ナツメ・サウンド・クリエイター
岩月博之氏インタビュー




岩月博之 Hiroyuki Iwatsuki
'91 鳥人戦隊ジェットマン(FC)
'91 特救指令ソルブレイン(FC)
'92 奇々怪界 -謎の黒マント-(SFC)
'94 ザ・ニンジャウォーリアーズアゲイン(SFC)
'94 奇々怪界 -月夜草子-(SFC)
'94 ワイルドガンズ(SFC)
'95 Mighty Morphin Power Rangers(SFC)
'95 Mighty Morphin Power Rangers -The Movie-(SNES)
'95 Mighty Morphin Power Rangers -The Fighting Edition-(SNES)
'96 新機動戦記ガンダムW ENDLESS DUEL(SFC)
'96 激走戦隊カーレンジャー 全開!レーサー戦士(SFC) ほか

■岩月さんが音楽を始められたのはいつ頃からですか? 
 高校生の頃にカシオペア(フュージョンバンド)に憧れて、作曲の真似事を始めました。それまでは家庭環境から歌謡曲や演歌ばかりを耳にしていましたが、 高校生の頃に友人を経由してそれ以外のジャンルの曲に触れる機会が増えました。海外の曲を意識し始めたのもその頃です。

■では、ゲームミュージック制作に携わるようになったのは?
 ゲーム音楽の制作は入社してからです。それまでは個人的に曲を作りためるだけでした。面接の時には、X68000のFM音源やMIDI音源(MT-32)などで演奏した曲を録音したデモテープを提出しました。あの頃はMMLとシーケンスソフトの両方を使っていましたね。

■岩月さんの作品には「ヒーローもの」ゲームが多いですが、何か理由があるのでしょうか?
 たまたま私が関わったゲームにそのジャンルが多かったのだと思います。私のほうから特にアプローチしたわけではありません(^^;)。一時期『パワーレンジャー』のゲームの制作時期が重なることがありまして、延々あのテーマ曲を聴く毎日を送っていましたが、結構辛かったです(笑)。

■好きなミュージシャンや、影響を受けた作品などはありますか?
 趣味で継続して聴いているのはカシオペアくらいです。数年前にケミカルブラザーズやアポロ440を知って、それらのジャンルに興味を持ち始めました。ただ、普段ほとんどアーティストよりも曲そのものを目的に選んでいますので、あまりアーティスト自身への興味や執着はありません。たまたま聴いた曲が気になったらそれについて深く調べる、という感じです。
 また、私はもともとゲーム音楽がきっかけで音楽に興味を持った人間ですので、いわゆるゲーム音楽を好んで聴きます。私のゲーム音楽への興味はナムコの『ギャプラス』から始まります。その他当時のナムコ、タイトー、セガなどのゲームの影響はあると思います。
 ただ、学生当時から偏ったジャンルの曲ばかり聴いていましたので、どちらかというとポピュラーなアーティストほど知らないことが多いです。例えばビートルズは就職後に初めてアルバムを聴いたほどです(偏りすぎ!)。
 また、原作のあるゲームを作る際には一応原作の曲を聴きます。ただ大概はそのままコピーして使うことができず、似たような違う曲を作ることになります。また、企画者から曲のイメージとして既存の曲を指定されることもあります。それらの曲が後に影響を与えることもあると思います。『ワイルドガンズ』では西部劇のベストCDを聴きまくりました(笑)。

■では、最近お気に入りの曲は?
 今iPodに入れて聴いている主なものは以下の通りです。
・"Technictix"(サントラ)
・"Theme from Star Trek"(Maynard Fergusonのアルバムから)
・"Wings For My Way"(『F-ZERO GX』のアバタイズデモのBGM)
・"Ridge Racers"(サントラ)
 実は作曲作業中によく聴くのは、その制作中の曲か、または以前に制作済みの曲です。通勤中などもそれらをiPodに入れて繰り返し聴いています。あまり他の曲を聴くとそれらに影響されてしまうからです(^^;)。

■岩月さんが今まで作曲された曲の中で、お気に入りの曲は何ですか?
 全て気に入っています、と言うと自画自賛気味ですが、やはり苦労して作った曲たちですので、それぞれに思い入れはたっぷりあります。強いて一つ挙げるとすると、『奇々怪界 -謎の黒マント-』のスタッフロールBGMでしょうか。『奇々怪界 -月夜草子-』のスタッフロールでは、それをアレンジしたものを入れました。

■では、ご自身で作曲された以外のゲームミュージックで、お気に入りの曲はありますか?
 私がゲーム音楽に目覚めるきっかけとなった『ギャプラス』(ナムコ)のBGMですね。最初に買ったレコード(LP)も『THE RETURN OF VIDEO GAME MUSIC』です。

■現在、作曲に使われているソフトウェア・ハードウェアは何ですか?
ハードウェア:
・Apple PowerMac G5(2GHz)
・Roland XV-5080
・Korg KARMA
ソフトウェア:
・MOTU Digital Performer
・MOTU MachFive
・EASTWESTのオーケストラ音源
・Virtual Guitarist
・Drum From Hell Superior
などですね。

■では、ファミコンやスーパーファミコン時代の制作環境はいかがでしたか?
 昔の環境はもっと質素なものばかりでした。ファミコン当時はNEC PC-98シリーズで、演奏データのメモリイメージを直接作成しながら作曲していました。楽譜は書かず、16進数で直接データを入力しています。そしてそれを実機の音や、Roland D-20というキーボードなどで確認していました。ちなみに、今はMIDIシーケンサを使って作曲していますが、楽譜は相変わらず書きません。
 スーファミ当時はPC-98シリーズと、UNYAというMIDIシーケンサ上で作曲していました。音源はRoland SCシリーズ、キーボードはRoland W-30だったような気がします。サンプリング音源でしたので、市販の素材集なども集め始めた時期です。『奇々怪界』の水の音の一部は、自分でバケツの水の音をサンプリングしてました。あとはSONYのNEWSも使っていました。

■岩月さんから見て、ゲームミュージックとその制作現場は、どのように変わりましたか?
 ゲーム音楽全体について言えば、音源の制約から離れられたことが一番変化した点だと思います。私自身は内蔵音源によるリアルタイム演奏が好きなんですが、一般的には便利なストリーミング演奏が主流になりましたね。また音源の制約がなくなったぶん、いっそう曲そのものの質が求められていると感じています。私の場合、もともと下手の横好きで始めたのをそのまま仕事にしてしまったようなものなので、実力が伴わずなかなか辛い世の中になってきました(^^;)。
 制作寄りの話としては、やはり一つのゲームの規模が大きくなりましたね。ですが実は、ゲーム音楽の制作期間というのはそんなに増えていないので、結構負担が大きいです。昔は一人で同時に二つのゲームの作業を行ったりすることもありましたが、今の規模ではとても無理ですね。

■最後に、岩月さんのゲームミュージック制作に対する考え方を教えてください。
 私の場合、そのゲームがどのような曲を求めている(と自分が感じる)かで曲の方向性を決めています。例えば、これまでアクションゲームの曲を作ることが多くありましたが、 その際はゲームの勢いやノリをBGMでさらに盛り上げようと考えています。あとこれはあまり実践できていませんが、過去に作った曲とは出来る限り違うところがある曲を作りたい、と常々考えています。気を抜くとワンパターンになりがちですので、常に何か新しいことを採り入れようとしています。

■ありがとうございました。

※このインタビューは、岩月博之様の個人的なご厚意によりご回答いただいたものであり、ナツメ株式会社公式の回答ではありません。
※このインタビューは、ロシアからメールをくださったAlexei Bespalkoさんと共同で行わせていただきました。ありがとうございました!
※記事の無断転載はご遠慮願います。



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