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迦楼羅王(カルラオウ)
機種 スーパーファミコン
発売元 エピック・ソニーレコード
開発元 浮世亭
発売日 1994年2月18日
定価 8,900円(別)
プレイ人数 1人プレイのみ
ステージ数 16面
ライフ制 あり
残機制 あり
コンティニュー 無限
パスワード あり
難易度選択 なし
リンク (取扱説明書)ストーリー
必殺技一覧
ボス攻略




プロローグ

戦いの中でしか生きてゆけぬ魔神・アシュラは、魔族の王・ラバーナを復活させ、地上に恐怖と戦いの日々を呼び戻そうとしていた。
地上に現れたアシュラは、魔界の怪物と共に暴れ回った。大混乱の地上界を救うためには、アシュラの力に匹敵する真の魔神の存在が必要であった。
しかし、魔神の血を引きし者の末裔は、次々とアシュラの手に捕えられていった。今日もラバーナへの生贄として、一人の娘・ビシュヌがさらわれようとしていた。そこへ駆けつけた青年――迦楼羅。魔神の血を受け継いではいるが、まだ、真の力には目覚めていない。
アシュラの一撃に、迦楼羅はあっさりと気絶してしまう。気がつくと、魔神の祠を守る謎の老人・ブラフマが目の前に立っていた。
「迦楼羅よ!秘密の力を手に入れ、アシュラを倒すのじゃ!」
「おう!望むところよ!」
魔神としての真の力をよみがえらせるため、迦楼羅はブラフマ老人と共に修行の旅に出た!

オリエンタル冒険活劇

 『迦楼羅王(カルラオウ)』は、インドの神話をモチーフにしたアクションゲームだ。漫画家の板橋しゅうほう氏によるパッケージイラストにも独特の雰囲気が漂っており、オリエンタルな世界観が本作の特徴である。
 妙なタイトルに加えて「インド?神話?板橋しゅうほう?なんか怪しい雰囲気のゲームなのでは?」と近寄りがたい印象を受けるかもしれないが、ゲーム本編の雰囲気――例えば主人公の迦楼羅をはじめとするキャラクターのデザインや、途中で挿入される会話シーン等――は、マンガやアニメのようなコミカルタッチなのでとても馴染みやすい。まさに「血沸き肉躍る冒険活劇!」といった感じで、むしろここまで万人向けなノリも珍しいくらいだ。
 ゲームの内容も、これまた実にオーソドックスな横スクロールアクションなのだが、8種類の必殺技、個性的で巨大なボスキャラ、バラエティに富んだステージ構成、3D視点のボーナスステージ、マップ画面によるエリア移動・ルート分岐、そして美しいグラフィックとサウンド……等々、パッケージの裏に書かれたキャッチコピー「アクションゲームのすべてがここにある!」の言葉通り、あの手この手で「正統派」横スクロールアクションの楽しさを十分に満喫させてくれる力作である。

基本システム

 操作方法はいたってシンプル。十字キーで移動、Yボタンでパンチ・キック攻撃、Bボタンでジャンプ、L・Rボタンで必殺技選択、Xボタンで必殺技使用。ジャンプ(Bボタン)+十字キーで、十字キーを押している方向の壁にくっつくことができる。くっついたまま上下に移動したり、攻撃することも可能。この技を使いこなさなければ、先に進むことは困難だ。
 迦楼羅はボスを倒すごとに新たな必殺技を身につけていく(全8種類)。必殺技は気力ゲージを消費して使用する。通常攻撃のパンチ・キックはリーチが短いので、それを補うために必殺技は重要だ。また攻撃だけでなく、移動や体力回復の手段として必殺技を使用する場合もある。特に飛虎砲を利用した空中移動は壁つき同様、困難な地形を突破するのに必須のテクニックであり、本作の「肝」のひとつとも言える。
 『迦楼羅王』の世界には3つの大陸があり、迦楼羅の修行の旅はその3つの大陸全てをめぐる長くけわしいものになる。各エリアへの移動は全体マップ画面で行われる。マップ上の森や塔、お城などのポイントに迦楼羅の修行の場(ステージ)があり、そこへ迦楼羅を移動させると、アクションステージに突入する。各ステージ、アイデアに富んだ様々な仕掛けがあり、また通常の横スクロール面だけでなく、時には飛行ステージや水中ステージ等もあったりしてバラエティ豊かだ。そしてステージラストに立ちはだかるボスもアイデアたっぷりで、実に個性的な攻撃をしてくる。
 迦楼羅の修行は南西の端、「ナーガの祠」から始まる。プロローグで、アシュラの一撃で気絶してしまった迦楼羅が、ブラフマ老人によって助けられた場所である。「祠」は世界の所々に存在し、ターミナル的な役割を果たすステージ。そこではブラフマ老人から情報を聞いたり、再開用のパスワードを表示することができる。また、迦楼羅の残り人数が0になると最後に入った「祠」に戻される。
 最初の大陸は、ゲームに慣れるための練習と言ったところ。そこでじゅうぶん修行をつんだら、海を渡って次の大陸に移動する(後戻りはできない)。海を渡る間は、3D視点のボーナスステージになる。空の道にちりばめられたたくさんの黄金石(ボーナスアイテム)を取りまくり、残機を増やすチャンスである。
 2つめの大陸は広大でステージ数も多く、ゲームのメインとなる大陸だ。ここでは修行の順番――つまり、ステージ攻略および必殺技を得る順番――を、自分で選ぶことができる。ただし最終的には7つの必殺技をマスターしていないと、最後の必殺技を手に入れることはできない。最後の必殺技も手に入れたなら、3つめの大陸に渡り、「魔神殿」にひそむアシュラと決戦となる。

『迦楼羅王』の魅力

●動かしているだけで楽しい
 「動かしているだけで楽しい」……これは良いアクションゲームの、ひとつの条件と言えるだろう。その「楽しい」要因としては、もちろんキーレスポンスの良さ等がまず第一にあるわけだが、『迦楼羅王』ではそれ以上に主人公・迦楼羅の「躍動感あふれる動き」が、操作する快感を際立たせている。
 何もせず立っている時も、その息づかいで体を微妙に上下する。パンチやキックを繰り出せば「ハアッ」、ジャンプをすれば「トウッ」と気合いの入ったかけ声を出す。走る、飛ぶ、泳ぐ、壁をよじ登る、必殺技を放つ……全ての動作が滑らかで、そして活き活きとした躍動感がある。先に本作を「冒険活劇」と例えたが、まさにその主人公にふさわしい、やたらに元気なヤツである。迦楼羅の動きを注意深く見ているだけでも、本作の妥協ない作り込みが感じられるのではないだろうか。

●「優しい」難易度
 『迦楼羅王』はどちらかと言えば簡単なゲームだ。そのため上級者にはやや物足りない感もあるが、ただし決して雑な作りのヌルゲーではない。きちんと計算され、調整された簡単さである。言わば本作は、「誰にでも楽しめる難易度」というもののお手本と言えるだろう。
 ゲーム序盤はメチャクチャ簡単なので、出鼻をくじかれて投げ出すことはない。道中にはボーナスアイテムが大量にあり(本当に多い)残機がガンガン増えるので、ミスしてしまっても何度でもトライできる。一見シビアなテクニックを要求される場面(もしくは一見攻略不可能に見える場面)が出てきても、必殺技を有効活用すればアラ簡単、という場合がほとんど。力押しでは絶対倒せない強敵ボスも、正しい攻略法を見つけた途端アッサリ倒すことができてしまう。そんな好バランスを、本作は最後まで保っている。

世が世なら「SCE謹製」?

 『迦楼羅王』を発売したのは、エピック・ソニーレコード(ソニー・ミュージックエンタテイメント)、つまり現在のソニー・コンピュータエンタテイメントにあたる会社である。そして本作のディレクターは、今や『グランツーリスモ』のプロデューサーとして超有名な、山内一典氏(当時ソニー社員、現在はポリフォニーデジタルのプレジデント)。当時はとにかく地味に発売された本作だが、プレステ全盛の今から見ると、なかなかすごいスタッフだ。
 そして、本作を実際に開発したのが「浮世亭」という会社。おもにSNKやソニーからの外注を専門としているようで、スーファミでは本作以外に、人気映画を題材にしたアクション『HOOK』(1992年、エピック・ソニー発売)等を製作。近年ではネオジオの人気アクション『メタルスラッグ』のプレステ版・ネオジオポケット版や、『パズルボブル』シリーズ等を製作している。あまり名前が表に出ることはないが、なかなか実力のある会社と言えるだろう。
 と言うわけでこれら実力派スタッフが製作にあたった本作は、操作性、グラフィック、サウンド、ゲーム性、あらゆる面で非常に高い水準を誇っており、どこをとってもこれと言った欠点が見当たらない。こう言葉にすると極めて平凡なことのようだが、実際にそれがしっかりできているゲームというのは、決して多くないと思う。
 そして、あまりアクの強くないストーリーや設定、控えめの難易度バランスは、いかにも「SCEのPSゲー」っぽいと言うか(スーファミなんだけどね)……「誰もが楽しくプレイできる!」実にカッチリとした良作に仕上がっているのである。
 確かに『迦楼羅王』には、革命的なシステムや衝撃的なストーリー、はたまた超絶な難易度や大爆笑のバカゲー要素、といった、強烈な個性はない。だが「正統派」アクションを求める人間にとって、本作はまず間違いのない1本であると言えるだろう。



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