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Snake's Revenge(スネークズリベンジ)
機種 NES(海外ファミコン)
発売元 Ultra(ウルトラ)
開発元 Konami/Ultra(コナミ・ウルトラ)
発売年 1990年4月
プレイ人数 1人プレイのみ
ステージ数 -
ライフ制 あり
残機制 なし
コンティニュー 無限
パスワード あり
難易度選択 なし
コンテンツ プレイ方法
オープニング
ストーリー1
ストーリー2
ストーリー3
ストーリー4
ストーリー5
ストーリー6
ストーリー7
エンディング




 『Snake's Revenge(スネークズリベンジ)』は、1990年にNES(海外ファミコン)でのみ発売された、つまり日本では発売されなかった作品であり、『メタルギア』(1987年、MSX2、FC)の続編にあたるストーリーである。
 『メタルギア』の続編であるとは言え本作は、同じ1990年に日本国内で発売され、現在も不朽の名作として名高いMSX2ソフト『メタルギア2ソリッド・スネーク』のファミコン移植版……ではない。本作は『メタルギア2ソリッド・スネーク』より先に制作された完全オリジナル作品であり、『メタルギア2ソリッド・スネーク』とは設定、ストーリー、ゲーム内容、全てにおいて全くの別物である。しかも本作の開発に、シリーズの生みの親である小島秀夫氏は一切関わっていない。
 なぜ海外でしか発売されなかったのか?なぜ小島氏はノータッチだったのか?そしてなぜほぼ同時期に、2つの全く違う『メタルギア2』が生まれることになったのだろうか?

シリーズとの関係は?

 今でこそ、1998年のPS版『メタルギアソリッド』の大ヒットで一躍メジャーになったメタルギアシリーズだが、それ以前は一部のコアなファン、主にMSXユーザーの熱烈な支持を受けるにとどまり、国内全体での人気は今ひとつだった。また小島氏自身も、『メタルギア』の時点では、特に続編を作るつもりはなかったようである。
 だが海外において、『メタルギア』のファミコン(NES)移植版が予想を上回るミリオンヒットを飛ばしたため、海外NES市場のみをターゲットにして続編がリリースされることになった。そして制作には小島氏とは別部署の、コナミファミコン担当のスタッフがあたった。それが本作、『Snake's Revenge』というわけである。
 こうして制作が開始された本作だったが、全く期せずして、この『Snake's Revenge』はシリーズの歴史において、非常に重要な――運命的な、と言ってもいいだろう――意味を持つ作品となった。こんな逸話がある。
 『Snake's Revenge』制作当時のある日、小島氏は帰りの電車の中で、そのプログラマーの1人から「続編を作っている」という話を聞くと共に、「『小島氏のメタルギア2』が見たい」という熱いラブコールを受けた。その瞬間に込み上げてきたものがあった小島氏は、一晩で続編のストーリーを書き上げ、翌日にはその草案書を渡したという。そのストーリーこそが、『メタルギア2ソリッド・スネーク』となった……。
 奇しくもこうして、2つの全く違う『メタルギア2』が世に出ることとなった。だが両作品のストーリーが同一時間軸上にあると考えると、一見して多くの矛盾が生じる。最新作『メタルギアソリッド』に登場するコナミオフィシャルの年表を見ても、本作のストーリーに関する記述はまるでない。
 ある意味当然の結果ではあるが、小島氏みずからが制作にあたり、日本国内で発売された『メタルギア2ソリッド・スネーク』が正統な続編となり、本作『Snake's Revenge』はメタルギアシリーズの歴史から、事実上葬りさられてしまったわけである。海外のユーザーからも、本作はあくまで「番外編」的にとらえられているようで、やはり評価は芳しくない。
 だが小島氏自身は、この異母兄弟とも言える『Snake's Revenge』がなかったら、『メタルギア2ソリッド・スネーク』も『メタルギアソリッド』も生まれなかっただろう、と語っている。

どんなゲームなのか?

 『Snake's Revenge』には、小島氏は一切関わっていないため、シリーズおなじみのキャラクターは主人公ソリッド・スネークと、宿敵ビッグボスしか登場しない。新たに開発された最終兵器メタルギア2を破壊するために敵地へ潜入する……という大筋は同じだが、全体のストーリー展開も『メタルギア2ソリッド・スネーク』とは全く違う、オリジナルのものだ。パラレルワールドの物語と言っていいだろう。
 また、『メタルギア2ソリッド・スネーク』以降、ゲームにまるで映画のようなドラマチックなイベント、そして重厚なテーマ性をも盛り込んでいった本家「小島作品」とは異なり、本作のストーリーテリングは、要所に短いメッセージが挿入されるだけという『メタルギア』同様、もしくはそれ以上に極めてシンプルなものである。アクションゲームらしく、あくまで純粋なゲームプレイが中心となっている。
 そのゲーム内容とはもちろん、特殊部隊フォックス・ハウンド隊員ソリッド・スネークを操作し、様々な武器やアイテム、そして味方との無線連絡を駆使しながら、敵基地の奥深くへと潜入していく、というおなじみのものだ。敵兵や監視カメラに発見されると増援がやってくるので、うまく敵の監視の目をすり抜け、見つからないように先へ進まなければならない。この「敵と戦うのではなく、敵から身を隠して進む」という独特のコンセプトはシリーズ共通だ。
 細かいゲームシステムについては、『メタルギア』からあらゆる面で劇的な進化を遂げた『メタルギア2ソリッド・スネーク』とは対照的に、ほとんど『メタルギア』を踏襲した作りである。ホフク・モードはなし、危険&回避モードもなし。敵兵の視界は『メタルギア』同様、真正面しか見ていないので、少しでも軸をずらせば発見されることはない。物音に反応もしない。シリーズ中唯一、横スクロールのアクションシーン(!)が存在する以外は、システム面で『メタルギア』から大きな変更はないと言っていい。

難易度はどうなのか?

 『Snake's Revenge』は、さすがに海外のみをターゲットにしているだけあって、簡単なゲームではない。総合的に見て全シリーズ中、最もクリアが困難な作品と言えるだろう。
 本作も含め、メタルギアシリーズはゲームが進むにつれ、スネークのライフ最大値や、レーション(回復アイテム)の携行可能数が増えていく。他のシリーズ作品はゲーム後半になると、スネークがパワーアップする一方で敵はさほど強くならないため、発見されて増援が来ても、そうそう死ぬことはない。隠れずに力押しで進んでも、何とかなってしまうのだ。
 だが本作のゲーム後半は、スネークのパワーアップに合わせ、敵の増援も恐ろしく強力になる。触れると即死の自爆特攻隊や、壁越しに攻撃してくるグレネード隊など、見たこともない増援がワラワラと出現するのだ。
 1発の攻撃によるライフの減りも厳しく、ちょっと回復が遅れればあっという間にゲームオーバー。いくらライフやレーションが大量にあっても、気を抜くと余裕で死ねるのである。確かにシビアだが、「敵に発見されたら死ぬ!」というメタルギアならではの緊張感を最後まで持続させてくれる。このあたりの難易度バランスは実に良く練られており、評価に値する。
 アドベンチャー的な要素に関しては、小島氏が好むような、パズル的な謎解きは少ない。ただし、自白ガス、照明弾、X線探知機、盗聴マイク等々、ユニークな新アイテムが多数追加されており、それらの使いどころを考えるのが楽しい。また、マップがかなり複雑で、特にラストの要塞はシリーズ最大級の大迷路になっている。メモやマッピングをしないとすぐに迷ってしまうだろう。決して激ムズや理不尽ではないが、かなり歯応えのある難易度設定になっている。

出来はどうなのか?

 結論から言うと、「これはこれで」かなり遊べるゲームである。無論、本家シリーズの圧倒的な完成度、オリジナリティにはかなうべくもないが、初代のシンプルな面白さをきちんと継承した良作と言えよう。
 海外専売であったり、Ultra(ウルトラ)社のクレジットが入っているとは言え、本作は外注作品でも、海外スタッフによる「洋ゲー」でもない。日本国内のコナミスタッフが開発した、れっきとしたコナミ作品である。プログラムの赤松氏と奥田氏は『悪魔城伝説』(FC)、山下氏は『魂斗羅』(FC)のプログラマー。グラフィックの藤本氏も『悪魔城伝説』のキャラクター担当だ。つまり、国内でもおなじみの名作を手がけた、確かなスタッフによって作られた作品というわけである。
 ちなみに、今ひとつの移植として悪名高いファミコン版『メタルギア』のスタッフは、本作には関わっていない。それもあってか本作はファミコン版『メタルギア』より、ずっと出来がいい。ファミコン版『メタルギア』のように、隣の画面に入った途端、絶対に発見されるという、いいかげんな敵配置はほとんどない。肝心のメタルギアもちゃんと登場する。開発スタッフが、ダメなファミコン版ではなく、オリジナルのMSX2版をお手本に続編を作っていることがわかる。
 ストーリーに小島作品のような強烈なドラマ性はなく、全体に淡々と進んでいく印象はあるものの、シリーズお約束の「裏切り」はあるし、終盤の盛り上がりもなかなかのものだ。そして、任務を完了してもどこか一抹の空しさ、寂しさが残る――戦士スネークの孤独が感じられるようなエンディングも、メタルギアシリーズにふさわしい。
 アイデア面でも、二部構成のシナリオ、ズラリと並んだ量産型メタルギア、サーチライト(小島氏も『メタルギア』の頃から考えていたが、『メタルギアソリッド』まで実現しなかった)など、意外に秀逸なものが多い。また、移動する船上や列車内のステージは、シリーズ全体から見てもかなり新鮮な舞台だ。
 サウンドも素晴らしい。全曲オリジナルのBGMは『メタルギア』に近い雰囲気。いかにも古き良きコナミサウンドと言った感じで、ノリの良い曲が多い。哀愁漂うエンディングBGMも感動的だ。グラフィックは海外を意識したのか、キャラクターの顔が妙に濃かったり、全体に色使いが派手な印象はあるものの、これもファミコンとしては及第点レベルに仕上がっていると言えるだろう。
 メタルギアが大ヒットシリーズとなった今、コナミも小島氏も、この作品について意識的に語ることはあまりない。だが『Snake's Revenge』は決して、シリーズの汚点などではない。ゲームとしての完成度、面白さは、十分に水準を超えたものだ。それに本作がなければ、『メタルギア2ソリッド・スネーク』も、『メタルギアソリッド』も、そして現在のメタルギアのヒットも、全てなかったかもしれないのだから。



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