレが借り上げたマンションの一室で
わたしの家から歩いて7分

だから学校も一緒だった

今思えば、わたしはシンジがいなかったらいじめられっこ一直線だった気がする
どこがそうなのか分からない位しか入っていない日本人の血…
金髪で青い目
外人なのに“惣流”
完璧ないじめられ要素満載!

いつも家来みたいにシンジを連れてたから?
それともシンジを指差して「女の子分」って笑ったやつの指をへし折ったから?

どっちにしろわたしの小学校生活はいじめられることもなく、丸々6年間シンジと同じクラスで同じ班だった

まぁ多分その頃から私はネルフに目をつけられていたから…
あいつらが仕組んだのかもね…
私が年不相応な愛情で満たされるように

そして中学に上がり、私はくだらないガラクタの適合者に選ばれた
そこから先は…
まあいいわ

とにかく私は他人なんかどうでもよかった
シンジさえ振り向いてくれればどうでもよかった
シンジさえ分かってくれればどうでもよかった

シンジは全部わたしのもの…私以外の誰かと何をしていても…
私は全部あいつのもの…
でも、あのガラクタがわたしからシンジを吸い上げる

私が嫌いな物はネルフにプラグスーツそれにヘッドセット
イヤでイヤでしょうがない
シンジにわたしのプラグスーツとヘッドセットをしている姿だけは見られたくない




屋上から校庭を見下ろしていた
校庭には走らされすぎてへたり込んでいるシンジ
部活なんてそんなに必死にならなくても…
別にプロになれるわけでもないでしょうに…

視線を移すと木陰にヒカリと鈴原
ヒカリ…上手くやんなさいよ…

ヒカリと鈴原の顔が重なったから私はシンジに視線を戻した

はーはー言いながら立ち上がり、また走り出す
あいつ…いつかわたしより強くなるのかしら?
別にいいのに…
私が一生面倒見てやるわよ…

「やあ」
声がしたけど振り向かない
「相変わらず冷たいなぁ、きみは」
「ゼーレの渚さんは私なんぞに何の御用で?」
「君に興味があってね」
「私はないわ」
「少し話でもしないかい?」
「まにあってます」
「シンジ君のことでも?」
「ええ…あいつの話、他人から聞かされるのが一番嫌いなの」
「取り付く島もないね」
「そうね」
「じゃあ僕はこれで」
「ばいばぁ〜い」

ん?着信
あぁ…ミサトか…
「もしもし」
“ちょっと!どういうつもり!今日は定期のシンクロテストよ!”
「ファーストがいるでしょう?」
“アスカだけならまだしも洞木さんも来てないのよ!”
「あら?ほんと?」
“わざとらしい”
「そっちこそ…どうせどっかから見てんでしょう」
“とにかく!今すぐ来なさい!”
「いたたたた…ミサト、来ちゃったみたい…アレ…」
“わざとらしい…いい!絶対来るのよ!”
「むり…立ってられないわ…」
一方的に電話を切ってやった

校庭を見るとシンジは後片付けをしている
部活は終わったみたい

じゃあわたしも帰ろうかな…

テスト?
いくわけないでしょう?
わざわざこんな時間まで、なんで学校にいたと思ってるの?

下校するわたしとシンジの横をこれ見よがしに黒い車がついて回る
わたしを無理やり連れ込まないのはシンジがいるから
こいつはこれでもこっちの世界では有名人

なんたって“碇の息子”ですもの

ヘタにシンジの周りで騒ぎおこしたらゼーレになに言われるかわかったもんじゃない
そんなところ

それに今日はヒカリがテストですごい数字叩き出すから
まあ…私は行かなくてもいいわ
ヒカリが携帯を手に焦ってかけていくのも見えたし

それに私とミサトの仲の悪さも今に始まった事じゃないわ

別にどうでもいいの
エヴァンゲリオンなんか

もし、私が二度目のわたしなら
一度目の時に散々乗ったんでしょう
だからもういいの

私達はそのままシンジの家に向った
シンクロテストってことはママは仕事なわけで
家には誰にもいない
それこそ帰った途端、ネルフの連中にさらわれちゃうわ

まあ…ママには肩身の狭い思いさせちゃうけど
私がエヴァに乗るのもシンクロテスト受けるのも、だいっきらいなの知ってるから
ママはミサトにグチャグチャ言われてるんだろうけど、私がテストをサボった事を責めたことがない

それにママは知っている
どうやってエヴァに乗る人間を選んだか…
親にだって言いたくない…
それをはなから知っている…
だから私がシンジと何してても何も言わない

ありがとう…ママ

玄関に上がるといい匂いがした
「あら?いらっしゃい」
シンジがビックリした顔で
「あれ!?かあさん今日帰ってこないんじゃなかったの?」
「晩御飯だけ作りに戻ったの」
「なんだ」
「なぁに?かあさんの居ないとこでアスカちゃんになんかしようとしてたの?」
「ちがうよ」
「ほんとかしら?アスカちゃん」
「なに?おばさま」
「もしシンジに襲われたらちんちんちょん切っていいわよ」
「なに言ってんだよ!かあさん!」

あんまりおもしろいからシンジのお尻を蹴っ飛ばしてやった

おばさまは笑って
シンジは困ったような顔して

ほんとにめんどくさい親子ね!



勝手にシンジのクローゼットから着れそうなものを引っ張り出し、袖を通し食卓につく

簡単な夕食を取りながら親子の会話に入り込む
シンジは食卓に肉がないのがご不満な様子で、コロッケを箸でつんつん
おばさまは「レイちゃんを見習いなさい」っていいながら野菜炒めをシンジの前に突き出す
シンジは野菜炒めを押し返して「綾波はお肉食べないだけじゃないか」って言い返して
私が「いらないんならちょうだい」って言いながらシンジのお皿からコロッケを一個横取

ママと二人の食事はちょっと寂しい
ママの事は好きだけど

この家の食事は騒がしい
私がいなくてもこの調子らしい

だからシンジはわたしの家で食事をすると不思議そうにしている
一日の出来事を話すわたしとママ
たまにママがシンジに話を振るくらい
シンジ曰く「外国でごはん食べてるみたい」

安心しなさい
ママ、あんたの事お気に入りだから
この前もチラッと言ってたわ
「二人の子はおばあちゃん子になる」って
まぁそうね
おじいちゃんいないもんね

はは
ママの中じゃ私はあんたと結婚する事になってるのよ

外れちゃいないわね


夕食が終わるとおばさまはすぐにかたずけを始めた
シンジは満腹と部活の疲れで寝息をたてている
そりゃそうよ
結局私が食べたコロッケはシンジから横取りした一つだけ
後は全部どっか行ったわ


「洗物くらい私がやっておきます」
「あら?そんなにおばさんの事追い出したい?」
「ええ!」
「ふふ…ねえアスカちゃん」
「なんですか?」
「今日は行かなくてよかったの?」

碇ユイ…ゼーレの所長…きっとネルフ内部の情報も易々と手に入るんだろう

「そういうこと聞かれるの…嫌いです」
「あら…ごめんね」
「イヤなんです…ネルフもエヴァも」
「そう…」
「…」
「ねえ」
「もう答えませんよ?」
「ちがうわ、シンジ」
「え?」
「よろしくね」
「え?」
「シンジ…アスカちゃんのこといっつも気にして…もう本当にあなたの事が好きなのね」
「…」
「よし!じゃあおばさんもう行くわ」
「いってらっしゃい」
「あ!そうそう!シンジ、適当な時間に起こしてあげて」
「はい」
「じゃあおねがい、いってきます」

碇ユイ…シンジの母親
ゼーレの女幹部

ふふふ…
ミサトに話しても信じないわね
碇家の食卓は一般家庭並みで、家のどこを見回しても高価なものは見当たりません
碇ユイは毎晩戦略的に家計簿をつけており、その内情は赤いインクの消費を抑える事に必死のようです!
以上!潜入捜査員 惣流アスカ

はははは!
ネルフの諜報部が犠牲者を出してまで探りを入れる碇家の内情
だから私は絶対に教えてやらない!
何度もミサトに聞かれたけどね!
その度に言ってやったわ!

「家の中はまるで宮殿!一歩奥にはいれば秘密の扉!その奥には謎の指令室!」

ウソじゃないじゃない?

家の中は碇ユイの収める王国の宮殿
奥の書斎は色々あるから入っちゃダメ
書斎の奥にはノートパソコン

なに?
ちょっと大げさに言っただけよ?



ママにメールだけ送って、私はシンジの家で朝を迎えた
勝手に冷蔵庫を開け朝食とシンジのお弁当を作る

夕べはシンジが疲れてて
おこしたと思ったらお風呂に入って
すぐに寝てしまって
私はシンジの寝顔を見ながら眠りに落ちた
わたし達、何もしない夜のほうが多いのよ?
おどろいた?

寝巻き?勝手にシンジのシャツ着たわ
制服?なぜかこの家にはわたしの制服の替えがあるの、不思議でしょう?
下着?替えの下着をシンジのクローゼットの奥にねじ込んであるわ
しかもいつの間にか綺麗にたたまれてるのよ
不思議ね

さて…シンジ起さなきゃ…ほんとめんどくさい
それにお弁当…おかずはから揚げでいいのかしら?
ああ…もう…なんてめんどくさい

「ほら!おきろ!」

目をこすりのそのそ起き上がるシンジ

私を見るとにやけ顔

ほんとにおめでたいやつ



…わたしもね







悪魔のような女…葛城ミサト…
やつがその本性をついに現した

「起動試験の警備!?わたしが!?」
「そう、ゼーレから送られてきたダミーシステムと、ついでに送られえてきたエヴァの」
「何でわたしなわけ!ファーストでいいじゃない!」
「アスカ…あなたのここ三ヶ月の呼応率知ってる?」
「二回に一回位じゃないの?」
「30%…ダントツのサボり魔」
「ノルマはこなしてるわ!」
「しめしがつかないのよ、こうもサボられ続けると」
「断る!」
「命令よ、いいわね…散々男のところにしけ込んだ報いよ」
「はんっ!ろくに家にも帰らないで仕事ばっかして!あんたには同情しちゃうわ!」

パン!



なんなのよ…まったく
大人が子供叩くなんて…
葛城ミサト…あぁ…まあ何年か前は加持ミサトだけど…誰もそう呼ばないし…
とにかくなんてやつ!



めでたく私はゼーレのエヴァ共々、ダミーシステムを搭載したエヴァの起動試験のお守り…

とっとと終わってちょうだい
まぁ、起動に失敗してエヴァが暴走しても渚様がいらっしゃるから…その時はお任せするわ

かよわい私は遠くから眺めてましょう








最悪…
起動失敗ならまだしも…

「侵食!広がります!」

エヴァが使徒!?

「現時刻を持って実験機を破棄!使徒として殲滅する!」

冗談でしょう!?

黒いエヴァンゲリオンだった使徒は大きく飛び跳ねるとわたしに襲い掛かってきた
わたしはすんでのところで転がりよける
何なの一体!
何で私なわけ!?

わたしは必死に逃げ回りながら使徒の本体を探す

すぐに見つかった

プラグ周辺だ

でもちょっと遅かった
わたしは思いっきり使徒に操られたエヴァンゲリオンに首を絞められ息も絶え絶え

意識も朦朧

なんだろう?
紫色?

衝撃が襲う
呼吸が戻った

使徒を見ると腕がへし折られプラプラ
ゼーレのエヴァに掴みかかられている

まったく…
もうちょっと早くきてよ…

使徒の腕はすぐに回復しゼーレのエヴァとつかみ合いながらお互いを殴り合っていた

「アスカ!装備を投下したわ!エヴァは破棄!使徒として殲滅して!」
ミサトの声から一瞬置いて装備が落下してきた

火機はダメ
渚の乗ったエヴァと絡まるように殴りあい動き回る使徒
使徒だけを打ち抜くのは至難の業

「じゃあこれか…」

私はカタナの化け物を拾い上げる

「いい?アスカ、ゼーレのエヴァが少々巻き込まれても責任は私が取る!確実に仕留めて!」

「了解!」

“責任を取る”か…
じゃあ思い切ってやるか

使徒とゼーレのエヴァは倒れこみ、マウントポジションを奪い合うように殴りあう
上になった使徒が何度も下になったゼーレのエヴァにこぶしを振り下ろす
ゼーレのエヴァは使徒を抱き寄せるように抱えると顔面を殴りつける

本当に野蛮な男ね…渚カヲル…まあいいわ

私は使徒の後ろに立つとプラグ目指してカタナを突き立てた
勢いあまって少しゼーレのエヴァにも刺さる

ちゃんと責任とってね?ミサト

使徒はすぐには息絶えずにもがく

あ…

使徒はまるで道ずれにするように、自分につきたてられたカタナを片手で握ると、そのまゼーレのエヴァにしがみついた

ゼーレのエヴァは使徒のヤケクソな一撃を受け、使徒とエヴァの串団子のように貫かれてしまった

あーあ…
あそこはまずいわよ…
カタナが貫いたのはエントリープラグのすぐそばで…
あれじゃあプラグも損傷したわね
直撃じゃないけど…
大怪我はしないだろうけど…
まあ…大丈夫だろうけど

使徒は息絶え、ゼーレのエヴァは活動を停止した




近隣から駆けつけたネルフのスタッフがゼーレのエヴァに取り付き
プラグを排出させる

やっぱりプラグには少し裂け目が入っていて
渚は自力で出てくる事が出来ないようで
ネルフのスタッフがドアをこじ開けプラグの中に入り込む








「ふぅん…そうなんだ…」
なんで驚かないんだろう?

「べつに黙ってなくても…おこりゃしないわよ…」
一度目の…わたしの…一度目のわたしのときはそうだったのかしら?

「最初っからいってくれりゃあいいのに…」
なんで体に力が入らないんだろう?

「ほんとにめんどくさいやつね…」
なんで目が離せないんだろう?

「あーぁ…怪我して…まあたいした事ないんだろうけど…」
おでこから血が出てるじゃない…



「エヴァに乗ってるんならそう言いなさいよ…」



プラグから引きずり出されたシンジは意識を失っていて
額から少し血が滲んでいて

なぜか私は、驚きも焦りもしていなかった


フォークリフトさんの『My name is woman』01〜08話、(前編?)Liar girl but it's all right編5話と(中編?)CRAZY! I love you編3話一挙公開です。

なんというか、気になるとこで中断ですが、…大丈夫なんでしょうかシンジ。

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