m@stervision pinkarchives 2005

★ ★ ★ ★ ★ =すばらしい
★ ★ ★ ★ =とてもおもしろい
★ ★ ★ =おもしろい
★ ★ =つまらない
=どうしようもない



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絶倫義父 初七日の喪服新妻(山内大輔)

山内大輔の傑作メロドラマ。[シナリオ採録]を行った。 [エクセス 2月4日公開]

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喪服不倫 黒足袋婦人(山内大輔)

「絶倫義父 初七日の喪服新妻」でついに当たりを出したエクセス期待の星=山内大輔が続けざまに放った2005年4月作品。まぎらわしいタイトルだけど内容は「未亡人もの」にあらず。ヒロインの亭主は健在で、義父の十三回忌法要で喪服を着て、妻の喪服姿にムラムラっときた亭主がのしかかり、あらいやあなたダメよ法事に遅れちゃうアハ〜ン……というオープニング。ちょっと変わってるのは(タイトルにもなってるけど)喪服のヒロインが黒足袋(底は白)を履いてることで、ふつう女の人は喪服でも白足袋だよな。ご亭主も同じことを思ったようで、女房を抱きながら「めずらしいな、黒い足袋なんて」「女の黒足袋には言い伝えがあるのよ」「どんな?」「……黒い足袋を履く女は一生 男に困らない」 へえ、そうなんですか。 ● ヒロイン夫婦、義兄夫婦、義兄の息子とGFが順列組み合わせで全部の組み合わせでヤッちゃうという、いかにもピンク映画らしいムチャクチャな話だが、みずから脚本も書いた山内大輔のこんなもんでよかんべイズム(c)椎名誠 とは無縁の丁寧な演出で、ムチャクチャな話を(艶笑コメディとして処理するのではなく)まともなドラマとして成立させている。 ● たとえば「丁寧な演出」の一例を挙げるなら、法事が終わったとたんに義兄の息子は、父親が送っていくというヒロイン=叔母に挨拶もせず、お母さんが作ったチラシ寿司を小皿に取り分けてさっさと自分の部屋に戻ってしまう。じつはというかピンク映画としては必然として──この高校生の息子は叔母に気があるのだが、部屋に戻ったかれの耳に親父のクルマのドアを閉める「ばすっ」という鈍い音が聞こえる。これが親父の分と叔母の分、ちゃんと2回 聞こえるんですね。なに言ってんだ、そんなの当たり前だろと思われるだろうが、ピンク映画やVシネ・レベルではこの程度のこともちゃんと出来てない映画が多いのですよ。そのあとに「勉強机の上に食べ終わった小皿。そして嫌いなのか食べ残しの椎茸がひと切れふた切れ」という繋ぎカットが入る。こういう何気ないカットの有無によって映画の印象は大きく変わる。映画を豊かにするのは予算の大小だけではないのだ。 ● 黒足袋愛好ヒロインにちょい有森也美 似の新人・川原絵里香。 その夫に柳東史。 義兄にアゴ鬚をたくわえた、たんぽぽおさむ。 義兄の妻に、このところ年増女優として小川真実の縄張りを奪いつつあった瀬戸恵子。 義兄の息子に柳之内たくま。 そのGFにみごとな詰め美乳の新人・矢藤あき。 撮影:鏡早智。 [エクセス 4月1日公開]

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女子寮の好色親爺 屋根裏の覗き穴(山内大輔)

プログラム・ピクチャーの監督を続けていく以上、避けては通れないのが敗戦処理の問題である。そう、いつもいつも自分の思いどおりの企画で撮れるわけじゃない。会社のあてがい扶持の企画に、使いたくもない俳優で、なんとか1本、形にする──そんな難問もクリアできなきゃピンク映画の監督は務まらないのだ。そして山内大輔は腐ることなく、定番のジャンル映画から、(ただ、過去の作品のルーティンをなぞるのではなく)少しでも新鮮な面白さを生み出そうと小さな努力を重ねていく。 ● 舞台となるのは「小金井製菓」の女子社員寮という設定。女子社員はかりんとうを齧りながら「美味しいね。ウチの会社で美味しいのってコレだけだ」と呟く。ヒロインはモノポリーが大好きで、自分の部屋にだれかがお茶を飲みに来るたびに「ねぇ、モノポリーやりませんか?」と誘う。もっとも誰も相手にしてくれなくて、夜中に独りでやってたりするんだが。……いや、もちろんこうした場面は直接、濡れ場とは関係ないし、無くたって物語は成立するんだけど、こうしてちょっとずつ色を付けることによって映画は豊かになるのだ。 ● 3つの部屋に入居してる女子社員の痴態を、スケベな管理人が天井裏から覗いて、最終的には3人全員とヤラしてもらう……という構成で、この管理人を演じるのが坂入正三。おれはコイツが大っキライで、どこで覚えたんだその芝居!?というような変な芝居の癖が見るに耐えない。ところが山内大輔は独創的なアイディアでこのマイナス点を克服してしまう。なんと管理人を「マトモに言葉を喋れない」という設定にして、独特すぎるエロキューションを持つ坂入正三に全篇、ふがふがとしか喋らせないのだ。つまりフランケンシュタインの怪物(!)ですな。これを、ちょっとオツムが弱くて人にNOと言えない宇能鴻一郎ヒロインが、やさしくセックスさせてあげる。そしてラストは、隣室の女とレズ・セックスをするヒロインが天井裏からの視線を感じながら「いつも誰かが見守っててくれる。──そう思えるから安心できるんです」と締める。みごとな敗戦処理である。 ● ヒロインには、台詞がかなりアヤしいが役の設定に助けられている美咲ゆりあ。 隣室の「オナニー中毒の色キチガイ女」に下品パワー全開の瀬戸恵子。 頭では利用されてると知りつつ、だめんずなヒモ男に貢いじゃう若い社員に華沢レモン。 その人でなしのカレシに柳之内たくま。 そして、冒頭の回想シーンに出演する「ヒロインの夫」に、もう、出てきただけで「わっ、変態!」と観客全員が感じられる安定した変態芝居をみせるサーモン鮭山。 撮影は原田清一。 ● ひとつ「脚本」の山内大輔にツッコんどくと「先にお風呂 浴びてきて。ご飯の支度するから」って台詞があるが、たしかに「ひとっ風呂」は浴びるけど「お風呂」は浴びないんじゃないか? [エクセス 12月23日公開]


痴漢義母 汚された喪服妻(廣田幹夫)

2004年に2本撮り「令嬢姉妹飼育」「令嬢姉妹飼育2 性奴隷」でデビューした廣田幹夫の2005年作品。主演の阿当真子と脚本・高木裕治+撮影・下元哲も続投。「令嬢姉妹飼育」もそうだったが、今度もやはり「ピンク映画」というよりはH系Vシネマである。なにをもって「Vシネマ」なのかはうまく説明できないのだが、たとえば60分の映画で、最初の濡れ場まで30分もかかったりするところがVシネマの文法だと感じる。いや、べつに「そういう話」なのではなく、それまでに少なくとも2回は濡れ場を設定できる話なのだ。 ● 旧家の令嬢が借金のかたに歳の離れた実業家の後妻に入る。処女だったヒロインが初夜を嫌がると、優しい夫はそれ以上 無理強いせず、2人は肉体関係のないまま、それなりに幸せな夫婦生活を続ける。ところが夫が急死してしまったことから、莫大な遺産と後継社長の座をねらう息子夫婦の毒牙がせまる……という、イマドキありえねーだろ!という、古いタイプのメロドラマである。まあ、おれも「古いタイプのメロドラマ」自体は決してキライじゃないんだが、この映画はそれからがスゴい。処女のまま性的に潔癖症だったヒロインは、夫の死後、夫がひそかに隠し持っていた趣味の痴漢ビデオによって突如として性に目覚め、オナニーを始める。おお、だから「痴漢義母」で「汚された喪服妻」なんですね。驚くのはまだ早い。それを見ていた夫の亡霊が現れて、ついにヒロインと結ばれる。しかもこの亡霊、白の旅装束に、額には紙冠(三角布)という正装で出現あそばされるんである。え? え!? なにこれ笑うとこ? 途方にくれる観客にお構いなしに廣田幹夫は粛々と「メロドラマ」の演出を続けていく……。なんというか、ちょっと筆舌に尽くしがたい一品。 ● 2003年の国沢組「小島三奈 声を漏らして感じて」で可憐なヒロインを演じた小島三奈が、その後、週刊ポスト/週刊現代の新体操ヌードのブームのときに「現役バレリーナ・ヌード」でのグラビア進出を経て、本作の、ヒロインに意地悪する「息子の嫁」の役で久々にピンク映画に復帰してるんだけど、なんだかすっかり容姿が衰えちゃってて、ちょっとショック。なにがあったんだ!?>小島三奈。 [新東宝 3月25日公開]

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痴漢電車 エッチな痴女に御用心!(渡邊元嗣)

満員電車で痴漢してきた男をカモにしている姉妹サギ師。その妹のほうが、田舎者のお人好し男を騙すつもりが本気で惚れて……という、いつものナベ印・純情シネマ(脚本:山崎浩治、撮影:飯岡聖英) ● サギ師(妹)に扮したAV女優・飯沢もも、カモ男の真田幹也とも、ルーズな脚本と演出を「楽しさ」と観客に勘違いさせるほどのチャームはなく、観ていて辛い結果となった。 収穫といえるのは牛乳瓶の底メガネをかけて「男運のないドンくさ女」を演じる華沢レモンの変化自在なコメディ・リリーフぶり。2004年にデビューして圧倒的支持で新人女優賞を受賞後も、本数を落とすことなく出演を続け、2005年は着実に演技の幅をひろげ、ベタなコメディ演技にも磨きをかけ、長足の進歩を魅せた。本作での役柄など(存命なら)林由美香が演ってしかるべき役どころであり、いまや華沢レモンはピンク映画界に確かに自分の居所を築いたと言えるだろう。 サギ師(姉)には爆乳AV女優・朝倉まりあ。きちんと自分の仕事をこなしている。 [オーピー(大蔵映画)12月30日公開]

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夫婦交換 刺激に飢えた巨乳妻(渡邊元嗣)

バイブレーターなどアダルトグッズの製造・販売を手がける会社の社員寮──といっても普通の一軒家──に同居する2組の夫婦。亭主が仕事に忙しくてセックスレスな妻たちが互いの亭主を誘惑してお手軽スワッピング……という渡邊元嗣らしさのまったくない、まるで小川欽也 作品のような凡作。ヒロインを演じる2人の新人・朝倉まりあ&未来祐樹は、どちらも「可愛い」ってタイプではなく、つまり渡邊元嗣のツボではないので、ナベ まったくやる気なし。脚本:山崎浩治、撮影:飯岡聖英。 ● ひょっとしてアレかね? 渡邊元嗣って大蔵の社長から「チミもいつまでもSFだファンタジーだと、ンなチャラチャラした映画ばかり撮ってないで、もう、そーゆーのは若い加藤義一クンにまかせてだな、そろそろフツーの映画を撮ったらどーなんだ、ん?」とか言われたのかね? だけど言っちゃ悪いけど、渡邊元嗣って監督はまさに「好きこそものの上手なれ」で、SFやファンタジーやアイドル映画を撮ってこそ画面が弾むのであって、そうした要素を抜いてしまったら、もはや関根和美 以下の下手な監督でしかないのだよ。だから大蔵映画から何を言われようと気にするな。目を覚ますんだ、ナベよ! [オーピー(大蔵映画)11月1日公開]

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肉体秘書 パンスト濡らして(池島ゆたか)

咲坂法律事務所を経営する弁護士の咲坂真一郎は、秘書として桜木亮子を採用する。ハキハキとした受け答えの真面目そうな女性で、バツイチの中年男である咲坂としては、ほのかな好意を抱き始めていた。ところがその矢先、亮子は金庫の現金と小切手とともに行方をくらます。大きなショックを受けた咲坂だが、元カノの女探偵・竹宮ユイの力を借りて、亮子……いや、本名・中津川フユミの居所を突き止める。早速、アパートに乗り込んで問い詰めるが、フユミは「すべては〈支部長〉の指示によるもので、穢れた金を〈組織〉に納めることによって浄化しているのだ」と憑かれたように主張する……。 ● ファースト・ショットはオレンジ色のバッグ……を小脇に抱えて都庁前の歩道を歩くオレンジ色の髪の女の後ろ姿。ホテルの一室。バッグの中には大金。洗面所で髪を洗い流すと黒髪の女が出現する。──そう、これはヒッチコック「マーニー」の翻案である。とはいえ、有名な「金庫から金を盗む」長まわしのサスペンスをやってないことからも明らかなようにヒッチコック一流のめまいのような映像と色彩に挑むことは(賢明にも)最初から放棄している。映像的な魅力度はヒッチを 100 とすれば本作はせいぜい 0.2 ぐらい。代わりに座付脚本家の五代暁子がしたことは「マーニー」のニューロティック・サスペンスの要素を換骨奪胎して「ストーリーの面白さ」で魅せるという方法で、それは(驚くべきことに)成功している。ピンク映画の予算的限界からくる美術のショボさとかを無視すれば──という前提ではあるが、ある意味では本家の「マーニー」より出来がいいくらいだ。 ● いや、おれは──天下のヒッチコックに畏れおおいことだが──「マーニー」って仏作って魂入れずって感じがすんのよ。映像的にはなんというか病んだ魅力に満ちていて素晴らしいんだけど、ラブ・ストーリーとしては、ショーン・コネリーがティッピ・ヘドレンをまるで実験動物のように観察してるみたいで、まったく感情移入できない。その点、五代脚本の優れたところは「心理(ミステリ)の解明」がそのまま「愛の成就」に同期してる構成で、事件の解決がラブ・ストーリーとしてもハッピー・エンドになるので、とても後味が良いのだ。 ● ヒロインの新人・池田こずえ は普通にいえばブ……あ、いや、個性な顔立ちのAV女優で、映画初出演とは思えない狂乱の熱演をみせてくれる。 「語り部」の役回りである主人公の弁護士に本多菊次朗。「善人キャラ」を観客がすなおに信じられる好演。 ヒロインのルームメイトの看護婦に華沢レモン。そのカレシに樹かず。ヒロインに悪事を命じる「支部長」に竹本泰志。 濡れ場要員のホテトル嬢に山口真里。女探偵を演じる佐々木麻由子は脱ぎなしの特別出演。撮影:長谷川卓也、音楽:大場一魅。 [新東宝 4月29日公開]