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MIGHTY MORPHIN POWER RANGERS
機種 スーパーファミコン
発売元 バンダイ
開発元 ナツメ
発売日 1995年11月24日
定価 9,800円(別)
プレイ人数 1人プレイのみ
ステージ数 7面
ライフ制 あり
残機制 あり
コンティニュー 無限
パスワード あり
難易度選択 なし
リンク (取扱説明書)プレイヤーキャラ紹介
(取扱説明書)必殺技&特殊アクション




INTRODUCTION

Morph into action now with the Mighty Morphin Power Rangers!!

地球侵略を企てるロード・ゼッドの命を受け、恐るべきミュータントモンスターを次々に地球に送り込む魔女リタ・リパルサ。かつてない危機に、宇宙の賢者ゾードンは、5人のティーンエイジャー、ジェイソン、ザック、ビリー、トリーニ、キンバリーに地球の運命を託した。太古の恐竜たちの伝説の力を授けられた彼らは、パワーレンジャー変身!! 驚異のパワーで悪に立ち向かう! そして5人のパワーが合体し、究極のバトルシステム・メガゾード誕生!! 巨大な剣が正義のフィニッシュをきめる!!

『パワーレンジャー』とは

 『パワーレンジャー(Power Rangers)』とは、東映スーパー戦隊シリーズの海外版である。アクションシーンや巨大ロボット戦は日本で撮影されたものを流用しつつ、俳優によるドラマ部分は米国オリジナルキャストを起用して独自のストーリーを展開。1993年に放映開始されたシリーズは全米を始め各国で大人気となり、現在も毎年日本の『タイムレンジャー』、『ガオレンジャー』等を元にして新シリーズが続々放映されている。
 本作はそのタイトル通り、『パワーレンジャー』シリーズの『MIGHTY MORPHIN POWER RANGERS』(日本版『恐竜戦隊ジュウレンジャー』のリメイク)を元にした横スクロールアクションゲームだ。
 一見良くある「バンダイのキャラゲー」、しかもメインターゲットは明らかに海外市場で、「国内でもとりあえず出しておいた」感が強い本作だが、箱にも説明書にもタイトル画面にも一切クレジットされてないけど実はナツメ製である。エンディングのスタッフロールを見ると、ナツメの社名こそ出てこないものの、日本のナツメスタッフがズラリと名を連ねている。と言うわけなので、特撮ヒーローファンやナツメファンにとってはチェックが必要な作品かもしれない。
 ちなみに日本ではこの1作だけしか発売されていないが、海外SNESでは本作の後にも劇場版を元にした続編『The Movie』や純粋な格闘ゲーム『The Fighting Edition』といったシリーズ作品が発売されており、いずれもナツメが制作を担当している。

ゲームの概要

 プレイヤーは各エリアごとに5人のパワーレンジャーから1人をセレクトし、次々に現れるモンスターたちを倒しながら進めていく、横スクロールのアクションゲーム。
 基本操作は十字キーで移動、Bボタンでジャンプ、Yボタンで攻撃。Y連打で連続攻撃になり、敵に接触して左右+Yで投げが出せる。画面内の敵を全て倒すと、先にスクロールできるようになる。
 つまり本作の基本は言わば「奥行きのない『ファイナルファイト』系」であり、同じくナツメ制作の『ザ・ニンジャウォーリアーズアゲイン』に近いタイプのゲームと言える。ただ『アゲイン』に比べると、ガードが無いなど操作系は簡単になっている。そのぶん、段差や穴の上で敵と戦ったり、バーにぶら下がって上に登ったり、水中を泳いだりと、エリアごとに様々な地形トラップが登場し、一般的なジャンプアクションのような要素もミックスされている。
 バトルエリアは全部で7つ。1〜5の各エリアは3つのセクションで構成され、まず「ティーンエイジャーモード」、すなわち変身前の若者モードからスタートする。この状態ではパンチ、キック、投げといった基本的な技しか使えず、リーチも短い。
 一定の場所まで辿り着くと、自動的にパワーレンジャーに変身。上+Yで武器を用いた必殺技、B連打でバック転、Xボタンでダイノボム(メガクラッシュ)、さらに十字キーとボタンの組み合わせで、空中投げ、投げ飛ばし、反転キック、ボディブロー、壁蹴りジャンプ、ぶら下がり、飛び降り、と一気に多彩なアクションが可能になる。そして最後に登場するエリアボスを倒すとエリアクリアー。
 エリア6、7ではゲーム内容ががらっと変わり、5人のパワーレンジャーが合体したメガゾードで、巨大モンスターとワン・オン・ワンでの対戦になる。XボタンでPOWERゲージの量(時間経過で増えていく)に応じた数種類の光線技を使うことができ、十字キーを敵と反対に押すとガード、進行方向の十字キーを2度押すとダッシュが出せる。
 と、巨大ロボット戦は一見すると格闘ゲームのようだが、実際はそこまで奥深いものではなく、どちらかと言うとスーパーファミコンの『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』等に近い、シンプルな内容である。

ナツメの地力

 さすがナツメの作品だけあって、操作性、グラフィック、サウンドといった基本部分のレベルは非常に高い。また本作では、キャラクターゲームにふさわしく、ヒーロー物のツボを抑えた演出も光っている。
 最初は人間の姿で戦闘員と戦うが、ピンチになるとパワーレンジャーに変身してモンスターと対決、そして最後は巨大ロボット戦で決着……というお約束の展開。ボーンズ、アイガイ、ナスティ・ナイト、ハッチャソーラス、サイクロップサスといった、テレビでおなじみのモンスターもエリアボスとして登場する。
 パワーレンジャーは変身するたび、合体するたび、必殺技を放つたび、敵を倒すたび、必ずビシッと決めポーズ。メガゾードが剣を天にかざせば、落雷と共に電光が宿る。そしてそのバックで鳴り響くのは、テレビと同じ「♪ごゥごゥ ぱわーれんじゃ〜♪」の主題歌だ。あまりにも正しくて燃える。画面の前で歌いなさい! コントローラーを振りかざし、メガゾードと共にフィニッシュを決めろ!!
 パワーレンジャーのアクションひとつひとつにも実にヒーローらしいキレがあり、無闇にキマッている。この滑らかなヒーローアクションを、極上のキーレスポンスでビシバシと繰り出していく快感が、本作最大の魅力と言ってもいいだろう。意味なくバック転や反転キックを連発してみたり、あえて華麗な空中投げを狙ってみたりと、知らず知らずのうちに効率的な攻略よりも「いかにヒーローらしく戦うか」にこだわってしまう自分に気づく。
 クライマックスに登場する巨大ロボット・メガゾードの迫力も悪くない。大地を揺るがす「ズシーン」という音、金属がぶつかり合う「ガキーン」という音などを始め、重量感がうまく表現されている。
 そして、BGMを水谷郁&山下絹代、SEを岩月博之が担当するサウンドは、本作で最も素晴らしい点のひとつだ。全編ヒロイックでノリのいいエリアBGM(特にエリア4が強烈)、パワーレンジャーのテーマにエキサイティングなアレンジを加えたボスBGMなど、まさにナツメサウンドの真骨頂である。

キャラゲーの宿命?

 このように基本的な部分やヒーロー的な演出は素晴らしい本作なのだが、残念なことに肝心のゲーム内容は今一歩の感が否めない。
 まず、プレイヤーキャラが5人いるにもかかわらず、どれを選んでもほとんど大差がない。グラフィック上では、同じ操作でも各自の個性による違いがあってとても良いのだが、実際の性能はリーチが若干違う程度で、長所・短所が感じられないのである。クセがないぶん、純粋に好みだけでキャラをセレクトできるとも言えるが、ゲームとしてはマイナスだ。
 だが、それはまだ良い。最も問題なのは、ボス以外の敵キャラにあまりにも個性がない点だ。どのエリアでも、出現する敵の大半はゴーレム兵(全身タイツの戦闘員)で、色によって微妙に武器や耐久力が違うだけ。退屈な見た目に加えて、個々に対する戦術や、技の使い分け等もほとんど必要とされず、終始ガチャプレイでもクリアーできてしまう。
 確かに、元来このタイプの格闘アクションは、漫然とプレイすると単調に感じてしまう一面も持ち合わせている。だがそこを同社の『アゲイン』や、その他のベルトフロアアクションの名作は、個性的なキャラクター、絶妙のゲームバランス等によってゲーム性を高めていた。本作もエリアごとに様々なトラップを配置するなど変化をつけてはいるのだが、残念ながら単調さのほうが目立ってしまっている。
 だが、こういった問題点の背景には、「キャラクターゲームの宿命」というジレンマもまた、感じられるのである。プレイヤーキャラや敵キャラに驚きが少ないのも、キャラクターゲームの性質上、原作の設定を逸脱するようなギミックを用いることができなかったためではないだろうか。
 やや大味なゲームバランスについても、挑戦的なゲーマー向けと言うより、作品の対象年齢を考慮して、誰でもクリアできるよう、あえて低めの難易度に抑えられている感がある。この傾向は本作に限らず、ナツメのキャラクターゲーム全般に見られる。
 そういう意味では、やはりナツメの本領は、ゲームオリジナルの世界観、アイデアの上でこそ最大限に発揮されるように思う。だが細かいことは気にせず、ノリの良いBGMに合わせて、お気に入りのヒーローになりきって大暴れすれば、本作もなかなか楽しめる作品だ。



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