m@stervision pinkarchives 2006

★ ★ ★ ★ ★ =すばらしい
★ ★ ★ ★ =とてもおもしろい
★ ★ ★ =おもしろい
★ ★ =つまらない
=どうしようもない



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妻のいとこ 情炎に流されて(荒木太郎)

1990年、バブルまっさかりの頃。気鋭の青年実業家が部下を連れて南洋探検に出かけた。漕ぎ着いたのはSEX大好きな半裸の娘たちが暮らす楽園ヌーディスト島。そこで青年実業家はひとりの美女に恋をした……という導入部に「お、無謀にもピンク映画で漂流ものか!?」と身を乗り出したのだが、これはプロローグ。本篇はそれから16年後の現在。東京。バブルはあっけなくハジけて会社は倒産。今では売り出し中の建築/インテリア・デザイナーである妻にアゴでつかわれる専業主夫の日々。ギスギスした夫婦関係に目をつぶりながら、家事とどぶろくの研究に日々を費やす家庭内プータローである。そんな彼のところにちょくちょく遊びに来る妻の無邪気な──自分の性的魅力に無頓着な──従妹は、南の島の美女に瓜二つだった……。 ● えーと、どこからツッコんでいいものか途方にくれるが、まずツカミのヌーディスト島の描写。予算の都合で女が3人だけなのは目をつぶるとしても、恰好が「ビキニの上下にパレオ」って、それヌーディストじゃないじゃん! 最近は映倫だって「濡れ場以外はヘアヌードOK」なんだから、なぜ全裸にせん?(……剃ってた? いや、だったら生やしてるモデルさんをキャスティングしなさいよ) それで、主人公の永遠のヒロインたる「南の島の美女」を演じる平沢里菜子がミスキャスト。いや、キレイな女優さんだけど、この人はリアル向きの女優だろ。国映の映画とか観てないのか?>荒木太郎。 この映画が想定してる「ビキニ&パレオ姿で海岸の岩に横座りしてウクレレを弾く」という、つまり人魚のイメージにふさわしくて、なおかつ里見瑤子の演じる「生活に疲れた妻」と対照的な「まぶしい若い娘」ができるのは藍山みなみ吉沢明歩あたりでしょう。でまた、この二役が(南国人と日本人なのに)まったく一緒で、あまりに描写が下手なので最初に妻の従妹が出てきたとき「彼女も南の島から日本に渡ってきたの?」とか思っちゃう。たとえば片方は「南洋美人」なんだから体に小麦色のドーランを塗るとかすべきじゃないのか? 紀伊国屋の通り抜けとか行けば舞台用の化粧品が売ってんじゃん。そんな高いもんじゃない。なんでそれぐらいの手間暇を惜しむのよ。 ● 脚本は三上紗恵子。これで10本目だが、あいかわらず構成がぐじゃぐじゃ。これさあ、本筋は、かつての栄光の日々と輝く恋の「記憶」をよすがに、死んだような日々を生きてる主人公の前に、その「記憶」と直結する、まぶしい若い娘があらわれたことからドラマが始まるわけでしょ? なのにその「妻の従妹」は劇中で初めて主人公の前に現れるわけじゃないのよ。設定からいって主人公と妻は、まだ主人公の景気がよかった頃に結婚したんだよねえ? 倦怠の深さからいけばもう結婚10年近くいってるわけでしょ? じゃあ、妻の従妹とも知り合って10年たつんじゃんか。その10年のあいだに何もドラマはなかったの? てゆーか、まだ「南の島の美女」の記憶が生々しかった10年前に「妻の従妹」と初めて出会ったときの描写がなぜ無いの? これ「妻の従妹が(受験とか就職で)上京してきて、主人公夫妻の家に居候する。彼女とは結婚式のとき以来だが、10年ぶりに会った彼女は見違えたように大人の女になっていた」といった設定をひとつ追加するだけで解決する問題なのに。いやだって、ここんとこ大事なポイントでしょ? ● その後、とりたて山らしい山も無いまま時間だけが進んで、やがて主人公と妻の従妹は、妻の出張中にボートに乗っていて嵐に遭遇、どこかの海岸に「流されて」しまうんだけど、この時点で映画が始まって50分経過。この構成配分もおかしいだろー。だって残り10分で、ムラムラ来て襲って逃げてヤッちゃってでもやっぱり妻が好き……という、えっ?えっ?えええええぇぇぇぇっ?という強引な展開が詰まってるんだぜ。もうね、三上紗恵子はしばらくオリジナル禁止。1年ぐらいは(ピンク映画だから許される)勝手リメイクに徹するべき。たとえば本作だったら「流されて」をピンク映画に翻案するにはどうしたらよいか、真面目に考えること(たとえば2月にアップリンクでやった亀井亨のビデオ作品「楽園 流されて」脚本:永森裕二・亀井亨 は「流されて」の翻案でありつつ、みごとにオリジナルな作品になっていた) そうして「構成」を勉強しなさい。そうしないといつまでたっても上達しないぞ。てゆーか、荒木太郎も自分で主人公のナレーションを意味もなく「戦時下の大本営発表のラジオ放送」を模して入れてるヒマがあったら、もっと映画の基本的なとこに手間暇かけなさいよ。 ● 撮影は清水正二。 ヌーディスト島の台詞なし脱ぎ要員に愛川京香(=紅蘭)。 淡島小鞠こと三上紗恵子も「南の島の娘」と「近所の人」役で出演。今回は脱ぎなし。 あと、おそろしいことに今回、男優5人は全員シロートなのだった(含む>丘尚輝こと岡輝男先生) だーから、もっと映画の基本的な(以下略)>荒木太郎。 ● [追記]BBSに今村昌平の「西銀座駅前」の翻案ではないかというご指摘をいただいた。あ、たしかに言われてみれば、妻の従妹が主人公に親切な理由とかもまったく一緒だ。ただし主人公に浮気をそそのかす友人の存在(西村晃)がそっくり抜けている。う〜ん、尺が10分しか違わないのに、荒木太郎のほうはなんであんなにスカスカなんだ!? [オーピー(大蔵映画)12月22日公開]

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祐希のおねだりナース お熱い注射がスキッ(小坂井徹)

「女優・林由美香」発刊記念 WEB版ボーナストラックとして、林由美香出演のAV作品のレビュウをお贈りする。去年、アップリンクで行われた林由美香 追悼上映のトークショー・ゲストとして登壇したAV監督の小坂井徹が「こないだ出てもらった作品が、たぶん彼女の最後のAVだと思う」と話していた作品なのだが、「女優・林由美香」に掲載されている詳細なAV出演作リストを見ると「最後」どころか死んだあともたくさん出演してるんですなあ。さすがは林由美香。 ● [DVD観賞]さて「出演」とはいっても、これは宇宙企画の単体美少女(?)路線なので、林由美香は主演ではない。出演場面わずか5分&ギャラ5万(小坂井 談)の端役である。パッケージはおろか、本篇にも「林由美香」の名前は出ない。まあ、だけど、ドラマの中では「新人ナースのヒロインにあとを託して病院を去っていく婦長さん」という重要な役どころで、最後にはちゃんとした見せ場も用意されている。 ● ビデオのラストはこうだ──。ナースを続ける気力を失くしそうなヒロインに、由美香が「長く続けることって大事よ。わたしもこの仕事、ずいぶん長くやってるけど、まだまだ判らないことも多いの……人の心とかね。(自分の頭からナースキャップを外すとヒロインに渡して)それじゃ……そろそろ行くわ」と病室を出て行く。由美香のナースキャップを手にしたヒロイン。彼女のナレーション「これは、わたしがまだ新人ナースだった頃のお話です」 そしてラストカットに字幕──「みんな初めは新人だった」 ● 撮影は2004年の12月だそうだから、もちろん林由美香が死んじゃうなんて誰も思ってもいなかったわけだが、いま観ると、なんか出来すぎだよな……。ひとつ「へぇ〜」と思ったのは、ラストにいつもの「この物語はフィクションです」って字幕のほかに「レイプは重大な犯罪であり、法律で厳しく罰せられます」と出てくるのだ。ふーん、ビデ倫ものは今、そーゆーことになってるんだぁ。きっと痴漢ものとかにも出てくるんでしょうな。あと、なぜか劇中でヒロインが由美香の「硬式ペナス」のビデオを見ながらオナニーする、という場面があるのだが、これはトークショーでの小坂井徹によると「婦長は元AV女優」という設定なのだそうだ。わっかんねーよ、そんなこと! ● ちなみにアダルトビデオとしては駄作である。てゆーか、いまだに生き残ってるんだねえ、こーゆー、なまぬるいドラマの合間にヒロインのファンタジックなイメージカットが挿入されるような古色蒼然たるAVが。ヒロインの原田祐希はピンク映画でいうと、ゆきと鏡麗子を足して2で割ったような顔(どんな顔だよ!)で、おっぱいは鏡麗子 似──つまり虚乳である。「虚乳の美少女」なんて、なんの価値が? いかにも擬似っぽいカラミもちっともエロくない。つまり実用的ではない。早送りしちゃったよ。てゆーか、カラミが擬似でドラマものだったらピンク映画と一緒じゃん。クレジットされないので誰が撮ったか不明のカメラも、ビスタサイズをマスクなしでスタンダード上映したみたいなスカスカな構図で下手っぴいだし「ともかく林由美香のとこだけ見たい」というかた以外にはお勧めしません。70分。 [宇宙企画 2005年3月17日発売] ※セルDVD「SWEET MIX 原田祐希」(メディアステーション)にも収録。

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妻失格 濡れたW不倫(渡邊元嗣)

オーピー商事の同僚3人と出入りの営業マンが二組の夫婦になった。やり手営業マンの夫と、元OLのおっとり奥さん。バリバリのキャリアウーマン妻と、リストラされたお人好し亭主。営業マン夫とキャリア妻は不倫関係を続けている。浮気してる2人が毎夜、午前様なので家庭に残されたおっとり奥さんとお人好し亭主(=主夫)は淋しい思い。じつはお人好し社員がキャリアOLと交際するキッカケとなったラブレターは、頼まれておっとりOLが代筆したものだった。その頃から「おっとり」は「お人好し」に好感以上の気持ちを抱いていたのに、気弱な性格が邪魔をしてどうしても言い出せなかったのだ……。 ● かけ違えたボタンをもとに戻す試み。ああ、またいつもの「大人の映画」路線のしょーもない艶笑コメディかと思って観始めたら、切ない気持ちやもどかしさが伝わってくる、じつにウェルメイドな恋愛ドラマだった。脚本も、浮気が発覚する場面の「傘」の使い方や構成の妙など、観ながら「これ、ほんとに山崎浩治か?」と疑ってしまうほど上出来だし、渡邊元嗣の演出も「いつこんな〈名匠〉になったんだ!?」とビックリするほど丁寧で、かつ、予算の無いなか、サイドテーブルに置かれた吸い口ひとつで「病室」をあらわして見せたり巧さも光る。加えて、印象的な場面で「雨」が効果的に使われているのは、どー考えても特機を出したとしか思えず、なんだか、やたらと気合いの入りまくった、まさに「大人の映画」の佳品であった。 ● キャストは正直、万全とは言いかねるものの、メイン4人ともキャラに合った良い配役である。 ヒロインのおっとり奥さんに2004年の「コスプレ新妻 後ろから求めて」「痴女OL 秘液の香り」以来となる(桜井あみ改め)夏井亜美。ピンク映画女優が改名する場合、なんらかの事情があって変える場合が多いのだが、今回はちゃんと「夏井亜美(桜井あみ改め)」とクレジットが出る。 キャリアウーマン妻に、このところナベ組出演が続く天然巨乳の朝倉まりあ。 そのお人好し亭主に真田幹也。やり手営業マン夫に西岡秀記。そのもう1人の浮気相手の安いホステスに新人・沢田麗奈。こちらは砂が詰まってるんじゃないかという固そうな偽乳女であった。脚本:山崎浩治、撮影:飯岡聖英 [オーピー(大蔵映画)9月22日公開]

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ねらわれた学園 制服を襲う(渡辺元嗣)

ビデオ題「スケパン刑事 かわいい名器」

「スケバン刑事」復活記念ということで、映画化 第1作をレビュウする。……え? いや、時系列順に並べれば、まず斉藤由貴のTVシリーズ「スケバン刑事」が1985年の4月放映開始、続いて南野陽子の「スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説」が同年11月から放映。本作はそれを受けて1986年に製作・公開されているのだ(浅香唯の第3シリーズはまだこの時点では始まっていない) 東映による最初の映画版「スケバン刑事」は翌1987年の2月公開なので、つまり本作がいちばん早い映画化ということになるのだ。60分で濡れ場は7回(オナニーを含む)──立派なピンク映画でありながら、ヒロイン=麻宮未来(みらい)を演じる橋本杏子は当時、二十歳になったばかり。南野陽子にはあと一歩およばないものの、確実に斉藤由貴や浅香唯より可愛いアイドル女優なのだ。それどころか演技力でいえば(助演陣も含めて)東映版より上である。劇中で使用される「効果音」ばかりか南野陽子が歌う「劇中歌」も吉沢秋絵の「主題歌」もそのまま使われているのだから、本作が「スケバン刑事」の映画化であることに異論をさしはさむ余地はなかろう。 ● 三流の私立高校「愛染学園」に1人の転校生がやってくる。木枯らし吹きすさぶ中を、長い黒髪をなびかせて歩く美少女の名は麻宮未来(橋本杏子)。「わたしたち親娘から母さんを奪った男に復讐するのだ!」──彼女の脳裏に、土方をしながら男手ひとつで娘を育ててきた父親・完徹(池島ゆたか)の悲痛な叫びがこだまする。父と娘は復讐のためにすべてを犠牲にしてきた。17歳、花の盛りの美少女の股間には(鉄仮面ならぬ)父親特製の名器三段締養成ギブスが装着されている。ひとたびセックスをすれば彼女がエクスタシーに達した瞬間に、膣が強力に収縮して相手のペニスを粉砕するという究極の武器だ。その標的こそ、愛染学園の影の園長・袋小路(螢雪次朗)なのだ。非情の鞭をあやつり、肩に文鳥の剥製を乗せている隻眼の独裁者。まなじりを決して歩をすすめる未来に、グラウンドの金網にもたれていたスケバンが背後からいきなり缶ビールを投げつけてくる。彼女こそ学園一の不良生徒──(ビー玉ならぬ)必殺の投げボールペンを得意技とする嵐山珊瑚(サンゴ)(田口あゆみ)だ。振り向きもせず缶ビールをキャッチする未来。アルミ缶をめりめりと握りつぶす。未来と珊瑚──運命の出会いであった。 ● ……という具合に徹底して南野陽子版のTVシリーズ「スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説」をパロってる。じつはおれ、テレビの「スケバン刑事」をリアルタイムでは観たことなかったので、最初に本作を観たときは細部のパロディがわからなかったのだが、こないだ東映ビデオから出た「各シリーズの最初の3話が収録されたDVD(2・3話はPPV方式)」を買ってきて確認したら、TVシリーズの1〜3話の名シーン/名台詞をことごとくパロっていて、全盛時のZAZコメディに匹敵するクダラなさである(褒めてます) ● たとえば本作での未来の武器は(ヨーヨーならぬ)けん玉で、敵に投げつける「玉」の部分に電動バイブが内蔵されていて、股間にヒットすれば一発で相手を悶絶させることが出来る:) 父と娘が人生を犠牲にして目指してきた「復讐」ってのも、じつにクダラない因縁で、タネを明かせば[父が妻を寝取られた恨み]で、そのとき[短小]となじられたのが口惜しくて「ぐぞ〜復讐してやるぅ〜」となったのだった(だから当然[妻は生きていて園長の妻に収まってる]のだ) くっ、くだらねー! ● だが、渡辺元嗣(当時の表記)はアイドル映画、命の人なので、橋本杏子を可愛く撮ることに命をかけていて、アクションも東映版と大差ないほどに頑張っていて見応え十分。すばらしい娯楽映画である。しかも先述のように、どこから音源を入手したのかチャララ〜ンとかジャジャ〜ンといった効果音や主題歌はオリジナル版のものをそのまま使用しているのだ。ま、これはたぶん渡辺元嗣のデビュー作と2作目が東映セントラルの配給で「スケバン刑事」と同じ東映の現像所を使ってたのでむにゃむにゃ……(当時、東映セントラル・フィルムは松田優作の映画を作る一方でピンク映画も製作・配給していたのだ) ● 他のキャストは、ヒロインの母に巨乳女優・風見怜香。 影の園長の娘で未来の同級生となる袋小路由香に清川鮎。 濡れ場要員のスケバンに藤冴子(友情出演) 補導歴20年という悪徳補導員にジミー土田。 そして、回想シーンで14歳の教え娘・未来とセックスして哀れ廃人となってしまう中学教師・松太郎に渡辺正樹。ちなみに初期の渡辺元嗣作品では(石井隆の村木&名美のように)ラブストーリーの主役はかならず松太郎未来という名前だった。 ● 脚本は渡辺元嗣のデビュー以来の盟友であり、石井聰亙の「狂い咲きサンダーロード」の脚本家チームの1人であり、後にはTV「燃えろ!!ロボコン」(1999-2000)の脚本なども書くことになる平柳益実。撮影はスタイリッシュな持ち味の倉本和人(倉本和比人)、照明に石部肇、編集:酒井正次。撮影助手に佐久間栄一(現在の前井一作)、助監督に笠井雅裕の名前が見える。新東宝、1986年作品。劇場公開時はさすがの新東宝もビビッたのか「ねらわれた学園 制服を襲う」という、なんだか別の映画のパロディであるようなタイトルで封切ったのだが、ビデオ発売時にはすっとぼけて「スケパン刑事 かわいい名器」と改題している(驚くべきことに今でもそのままの状態でDMMで有料ダウンロード視聴が可能である) ※なお本稿執筆のため、当時の渡辺元嗣のインタビューが掲載されている雑誌の切り抜きを発掘したので、別頁にて無断転載しておく。

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人妻アナ露出 秘められた欲求(荒木太郎)

著名な料理人である優しい夫と、緑ゆたかな別荘地で自然食レストランを営む清楚な人妻が、躯の裡にひそむ性欲露出願望にひととき翻弄される話。……って、え? どこが「人妻アナ」なの?と思ったら、どうやらアナウンサーの略ではなく「人妻露出」という意味らしい。なんだそれ。 ● 性的に奥手だったヒロインがとあるきっかけから段々と無意識下に棲む魔物に支配されていく……というのはポルノグラフィの王道パターン。ただ、荒木太郎の場合──それがかれの個性でもあり、致命的な欠点でもあるわけだが──見せ場である「ヒロインの堕ちていくさま」がファンタジーになってしまうのだ。したがってエロくない。ポルノというより不思議の国のアリスの冒険を見ているような気になってくる。でまた、三上紗恵子の書く脚本がドラマ性が弱くて観念的なので、よけいにリアリティが薄れてしまうのだ。 ● ヒロインを妖しい性のワンダーランドに誘うのは淡島小鞠(=三上紗恵子)が演じる金髪&ドレスの不思議ちゃんである。彼女との出会いをきっかけにヒロインは四方の壁面&天井がガラス張りという、山の中の不思議な家にたどりつく。そこで野獣のような男に見つめられながら躯を露出し、自慰にふけり快感を得る。そして、レストランの定休日のたびにガラスの家に出向くと男に激しく抱かれる。やがて、店の大学生バイトにも露出するようになり、店に出向いてきた野獣男に亭主の目の前で犯されたりもする。だが、金髪のウィッグをはずした不思議ちゃんと再会し、一緒に踊って彼女とひとつに溶け合うことで妄想は収まり、ヒロインには日常が戻ってくる。……つまり金髪の不思議ちゃんはヒロインのイドでしたという、いかにも「頭で考えました」というお話である。 ● ヒロインを演じたMIHOがすばらしい。田中裕子系の顔立ちの和風美人で、バレリーナのように背筋が伸びてスラッとしてる。普段は若林美保という名の現役の舞姫だそうで、なるほどオナニー(の振り付け)は手慣れてました。清潔感のある美貌と裏腹(?)のよく勃つ乳首と大ぶりな乳輪がエロくてヨイですな。でまた、撮影・照明をてがけた長谷川卓也がサイコーに美しくフィルムに収めていて、おもわず勢いで ★ ★ ★ ★ 付けそうになったほど。ただ、衣裳が繋がってないとこがあった。店に贈られてきたバラの花束を受けとる場面で、それまでは紫色のTシャツ姿だったのに、花束を受けとるカットでは白いカッターシャツなのだ。あとから考えれば、荒木太郎は(ファンタジーを強調する手段として)意図的にやってるんだろうと思うが、その時点では撮影ミスにしか見えないので観客のスムーズな観賞の妨げでしかない。 ● 共演は、料理人の優しい夫に竹本泰志。 野獣男に縄文人(なわ・ふみひと)。 学生バイトに三浦英明。 そのカノジョに華沢レモン。陸上部という設定で、胸に「平成大学」というロゴの入ったTシャツをわざわざ作ってる。今回、女優はこの2人だけ。ただ、レストランのお客さんで西藤尚ちゃんが一瞬でてくるぞ!(いま何してるんでしょう?) ● 舞台となる自然食レストラン(という設定の)「ペジテ」は劇中で野獣男を演じている縄文人が山梨県 道志村に所有する(というか自分で建てた)アート工房で、過去の荒木作品にもたびたび登場している。今回、初めて登場した「ガラスの家」はどうやら縄文人が新たに東伊豆の山中に建てたコンセプトハウスのようだ。ガラスの家の正面にはコンクリートの能舞台のような正方形の前庭があり、玄関と渡し板で繋がっている。まわりは山林。じつに印象的なロケーションであり、美術費に換算したら数千万はくだらないだろう。こうした贅沢なロケセットがさらにファンタジー性を高めている。 ● 荒木太郎の演出(と長谷川卓也の撮影)もことさらに非現実感を強調しており、野獣男はカットごとに出現したり消えたりする。ガラスの家に至る道のりは一切、描写されない。ギラギラした官能性を棄てて、汗と愛液の臭いのしない透明感のあるファンタジーとして仕上げている。それがピンク映画としてどうなのか?という問題をさておくならば、ファンタジーとしての完成度は高い……かも。だがしかし、それでも「ドラマ性の弱さ」は致命的で、三上紗恵子の脚本も2004年の「食堂のお姉さん 淫乱にじみ汁」以来、ホモ映画を入れるとこれで9本目だ。もう、いいかげん習作という言い訳はきかんぞ。生半可な作家性なんてものはいちど棄てて、まずは構成のしっかりした脚本を書くことを目指すべき。そうしないとほんと「プロの脚本家」として使いものにならんぞ。このMIHOという(踊りのできる)女優さんで「Shall we ダンス?」のリメイクでもやってみたらどうよ? [オーピー(大蔵映画)9月15日公開]

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親友の母 生肌の色香(竹洞哲也)

竹洞組、またもやオール・ロケである(今度は三浦半島だそうだ) 大学一年生の夏休み。いまだ童貞ボーイの主人公が、大学で親友になったC調青年が漁師町の実家に帰省するのに同行して、海の家でバイト→あわよくば童貞グッバイ!という計画を立てる。ところがいざ行ってみると(5月に撮影してんだから当たり前だけど)海水浴場は閑散としてるし、C調青年は地元のカノジョとセックス三昧でかまってくれない。自然、童貞ボーイは親友の、白いブラウスが似合うきれいなおかあさんと2人きりで過ごす時間が多くなる。一方、まだ34歳の母ミワコは、息子がつれてきた友だちの、どこか芒洋としたところが死んだ亭主を思い出させて、心(と躯)が疼くのをどうしようもなかった……。 ● トーンとしては肉欲主導型ではなく淡い純愛ものである。「おもいでの夏(Summer of '42)」のセンですな。ただ、若き未亡人を演じるAV女優ミュウ声が神田うのそっくり)は自然体の好演なのだが、相手役の童貞ボーイ・富窪大介が「もうちょっとなんとかならねーのか!?」というレベルなのがツラいところ。これなら無理して新人さがさなくても、柳之内たくまでよかったんじゃないの? それと、未亡人の心情は「亭主とセックス」の回想シーンなどで充分に描かれていると思うが、童貞ボーイ側の心情が「ああ、キレイな人だなあ」とドキドキするところから、あまり先に進んでないような気がする。未亡人のオナニーを覗いちゃうとか、自転車二人乗りしてるシーンでおっぱいギュッにドギマギするとか、なんかもうちょっと「過程」が要るんじゃないの? ● メイン・プロットの物足りなさを補うようにハッチャケた怪演をみせるのがC調青年に扮する松浦祐也。「初恋」で一般映画に堂々助演した勢いをかって、長髪&口ヒゲに金縁グラサン、プリントシャツという1970年代ルックで、SEX! SEX! なにはなくともこの世はSEX! という最低キャラを「未亡人下宿」の久保新二にかぎりなく迫るハイテンションで過剰に熱演。ある意味、この映画でいちばん金を取れる部分である。 その地元のカノジョに青山えりな。東京のカノジョに冬月恋。 回想シーンに登場する亡父にサーモン鮭山。ねじり鉢巻きにグラサンの男くさい漁師役。ほー、変態じゃない役も出来るんだ。 ● 撮影:創優和、音楽:與語一平、エンド曲:ニナザワールド(♀)、脚本:小松公典。細かいツッコミだけど、自転車は「運転する」とは言わないよね。言うなら「あ、ぼく漕ぎます」でしょ。 [オーピー(大蔵映画)9月1日公開]

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混浴温泉 湯煙で艶あそび(加藤義一)

山間の温泉旅館に独りで泊まりにやってきた女性客。思いつめたような表情に、宿の女将は「すわ自殺客か!?」と警戒するが、その彼女、ひょんなことから上得意のどスケベ社長の臨時コンパニオンを務めることに。肉弾サービスが評判を呼んで宿は繁盛、即席コンパニオン嬢は大忙し……って、なんだよなんだよ田吾作どん、間違えて新田栄 用の脚本を加藤義一に渡しただろ!と思って観てたら、映画の1/3ほど過ぎたところからヒロインの東京でのバックグラウンドが並行して描かれて、ちゃんと良心的なつくりの「ちょっといい話」として帰結したのでホッとした。 ● ヒロインには、薄倖そうな雰囲気と白い肌がデビュー当時の葉月螢を思わせないでもないAV嬢の上原空(うえはら・かすみ)。 宿の女将に現在の葉月螢 本人。 女将の幼なじみで、お人好しで純情な番頭に岡田智宏@好演。 コンパニオン目当てのどスケベ社長に、新田組モードの丘尚輝(岡輝男) そして「結婚のときに交わした約束」を忘れて、毎日 仕事仕事で、妻を置き去りにしてる夫に、なかみつせいじ。 父親の再婚相手を許せない、カエルとバナナ好きの女子高生アサミに華沢レモン。 そんな彼女を呼び出しては、宿題してあげる代わりに援交してる変態サラリーマンに、もうこーゆー役はこの人しかいないサーモン鮭山。 終盤にある、田吾作とは思えない名台詞>「(電話で)アサミちゃん、これから会えない? また宿題やってアゲルよ」「……ごめん。今日の宿題 おじさんじゃ出来ないの」 ● ロケ地はいつもの山梨県塩山町の水上荘じゃなくて、エクセス作品でたまに見かける伊豆天城・湯ヶ島温泉の渓山荘。東京でのスタジオ/ホテル・ロケも結構な分量があるから、ひょっとして4日撮りかも。 撮影は、竹洞組・山内組での好調をそのまま持ち越している創優和。本年度のベスト・カメラマンは当確か。 [オーピー(大蔵映画)8月25日公開]

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美姉妹レズ 忌中の日に…(山内大輔)

脚本:山内大輔 撮影:創優和

ダントツの票数を集めて2006年ピンク大賞の新人女優賞に輝いた日高ゆりあだが、彼女に初日を出したのは、デビュー作以来 精力的に起用を続けてきた池島ゆたかではなく、山内大輔だった。日高ゆりあのチャーム・ポイントをひとことで表すなら「むちむち幼児体型の裡に秘めたどろどろM属性」の魅力に尽きるとおれは思うのだが、生憎なことに池島ゆたかという人は徹底してロリに興味のない人なんですな。それで彼女に似合いもしない赤いルージュを塗らせて「大人の女」を演じさせたりする。それは池島ゆたかが日高ゆりあの持つ「陰の部分」に林由美香の幻影を見ているせいもあるのだろう。 ● 一方、日高ゆりあの魅力を正しく理解している山内大輔は、彼女を「女子高生」役にキャスティングして二種類の制服──セーラー服じゃなくて、今風のチェックのスカートに白いブラウスってほうね──を着せたり、綿のタンクトップに赤いホットパンツという格好で「おっぱいの出っ張り」と「下腹のぽこん」が同じくらいという特異体型を見せつけたり、あるいは次作の「レンタルお姉さん 欲望家政婦」ではメガネっ娘包帯っ娘(!)と、徹底して彼女の魅力を引き出す。それは表面的なことに留まらない。あどけないヒロインを容赦なくどろどろ昼メロ地獄へと引き摺りおろし、それでいて彼女に泣くことを許さず、この林由美香の笑顔をもったロリ女優に芹明香の虚無をまとわせて運命に立ち向かわせるのだ。山内大輔にとっては2005年2月の「絶倫義父 初七日の喪服新妻」以来の傑作となるハードボイルド少女映画。映画界における認知度が少しでもあがることを願ってシナリオ採録を載せておく。 ● 撮影は創優和。撮影環境が制限されているピンク映画において「撮りやすい」=カメラを置きやすい位置ではなく、手間と時間をかけて最も効果的なカメラ・ポジションを貪欲に追求、天井の外れるスタジオ撮影とはわけが違う「貸しスタジオ」とは名ばかりの普通の住宅で室内の俯瞰などという凝った画を見せてくれる。さらに劇中最大の転換点である「ヒロインが河川敷の橋の下で〈決定的な場面〉を目撃して走り去る場面」では「横からのロング」と「橋の上からの俯瞰」の2ポジでリプレイして見せるのだ。言っとくがピンク映画で2カメなんて在り得んので、これはわざわざ2回 撮影してるのだ。 ● これだけ手間をかけてるこの映画で、おれが唯一、解せないのはマンションの玄関ドアに貼り出す「忌中」の札が汚ったねえ小学生みたいな手書きなの。いや、だって今どきパソコンにも行書体フォントとか入ってるでしょーが。……謎だ。 [エクセス 8月11日公開]

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四十路寮母 男の夜這い床(新田栄)
あるいは瀬戸恵子の増殖と弊害について

新田栄+岡輝男=田吾作コンビのルーティン作。撮影:千葉幸男。地方企業の東京寮の寮母をつとめるバツイチの四十路ヒロインが、入居してるサラリーマンたちの「東京妻」になったり「東京のお母さん」になったり「東京のお姉さん」になったりしてくれる……という話。寮母に定番・瀬戸恵子、入居社員に丘尚輝・横須賀正一・天川真澄、その見合い相手に、おっ、久し振り登場の望月梨央……という女優2人体制。つまりそれだけ主演の瀬戸恵子が──ただでさえ必要以上にハリキるタイプなのに──いつも以上にハリキって脱ぎまくるというわけだ。 ● ここで当サイトとしては、現在のピンク映画界を蝕む大問題であり、誰もが意識はせずとも心のどこかで辟易してると思われる「瀬戸恵子 汚染問題」について、改めて提議をしたい。そもそも林由美香が2005年の6月27日に急逝して以来、ピンク映画界では彼女の不在の大きさばかりが取り沙汰されているが、同じころ「かけがえのない存在」であった女優がもう1人、ひっそりとピンク映画界を去っている。……そう、酒井あずさだ。昨2005年は1月28日公開の橋口卓明「官能病棟 濡れた赤い唇(KUCHISAKE 口裂け)」(新東宝)でタイトルロールを演じたのちは、7月15日公開の新田栄「変態オヤジ 四十路熟女の色下着」と8月12日公開の松岡邦彦「刺青淫婦 つるむ」(ともにエクセス)を最後に今日まで1年以上にわたって出演作がない状態が続いている。それまでの出演ペースからすると「オファーがなかった」という事態は考えにくく、やはり彼女の意思でピンク映画から引退したのだと考えざるを得ない。最後のプログラム・ピクチャーたるピンク映画から、芝居勘が良くて、メロドラマのヒロインもコメディ・リリーフもこなせて、カラミがイヤらしいのに品があるという美人の年増女優を欠いたのはほんとうに痛い。たとえば同年代の佐々木麻由子も巧い女優だが、エクセスの軽いコメディに助演するには芝居が重過ぎるよね。もちろん風間今日子は重要な戦力だが「淑やかな和服未亡人」みたいなキャラには向いてないし。そう考えると(林由美香がそうであったように)酒井あずさの役柄の広さはじつに貴重で、それこそ「そこそこ可愛い新人女優」ならAV業界からいくらでも供給できるけど「ある程度の年齢で芝居の出来る女優」となると、ほんとに替えが効かんのだよ。 ● そして、その穴を埋めるかのように昨年後半からみるみる出演作を増やしたのが、瀬戸恵子なのである。ひょっと見るとあっちでもこっちでも、まるで梅雨時のカビのように増殖しては(酒井あずさとは比べものにならない)下品きわまりない嬌声をあげているのだ。考えてもみたまへ。この一年で諸兄が観てきた瀬戸恵子の役を酒井あずさが演じていたなら、どれほどの映画が救われたことか! 当サイトの評価も星1つ分は上乗せされたこと確実である。おれは寛大な人間なので瀬戸恵子に「去れ」とは言わぬ。言わぬがしかし、われわれは酒井あずさの美しい裸身とキュートなコメディエンヌぶりの代わりに、瀬戸恵子のチーズ臭ただよう濡れ場とワザとらしい芝居を見せられているのだということを忘れてはならないと思うのであ〜る。 [追記]……と思ったら、瀬戸恵子は8月で裸仕事からは引退したんだそうな。 ● しかしそれにつけても酒井あずささん、「風見京子」名義でのAVの新作は撮ってるみたいだから業界から完全引退したわけじゃなさそうなので、なんとかもう一度、ピンク映画に戻ってきてはくれないだろうか? 各社の監督さんたちもぜひ彼女に声をかけて、呼び戻してもらいたいと切実に願うものである。 [エクセス 8月11日公開]

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母娘(秘)レシピ 抜かず喰い(国沢実)

夫が失踪して10年──、母ミホと18歳の娘トモコ2人暮しの家庭だが、夫婦の共通の親友だった深見が受験を控えたトモコの家庭教師をしたり、なにかれとなく気にかけてくれる。じつは娘は深見との不倫の子で、後年、夫はそれを知って失踪したのだった。内心では愛し合いながらも、行方知らずの夫への罪悪感ゆえにその気持ちを表せぬ2人。そして深見の妻もまた、夫の愛が自分に向いてないことを知り、孤独に苛まれていた。そんなとき、娘のトモコが同い年のカレシの子どもを妊娠する……。  ● 愛しておねがいわたしを愛して!なんでわかってくれないの!?──という、あさましい愛され乞食どもの自己憐憫/自己嫌悪に満ち満ちた陰鬱なるメロドラマ。まったくこれだから国沢実が自分で脚本書くと……と思ってたら最後に「脚本:樫原辰郎」と出てショックを受けた。なんとしたことか。国沢実のマイナス・パワーに取り込まれてしまったか。いや、べつに暗い話 書いたっていいけど、なんだか捨て鉢な登場人物が一方的に不幸自慢をくりひろげるだけで、話がちっともエンタテインメントしてないではないか。これでは関根和美の古臭い(しかしロマンチックな)メロドラマに完全に負けている。おまけに、結局 妻に出ていかれて深見が「終わったんだな……しあわせゴッコが」だって。しかもエンディングで流れるオリジナル女性ヴォーカル曲のタイトルが「しあわせゴッコ」ですと。きっと原題(シナリオ・タイトル)もそれだな。もう完全に間違っとる。この映画の正しいタイトルは「不幸せゴッコ」だろ。 ● 失笑してしまう場面はほかにもあって、自分の出生の秘密を聞きショックを受けた娘が家出したら、ヒロインが風呂場でオナニーしながら「お母さんを許して!」だって。それ明らかに反省が足りんだろ。とりあえずまんこから指ぬけ。 20年前に(結婚前の)夫と深見が2人で住んでた木造アパートをまだ深見が借りていて、そこで仕事をしたり息抜きしてるという設定なんだけど、その部屋にヒロインが慣れた様子で訪ねてくんだけど──ちょっと待て。この2人、それぞれの妻/娘に隠れて会ってんのか? それでいてセックスはしていないと? いや、それ変だろ。 あと、これは現場の問題だけど、深見の妻が孤独を紛らすために出会い系サイトで男を漁ってるという設定なんだけど、出会系サイトなのに画面はワープロソフトにローマ字入力なの。ケータイの画面撮りくらいしなさいよ。 ● 母親のミホに持田さつき。芝居は及第点だが、おばはん顔に垂れ乳&二段腹はメロドラマのヒロインには少々キツいか。 娘のトモコに姫乃あん。芝居はメロメロだが、若いのとおっぱいデカいのが取り柄(でも幼児体型) 深見に寺西徹。深見の妻に、なかなか美形の新人・山口不二子。娘のカレシに松浦祐也。撮影は「海猫」の石山稔。 [オーピー(大蔵映画)7月21日公開] ● [追記]レビューを読んだ樫原辰郎さんからBBSに書き込みをいただいた>[自作についての弁明などすべきではないと承知しているんだが、ちょっと驚かせたみたいなので一言。あの企画、元々は「二人の仲を怪んで失踪した夫」ではなく「妻と友人が出来ちゃったのを知って、限り無く自殺に近い事故死を遂げた夫」を、画面には登場しない重要人物、として描いたものだった。(まあ、それでも暗い話ではあるがよ、人が一人死んでいるとなりゃあ、ドラマの方向性が全然違うものになるわな。ワタシ自身は大好きな「レベッカ」をやりたかったのさ)

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弁護士の秘書 奥出しイカせて(池島ゆたか)

池島ゆたかが新文芸坐のピンク大賞授賞式にも帯同してきていた今年のお気に入り新人女優=日高ゆりあを、満を持してヒロインに起用したラブコメ。同じ事務所ではたらく先輩弁護士と後輩弁護士。秘書として雇われた日高ゆりあにコロリとマイってしまい、妻やカノジョそっちのけで取り合いを始めるのだが……。 ● いわゆる小悪魔コメディの系譜であるので、最後はもちろんトンビに油揚げさらわれてチャンチャンというオチがつくわけだが、そのことを知った2人の弁護士──「なんだよコレ!?」「天然の悪女ですね」って、台詞で言うな台詞で! 結局、こういうとこが脚本・五代暁子と池島ゆたかのセンスの限界なのだ。2人とも娯楽派職人であることは認めるけど、いまひとつ垢抜けないんだよねえ。良く言えば「不器用」で、悪く言うと「真面目」なの。だから力量のある役者が揃ったときや、構成のかっちりした脚本が書けたときは傑作・佳作が生まれるんだけど、役者の未熟な分を演出のセンスで補ったり、話の枝葉の面白さだけで魅せきってしまったり、という器用さは無いんだなぁ残念ながら。特に演出の池島ゆたかは真面目なドラマやサスペンスはわりといいんだけど、ことコメディにおいては師匠の艶笑コメディの名手=深町章に遠くおよばない(本人は自覚してないようだが) ● さて本作。話はどうということもない定番コメディで、その範囲内では無難に書けているので、あとは役者の力量だのみということになる。そこでヒロインの小悪魔秘書を演じる日高ゆりあだが、池島が(お世辞半分にせよ)「林由美香の雰囲気がある」というだけあって、たしかに声質は林由美香によく似ている。ただコメディをやるにはまだ、演技神経がニブい感じだなあ。たしかに可愛いんだけど「小悪魔」ってより「いや〜んコマっちゃうどうしよ〜」ってほうが似合うタイプだし(てことは初手からミスキャストってこと?) あと池島ゆたかに強く抗議したいのは「秘書」の役なのになぜ眼鏡をかけさせんのだ!(基本だろ基本!) せっかくこのコ、眼鏡っ娘としては最強クラスなのに! ● 先輩弁護士「咲坂真一郎」に本多菊次朗。「熟女・人妻狩り」(↓)「肉体秘書 パンスト濡らして」での弁護士役と同じ役名だが、本作では「スケベな妻帯者」の役なので別キャラってことらしい。てゆーか、それならなかみつせいじの役でしょ。それで本多菊次朗を後輩弁護士にまわせばいいじゃんか。で、その後輩弁護士に新人・野村貴浩。池島お気に入りの舞台役者らしいが、映画の画面でみると歯並びのヒドさが気になって気になって。演技も含めて映画向きじゃないのでは。 そのカノジョに河村栞と同じくバセドー系の顔の新人・笠原ひとみ。咲坂の妻に持田さつき。そのまた愛人に池島ゆたか本人。 なお、途中、本筋とは一切関係のない贋CMが「劇中人物が見ているテレビの画面」という設定で挿入されるが、これは池島組への連続出演記録を更新中ながら、一身上の都合で郷里に帰ってしまった神戸顕一を、それでもなんとか出演させるための苦肉の策。 撮影・照明は長谷川卓也。演出家に合わせたわけでもなかろうが、今回は長谷川卓也とも思えぬ凡庸な撮影に終始している。 [オーピー(大蔵映画)7月14日公開]

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萌えメイド 未成熟なご奉仕(渡邊元嗣)

コズエはロリータ・ファッションが大々々スキな、お嬢さま言葉をあやつるメガネっ娘だけど、ショッピング中毒でカード破産寸前。このままじゃピーンチ!!ってことで、街でスカウトされたデリヘル「萌えメイド御殿」で働くことに。コズエには、対照的なキャラだけど いっつもツルんでる、矢沢C吉 語録が座右の書の「狂犬レイナ」こと榊原レイナという義侠心に厚い元ヤンの大親友がいて、一緒にメイド・デリヘルで働くことに……って、これ「下妻物語」じゃん! ● 毎度おなじみ渡邊元嗣の中身のない 他愛のないパロディ・コメディ。「下妻物語」とメイド喫茶ブームを合体させたのがアイディアで、なるほどたしかにロリータ・ファッションってメイド服によく似て……って、違っ〜う! 本来、メイド服というのはこーゆーもんであって、そのポルノ的アレンジフレンチ・メイドなのである。したがって世のメイド喫茶嬢の大半は「ウッフ〜ン、あたしのお尻をさわってぇ〜」と言ってるに等しいのだ。ましてやロリータ服の、あんなちゃらちゃらしたフリルとレースだらけのちょうちん袖の赤だのピンクだの水色だのといった代物は断じて「メイド服」ではな〜い! しかも渡邊元嗣は、ヒロインの藍山みなみを「メガネっ娘メイド」に設定していて、いや、それ自体はたいへん結構なのだが、そのメガネがいまどき1980年代チックなアラレちゃんメガネってどーなのよ。しかもセックスのときは外してるし(意味ないじゃん!) ● というわけで基本設定は間違いだらけの本作だが、話はまあまあ面白い。──レイナの初仕事の相手は引籠りの青年。さっそく元ヤンの地を出してニートボーイに喝を入れる。一方、コズエはホテルに呼ばれて、じつは自殺するつもりの中年男の心をいやす。「いい思い出になったよ。これがほんとのメイドの土産」 さて、じつはレイナには生き別れの父がいて、その名も馬場忠太郎……って、そう、本作は「下妻物語」の、長谷川伸 先生のスピリットによるリメイクなのだ。「義理と人情を秤にかけりゃ、義理が重たいメイドの世界」なんである(脚本:山崎浩治) ま、着眼点は悪くないわな。ただ、どー考えても主演2人がミス・キャストなのだ。 ● いわゆる「深田恭子」役の藍山みなみは──可愛いのでそれなりに見れちゃうんだけど──本来のキャラ属性は「悪戯っ子のS」のはずで「土屋アンナ」役にふさわしい。 対して「土屋アンナ」役の華美月は、だらだらした台詞まわしが到底「元ヤン」には見えない。 まあ、すでに出来あがっちゃった映画にこんなこと言ってもしょうがないんだが、理想を言えば藍山みなみを「土屋アンナ」役にまわして、「深田恭子」には(このところ池島組に連続出演している)日高ゆりあを使えばサイコーだったのに。彼女ならメガネも似合うし、キャラ属性も「苛められっコのM」だから藍山みなみとの相性も完璧。この2人はAVでの共演作も多く、実生活でも大の親友なのだそうだ。 ● 閑話休題。他のキャストは、デリヘル「萌えメイド御殿」の 執事長に、前作「盗撮サイト 情事に濡れた人妻」に続いての出演となる、元・唐組の堀本能礼。 レイナの大先輩=レディース「愛死天留(あいしてる)」の元総長にしてメイド頭(がしら)のサエコに(小池栄子と巨乳つながりってことで)風間今日子。 自殺中年になかみつせいじ。引籠り青年に西岡秀記。 撮影:飯岡聖英。これ、部屋でストーブ炊いてるけど、いつの撮影だ!? [オーピー(大蔵映画)6月30日公開]

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熟母・娘 乱交(深町章)

ギャーっ!! 藍山みなみタン超絶的にカワイイ! 白いワンピースにひらひらお帽子の色白美少女! でまた白地にピンクの花の刺繍入りの浴衣姿がタマラん(自前なのかしらん) もちろんこれは名伯楽・深町章の振り付けによるもので、国映に出てるときのほうが「等身大の藍山みなみ」なんだとは思うけど、みなみタンの美少女っぷりを眺めるだけでも木戸銭分の価値はあると思うぞ。 ● 元・同級生の社員・半蔵(川瀬陽太)をお供に、会社のお盆休みで避暑地の別荘に来ている(若旦那と呼ばれてる)ボンクラ社長・章太郎(岡田智宏)。隣町の療養所にいるという病弱な美少女マユミ(藍山みなみ)とその母親(しのざきさとみ)と知り合いになる。数日後の夜、マユミの母が訪ねてきて「じつは娘は余命3ヶ月と宣告された。ついては今生の思い出に娘を抱いてやってはくれないか」と頼まれる。世慣れた半蔵と違って、女性には奥手なほうの章太郎だったが、またとないチャンスとばかり清楚な浴衣姿のマユミといそいそとお床入りしたまではよかったが……。 ● 冒頭から王子さまルックの岡田智宏と川瀬陽太のボンクラ・コンビが笑かしてくれるので(深町組に両方そろって出るのは初めて?)いつもの艶笑落語かと思って観ていたら、なんと落語は落語でも「牡丹燈籠」だった!(ちゃんと娘と母が和服着て[提灯もって]やって来る) 脚本は河本晃。久しぶりの新作書き下ろしか、しまいこんでたボツ脚本なのかは不詳なれど、今回は仕方なく ちゃんと「脚本:河本晃」とクレジットされている。キャスト全員の心情がきちんとフォローされている良脚本を得て、また演出の深町章も[怪談]映画の作法はわきまえているので、観終わってしっとりとした余韻を残す佳作となった。ああそうか、いまや新東宝は日本で唯一の、伝統的なお盆映画を製作している映画会社なのだなあ、と感心したら……あれ?6月27日って……お盆公開じゃないんかい! ● 川瀬陽太の妻に、いまや深町組を観る大きな愉しみとなっている里見瑤子。<酒井あずさ・瀬戸恵子の抜けた今こそ大車輪の活躍が期待される。会社が「新鮮さがどうのこうの」言うようだったら改名してもいいぞ。 撮影は長谷川卓也。最近のピンク映画では(予算がいよいよ厳しくなってきたせいで)オプチカル加工費のかかるフェイド・アウトは滅多に使われないのだが、本作は物語の性質上、ちゃんと必要なところにフェイド・アウトを使ってる。 [新東宝 6月27日公開]

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桃色仁義 姐御の白い肌(荒木太郎)

静岡で昔ながらのテキヤを稼業としてきた金杉組は、あくどい金貸しやくざの内藤組に押されて解散。借金のカタに組長の金杉譲はマグロ漁船に乗せられ、姐の辰子は娼婦に身を堕とす。それから2年、年季の明けた辰子が街に戻ってきた……。 ● 荒木組の新作はめずらしや極妻ものである。Vシネマ的感性をまったく持ち合わせない荒木太郎が自分からそんなもの撮るわけないから、これはおそらく会社=大蔵映画からの指定なんだろうが、なにもよりによって荒木太郎にやくざ映画を要求することはなかろうに。案の定、「なんちゃってやくざ映画」にすらなってない惨憺たる出来である。 ● 脚本は例によって新人・三上紗恵子の書いたものに荒木太郎が現場で安易な改変を加えている。だいたい、やくざ映画というのは「様式」の美であって、作品ごとのバリエーションはあっても基本構造は2つか3つしかない。つまり基本構造を理解してないと書けないジャンルなのである。ところが、三上紗恵子はやくざ映画のイロハのイも解かってない。本作は当然「卑劣な敵やくざに娼婦にまで堕とされたヒロインの復讐譚」になってなければいけないのだが、挿入される個々のエピソードが本筋にまったく奉仕しておらず、途中で意味もなく(いかにも荒木太郎っぽい)ロードムービーになったり、と支離滅裂。 ● いくつか脚本家の「ジャンルに対する無知」を指摘するならば、まず冒頭で高飛びしようとしたヒロインと金杉が内藤組に捕まってしまうところ。捕まえにきた内藤組のチンピラは2人だけなのだ。つまり1人がヒロインを羽交い絞めにして──これは女vs男だから仕方ない──もう1人のチンピラがあっさり金杉を捕まえてしまう。弱えー!それでも組長かよ! かりにもヒロインの愛の対象=男性側二枚目だぞ。せめて「チンピラが拳銃を構えているために手出しできず、そこを後ろから棍棒で殴られ意識を失う」ぐらいの演出をしろよ。 捕まったヒロインがチンピラに2人がかりで強姦されるのを内藤組の組長がニヤニヤと見ていて、チンピラが放出したあとで組長が「お楽しみはこれからだぜ」とヒロインにのしかかっていく……というのも、ありえない。親分・子分の順番が逆でしょ。 ヒロインの復讐は「電燈の笠にとびちる血のり」で表現され、客がいちばんカタルシスを感じる場面が省略されるというのも酷い話だが、そのときにあげる名乗りが「金杉組 姐御 金杉辰子」って、自分で「姐御」言うな!「姐御」は敬称だ。名乗るなら「金杉組 姐」だろ。 百歩譲って二十幾つのコムスメが知らないのは仕方がないとしても、いい歳した(しかも映画ファンの)荒木太郎が知らないのは恥ずかしすぎる。こういう脚本はなんで盟友・内藤忠司に頼まないのだ。てゆーか、卑劣であくどいやくざの名前が「内藤組」って……(内藤忠司とのあいだに何かあったのか!?) あ、ついでに言っとくと新興やくざの名前は「○○興業」と昔から決まってる。 ● ヒロイン・金杉辰子に美咲ゆりあ。背中の彫りものは(色が鮮やかすぎるので)たぶんシール。演技はまあアレだが、いかにも「姐御」って感じの見た目と、台詞を素で伝法な口調の佐々木基子がアテレコしてるので、立派にヒロインとしての務めを果たしている。 金杉譲に竹本泰志。やくざの組長ってよりバーテンにしか見えない。眉を剃るぐらいはやってくんないと。ま、役者にしてみれば「安いギャラでそこまでやれるか!」って話だが、池島組(↑)ではバーテンでありながらも素晴らしい芝居をしていたぞ。荒木太郎は演出家として役者から演技を引き出せなかった自分を恥ずべし。 後半、姐=実姉と行動をともにする弟に桂健太朗(こちらも声は荒木太郎) でまた脚本の悪口だけど、この弟の恋愛対象が「引越して行っちゃった隣の八重ちゃん(淡島小鞠=脚本の三上紗恵子)」と「家出少女の不思議ちゃん(華沢レモン)」と、意味もなく2人いて、どっちのエピソードも中途半端なので余計、映画がぐずぐずになっちゃってるのだ。どっちか1人にまとめろよ! ● 撮影・照明は長谷川卓也。なお、本作は静岡の古くからの映画館・静活の建物内外で8割をロケしている(残りの2割は雪の山梨) [オーピー(大蔵映画)6月23日公開]

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乱姦調教 牝犬たちの肉宴(竹洞哲也)

脚本:小松公典 撮影・照明:創優和 音楽:與語一平&菅原陽子

樹々が鬱蒼と生い茂る富士の樹海。ひとりの女が転(こ)けつまろびつ必死で逃げていく。それを冷静に追っていく男の足元のアップ。ビミョーに傾いたフレーミング。狂騒するフリージャズ。──オープニング。クールなサスペンスの予感におおっと身を乗り出した。 ● 「富士の樹海には、自殺しに来た女を拉致監禁して肉奴隷にしている狂人がいる」という基本アイディアが素晴らしい。狂人の名が伴幌男ということから発想の元が「南部の田舎に棲む殺人鬼が東部の都会人を殺しまくる」タイプのアメリカ産スラッシャー・ムービーであることは明らかだが()それを日本に移殖するに際して「富士の樹海」と「自殺女」を引っ張り出してきたのがバツグン。もともと死にに来たはずなのに、人間は「殺される」となると本能的に「殺されたくない!」と思ってしまう。必死で逃げる。だが、そこは樹海。逃げ道はない……。狂人の設定にもひとヒネリ加えてあって(ジャンルの制約上、セックス・シーン中心に描かざるをえない)ピンク映画だけで終わらせるにはもったいないプロットである。脚本の小松公典は本格スラッシャーに書き直してアートポートあたりに売り込んでみてはどうか。  かつて、東宝東和がお得意の誇大宣伝でヒットさせたスラッシャー映画「バーニング」(1981)にバンボロという殺人鬼が登場する。 ● さて、文芸部がほぼ満点の仕事をしてるにもかかわらず星2つどまりなのは、演出部・撮影部・俳優部の各責任ということになる。まず演出部。先述の「ひとヒネリ」というのはじつは、ものすごく有名な某ホラー映画からの借用なのだが、それに関してアンフェアな描写がある。いや、一見、アンフェアな描写に見えても、後から思い返して、ああ、あそこは語り部たる人物の「想像したこと」が絵になっていたのか……と了解できれば問題ない。ところが本作では、どう考えても物理的にありえない状況を「客観描写」として描く禁を犯している。元ネタに即して言うなら[ノーマン・ベイツと母親が同一画面に居ては]いかんのだ。 ● それとピンク映画においては「流血」描写は(会社とコヤから)敬遠される傾向にあるので、やりにくいというのは解かる。解かるがしかし、べつに血を流さずとも「残酷」描写は可能なはずだ。たとえば、開放された最初の肉奴隷が、巡回員のバンに拾われる場面。「助けて!」「ああ助けてやるよ」でカラミがあって、その後は[巡回員が無表情に女を殴って気絶]させるか、あるいは[クロロホルムを嗅がせて失神]させるべき。それで「べつの地獄へな」と、ひとり言だろ。 農家の屋根裏に監禁されているヒロインが階下に恋人の声を聞く場面。「ケンジいるの!? 生きてるの!?」 屋根裏にあがってくる狂人。そこはヒロインの前に恋人の生首をゴロリで、ヒロイン絶叫……だろ。そんな特殊造形物を造ってる金がないって? いやいや、顔は写さなくてもいいんだよ。どっかの組からありものを借りてくりゃいいんだ。 あるいはヒロインが狂人を[階段から突き落とす]場面。そこはもう終盤なんだから(心理的に追い詰められている)ヒロインは躊躇なく自分の首に繋がれてる紐(リード)狂人の首を絞めなきゃ。ヒロインは狂人が死んだと思って樹海に逃げ出す。しかし……って、それが定石でしょ。 本気で観客の心胆を寒からしめる映画を作りたいんなら、要所要所で「殺す側の本気」を見せなきゃ。それがあって初めてヒロインの「生き延びようとする必死さ」に現実味が沸く。それがないから生ぬるい映画になっちゃうんだよ。 ● 撮影部=撮影・照明の創優和は、今回も屋外の樹海ロケに関しては素晴らしい仕事をしている。フィルムで撮る/観る贅沢を十二分に味あわせてくれる。ところが屋内シーンのメインとなる「屋根裏部屋」の照明が──おそらく蝋燭光のゆらめきを表してるつもりなのだろうが──常にチカチカと明滅していて、見づらいことこのうえないのだ。明らかに照明設計の失敗だ。 ● さて、俳優部の責任はすべて狂人役の吉岡睦雄にある。この俳優は、国映作品でのダメ人間キャラでは映画に見合った存在感を見せているが、それ以外のキャラを演じるとなると……つまり国映以外の「普通の」ピンク映画に出演すると、とたんに演技力の無さを露呈する使えねーやつなのだ。本作でもクサい芝居で「熱演」してるが、奇声をあげりゃコワいってもんじゃねえんだよ。竹洞哲也も竹洞哲也だ。なんで吉岡睦雄なんか使うかなあ。竹洞組には柳東史という素晴らしい性格俳優がいるではないか。 ● ヒロインを演じる青山えりな は、雪の残る樹海を裸体&裸足で逃げまわる、こちらは真に称讃さるべき熱演。ただ、角度によって二重アゴになるのは何とかしたほうがいいと思うけど、まあ、これも半分はカメラマンの責任か。 ヒロインと入れ替わりに解放される最初の肉奴隷に、倖田李梨。 ヒロインの恋人に松浦祐也。 樹海をパトロールしている死体回収ボランティアにベテラン・小林節彦。 ● ということで、惜しくも傑作になり損ねた一作ではあるが、オール熱海ロケを敢行した「ホテトル嬢 癒しの手ほどき」(2006)に続いて、「300万円の予算内でできること」という発想ではなく、ピンク映画の「常識」にとらわれずどこまで出来るかやってみるという竹洞哲也+小松公典の果敢な挑戦には大いなるエールを贈りたい。 [オーピー(大蔵映画)6月16日公開]

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熟女・人妻狩り(池島ゆたか)

昨年の「マーニー(肉体秘書 パンスト濡らして)」に続いて、今度は本人いわく「フレンジー」の翻案である。もっとも──連続絞殺魔の話ではあるものの──ヒッチコックの元ネタから借用してるのは例のポテト・トラックの件りぐらいで、あとはほぼオリジナルに近い(脚本:五代暁子) 定石どおりに「犯人の一人称カメラ」でまず1人目の犠牲者(日高ゆりあ)を血祭りにあげる開幕から演出は好調。そして(ネクタイならぬ)母親の遺品の帯紐でふしだらな売女どもを絞殺していく竹本泰志が「美女濡れ酒場」以来の、ひと皮むけた凄演を魅せる。尺の都合で「犯人に間違えられる主人公」を大胆にカットして「犯人が死体遺棄現場を目撃したヒロインを付けねらう」という展開にしてるので、もう、ほぼ、竹本泰志の独り舞台である。名手・清水正二の撮影、座付作曲家・大場一魅の劇伴も特筆すべき仕上がりで、ラストのツイストも洒落てるし、ジャンル映画ファンに普通にお勧めできる一作。 ● ただ、惜しくも「傑作」になり損ねているのは、キャラクター描写に難があるからだ。たとえば犯人。つねに素手で犯行に及んで指紋に頓着しないのは、犯人の過度な自信過剰(と、それと裏腹のイカれぶり)をうまく表現してると思うが、そうした犯人像には、姑息な計略をめぐらして他者を「犯人」に仕立て上げるような真似は似つかわしくないだろう。あるいは(「フレンジー」では主人公にあたる役回りの)本多菊次朗 演じる弁護士。犯人に恋人を惨殺された直後だってのに、元カノと焼けぼっくいに火の濡れ場はマズいだろ。そんなことしたら観客の心は離れてしまう。そこが整理できてないから、犯人側から見たピカレスク・ロマンとしても、ハラハラドキドキのサスペンスとしても、どっちつかずの中途半端になってしまうのだ。 ● ヒロインの三上夕希は、顔はどちらかというとホニャララの部類だが、イヤらしい躯つきがピンク映画向きですな。 女探偵に佐々木麻由子。この役と本多菊次朗の弁護士は「マーニー(肉体秘書 パンスト濡らして)」と同じキャラという設定(そうである必然性はまったく無いのだが) 女性ばかりを狙った連続殺人ものなので、本作には脱ぎアリの女優が4人出ているのだが「2人目の犠牲者」を演じる春咲いつか だけは「死体ヌードはあるけど濡れ場なし」という微妙な出演のしかた(ギャラの関係?) 池島ゆたかと山ノ手ぐり子(=五代暁子)も、刑事と心理分析官としてみずから出演している。 また本作でも(撮影順からすると)「弁護士の秘書 奥出しイカせて」(↑)で使った神戸顕一の贋CMを使い回しているのだが、もういいかげん諦めなさいよ>池島監督。神戸の連続出演なんて客には関係ないじゃん。あなたもプロなんだから、60分という尺に縛られてるピンク映画にあってワンカットたりとも無駄に消費すべきじゃないでしょ。 [新東宝 6月9日公開]

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美人セールスレディ 後ろから汚せ(小川欽也)

このごろ上野オークラでは、向こう3週分の番組を掲載したワープロ打ち&コピー製の手作り番組表が受付(モギリ)に置いてあって、その週の新作には、たぶん支配人の一言コメントが添えられている。で、これがシネロマン池袋の番組表のコメントみたいな、よくある東スポ調のセールス・エロ文章じゃなくて、たぶん支配人の映画好きがうかがえる的確な(=正直な)もので、上野オークラに通う小さな楽しみとなっている。たとえば今週の番組表には[併映の『愛人秘書 美尻蜜まみれ』は山崎監督の大傑作。是非。]なんて書き添えてあったりするのだ。 ● で、この老害 老匠・小川欽也の新作に添えられた一言が>[独自の境地を切り開いている小川。もはや仙人といった感じ。今回もセールスレディものの常識を打ち破る。]だって。笑ってしまった。じつに大蔵映画の社員としては立場上ギリギリの、おどろくべき正直さといえよう。当サイトのレビュウとしては、こうして引用して「まさにそのとおり!」で終わってもいいんだけど、まあ、それもナンなので、以下、本作がどのように「常識を打ち破」っているのか明らかにする。 ● 本作のヒロインは、恋人との結婚をひかえて幸せいっぱい。浄水器の戸別訪問のセールスレディをしているのだが、家族親戚友人知人に売り切ってしまってからは契約がパッタリ。今朝も部長から怒られて、売上げ No.1 のやり手セールスレディのカズミから教えを乞うように命じられる。──こうして設定を書くと、なんの変哲もない「セールスレディもの」のようでしょ? やり手のカズミは肉弾サービスで契約を勝ち取っていて、うぶなヒロインは初めは「えええっ!? そんなことっ!」とか言ってるんだけど、そのうち気持ちよくなっちゃってノリノリに。売上げ向上。カレシともゴールインしてハッピーエンド……という宇能鴻一郎パターンの艶笑コメディね。ところがそうは問屋が卸さない(死語)のが小川欽也のはかり知れないところ。なんと本作には「訪問セールス場面」が一切ない(!)のだ。 ● 冒頭場面はヒロインと恋人(平川直大)のカラミ。続いて同僚の男性社員(ヒョウドウミキヒロ=兵頭未来洋)が女性顧客(風間今日子)の紹介で契約をもらい(その場面は省かれる)、その御礼にとリモコン・バイブで屋外プレイ→ホテルでカラミ。やり手のカズミ(島田香奈)が自分の旦那(なかみつせいじ)とレストランで食事しながら、大口の契約を紹介してくれてありがとう、とホテルでカラミ。会社のデスクで「あたし、この仕事 向いてないのかも……」と悩むヒロイン。もうこの辺で30分経過。いつまで経っても訪問セールスの場面にならへんなあ、と思って観てると、やっとヒロインが訪問販売へ。おお、きっとその家には好色老人の久須美欣一が待ち構えているに違いない!と期待すると、なんとヒロインはたまたまその家に空巣に入っていた竹本泰志に犯されてしまうのだった。どよんとするヒロイン。 え、なに? 艶笑コメディじゃなくてレイプものなの!?とビックリしてると、彼女、カレシから婚約指輪をプレゼントされて嬉しいーっ!と再びセックス。なんとそこで映画は終わっちゃうのだ。え゛!? レイプの件はどうなったのよ!? てゆーか、話、終わってないじゃん! ● 脚本の「水谷一二三」は、たぶん小川欽也の筆名。かように「セールスレディものの常識を打ち破る」どころか、ドラマとしての常識が通用しない本作であるが、本当におそろしいのは、小川欽也ワールドにおいては、こうした事態が本作に限ったことでなく、物語がどういう時点にあろうと1時間経ったらぷつんと終わってしまうのが「いつものこと」だという点にある。小川欽也の映画にあっては、物語が結末を迎えるのは「たまたま時間内に語り終えた」に過ぎないのだ。べつに順撮りでもないのにそんなことができるなんて、「仙人」とは、けだし名言かも。<いかなる意味においても褒めてません。 ● ヒロインを演じるのはAV女優の@You(あっとゆう)。なんですかそれは人の名ですか。「アッと言うほど可愛い」に掛けてんのかね? まあ、名前はともかく、ちょっとサトエリ似の天然巨乳のカワイコちゃん(死語)である。こんなヘンテコな映画じゃなくて、きちんとした宇能鴻一郎コメディだったら、さぞや魅力的なヒロインになっただろうに残念。 でまた、カメラマンの図書紀芳が──今回なぜか「調所紀芳」名義なんだけど、クレジット作った人の変換ミス?──濡れ場の撮影で、せっかくの94cm天然Gカップが存在していないかのようなつまんない撮り方をしてんのよ。あー、もったいな。 それとAVと違って基本的にピンク映画にはヘア&メイクが付かないので(女優が自分でメイクする)、髪型がてっぺんがベターっとして下のほうが重い、ヘンな髪型なってて可哀相。 あと、最後に業務連絡>えー、国沢実はすぐ@Youの事務所に電話して、彼女主演で「悩殺天使 吸い尽くして」の続篇を撮るように。いまからなら9月公開の「X-MEN ファイナル ディシジョン」にタイミングどんぴしゃだぞ:) [オーピー(大蔵映画)5月21日公開]

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大蔵映画の封切館である上野オークラ/大宮オークラ/横浜光音座は、2006年6月2日から(従来の10日間興行から)1週間変わりの7日間興行となる由、告知があった。 げっ。 なにそれ!? 挑戦か? おれに挑戦してんのか? じっさい10日変わりでさえほぼ全番組をカバーするのはキツくて、本音は2週間興行にしてもらいたいぐらいだってのに、1週間じゃとてもとても……。じゃあ(現在、年間30数本ペースの)大蔵がこれからは新作52本作るのか、っていったら、もちろんそうはならなくて、従来「大蔵新作+新東宝新作+大蔵旧作」の組み合わせだったのが「大蔵新作+旧作2本」と「新東宝新作+旧作2本」にバラける模様。ダメじゃんぜんぜんダメじゃん。件の手作り番組表には「ファンの皆様のご要望に応えて」って書いてあるけど、そりゃ毎日のように入場してる人たちにしてみれば、毎日毎日おなじ映画ばかり上映してたんじゃ飽きもするだろうけど、そういう「ファンの皆様」って映画 観に来てるんじゃないじゃん(大泣)

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淫絶!人妻をやる(深町章)

車椅子に乗った白髪の老婆が2人、ならんで水面(みなも)を見つめている。「あれから40年……。また、あなたとこうして過ごすことになるなんてねえ」「あのときはビックリしたわ。あなたが女医さんになってるなんて」「わたしだって。まさかあなたが患者としてやって来るなんて。そして……わたしは鬼にされた」 ● 場面はそこから遡って昭和41年へ。人里はなれた精神病院で、重度のノイローゼの人妻が診療を受けている。3ヶ月ほど前から挙動が不審となり、電話のベルを異常に恐れるようになったというのだ。医師は、インターンをしている妻と共に、ヒロインの心の闇を探っていく……。 ● ベテラン監督・深町章が執拗に描きつづける(水上荘ロケによる)戦時/戦後ものの一篇。ミステリの背後に「女たちが戦後をいかに生き抜いてきたか」が浮かびあがる仕組みの──褒めて言うならば「飢餓海峡」になったかもしれないお話である。ま、褒めすぎだけど。脚本クレジットは深町章。老婆となったヒロインの登場するプロローグは効果的だけど、劇中年齢を計算すると回想時制の昭和41年で26歳のはずだから、それから40年後の現在はまだ66歳。まだまだ「車椅子に乗った白髪の老婆」って歳じゃないよな。 ● ヒロインの人妻には、去年あたりから深町組専属女優となった感のある里見瑤子。本作ではノイローゼを熱演しての堂々たる主演ぶり。このところ「演技の実力」がようやく「芝居に対する情熱」に追いついて、今まさに脂の乗り切った女優だと思うんだけど、ほかの監督たちはなんでもっと使わないんだろ。ひょっとしてプライベートでも深町組専属とか?(火暴) 夫に平川直大。 精神科医になかみつせいじ。 その妻の女医に水原香菜恵。 そして、物語のキーを握る人物に、ねちーっこい芝居を披露するベテラン・牧村耕次。 濡れ場要員として藍山みなみが出演。 撮影はもちろん名手・清水正二。 [新東宝 4月28日公開]

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義父の愛戯 喪服のとまどい(加藤義一)

遺産相続をめぐるドロドロの愛欲サスペンス。数年前に夫が蒸発してからも献身的に世話をしてきた義父が亡くなった。これで家を出て、しばらく前から付き合っているカレシと再婚しようと思ってるヒロインの前に、いなくなった亭主が突然、戻ってくる。目的は親父の遺産だった。優しいカレシは「欲しいのは遺産じゃなくて君なんだ」と言ってくれるが、夫から「遺産の隠し場所を白状しろ!」と暴力的に責められると、ついつい躯が反応してしまうのだった。そんなとき、亡くなった義父の「愛人の娘」だと名乗る女が乗り込んでくる……。 ● まあ、それなりにサスペンスとしての要件は整っているのだが、ひとつ致命的な欠陥があって、それは岡輝男の脚本で、久須美欣一が好色老人を演じるとなると、これはもう新田栄の映画にしか見えんのだ(火暴) 悪いこと言わんから、真面目な映画を撮るんならガミさん(野上正義)にしとけって。そもそも加藤義一という監督は、基本的にコメディの人なのでサスペンス演出はあんまり巧くない。安っぽい。つまり、田吾作臭が強くなる。ひえ〜。てゆーか、これ、この脚本のまんまでもコメディ・タッチで撮ることは可能だと思うけどなあ。 ● 主演は2005年の「痴漢電車 ゆれて密着お尻愛」「美肌教師 巨乳バイブ責め」に続いて加藤組3本連続となる、虚乳アイドル・矢藤あき。笑顔の魅力的な女優さんなので──決して、笑ってないとブスだと言ってるわけじゃないですよ──本作のような、苛められるだけで、ずっと悲しい顔をしてる役は似合わないよ。 暴力的なセックスで女を支配するゲス亭主に平川直大。これはピッタリ。 そして「優しいカレシ」に丘尚輝(=脚本家の岡輝男の俳優名)。いつもはヨゴレかゲス男の役ばっかりやってるので、なんかイメージが違うぞ、と思ってたら、やっぱり丘尚輝は丘尚輝なのだった:) 今回、片目に眼帯をして出てくるので、いったいどんなギミックを見せてくれるのかと待ってたら、最後まで何もなし。なんだよ、ただのものもらいかよ! あと濡れ場要員として「女弁護士」に葉月螢、「愛人の娘」に新人・あらい琴が出演。撮影は小山田勝治。 ● 劇中に「即効性の利尿剤を飲まされたヒロインが、バイブで絶頂寸前まで追い上げられたあと、放置プレイで亭主と愛人のセックスを見せ付けられ、我慢できずおしっこを漏らしてしまう」という、一見とてもすぐれた濡れ場があるのだが、このときソファに座らされたヒロインが縛られていないのだ。バカ!縛っとかなきゃトイレ行っちゃうじゃんか! しかもその前のシーンでは縄がけされてるんですよ。現場でだれか気付きなさいよ。 [オーピー(大蔵映画)4月18日公開]

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昭和エロ浪漫 生娘の恥じらい(池島ゆたか)

脚本:五代暁子 撮影・照明:清水正二 音楽:大場一魅

大蔵映画からの「池さん、次は『ALWAYS 三丁目の夕日』でひとつ」というリクエストで作られた昭和映画。いわゆる「娘の結婚」の話である。小津安二郎の「彼岸花」(1958)からテレビの東芝日曜劇場にいたるまで、それこそ何百何千と作られた日本映画の十八番だ。 ● 実直な勤め人である父親(なかみつせいじ)は、一人娘のアキコ(春咲いつか)がもう25歳にもなるというのに、いまだ縁遠いことを心配している。それで専務から縁談の話が持ちかけられたときは娘の幸せを思って大喜びした。のんきな性格ゆえ「結婚」を自分のこととして考えられない娘は、歌声喫茶で熱く明日の夢を語る職場の先輩(平川直大)に相談すると「バカ! なにを言ってるんだ。キミの人生じゃないか!」と叱られる。じつは先輩はアキコに惚れていたのだ。窓の外を電車の音がとおりすぎる四畳半で結ばれる二人。アキコはカレを家に呼ぶ。父親に結婚を申し込む。怒鳴る父。娘の涙。それまで黙っていた母親がひとこと。父親……「専務には失礼の無いようにお断りしなきゃ、な」 ただ、それだけの話である。1時間かけて劇的なことは何ひとつ起こらない。でも、濡れ場にはきちんと想いがこもってるし、なにか暖かな気持ちで映画館を後にできる。そんな映画だ。池島ゆたかは良い仕事をしたと思う。 ● ヒロインの春咲いつかは、裕木奈江似の声優顔で、おっとりした役に合ってるし、演技勘も良い。ぜひ続けて出てほしい。 なかみつせいじの父親役は言うことなし。絶品。 その部下で、ひそかに上司を慕ってるBG(もちろん処女である)に池田こずえ。 ヒロインの大学生の弟に津田篤。 そんな弟を手玉にとるススんでるクラスメイトに、ロリータ体型にベビーフェイスの人気AV女優・日高ゆりあ。 なお劇中、バーに置かれたAMラジオから「長嶋茂雄の天覧ホームラン」の中継が流れてくるシーンがあるので、舞台設定は昭和34年(1959)ということらしい。 [オーピー(大蔵映画)4月8日公開]

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盗撮サイト 情事に濡れた人妻(渡邊元嗣)

郊外の貸家に越してきた新婚夫婦。出張で夫が留守がちな妻キョウコのもとに「ミスターX」と名乗る人物から、家の中でのキョウコの恥ずかしい姿を写した盗撮画像のメールが送られてくる。そんな彼女を訪ねてくる元カノのカナエ「黙って結婚しちゃうなんて。わたしはキョウコにとって何だったの? 恋人? それともビアンのセフレ!?」 そして挙動不審の大家。おまけに妻が瀬戸恵子。はたしてキョウコのプライベートを脅かすミスターXの正体は……? ● ピンク映画では定番である「ヒロインをレイプ/盗撮したのは誰?」サスペンス。脚本:山崎浩治。定石どおりの展開の果てに終盤、ものすごい力業のどんでん返し(てゆーか、足払い?)があり、それまでのサスペンスが一挙に別の映画になってしまう。1本の映画としてみたら完全に破綻してるのだが、しかし、ピンク映画としては圧倒的に正しい映画の締め方である。真犯人が犯行動機を明かす台詞>「奥さん、私たちがなんでこんなことしたか、わかるかね?」「ふっふっふっ。あたしたち……盗撮マニアなのさ!」 そ、それって説明になってるのか!? ● ヒロインに新人・華美月。夫に西岡秀記。ヒロインの元カノに藍山みなみ。大家に……おお!唐組で主役を張っていた邪悪な酒井敏也こと堀本能礼(ほりもと・よしのり)じゃないか。その妻に瀬戸恵子。撮影:飯岡聖英。終盤、画面の半分に「台詞を喋ってる女優の顔のアップ」、もう半分に「別の女優の全身吊り」を遠近で捕らえた構図がカッコ良かった。 ● ちなみに本作は「ビアン」という言葉を使ったはじめてのピンク映画じゃないかと思う。去年の、使ってしかるべき「ハードレズビアン クイック&ディープ」は使ってなかったもんなたしか。 [オーピー(大蔵映画)3月30日公開]

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巨乳メイド倶楽部 ご主人様たっぷり出して(的場ちせ)

新東宝と大蔵映画をまたにかけ快進撃を続ける女流監督・的場ちせ(=浜野佐知の別名)の新作。世の中、メイド喫茶がブームということで「メイドもの」である。ただし脚本が山崎邦紀だから、もちろん只のメイドものには、なるわけがない。 ● 閑静な住宅街にたたずむ、ここは「メイドの館」、別名「癒しの館」あるいは「敗者復活の館」とも。美しくグラマーなメイドたちが、闇のなかでさまよってる世の男性に光をあたえてくれる癒しの場。「なによそれ? メイド風俗とどう違うのよ」という劇中人物のツッコミに、館の主宰はこう答える──メイドは真っ白なノート。なにを書くかはご主人さまの気持ち次第。おわかりですか? メイドは職業ではありません。メイドは〈存在〉なのです。……ま、小理屈つけてるだけで、やってることはメイド風俗そのものなんですけどね。小難しい理屈をこねる脚本と問答無用のエロエロ演出という、山崎邦紀=浜野佐知コンビの持ち味が最大限に発揮された文句なしに ★ ★ ★ ★ ★ なピンク映画。 ● 本作が必要以上にエロエロになったのは主演のメイド嬢・アリスに扮した綾乃梓によるところ大。なんと身長179cm! バスト101cmのJカップ天然巨乳にウエスト58cmのくびれ腰、そしてひょっとしてお父さん黒人?ってくらいのラテン型ヒップの22歳。そのまま米版「PLAYBOY」本誌のプレイメイトになってもおかしくないダイナマイト・ボディに、おじさんちょっと目がクラクラしたよ(演出家もその衝撃力は充分わかっていて、彼女の初登場シーンでは、いきなり服を脱いで全裸で立たせ、まず全身を写してから、陰毛からパンアップしてみせるのだ。プロですなあ>浜野佐知) なにせアンタ、寝そべったらビスタサイズのフレームからハミ出しちゃうんだから。いやマジ、マジ。蓮實重彦流に言うならば、綾野梓をスクリーンに横たえるにはシネマスコープが必要なのである。←バカ。いや、なんかもう人間の種類が違うカンジ。本作で共演している、ピンク映画界がほこる〈2エロ・トップ〉の風間今日子と鏡麗子が昭和の遺物に見えてしまうほど。それなのに顔だけは日本人好みのベビーフェイスなの。よく出来てるなあ。これでスーパーモデルとかじゃなくて、人気AV女優ってんだから良い時代になりましたなあ(←遠い目) こんど借りてみよっと。 ● さて、話を映画に戻すと、メイドの館の主宰に鏡麗子。館の客に扮するのは、金持ち一家のニート息子に平川直大。ジムをお払い箱になった負け犬ボクサーに(男っぽいモードの)柳東史。会社を潰して人間不信のインポテンツになった社長に、なかみつせいじ。その妻に風見今日子。撮影は小山田勝治。音楽:中空龍。いつものチープなシンセ・メロではあるが、今回はマカロニ調のBGMがカッコ良かったよん。……「よん」て。 [新東宝 3月10日公開]

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痴女女医さん 男の壷飼育(新田栄)

壺飼育っつーから、えっ「西太后」?と思ったら、壺は壺でも東洋医学でいう「体のツボ」なのだった。それフツー漢字で書かねーだろ! ● 開業医をしている早乙女凛子は大学病院の手術にヘルプに呼ばれるような優秀な外科医。だが凛子にはもうひとつ裏の顔があり、手術で興奮した躯を冷ますため街へ出ては下卑た肉体労働者を性欲のツボを刺激してホテルに連れこみ肉欲を満たしたり、患者を検査入院と称して特別室に囲っては性奴隷として壺飼育してるのだった……。 ● ストーリーだけ聞くと、下元哲が監督していればエロエロな猟奇SMになりそうな、あるいは松岡邦彦なればドロドロの淫欲メロドラマになりそうな話ではあるが、そこは田吾作コンビのこと、不健康な匂いのまったくしない解説映画として仕上がっている。かか、解説映画ってなに!? つまりアレさ、愛染恭子の「Gスポットなんちゃら」みたいなやつよ。ヒロインがナレーションでちんぽが勃つツボだの(Gならぬ)尿道のUスポットだのボルシチ性感(←違ったかも)だのについて解説していくのだ。ビデオ合成も多用して画面に矢印が出たりする。だが演じる遠峯江里子(例によって熟女AV女優)の台詞まわしが壊滅的なのでハウツーものとしての実用性はない(……多分) ● 壺飼育される患者に柳東史。女医がシーツを払いのけると全身にちゅーーっと半端な経穴図がマジックで描かれている。いまどき経絡経穴図なんてネットでも手に入るんだから、もうちょっと丁寧に描きなさいよ。 亭主の壺飼育を依頼する人妻に水原香菜恵。射精コントロールをネット相談する男になかみつせいじ。そのカノジョに華沢レモン。痴女られちゃう宅配便配達員に熊谷孝文。脚本:岡輝男、撮影:千葉幸男。 [エクセス 2月3日公開]