m @ s t e r v i s i o n
PinkMovies2000 Overview

1.昼下がり、濡れるOL(渡邊元嗣)大蔵映画

2.痴漢バス いじめて濡らす(荒木太郎)大蔵映画

3.団地妻 不倫でラブラブ(サトウトシキ)国映=新東宝

4.飯場で感じる女の性(荒木太郎)大蔵映画

5.OL性白書 くされ縁(今岡信治)国映=新東宝

6.女痴漢捜査官3 恥情のテクニック(渡邊元嗣)新東宝

7.果てしない欲情 もえさせて![青空](サトウトシキ)国映=新東宝

8.社宅妻暴行 白いしたたり(北沢幸雄)エクセス

9.口説き屋麗子 火傷する快感(佐々木乃武良)エクセス

10.性奴の宿 うごめく女尻(池島ゆたか)大蔵映画

11.いじめる女たち 快感・絶頂・昇天(浜野佐知)エクセス

12.買う妻 奥さま(秘)倶楽部(新里猛作)国映=新東宝

13.いじめる人妻たち 淫乱天国(浜野佐知)エクセス

14.ノーパン女医 吸い尽くして(浜野佐知)エクセス

15.黒下着の淫らな誘い(荒木太郎)大蔵映画

16.淫臭名器の色女(国沢実)大蔵映画

17.ピンサロ病院3 ノーパン診察室(渡邊元嗣)新東宝

18.ロリ色の生下着(池島ゆたか)大蔵映画

19.どすけべ姉ちゃん(上野俊哉)国映=新東宝

20.監禁悪戯 悲鳴のあえぎ(山崎邦紀)大蔵映画

※2000年公開のピンク映画 全93本中、83本を観賞。

2000年のピンク映画 全レビュウ

ベスト主演女優

○時任歩「痴漢バス いじめて濡らす」「黒下着の淫らな誘い」「買う妻 奥さま(秘)倶楽部」ほか
○黒田詩織「OL性白書 くされ縁」「いじめる人妻たち 淫乱天国」「ピンサロ病院3 ノーパン診察室」ほか
○西藤尚「昼下がり、濡れるOL」「痴漢バス いじめて濡らす」「派遣OL 深夜の不倫」ほか

「2000年のピンク映画クイーンは誰か?」と問われたらならば、おそらく10人中10人が佐々木麻由子の名前をあげるだろう。出演本数12本、うち主演が8本というのは近年では記録的だと思うが、これは「所属するプロダクションが強い」などというザ・ゲーノーカイ的な理由からではない。「もっと佐々木麻由子の映画を!」というピンク映画館の館主たちの、つまりはピンク映画を支える(若くはない)観客たちの圧倒的な支持によるものなのである(なんと健康的な業界であろうか!) なかでも団地妻もの「社宅妻暴行 白いしたたり」、篠原とおるアクション「女痴漢捜査官3 恥情のテクニック」、官能SMミステリー「性奴の宿 うごめく女尻」といった“1970年代ジャンル”の作品において余人に替えがたい存在感を発揮した。だが、その一方で、才能のない監督/カメラマンに粗暴に撮られてしまった、魅力に乏しい作品も少なからずあったのは事実。 ● そこで当サイトが主演女優賞の筆頭にあげるのは時任歩である。1999年の夏に浜野佐知のラブストーリー「平成版・阿部定 あんたが欲しい」でデビューしていらい音沙汰がなかったのが、2000年2月に荒木太郎の「黒下着の淫らな誘い」でピンク映画に復帰。原節子→鈴木京香ラインの端正な美貌ゆえに清純/妖艶どちらもOKで、なおかつ、しっとり/コミカルなんでもござれの実力を思う存分に発揮した。出演作品は佐々木麻由子と同じ12本だが、特筆すべきは「駄作が1本もない」という点である。いや、全体として観れば疑問の余地のある作品もあるが、少なくとも時任歩の出演しているシーンは、すべての映画において輝いていた。 ● 2000年にいちばん“化けた”女優といえば黒田詩織であろう。それまで渡邊元嗣のコメディなどに出ていた「可愛い女の子」群のひとりだった彼女が、今岡信治のいささかシュールな道行きもの「OL性白書 くされ縁」のマヌケで哀しいヒロインとして見事に“演技開眼”してしまったのだから。その後も「いじめる人妻たち 淫乱天国」の せつないヒロインを演る一方で、「ピンサロ病院3 ノーパン診察室」では「女・小林旭」を演じるなど硬軟両面を使い分けて活躍。2001年の活躍にますます期待・・・って、この稿を書き上げた後で、御本人がネットの掲示板で引退を発表してしまった。すっげーショック…。 ● 西藤尚は昔も今もレパートリーをひとつしか持たない女優だが、いいんだよ可愛いんだから。渡邊元嗣のラブパワーがその可憐さを最大限にブーストした「昼下がり、濡れるOL」は、映画としての完成度とかは二の次で、もうただひたすら彼女に見惚れる、その幸福感に浸るための映画だった。「ピンサロ病院3 ノーパン診察室」の“世界を救う天使”の役なんてのもこの人以外に考えられない。 ● 次点は「濡れ場要員」から「演技派女優」への見事な転身を見せつつある水原かなえ(「援交コギャル おじ様に溺れて」「いんらん旅館 女将の濡れ姿」「淫ら姉妹 生肌いじり」)に。 出演本数16本と最多の里見瑤子は「痴漢家政婦 すけべなエプロン」「私が愛した下唇」「ノーパン白衣 濡れた下腹部」など、柄に合った作品では活きるが、魅力がまったく発揮されずに終わってしまった作品も多い。良い監督に巡りあって“一皮剥ければ”葉月螢になれる逸材だと思うのだが…。 山崎瞳は序盤戦で「どすけべ姉ちゃん」「OL 金曜日の情事」「ノーパン痴漢電車 見えちゃった!!」と立て続けにひょうひょうとしたふてぶてしい魅力をみせながら、後半で出演作がパッタリ途絶えてしまったのが惜しまれる。今年の葉月螢は所属する「水族館劇場」の劇団公演があったため“主演作”と呼べるのは「一週間 愛欲日記」ぐらいだった。 THANKS>ぢーこ氏(出演本数データ提供)

ベスト助演女優

○林由美香「飯場で感じる女の性」「昼下がり、濡れるOL」「せつなく求めてII 人妻編」ほか
○河村栞「援交コギャル おじ様に溺れて」「性奴の宿 うごめく女尻」「奥様 ひそかな悦び」ほか
○篠原さゆり「いじめる人妻たち 淫乱天国」「淫臭名器の色女」「ノーパン女医 吸い尽くして」ほか

2000年は13本に出演した林由美香は「飯場で感じる女の性」など完全に主役の作品が何本もあるのだが、ここでは「昼下がり、濡れるOL」などで見せた達者なコメディ演技を評価して助演女優賞にまわってもらった。こうしたベタなパターン演技(“撮影所演技”と言ってもいい)は、いわゆる“自然主義演技”に較べると陳腐に見えがちだが、技術(と沢山の経験)が伴わなければ出来ないのは言うまでもない。現役のピンク映画女優では最ベテランであるにも係わらず、決してフケ役がまわってこない若々しさは、もはや「処女の生き血を啜ってる」レベルに達してる気が。 ● 1999年デビューの河村栞は“池島組専属”を解かれて、全部で10本の作品に出演。実年齢たしか十九か二十歳という若さが重宝されて引っ張り凧に。その頑張りを評価してのノミネートだが、発声の変な癖は取れたもの、“女優”としての代表作を残せるかどうかが2001年の課題だろう。 ● 出演=怪演で、邪悪な役であるほど輝くという「ピンク映画界のアマンダ・プラマー」とも言うべき存在が篠原さゆりである。「いじめる人妻たち 淫乱天国」のアル中オナニー女など、この人にしか出せない凄みだと思うが、たとえば伊藤清美ならばそれを計算して演技するところを、この人の場合は「それが意図されたものなのか判らない」って、ところがまたスゴイ(というか何というか…) ● 助演女優、僅差の次点は「人妻家政婦 情事のあえぎ」の“探偵のカノジョ”、「痴漢電車 巨乳もみもみ」の“内務調査班の女”、「ピンサロ病院3 ノーパン診察室」の“悪魔の使い女”と、出演作すべてが柄にピタリとハマって作品を的確にサポートした“とんがりアゴ”のベテラン 工藤翔子。 カムバックしたベテラン 林田ちなみも「おしゃぶり天使 白衣のマスコット」の“もう若くはない婦長”役などで良い味を見せた。 佐々木ユメカは(クソつまらない「多淫OL 朝まで抜かないで」は評価しないが)「不倫願望 癒されたい」での永島暎子ばりの新境地には心を惹かれた。 「ロリ色の生下着」「OL性白書 くされ縁」の“小っちゃな眼鏡っ子”鈴木敦子は、まだ魅力を見せきってない(=魅力を活かす素材に巡り合ってない)感がある。

ベスト新人女優

○鏡麗子「ロリ色の生下着」「どすけべ夫婦 交換セックス」「いじめる人妻たち 淫乱天国」
○南あみ「淫臭名器の色女」「不倫願望 癒されたい」
○望月ねね「ノーパン白衣 濡れた下腹部」「変態肉濡れバイブ」「買う妻 奥さま(秘)倶楽部」

新人賞のトップには、日常生活に差し障りがあるのではと余計な心配をしたくなるほど「ケバい顔だち」にドラッグクイーンのような「強烈なメイク」の“異形の淫魔”鏡麗子を推す。2本目の映画でいきなりバストが巨大になってるという「変身」まで見せた。まさしくポルノ女優の王道である。 国沢組でデビューした南あみは、見た目も演技も「2代目・滝川真子」を襲名するにふさわしい「愛くるしい大根役者」である。次回はぜひ渡邊元嗣コメディで活躍してもらいたい。 浜野佐知・山崎邦紀の「旦々舎」作品でデビューして「2代目・風間今日子」に近い位置に付けている天然巨乳が望月ねね。風間とは反対に、ちょっと被虐系の顔立ちがソソる。 ● 他に印象に残った新人を順不同で並べておくならば、「ノーパン痴漢電車 見えちゃった!!」の池谷早苗、「ノーパン女医 吸い尽くして」の葉月ありさ、「欲情夫人 恥ずかしい性癖」の北沢組・実録ものでデビューして「変態肉濡れバイブ」「監禁悪戯 悲鳴のあえぎ」の山崎組・変態ものへ転戦した上原めぐみ、「団地妻 不倫でラブラブ」「果てしない欲情 もえさせて!」の長曽我部蓉子のそっくりさん=横浜ゆき(「おしゃぶり天使 白衣のマスコット」で長曽我部 本人と共演させられたのは誰の悪意?)、玉石石石石石石石石石混合の新田組から「白衣の令嬢 止めて下さい!」の緑川さらと「極楽露天風呂 カキ回して!」の麻木涼子など。 AV/Vシネマの世界から参入した沢木まゆみ(「口説き屋麗子 火傷する快感」「美人家庭教師 ふしだらな成熟」)と川奈まり子(「現役熟女妻 奥まであたる…」)は、たしかにそちらの世界で名を成しただけのことはある存在感を示した。 また、おそらくこれ1本きりであろう「女痴漢捜査官3 恥情のテクニック」の蒼生侑香里、「B級ビデオ通信 AV野郎 抜かせ屋ケンちゃん」の宮島葉奈も忘れがたい。

ベスト濡れ場

○岸加奈子×野上正義「痴漢バス いじめて濡らす」(演出:荒木太郎)
○佐倉萌×千葉誠樹「援交コギャル おじ様に溺れて」(演出:池島ゆたか)
○風間今日子の8作品すべて(演出…が誰だろうと関係なく)

上2つは「いちばん気持ちの入った濡れ場」ってことで。観てるこっちまで切なくなった。佐倉萌×千葉誠樹のご両人は北沢幸雄の「社宅妻暴行 白いしたたり」でもカラんでいて、こちらはむちゃくちゃイヤラシイ濡れ場だった(3本ともカメラは清水正二) イヤラシイといえば風間今日子である。どんなに映画がつまらなくても彼女さえ出てくれば ★ ★ ★ ★ ★ なのだ。

ベスト男優

○なかみつせいじ/杉本まこと「ロリ色の生下着」「口説き屋麗子 火傷する快感」「ハイヒールの女 赤い欲情」ほか
○やまきよ「ノーパン女医 吸い尽くして」「いじめる女たち 快感・絶頂・昇天」「爆乳風俗 お気に召すまま」ほか
○久須美欽一「義母の淫臭 だらしない下半身」「襦袢未亡人 白い蜜肌」「極楽露天風呂 カキ回して!」ほか

ピンク映画版「アメリカン・ビューティー」におけるケビン・スペイシー(「ロリ色の生下着」)、ヒロインを心理的にじわじわと追いつめるレクター博士(「口説き屋麗子 火傷する快感」)、小さな靴屋を営む一見 誠実そう、じつは靴フェチの変態性欲者(「ハイヒールの女 赤い欲情」)、軽やかにダンス・ステップを踏みながらヒロインをレイプするセクハラ面接官(「黒下着の淫らな誘い」)、オカマの街娼(「いじめる女たち 快感・絶頂・昇天」)・・・これらすべての役が杉本まこと(年度途中で なかみつせいじ に改名)という1人の役者によって演じられたという事実! ● そして、どこも悪くないのに車椅子に乗って姦計をめぐらす入院患者(「ノーパン女医 吸い尽くして」)や、うっとうしい近親相姦兄貴(「爆乳風俗 お気に召すまま」)といった「ツッコミ型の変態キャラ」と、す〜ぐ看護婦に手を出しちゃう浮気者の院長(「エッチな天使 ねっちゃり白衣」)や、理不尽な目に遭うサラリーマン(「いじめる女たち 快感・絶頂・昇天」)などの「マゾ・キャラ」を演じ分けられる やまきよ もまた貴重なバイプレーヤーである。 ● 久須美欽一の出る映画にロクな映画はない。これは真理である。ベタベタなピンク映画に出る一方で、若松孝二や高橋伴明の映画にも出演してきた港雄一や野上正義と違って、久須美欽一はナンパひとすじ。演じる役も「スケベおやじ」のみ。年喰って「スケベおやじ」が「スケベじじい」に変わったが、出演ペースは衰えていない。伊東四朗を見るためにNHKのクダらん時代劇バラエティを観る人がいないように、林家こん平めあてで今どき「笑点」を観る人がいないように、久須美欽一が出てるからといってクソつまらん映画を観る気にはなれないが、それでもなんかの拍子に観てしまったりすると、このおっさんだけは憎めなかったりする…そんな役者なのである。 ● 次点として中村和彦柳東史らの浜野/山崎組の男優たちをあげておく。 「痴漢電車 手のひらで桃尻を」で見せた寺十 吾(じつなし・さとる…と読む)の飄々とした演技も印象に残った。 明らかに「久保新二の後継者」の位置を求められているかわさきひろゆきだが、出演作が多かったわりに良かったのは「いんらん旅館 女将の濡れ姿」の二役ぐらい。 自作でも「キャラバン野郎」シリーズ他で主役を務めている荒木太郎は、カメラマン・ディレクター下元哲の「ノーパン浴衣妻 太股の肉づき」で“潰れそうな下町銭湯の主人”に扮して、いつものキャラで好演した。役者はほとんど引退状態の池島ゆたかだが、深町章「OL 金曜日の情事」の“白髪頭のスケベじじい”や、新人・高田宝重へのご祝儀出演「痴漢電車 ナマ足けいれん」での“エルビス・マニアのチョビヒゲ痴漢”など、じつに楽しく見せてもらった。2001年も積極的な外部出演を希望するぞ。監督といえば望月六郎も久々のピンク映画「B級ビデオ通信 AV野郎 抜かせ屋ケンちゃん」で“映画監督”に扮して、プロの役者以上の存在感をみせた。寂しかったのは国映勢で、わずかに「どすけべ姉ちゃん」の川瀬陽太を憶えてるぐらいで、あとはあまり印象に残らなかった。

ベスト監督

○荒木太郎「痴漢バス いじめて濡らす」「飯場で感じる女の性」「黒下着の淫らな誘い」ほか
もういちど、上のベスト20を見なおしてほしいのだが上位7本は、荒木太郎・渡邊元嗣・サトウトシキが2本ずつと今岡信治が1本である。そして11位〜20位に浜野佐知が3本入っていて、荒木・渡邊がさらに1本ずつリストに加わる・・・つまり、2000年のピンク映画を総括すればそういうことなのだ。 ● 大蔵映画で5本を発表した荒木太郎が明らかにキャリアのプライムタイムを迎えつつあり、大蔵・新東宝をまたにかけ6本を多作した渡邊元嗣はデビュー時 以来、2度目の黄金時代に突入している。サトウトシキは2001年の4月下旬に「青空」というオリジナル・タイトルで再公開された「果てしない欲情 もえさせて!」を観ても明らかなとおり、すでに「ピンク映画」というカテゴリーを超越してしまっている。そして「四天王」に続く(「七福神」とひと括りにされた)30代の次世代監督の中では頭ひとつ抜け出した感のある今岡信治は、2001年はやくもエクセスと新東宝で2本の新作が待機/撮影中だが、それだけでなく、いまいちばん「一般映画」への進出が期待される。「濡れ場込みで60分の映画」であるピンク映画は「中篇のドラマツルギー」で成り立っており、「90分の映画」とは、まるっきり文法自体が異なっていて、ピンク映画から一般映画に移行する際に、幾多の監督がここで躓いたわけだが、今岡信治の文法は「90分の映画」に向いてると思う。また、デビュー前の自主映画「夏の夜空に未来が見える」以来、テクニック的にはほとんど進歩のない渡邊元嗣は別として、8ミリ映画的手法を無理なく劇映画のなかに融合させることに成功している今の荒木太郎も「90分の映画」を観てみたい1人である。 ● 対して、エクセスと新東宝で6本の新作を手掛けた浜野佐知(新東宝では的場ちせ名義)は「客を勃たせるポルノグラフィを作っているのだ」という意識を忘れることなく、つねに映倫の許容ラインぎりぎりで勝負する、最もピンク映画監督らしいピンク映画監督である。そのアグレッシプな演出姿勢がドラマにも波及して(常に、ではないが)力のある作品を生んでいる。いちばん正統的な「小沼勝の後継者」かもしれない。浜野佐知が小沼ならば、西村昭五郎は池島ゆたかだ。この、俳優出身の“日本のジョン・レスリー”こと「ミスター・ピンク映画」は、2000年も大蔵と新東宝から5本の「娯楽映画」を送り出した(破綻がなく小さくまとまってしまうのが欠点…という意味では、西村昭五郎ってよりジョン・バダムか?) 1999年の「義母覗き 爪先に舌絡ませて」で佐々木麻由子をスターダムに押しあげ、一躍、大蔵映画のエースとなった国沢実も、座付作家・樫原辰郎とのコラボレーションで4本の、いずれも意欲的な(しかし意欲ほどには成果に結びついていない)新作を発表した。 ● 最後に、2000年はベテラン 深町章の作品を1本もランクインできなかったことが残念である。2001年の捲土重来を期待したい。

ベスト脚本家

○小林政広「団地妻 不倫でラブラブ」「果てしない欲情 もえさせて!」「どすけべ姉ちゃん」ほか
2000年も脚本賞は小林政広に。一般映画の監督としては鼻持ちならなくて大キライなのだが、ピンク映画の脚本家としてはとびぬけて質の高い脚本を書く。 次点には、浜野佐知にはウェルメイドな(往々にして攻撃的フェミニズムの)脚本を提供しつつ、自身の監督作になると一転して、奇妙奇天烈な欲望にとり憑かれた人々を描く“ピンク映画界のデビッド・リンチ”と化す山崎邦紀に。 荒木太郎「痴漢バス いじめて濡らす」「飯場で感じる女の性」の内藤忠司も良い脚本を書いていると思う。 終盤に、深町章3本連続登板で駆け込みデビューしたかわさきりぼんには(岡輝男に書かれて深町章の才能を浪費されるよりは、なんぼかマシなので)がんばってとエールを送っておく。

ベスト カメラマン

○清水正二「痴漢バス いじめて濡らす」「社宅妻暴行 白いしたたり」「性奴の宿 うごめく女尻」ほか
この部門は、本人が引退しないかぎり永遠に清水正二(志賀葉一)で決まりでしょう。 次点もやはり小山田勝治(「ノーパン女医 吸い尽くして」「痴漢電車 手のひらで桃尻を」「変態肉濡れバイブ」ほか) 今のピンク映画界でこの2人の実力は突出してる。映画を観ていて「キレイな画だなあ」と思うと撮影は必ずこの2人のうちどちらかなのだ。 他に「ハイヒールの女 赤い欲情」で印象的な画を作った井上明夫を挙げておく。

ベスト新人監督

○該当者なし

ワースト

○監督:女池充「不倫妻 情炎」「多淫OL 朝まで抜かないで」
○女優:愛染恭子「愛染恭子 Gの快感」「どすけべ女社長 未亡人の性欲」
○男優:杉 浦の助(監督・杉浦昭嘉の別名)「人妻 淫らな情欲」

女池充は(たとえそれが雀の涙ばかりの銭であっても)「ギャラを貰って商業映画を監督する」という行為についてどう思っているのか? 巷のピンク映画館では画も見えない(ほど画面が暗い)、台詞も聞こえない(ほど録音レベルが低い)、しかも女優がハダカにもならない代物を作っておいて職業的責任というものを感じないのか? そーゆー映画が撮りたいんならテメーの金で作って中野武蔵野ホールのレイトショーで上映しろよ。 ● あと監督については現在、新東宝に深町章、大蔵に池島ゆたか、エクセスに浜野佐知という「ピンク映画館の観客のニーズ」に応えられる多作派の監督がいて、その他にも油の乗りきった中堅監督が何人もいるんだから、新人にチャンスを与えるという意味でも、そろそろ小川欽也・小林悟・新田栄・関根和美といった旧弊なセンスの監督には退いてもらっていいんじゃないか? ● 愛染恭子は頼むから引退してくれ。スクリーンで生ゴキブリと年増女の汚いハダカを観るのだけは堪えられん(年増でもキレイなら全然オッケー) どーゆーつもりで自分で主演してんだか知らんが、杉浦昭嘉の“演技”は、おれが今までに観たどんな最低の自主映画の出演者よりも酷かった。

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