(クリックで拡大表示)
ラフワールド
機種 ファミリーコンピュータ
発売元 サンソフト
開発元 東海エンジニアリング(サンソフト)
発売日 1990年8月10日
定価 5,500円(別)
プレイ人数 1人プレイのみ
ステージ数 5面
ライフ制 あり
残機制 あり
コンティニュー 3回
パスワード なし
難易度選択 なし
リンク ボス攻略






ストーリー

 宇宙暦0373年――地球の人口は膨大に膨れあがり、もはや人類は地球だけでは生活できなくなっていた。――そして、人は宇宙に新天地を求めた。
 ジェイ(JAY.Mc CRAY)の父は有能な技術者であり、現在はシリウス星系のコロニー開発計画『シリウス・プロジェクト』のスタッフとして働いていた。しかし、『シリウス・プロジェクト』は実験中に研究所周辺をも巻き込む、大爆発をおこす。この事故で、ジェイは唯一の肉親である父を失い、また開発データのすべてを失った『シリウス・プロジェクト』も、中止へと追い込まれていく。
 だが、ジェイは父の書斎から一枚のディスクを発見した。そのディスクにはコロニー開発の為の全データと、そして、最後には父の言葉が…「シリウス・プロジェクトを何者かが阻止しようとしている。ジェイ。もし私に何かあったときは頼む、私の後をつぎコロニーを完成させてくれ!!」父は自分の死を予感していた!?
 しかしプロジェクトの失敗をもくろむ奴らが再び動きだした! コロニーを完成させるためには奴らと戦うしかない。ジェイは父のかたきを討ち、『シリウス・プロジェクト』を成功させる為に今、敵地へと乗り込んだ!!

父よ、かたきはきっとうつ!!

 本作は当初、1984年の映画『ターミネーター』第1作のファミコンゲーム化として開発されていた。米国サンソフトが1988年にライセンスを取得し、アーノルド・シュワルツェネッガーの写真を取り込んだタイトル画面や、実際のゲーム画面も公開されている。
 だが、ゲームの内容が原作映画のプロットに沿っていないとして、サンソフトはライセンスを取り消されてしまう。映画が主に現代を舞台にしていたのに対し、ゲームはスカイネット(人工知能)が支配する未来を舞台にしていたからだ。権利元によれば、普通は企画段階でプレゼンが行われるのだが、本作はほぼ完成品が出来上がるまで、何も見せられなかったという。
 結局、そこからカットシーンやタイトル等を差し替え、本作はオリジナル作品『ラフワールド』として発売された。『ラフ』のスペルは、裏技で表示できるオプション画面では『ROUGH』となっている。『ワールド』は後から急遽、追加された可能性が高い。また、海外版のタイトルは『Journey to Silius(ジャーニー・トゥ・シリウス)』となっているが、当初は『Operation S.S.S.(オペレーションS.S.S.)』というタイトルで発表されていた。
 こうした紆余曲折があったためか、近未来的な世界観や、一部のボス、BGM等に『ターミネーター』の面影は感じられるものの、全体として見るとこれといった売りのない、コンセプトが希薄なゲームになっている。だが後期サンソフト作品らしく、作り込みは丁寧だ。ハイレベルなグラフィックとサウンドに加え、敵やステージギミックの使い回しがほとんどないなど、随所にこだわりが感じられる。ちなみに1992年、海外NESでのみ、まったく別の会社(マインドスケープ)から、本作とは異なる内容の『ターミネーター』のゲームが発売されたが、こちらはどうしようもないクソゲーだった。

地味ながら練り込まれたゲーム性

 『ラフワールド』のゲームシステムは、ガンで敵を倒し、各種アイテムを取ってパワーアップしながら進む、『魂斗羅』風の横スクロールアクションだ。ジャンプの感覚がやや独特で、空中制御がほとんど利かない。ただキーレスポンス自体はよく、キビキビ、かつ微妙にヌルヌルした感じの動きは、動かしていてなかなか気持ちいい。
 各ステージで1つずつ武器が増えていき、最大6種類の武器を使い分けることができる。『ロックマン』と同じようなシステムで、状況に合った武器選択がポイントとなる。武器はエネルギー制で乱用はできないのだが、かといって難所で使い惜しみすると、ライフを一気に削られてしまう。本作はライフ回復アイテムがランダムの上、ほとんど出現しないので、基本的にステージクリア時に全快する以外、回復の機会はないと考えた方がいい。
 本作にはバリバリの爽快感や、アッと驚く展開はあまりない。だが、敵の配置を初めとするレベルデザインが実に巧みなので、パッと見では分からない面白さがある。
 例えば、穴を飛び越えたら、対岸の砲台にドンピシャで狙撃されたり、下に飛び降りたら、ちょうど敵の真上に着地してしまったり……といった具合に、何も考えずにプレイしていると、絶妙に食らってしまう場面がたくさんあるのだ。一回ごとのダメージは小さいものの、ライフ回復アイテムがほとんど出ないため、適当にやっているとステージ後半にはいつもボロボロになってしまう。
 オールクリアするためには、「ボタンを短く押して小ジャンプ」、「垂直ジャンプからの空中制御」、「スクロールアウトで敵を消す」といった渋いテクニックを駆使した、緻密なパターン化が不可欠だ。本作はベテランの野村雅仁(『アトランチスの謎』、『デッドゾーン』、『へべれけ』)と東谷浩明(『アトランチスの謎』、『リップルアイランド』、『バットマン』)がプログラムを担当しており、彼らがサンソフトで手がけてきた作品の遺伝子が確かに感じられる。

ファミコン最高峰のBGM

 『ラフワールド』は地味なゲームではあるが、実はある一点によって、本作は結構有名な作品である。その素晴らし過ぎるBGMだ。
 曲自体のカッコよさもさることながら、ファミコンとは思えないほど重厚な音が出ている。電源を入れた瞬間流れだす疾走感あふれるタイトルBGMには、初めて『悪魔城伝説』のBGMを聴いた時のような衝撃が走る。しかし本作には拡張音源は搭載されておらず、デルタPCM(サンプリング)を使ってベース音を鳴らすなど、その技術力は特筆すべきものだ。取扱説明書にこのタイトルBGMの楽譜が4ページにわたって掲載されているのを見ても、作曲の小高直樹やサウンドプログラマーの原伸幸ら、作り手のBGMに対する力の入れようがうかがえる。
 ゲームミュージック・ファンなら、このBGM目当てで購入しても元は取れるだろう。ファミコン最高峰のBGMと言っても過言ではない。この卓越したサウンドクオリティーは、『へべれけ』、『バトルフォーミュラ』、『ギミック!』といった後期サンソフト作品に共通する特徴である。
 それ以外の部分が地味なだけに、とりわけBGMのよさばかりが注目されがちな本作。だがアクションゲームとしても、シンプルながら硬派アクションゲーマーを熱くさせるものを持っている。
 本作に限らずどんなゲームもそうだけど、ただダラダラとやるだけじゃなくて、とりあえずノーコンティニュークリア、最終的にはノーミスクリアを目指して真面目にプレイしてみてほしい。そうして繰り返し繰り返し、悪戦苦闘しながらプレイするうち、新しい何かが見えてくることもあると思う。
 その点、本作のようにBGMの素晴らしいゲームはオイシイよね。「音楽聴きたいし、またやってみるか」という気になるから。



Main