m@stervision my favorite movies 2006

2006年に公開された新作映画のうち上から好きな順に並べたリスト(映画祭上映を含み、リバイバルを除く)
※対象本数は外国映画 192本、日本映画 178本(うち、ピンク映画 61本)


foreign movies 60

1.サイレントヒル(クリストフ・ガンズ)[ビデオ撮り]

2.デビルズ・リジェクト マーダー・ライド・ショー2(ロブ・ゾンビ)

3.ユナイテッド93(ポール・グリーングラス)

4.プルートで朝食を(ニール・ジョーダン)

5.ヒストリー・オブ・バイオレンス(デビッド・クローネンバーグ)

6.SPL 狼よ静かに死ね(ウィルソン・イップ/ドニー・イエン)

7.16ブロック(リチャード・ドナー)

8.グエムル 漢江の怪物(ポン・ジュノ)

9.忘れえぬ想い(イー・トンシン)

10.インプリント ぼっけえ、きょうてえ(三池崇史)[ビデオ上映]

11.ディセント(ニール・マーシャル)

12.ローズ・イン・タイドランド(テリー・ギリアム)

13.リトル・ミス・サンシャイン(ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス)

14.スカイ・ハイ(マイク・ミッチェル)

15.スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと(ジェームズ・L・ブルックス)

16.プラダを着た悪魔(デビッド・フランケル)

17.ユア・マイ・サンシャイン(パク・チンピョ)

18.迷い婚 すべての迷える女性たちへ(ロブ・ライナー)

19.もしも昨日が選べたら(フランク・コラーチ)

20.メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬(トミー・リー・ジョーンズ)

21.THE HILLS HAVE EYES(アレクサンドル・アジャ)[輸入DVD観賞]

22.アメリカ、家族のいる風景(ヴィム・ヴェンダース)

23.ダック・シーズン(フェルナンド・エインビッケ)

24.カオス(トニー・ギグリオ)

25.ディバージェンス 運命の交差点(ベニー・チャン)

26.ホステル(イーライ・ロス)[輸入DVD観賞]

27.ハイテンション(アレクサンドル・アジャ)

28.エコール(ルシール・アザリロヴィック)

29.記憶の棘(ジョナサン・グレイザー)

30.トンマッコルへようこそ(パク・クァンヒン)

31.明日へのチケット(エルマンノ・オルミ/アッバス・キアロスタミ/ケン・ローチ)

32.ヴィーラ 踊るONE MORE NIGHT(スレーシュ・クリシュナ)

33.マインドハンター(レニー・ハーリン)

34.レイヤー・ケーキ(マシュー・ヴォーン)

35.007 カジノ・ロワイヤル(マーチン・キャンベル)

36.あるいは裏切りという名の犬(オリヴィエ・マルシャル)

37.インサイド・マン(スパイク・リー)[ビデオ撮り]

38.プライドと偏見(ジョー・ライト)

39.パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト(ゴア・ヴァービンスキー)

40.剣客之恋(ゴードン・チャン)

41.ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!(ニック・パーク&スティーブ・ボックス)

42.僕のニューヨークライフ(ウディ・アレン)

43.ブロークン・フラワーズ(ジム・ジャームッシュ)

44.サージェント・ペッパー ぼくの友だち(サンドラ・ネットルベック)

45.プリティ・ヘレン(ゲイリー・マーシャル)

46.春の日のクマは好きですか?(ヨン・イ)

47.BLACK NIGHT の1話と3話のみ(パトリック・レオン/タニット・チッタヌクン)

48.40歳の童貞男(ジャド・アパトー)

49.家門の危機(チョン・ヨンギ)

50.ダ・ヴィンチ・コード(ロン・ハワード)

51.グッドナイト&グッドラック(ジョージ・クルーニー)

52.太陽(アレクサンドル・ソクーロフ)

53.機械じかけの小児病棟(ジャウマ・バラゲロ)[ビデオ撮り?]

54.ハード キャンディ(デビッド・スレイド)[ビデオ撮り]

55.ルイーズに訪れた恋は…(ディラン・キッド)

56.薬指の標本(ディアーヌ・ベルトラン)

57.SCARY MOVIE 4(デビッド・ザッカー)[輸入DVD観賞]

58.ピンクパンサー(ショーン・レヴィ)

59.恋するブラジャー大作戦(仮)(パトリック・レオン&チャン・ヒンカイ)

60.プレスリー vs ミイラ男(ドン・コスカレリ)

japanese movies 50

1.絶倫絶女(いまおかしんじ)

2.鉄コン筋クリート(マイケル・アリアス)

3.フラガール(李相日)

4.美姉妹レズ 忌中の日に…(山内大輔)

5.紀子の食卓(園子温)[ビデオ撮り]

6.「コワイ女」より 鋼(鈴木卓爾)[ビデオ撮り]

7.雪に願うこと(根岸吉太郎)

8.時をかける少女(細田守)

9.やわらかい生活(廣木隆一)

10.花よりもなほ(是枝裕和)

11.おいしい殺し方(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)[ビデオ上映]

12.雨の町(田中誠)[ビデオ撮り]

13.H A Z E(塚本晋也)[ビデオ上映]

14.ドラえもん のび太の恐竜2006(渡辺歩)

15.スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ(深作健太)[ビデオ撮り]

16.映画監督になる方法(松梨智子)[ビデオ上映]

17.恋する日曜日(廣木隆一)[ビデオ撮り]

18.RAINBOW SONG 虹の女神(熊沢尚人/プロデュース:岩井俊二)[ビデオ撮り]

19.DEATH TRANCE(下村勇二)

20.立喰師列伝(押井守)[デジタル製作]

21.まじめにふまじめ かいけつゾロリ なぞのお宝大さくせん(亀垣一)

22.L O F T(黒沢清)[ビデオ撮り]

23.武士の一分(山田洋次)

24.オトシモノ(古澤健)[ビデオ撮り]

25.ストロベリーショートケイクス(矢崎仁司)[ビデオ撮り]

26.ホテトル嬢 癒しの手ほどき(竹洞哲也)

27.妻失格 濡れたW不倫(渡邊元嗣)

28.盗撮サイト 情事に濡れた人妻(渡邊元嗣)

29.ホスト狂い 渇かない蜜汁(池島ゆたか)

30.木更津キャッツアイ ワールドシリーズ(金子文紀)[ビデオ撮り]

31.デスノート the Last name(金子修介)

32.花田少年史 幽霊と秘密のトンネル(水田伸生)

33.熟母・娘 乱交(深町章)

34.ルート225(中村義洋)[ビデオ撮り]

35.水の花(木下雄介)

36.闇打つ心臓(長崎俊一)[ビデオ撮り]

37.ゲド戦記(宮崎吾郎)

38.BLACK KISS(手塚眞)[ビデオ撮り]

39.人妻とOL あふれる愛液(佐藤吏)

40.巨乳DOLL わいせつ飼育(浜野佐知)

41.ヅラ刑事(河崎実)[ビデオ撮り]

42.猫目小僧(井口昇)[ビデオ撮り]

43.卍(井口昇)[ビデオ上映]

44.おいら女蛮(井口昇)[ビデオ上映]

45.ふしだらな女 真昼に濡れる(田尻裕司)

46.パビリオン山椒魚(冨永昌敬)

47.淫らな果実 もぎたて白衣(加藤義一)

48.混浴温泉 湯煙で艶あそび(加藤義一)

49.楽園 流されて(亀井亨)[ビデオ上映]

50.昭和エロ浪漫 生娘の恥じらい(池島ゆたか)


日本映画製作者連盟(=映連)の発表によると2006年の映画業界全体の興行収入2,025億5千万円のうち、邦画の興収が過去最高の1,077億5千万円を達成。邦画のシェアが53.2%となり、1985年以来 21年ぶりに洋画のシェアを逆転した。邦画のシェアは日本映画の黄金期といわれた1950年代後半は70%台で推移していたが、1960年の78.3%をピークに低落傾向に入る。そして1975年──6月に「タワーリング・インフェルノ」が公開され、12月にCIC(現在のUIP)が「JAWS」を洋画史上初の「全国一斉拡大公開」に踏みきった年に、日本の映画興行史上、初めて邦洋のシェアが逆転した。2002年には邦画のシェアは27.1%にまで落ち込んでいたのが、わずか4年で53.2%まで戻したのだから邦画バブルと呼びたくなるのもむべなるかなだ。 ● 興収ばかりではない。公開本数もまさにバブルと呼ぶにふさわしい。おれが個人的に毎週の「ぴあ」から拾っているデータによると2006年の公開本数はなんと 712本(リバイバルや映画祭公開を除く) これに「ぴあ」に無視されているピンク映画 76本+薔薇族映画3本を加えるならば2006年の全公開本数は 791本 にもなるのだ。もはや誰も物理的にすべての映画を観ることは不可能な数である(たとえば おれが観たのは 370本。これで全体の半分も観てないのだ) それまでの年間公開本数の最高は1989年──ビデオバブルを背景に「ビデオ発売のためになんでもかんでも公開しとけや!」と洋画ビデオメーカーが浮かれまくって公開した 577本 が最高で、その後1992年には 422本まで減ったのだが、近年の渋谷のミニシアターの増加とともに徐々に往時に肉薄し、2004年には 594本 と新記録、さらに翌2005年に 626本 と32本増え、それが昨2006年、712本と一気に86本増えた。この主たる理由は言うまでもなく安価なビデオ撮り映画普及 蔓延にある。業界のポストプロダクション態勢が整ったことにより、ホームビデオの延長のような機材でも「映画でござい」って顔をして公開できるようになったわけだ。712本の内訳は洋画372本:邦画340本である。2005年は洋画347本:邦画279本、2004年は洋画334本:邦画260本だから、増えてるのはほとんど邦画なのだ。ちなみに1989年の577本の内訳は、洋画448本:邦画129本だった。つまり1989年が(B級C級Z級)洋画バブルだったとしたら、現在のそれは(B級C級Z級)ビデオ映画バブルとも言うべきものなのである。 ● 留意すべきなのは、興収バブルと本数バブルはリンクしていないという点である。邦画の本数を増やしているB級C級Z級のビデオ映画はほとんど「興収バブル」に貢献していない。稼いでいるのは(内容はともかく製作費が)A級の一部の作品のみで、あとの9割は製作業界の肥やしにしかなっていない。いや、漏れ聞くところによればスタッフとて決してマトモなギャラを貰ってるわけではないらしい。ギャラは安い。映画も安い。客も入らない。──じゃあ、この濫作バブルで(自称「映画監督」たちの自己満足を別にしたら)いったい誰が得してるんだ?

こうした邦画バブルと対になって語られるべき現象が、邦画番線消失の危機である。ひと足さきに邦画番線を邦洋混合チェーンに衣替えした松竹に続いて、東映が「○○東映チェーン」の実質的な解体を終え、興行主体を完全に(自社のT・ジョイを始めとする)シネコンに切り替えた。東宝にはいまだに邦画番線(日劇2チェーン)というものが存在はしているのだが、一人勝ち状態が続く東宝は昨年は常時2本以上の作品を公開する事態となったため、結果としてどれが邦画番線で、どれが洋画チェーンで公開されたものか区別がつかなくなった。興収のほとんどをシネコンで稼いでいるのは東宝とて同じことで、実際、シネコンに出れば「どっちが邦画番線の作品なのか」なんてのは全く関係ないわけで、昨年、東宝が直営劇場の経営と番組編成を担当していた興行部を分社化して、シネコン経営会社である「TOHOシネマズ」に一本化したことは、その象徴といえるだろう(つまり、現在の東宝本体には製作委員会DVDのセールス部隊テレビの企画部不動産屋と総務経理の人間しか残ってないわけだ) ● さて、おれが「邦画番線消失の危機」というのは物理的な劇場網の解体だけを指して言ってるのではない。邦画番線の消失とはすなわち、そこで公開されるべき日本映画の本流がいまや消えかかっているということだ。字幕を読めない観客のための、テレビの延長としての「映画」、マンガの親戚としての「映画」ばかりがスクリーンを占領し、本来「日本映画」の中心を占めるべき作品群の存在感がほとんど感じられないのだ。大黒柱たるオーソドックスを欠いた、伝統工法を無視して好き勝手に林立する独立柱と奇抜な室内装飾だけのハリボテの楼閣。見栄えはするが颱風が来たらいっぺんでぺしゃんこになってしまう、ぺなぺなの建造物──それがいまの日本映画である。 試しに、上に挙げた50本の日本映画のうち、ビデオ撮りやビデオ映画、それにアニメーションとピンク映画を除くとちょうど10本。たった10本である。並べてみると以下のようになる。

  ・フラガール(李相日)[シネカノン配給]

  ・雪に願うこと(根岸吉太郎)[ビターズ・エンド配給]

  ・やわらかい生活(廣木隆一)[松竹配給 ※但し、公開はミニシアター系]

  ・花よりもなほ(是枝裕和)[松竹配給]

  ・DEATH TRANCE(下村勇二)[メディア・スーツ配給]

  ・武士の一分(山田洋次)[松竹配給]

  ・デスノート the Last name(金子修介)[ワーナー映画 配給]

  ・花田少年史 幽霊と秘密のトンネル(水田伸生)[松竹配給]

  ・水の花(木下雄介)[ぴあ=ユーロスペース配給]

  ・パビリオン山椒魚(冨永昌敬)[東京テアトル配給]

こうしてみると意外に松竹が頑張っているが、それにしても東宝と東映にはフィルム撮りのマトモな本篇は1本もなかったってことだ。到底「これが日本映画の本流でござい」とはいえぬ貧弱なラインアップではないか。 ● いや、なにもおれ個人の判断基準を一般論だと主張するのではない。それが証拠に今年はついに鈴木清順の「ツィゴイネルワイゼン」以来、四半世紀ぶりに邦画大手3社以外の作品(シネカノン「フラガール」)が日本アカデミー賞の最優秀作品賞を獲るという椿事 快挙が起きた。あらためて記までもなく日本アカデミー賞というのは、投票権を持つ会員の大半が邦画大手3社および関連会社の社員が占めるお手盛り表彰である。授賞式でシネカノンの李鳳宇代表が「インディペンデントがとれない賞だと思っていた」と驚き、李相日監督が「他の賞はとれても、日本アカデミー賞だけは取れないと思っていた」とコメントするのも故あることなのだ。まあ、もちろん今年は(東西撮影所を抱え会員数がいちばん多いと言われる)東映が「明日の記憶」「男たちの大和 YAMATO」と2本ノミネートされていて票が割れたってこともあるんだろうけど、それにもまして自分の会社でこういう映画を作れなかったことに対して素直にシャッポを脱いで(死語)正直な投票をした会員が多かったってことだろう。それはつまり自社批判票が例年になく多かったってことだ。 ● 日本映画の崩壊が言われて久しいが、邦画バブルといわれるいま、いよいよ日本映画は転換期を迎えた。同じようなパラダイム・シフトが襲った邦楽業界に例えるならば、それまでの歌謡曲が衰退して、歌謡曲とは似て非なる「Jポップ」があっというまに業界全体を席捲し、いまや「歌謡曲」や「演歌」を聴くのは一部のアイドルおたくとお年寄りのみ──という状況が、日本映画界にもやって来ようとしているのだ。やがて「日本映画」が完全に絶滅してしまったときに、それでも映画館に足を運ぼうという気になるだろうか。おれは「日本映画」の将来を悲観している。

なお、世評の高い「ゆれる」は未見。べつに含むところはなく単純に食指が動かなかった。3作品を連発した井口昇の低評価を意外に思われるかもしれないが、井口昇は「アクションが撮れない」という致命的な弱点を露呈したと思う。せめて「撮ってるふり」でも出来ないと一般向けのエンタテインメント映画の監督としては難があるだろう(ぜひ頑張って克服してください) ● 韓国映画に関しては「片方が死んで結末を付けるラブ・ストーリー」はもういい加減いいやと思って観るのをやめたら観賞本数がガタンと減った。 ● 最後に「ベスト映画館」をシネマライズに。ロリコン死すべしという「ハード キャンディ」をやったすぐあとにロリコン万歳(と一見みえる)「エコール」を組む節操のなさ……じゃなくて、下手したら児童ポルノ法で挙げられたっておかしくない「エコール」を堂々と上映したり、お正月番組に「ダーウィンの悪夢」と「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?」を組むという硬派な姿勢に敬意を表して。


worst movies

・愛妻日記(サトウトシキ)[ビデオ上映]

・蟻の兵隊(池谷薫)[ビデオ撮り]

・悶絶 ほとばしる愛欲(榎本敏郎)

・レディ・イン・ザ・ウォーター(M.ナイト・シャマラン)

・ナチョ・リブレ 覆面の神様(ジャレット・ヘス)


サトウトシキの「愛妻日記」は内容以前の問題として、ともかく撮影&上映画質が酷すぎる。白トビしまくりなだけでなく、白トビ部分がことごとく黄ばんでる。ヒロインの永井正子はキレイな女優さんなのに、開映15分後に「顔のアップ」があって、そこで初めてどんな顔してるのかわかる。もちろんそれまでにも何回も顔は写ってるのだが、バストアップくらいの構図じゃ画像がぼけてて判別できないのだ。クライマックスに全裸のヒロインを全身ショットでとらえた長台詞のシーンがあるのだが、その大切な見せ場のシーンでどんな顔をしてるのか皆目わからないのだ。後ろ向いてるんじゃないよ。正面向いてるのに画面がボケボケなので判別できないのだ。ユーロスペースのビデオプロジェクターの性能というよりは原版の質が酷いのだと思う。なぜなら次週上映の「WHITE ROOM」篇の予告では白い部屋がちゃんと白かったし、なにより同時上映の「饗宴」は──けっして良画質ではないものの──ここまで酷くないし、いちおうピントも合ってるのだから言い訳はできまい。女池充が初日に観に行って「客から金とって見せる以前の問題」と指摘してたそうだけどいいこと言うじゃないの。こんな撮影をしてしまった広中康人、こんなマスター画質で良しとした監督のサトウトシキ、制作のアルチンボルド、配給の松竹、上映劇場のユーロスペース──みな、プロとして失格なので本年度のワースト・ワンとする。あと、余談だけど映倫は台詞で「おまんこ」って口にするのOKなのね。たしかビデ倫のAVはアウトだよね? ● たとえばあなたが江東区の区役所に勤めてるとして、ある日とつぜんアメリカの老人がやって来て「わたしの初めての出撃で、焼夷弾を落とした想い出の場所を再訪したい。ついては当時の被災者の方に地上はどんな様子だったのか話を聞きたい」と言われたら(東京大空襲で祖母を亡くしているかもしれない)あなたはどう思うだろうか。「蟻の兵隊」はその無神経さに観ててムカムカムカムカした。またドキュメンタリー「映画」としてみても、靖国神社に初詣に来たおネエちゃんとか女医とか導入部からしてあざと過ぎるし、BGMとSEの付け方もイージーで陳腐。てゆーか、この手のドキュメンタリーにSEって何? そもそも今ごろまだ裁判をやってるって、この人たちはいつ裁判を起こしたの? 「国民党軍」としてどう戦ったの? 当時の戦況は?──そういう基本的なインフォメーションがまったく欠けている、センチメント過多なダメなドキュメンタリーの典型。まったく評価しない。 ● 榎本敏郎「悶絶 ほとばしる愛欲」は2006年のピンク映画を代表するダメ映画の1本として。 ● 「レディ・イン・ザ・ウォーター」は映画をナメすぎ。「ナチョ・リブレ 覆面の神様」もまたコメディ(とプロレス)をナメきっているのが許しがたい。コメディ映画としての「段取り」をナメているということは、すなわち「ハリウッド映画」をナメているということである。