by リンカ
とある長閑な村。
人口は数百人ほどだろうその小さな村の、割合に大きな屋敷の一室。
1人の人間がベッドに横たわり、魘されている。
厭な汗をビッショリと掻き、眉は苦しげに顰められて歯を食い縛り、
時折何かを拒む様に首を左右に振ってうわ言とも呻き声ともつかぬ音をその口から漏らしている。
シーツを握り締める手はその白い薄布を引き千切らんばかりに力が篭められ
身を捩り体に掛けられた毛布が彼の体に絡みついている。
突如その人間は大きく息を吸い、背を弓の様に反り返らせた。
目が見開かれる。
喘ぐ様に開かれたその口の、深淵から迸る絶叫。
大気も部屋の壁も調度もその人間自身も何もかも、
何もかもを切り裂いてしまうようなその叫びが収まると
その部屋にはただ安らかな寝息のみが密やかに響くだけで、
まるで先の有様が夢幻であるかのような穏やかさだった。
それは夢物語。
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