「明けましゅて」
「ゲンドウさん、噛んでる噛んでる」
「ごっごほん!こういうのには慣れていないのでな。ではもう一度」
「明けまして」
「おめでとうございまーす!」×9
せめて新年らしく
謹賀新年。
めでたきこの日、ゲンドウの家にはシンジ、アスカ、レイ、カヲル、ミサト、日向、冬月が一堂に集まっている。客間にはこの日のために用意されている豪華なおせち料理とお酒がズラリと並んでおり、みなで新年を祝っていた。
「ほう、葛城君は日本酒もいける口なのか」
「嫌いじゃないですよ~ビール派ですけど。ほら、日向君も飲んで飲んで!」
「飲んでますよ!いや~司令、今日はお招きいただいてありがとうございます!」
「冬月副司令、一献いかがですか?」
「リツコ君、そうだな。いただこう」
「ちょっとレイ!ちょっとアタシの伊達巻取らないでよ!アタシも食べたいんだから!」
「甘いわねアスカ。碇家では食事は戦争なのよ。次は栗金時をもらうわ」
「おせちはいいね~おせちこそ日本の食文化の極みだよ。そうは思わないかい?シンジ君」
「カヲル君、昨日は年越しそばでも同じこと言ってなかった?」
そこにいる皆がそれぞれにお正月を楽しむ。その時、ゲンドウがチルドレン達を呼んだ。
「シンジ、レイ、アスカ君、渚君。ここに来なさい」
「なに?父さん」
4人は顔を見合わせながらゲンドウの前に座る。
「むぅ、今日は正月だ」
「だから、みんなここに集まっているじゃないか」
「そこでだ・・・むぅ・・・」
ゲンドウの姿を見かねた冬月がフォローに入る。
「碇、それではみんなわからんではないか」
「むぅ・・・」
「すまないね。今日は正月ということで、私と碇、リツコ君から君たちにお年玉をあげようかと思ってね。さあ、これを受け取ってくれ」
冬月はそういうとやたら分厚いお年玉袋をチルドレン達に渡した。
「ありがとう。父さん、母さん。冬月副司令」
シンジが代表して礼を言う。レイとアスカは中身を見て金額を数えている。その金額は普通の一般家庭の比ではない。アスカ、レイ、カヲルは何に使おうかと悩んでいる。シンジからの謝礼にゲンドウはかなり照れてしまう。
「うむ、問題ない」
ゲンドウは一言だけ呟くように言うと照れ隠しにビールを飲み干した。
「そういえば、アスカ君とレイ君は習字を始めたのだったな?」
冬月が思い出したように言う。アスカとレイは頷いた。
「はい、花嫁修業としてですけど」
「はい、私は後学のために」
「うん、勤勉で良いことだな。こうやって日本文化が受け継がれていくのを目の当たりにすると元教師として感慨深いものがあるな」
冬月は感激したように何度も頷いている。そこへリツコが混じる。
「そうね、折角の機会だから書初めでもしてみたらどう?」
「カキゾメ?なにそれ?」
「年を明けて新しい日にやる書のことよ。私が小学生の頃は冬休みの課題としてあったけど、今でもあるのかしら?」
「何を書けばいいの?」
レイの問いに冬月は少し頭を捻った。
「特にこれを書くというルールはないからな。そうだ、今年の抱負を何か書いてみるというのはどうかね?」
「あら、それはいい考えですね冬月副司令」
「今年の抱負か・・・いいんじゃない?レイ!早速書くわよ!」
「ええ、準備するわ」
レイがいそいそと書初めの準備をしていると周りに人が集まってきた。
「懐かしいな~小学校以来だよ。僕も何か書こうかな?葛城さんもやりませんか?」
「日向君、私はお酒が入っているから遠慮するわ~審判ならやってあげるわよ」
「私も書こうか。シンジ、お前も何か書け」
「わかったよ父さん」
「碇がやるなら私もやらないとな」
「面白そうだから僕もやるよ」
「私も何か書こうかしら」
こうして碇家では大書初め大会が始まったのだった。
数十分後・・・・・
全員の書初めが終わった。
「みんな書初めは終わったようね。それじゃあ発表していきましょう!」
ミサトの合図で発表会が始まった。
「まずは私から発表しよう」
碇ゲンドウの場合
『マダオって言うな』
「言ってねええ!!!」
「次は私かな?」
冬月コウゾウの場合
『もっと出番を・・・』
「あれ?目から涙が・・・」
「次は私の番かしら?」
碇リツコの場合
『モルモット募集中❤』
「怖すぎるわ!」
「僕の番かな?」
日向マコトの場合
『葛城さんマジパネェっす』
「なにが!」
「次は僕が見せるよ!」
碇シンジの場合
『僕はホモじゃない』
「うん・・・まあ・・・」
「次はアタシね!」
惣流アスカ・ラングレーの場合
『子供が欲しい』
「早すぎるわ!」
「次は私」
碇レイの場合
『何か』
「思いつかなかったのね!?何も思いつかなかったのね!?」
「最後は僕かな?」
渚カヲルの場合
『アーーーーーーーーッ!!』
「何が言いたいのよ!!」
「もう!なんなのよ!新年早々ネタ満載すぎるわよ!ツッコミどころが多すぎてどこからツッコめばいいのか悩むくらいよ!」
頭を振りながら絶叫するミサト。周囲はことのほか冷ややかだった。
「ミサトさん、そこまで言うならミサトさんだって書けばいいじゃないですか!」
シンジの言葉に一同が納得したように頷く。
「シンジの言う通りよ!ミサトも何か書きなさいよ!レイも何か言いなさいよ!」
「そうね、そこまで言って何もやらないのは卑怯だわ」
「もちろん書くわよね?葛城作戦部長殿?」
「葛城女史の書初め、しかと見せてもらうよ」
「葛城さん!こいつら黙らせてやりましょう!」
「そこまで言った以上、君もやらないとな」
「葛城君、書け。いいから書け!」
そこにいる全員から厳しい目で書くように言われて黙っていられるミサトではない。
「わかったわ!わかったわよ!私がお手本書いてあげるから目ぇかっぽじってよく見なさい!」
葛城ミサトの場合
『月に変わっておしおきよん♪』
「どうよ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お前が一番ヤバすぎるわ!主に年齢的にぃ!!!」×8
「歳の話はするなああああ!!!」
こうして彼らの年はいつも通り火種だけ大いに燃えあがらせて始まっていくのだったが・・・
シンジが何気なく窓の外を見ると既に日が暮れて真っ暗になっていた。街頭が照らす明かりがどことなく寂しげに見える。
(あれ?)
どことなく違和感を覚えたシンジは窓に近づくとカーテンを開けた。
「うわっ!」
「うん?シンジどうしたの?」
「雪!雪が降ってるよ!」
シンジが興奮したように言う。するとみんなが窓際に集まり外を眺める。ガラスの向こうでは雪が静かに振っていた。翌朝には一面銀世界に覆われるであろう。
「あら、本当だわ」
「道理で寒いわけね」
ミサトとリツコの言葉に誰もが心の中で頷く。
「ねえ!アスカ!外行こうよ!」
「え~寒いから嫌~」
「いいから!行くよアスカ!」
「んもう!」
「お兄ちゃん、私も行く!」
「シンジ君、僕も行くよ」
アスカの手を繋ぎ外へと飛び出すシンジ、それに続くレイとカヲル。
雪は彼らの新しい年を祝福するかのように静かに積もっていく。
「ねえ・・・アスカ」
「なに?シンジ」
「今年も、これからもずっとよろしくね!」
「うん!」
父に「お年玉は?」 母に「ご飯まだぁ?」
すべてのチルドレンに
A Happy new year 2015
新しい年2015年もよろしくお願いします。
2015年、エヴァの年ですね……。
節目の話を書いてくださったあぐおさんに是非感想を!