土・日・月と関西出張だった。

 土曜日の夜、阪急神戸本線沿線で最初の用事がすんで、三宮に到着すると車掌さんいわく、「この電車はこれまででごさいます」 うわっ、もはやこれまでか、と観念してホームに降りた。阪急では「当駅止まり」といわないで「これまで」というのかと驚いたが、地元の人も笑っていたようだった。
 

 日曜の午前中時間があったので、どこにしようかと迷った末、神戸電鉄粟生(あお)線と山陽電鉄に乗ってみることにした。

 阪急三宮から乗って、神戸高速鉄道の新開地で神戸電鉄の準急に乗換える。出発のときは少し空席があったが、次の湊川で元気おばさんハイキング部隊がどどっと乗り込み、その後各停車駅でも大勢乗ってきて、車内は新聞なんてとても広げられないくらいの混雑になった。どうやら、ハイキング大会があるらしい。

 鈴蘭台で有馬線と分かれ、団地地帯を抜けるとすっかりローカル線ムードになって、終着は志染(しじみ)。すぐに向かいのホームの各駅停車粟生行きに乗換えたが、さらに混雑してにぎやかだ。最前部で見ていたら、五〇パーミルの勾配とか半径二〇〇メートル以下のカーブもたくさんあって、かなりの山岳路線なのだった。無人駅もある。

 新開地から一時間一〇分ほどかかって、終点の粟生着。少しぶらぶらしようかと思ったが、ハイキング大会の集合で駅前も大騒ぎだったので、同じホームに止まっていた加古川線上りに飛びのってしまった。こちらはずっとすいているし、クロスシートで快適だった。三〇分で加古川着。新快速で姫路へ。

 
 山陽電鉄の姫路駅はどのぐらい離れているのかなと思ってきょろきょろしたが、目の前にそびえるデパートがもう駅なのだった。特急は一五分おきに出ている。最初に来たのはロングシートだったので敬遠し、2本目の阪神電車の大石行きに乗る。発車するとすぐカーブしてJRを乗り越して海側に出て、あとはJRより南側を快走する。

 阪神三宮で降り、うどんを食べてから仕事へ。関西に来たらやはりうどんだ。

 
               * * *
 

 月曜は、朝少し時間があった。早起きして、今度は三宮から地下鉄経由で北神急行電鉄に乗ってみる。長いトンネルの中でアニメが見られるときいていたが、あっ、こっち側だったのか、と気づいたときはもう終わるところだった。

 谷上でまた神戸電鉄に乗る。今度は有馬線・三田(さんだ)線。最前部の席に座ったが、出張中でもあり、鉄道ファンなんかではないようなふりをしつつ、ちらりちらりと前方を見る。この線もかなりの勾配がある。

 終点の三田で福知山線に乗換える。こちらは3年前に乗ったことがある。座れたらそのまま大阪まで、と思っていたのだが、まだラッシュ時間帯でかなりの混雑だったので、宝塚で降りて阪急に乗換える。阪急の堂々たる高架駅のまわりはまだ工事がいろいろ続いていた。高架からJRを睥睨しながら出発。豊中付近では高架化工事の真っ最中で、思うようにスピードが出せない。

 阪急の梅田駅は、いつ見ても九本の線路が並ぶ壮観に圧倒される。昔初めてこの駅に立ったときには、私鉄でこんなに大きな駅があるのかとびっくりしたものだ。

 今日の仕事先は京阪沿線。淀屋橋から急行に乗る。淀屋橋も東京にはないタイプの駅だ。1面のホームをやりくりして4番線まで作っているのは、苦肉の策ではあろうが、知恵をしぼった運用だ。地上に出てからは複々線になって、打って変わって王道を行くがごとし。

 
 月曜夜帰京。帰りの新幹線の中で、今回乗った個性豊かな私鉄路線を振り返りながら、一人で乾杯をした。