サイオプス サイキック・オペレーション
Psi-Ops: The Mindgate Conspiracy





 『サイオプス』は、一見するとこれ以上ないくらいありきたりな、3人称視点のアクションシューティングだ。だがあるまったく新しい、極めて魅力的なフィーチャーが、本作を今までにない画期的な作品にしている。PSIパワー(超能力)の存在だ。

 主人公ニック・スクライヤーは、様々な超能力を身に付けた特殊工作員PSI-OPS(サイオプス)である。ただしゲームスタート時点では、そのすべての記憶を消されてしまっており、通常の銃とパンチ・キックしか使うことができない。だがストーリーが進むにつれ、その能力をひとつひとつ思い出していき、最終的には6種類の超能力を自在に操れるようになる。では、それらを順に解説していこう。

テレキネシス Telekinesis(TK)
 念動力。本作の「目玉」といえる能力であり、ゲーム開始後すぐに使えるようになる。本作はHavok物理エンジンを搭載しており、岩、箱、ドラム缶、アイテム、そして敵の体も含め、画面上のあらゆるオブジェクトに、リアルな物理法則が働いている。それらのオブジェクトに照準を合わせてL1ボタンを押すと、オブジェクトがフワ〜ッと宙に浮き上がり、右スティックで自由に操ることができるようになる。気分はまさに、『スター・ウォーズ』のジェダイの騎士! 活用方法は数え切れないほどあり、例えば……

●敵を持ち上げて壁や床、あるいは他の敵に叩き付けたり(壁には血のりがベッタリ)!
●敵を宙ぶらりんにして、ジタバタもがいているところをマシンガンで蜂の巣にしたり!
●敵を谷底や電撃床や酸のプールにダイブさせたり! アアアアア〜〜〜〜!!!!
●巨大な岩を投げつけて敵を下敷きにしたり! グシャッッ!!
●ドラム缶や燃料タンクをぶつけて敵を爆殺したり! ズッギャアアアア!!!!
●天井から吊ってあるクレーンや大きな鐘を揺らして敵にぶつけたり! カ〜〜ン!!
●ロッカーを勢いよく開けて敵を吹っ飛ばしたり! ドガッッ!!
●敵の投げてきたグレネードを空中で投げ返したり! ドッギャアアアア!!!!
●岩や箱でバリケードを作って銃撃を防いだり!
●進路をふさぐ障害物を撤去したり!
●手の届かない所に落ちている武器やアイテムを引き寄せたり!
●箱を階段状に積み上げて高い所に登ったり!
●箱の上に乗ったまま、その箱を持ち上げて空を飛んだり(まるで空飛ぶ絨毯)!

 操作性も抜群で、右スティックでオブジェクトを操りながら、同時に左スティックで移動したり、R1ボタンで銃を撃つこともできる。力加減はL1ボタンの押し込み具合と右スティックの倒し具合で調節。また、一度放り投げたオブジェクトを、空中で再びつかみ、別の方向へ投げつける、といった高等テクニックも可能だ。

リモートビュー Remote Viewing(RV)
 方向キー左を押すと、自分の実体はその場に残ったまま幽体離脱し、主観視点に切り替わる。攻撃はできないが、ドアをすり抜けることができ、敵に見られることもない。これにより実体をさらすことなく、敵の位置や人数等を偵察し、先手を取ることができる。また鍵がかかった部屋など、実際に部屋に入らなくても、室内の重要情報(ドアの暗証番号など)だけを透視する、といった使い方もあるのだ。

マインドドレイン Mind Drain(MD)
 敵の近くでR2ボタンを押し続けると、PSIエネルギー(超能力を使うために必要なエネルギー)をギュイイイイ〜〜〜〜ンと吸い取ることができる。死体からは少量しか吸い取れないが、敵が生きている状態(背後から忍び寄ったり、テレキネシスでダウンさせるなど)なら大量に吸い取れる。そして、生きたままエネルギーを吸い取られた敵は、「あわ、あわ、あわわわわわ!!」……ボンッ! あべし! と、頭が吹っ飛んでしまう! 飛び散る脳ミソ。さすが『モータルコンバット』のミッドウェイ? 初めて見るとかなりショッキングだが、ハッキリいって凄まじい快感だ。

マインドコントロール Mind Control(MC)
 これもメチャクチャ面白い能力。敵に照準を合わせて方向キー上を押すと、その敵の視点に切り替わり、自由に操れるようになる。そうしたら、いきなり仲間に後ろから殴りかかったり! ショットガンで頭を吹っ飛ばしたり! 裏切られた敵からすれば、まさに「なっ! 何をするだァーーーーーッ」といった感じだろう。また、火炎放射器やロケットランチャーといった強力な武器は、アイテムとして出現しないので、「その武器を持った敵をマインドコントロールする」ことによってしか使えないというのもポイントだ。
 そのほかにも、敵に乗り移っていれば当然ほかの敵は攻撃してこないので、悠々と敵陣に侵入してスイッチを押したり! あるいは、窓の外から室内の敵を操作するなどして、自分では入れない場所にあるスイッチを押したり! といったこともできる。
 マインドコントロールが解けた敵は再びこちらに攻撃してくるので、用が済んだら自殺させるのが望ましい。これまた方法はお好み次第だが、至近距離でドラム缶を撃って自爆したり! 建物の屋上から投身自殺したり! 自らプレス機に突っ込んでミンチになったり! さらに裏技として、敵を操作中に左スティックと右スティックを5秒間ほど押し込むと……おもむろにその場にひざまずき! 銃を自分の口にくわえ! 頭を吹っ飛ばして自決する!!

パイロキネシス Pyrokinesis(PK)
 L2ボタンを押すと、腕から火の玉を発射する。そのまま敵にぶつけて火ダルマにしてもよいし、ドラム缶や燃料タンクに引火させて爆殺したり! 木箱に火をつけて、それを敵にぶつけたり! といった使い方もできる。

オーラビュー Aura View(AV)
 いわゆる赤外線ゴーグルやサーマル・ゴーグルのような能力。方向キー右を押すと主観視点に切り替わり、肉眼では見えない敵や隠し通路が見えるようになる。また、こちらに気づいていない敵は青く、気づいている敵は赤く見える、といった機能もある。

 これらの超能力に加えて、マシンガン、ショットガン、スナイパーライフルといった普通の銃火器や、さらに原始的なパンチ・キック攻撃(気づかれずに後頭部を一撃すればステルスキルになるし、倒れた敵をサッカーボールキックでボコボコにできるのも最高!)も使える、というのが実に面白い。組み合わせ次第で、ひとつの場面でも、まさにプレイヤーの数だけ攻略法がある。
 またボス戦では、いかにもアクションゲームらしい、パターン&アドリブの攻略が要求される。自爆特攻兵を次々に差し向けてくるマインドコントロールの達人、巨大なタンクローリーをブン投げてくるテレキネシスの達人、巨大モンスターに変身するイリュージョンの達人……それぞれの能力の達人と、ド派手な超能力合戦が繰り広げられるのだ。

 ストーリーも面白い。とりわけアメコミに出てくるような、分かりやす〜いキャラクターが魅力的だ。主人公のニックは超能力者らしからぬムキムキ軍人だし、ヒロインのサラは巨乳のパツキンギャル。敵の超能力テロリスト軍団も、謎の中国人、キングピンのような巨漢黒人(ニックのかつての親友)、チャイナ娘、ピチピチボディスーツの火の玉姐御(決め台詞「Do you like playing with fire!?」)などなど、笑ってしまうほど濃い。
 まるでアクション映画の中にいるような、スリリングな展開も最高だ。例えば、崩れ落ちる基地から脱出するシーンでは、大小の瓦礫がリアルタイムに落下し、転がり、積み上がる。もし瓦礫が自分の方に飛んできたり、あるいは行く手をふさいでしまったら? ……そう、テレキネシスで活路を見出すのだ!

 4種類の難易度、隠しミッション、各種チート、スキン選択、協力プレイモード、ボスラッシュモード、イベントシーンをカットしたアーケードモード、設定資料集、主題歌(Coldの「With My Mind」)ミュージック・クリップなどなど、ボーナス要素も異常なほど充実。また、ステージクリア後に詳細なスタッツが表示されるのだが、ステルスキルやヘッドショットの回数などに加え、爆発を引き起こした回数や敵を自殺させた回数、さらには「テロリスト軍団の被害総額」なんて項目まであって笑える。とことんプレイヤーを楽しませよう、という気持ちがビシバシ伝わってくるし、同時に開発者自身も楽しんで作っているのが感じられてうれしい。

 とにかく、こんなに新鮮なアイデア、そしてゲーム性を見せてくれる作品は久しぶりだ。誰がやっても気持ちよく楽しめる、極上のエンターテインメント大作に仕上がっている(ちょっとばかり激しい演出はあるが、それも含めて)。続編の構想もあるようだし、アクションゲームファンはぜひプレイすべき傑作といえるだろう。




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