m@stervision archives 2001: gleanings of autumn

★ ★ ★ ★ ★ =すばらしい
★ ★ ★ ★ =とてもおもしろい
★ ★ ★ =おもしろい
★ ★ =つまらない
=どうしようもない



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VERSUS ヴァーサス(北村龍平)

見逃していたのを新文芸坐で落穂拾い。黄泉還り(よみがえり)の森で、いい者と悪者とゾンビ軍団が三つ巴の殺戮カンフー大アクション!…という「死霊のはらわた」ミーツ「マトリックス」な自主映画。アクション演出・撮影・編集は一流。ドラマ演出と脚本 二流(やりたいことは伝わる)で、役者と演技指導は三流以下。てか、長げーよ。なんで2時間もあるんだ? まあ、どっかのホールの自主上映とかで観たなら ★ ★ ★ ★ ★ を付けてたかも。 ● 主役のニイちゃんは見た目も演技力も新庄剛志並み。 ヒロインに月蝕歌劇団の東大 大学院女優・三坂知絵子。いくら役の設定がそうだからって身のほど知らずな美少女ヒロインぶりには見ててムカムカしたよ。 武術指導はドニー・イェン門下の下村勇二。

★ ★ ★
僕が天使になった日(シャーリー・マクレーン)

あれ? これ、ちっともトンデモ映画じゃないじゃん。シャーリー・マクレーンの初めての監督作で、タイトルが「僕が天使になった日」とくれば誰だって「シャーリー・マクレーンの 大霊界」を想像するだろ? しかも、カソリック系の小学校に通う男の子が主人公で(百貫でぶのお母さんがドレスメーカーだってこともあるけど)この子がやたらと女の子の格好をするのが好きで、それはこの子に言わせると信心ゆえで、よーするにヒラヒラのお洋服は天使の羽衣なんだって言うんだけど、そりゃ周りからしたらどう見たってオカマなわけで、だから友だちからはいっつも苛められてて、お母さんに泣きついても、そのお母さんがなにしろ亭主に逃げられた百貫でぶなもんだから、余計に苛めの対象になるわけで、そんな坊やがある日 クルマに轢かれて…ってストーリー展開だから、うわっ「でも、ぼくは死んで本当の天使になりました」って話かよっ。渋谷のミニシアター・ヒエラルキーの最下層に属するシブヤ・シネマ・ソサエティで「ワールド・プレミア」って、よーするにアメリカで公開できないのはそーゆーことかよっ…と、鼻白んだのだが・・・結局それは杞憂で、坊やは無事、生還。単語クイズの得意な坊やは、周りの騒音にもめげずに女装したまま単語コンテストの全国大会に出場してみごとに自分の生きかたを貫きました…というお話なのだった。だからそれってゲイ権利(ライツ)の話じゃないか。いくら坊やが「ぼくはゲイじゃない」と言っても、「周りになんと思われてもいいの。ぼくはただキレイな格好がしたいだけ」って、それはやっぱそーゆーことじゃないの!? …やっぱこれ、別の意味でトンデモ映画かも。 ● シャーリー・マクレーンは、坊やの味方になるシャーリー・マクレーンなおばあちゃんの役で出演もしている。 坊やは「ホーム・アローン3」のアレックス・D・リンツ。 警察官をしているので(別れて暮らす)女装息子を恥ずかしく感じてるお父さんにゲイリー・シニーズ。 その新しい奥さんにジェニファー・ティリー。 坊やが通う修道院小学校の伝法な院長先生にキャシー・ベイツ・・・と、芸達者が揃っている。

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スウィート・ノベンバー(パット・オコナー)

ある日、あなたの前にモデル体型のブロンド美人があらわれて「これからひと月のあいだ、あなたの恋人になってあげる」と宣言する。1ヶ月後にはあと腐れなくサヨナラできて、その間の家賃おまんこ手料理すべて無料。夢のような話だが、キャッチがひとつあって、そのためには仕事を辞めて彼女の「恋人業」に専念しなければならない。突然の自己都合退職なわけだから1ヶ月後に仕事に復帰できる保証はないし、もちろん毎晩のように映画館に行くこともできない・・・これってけっこう究極の選択だよな。しかも相手はシャーリーズ・セロンだろ。どっちを取るか、おれなんか真剣に悩んじまったぜ(←まったく意味のない行為) ● 主題歌がエンヤであることからも、製作サイドが「泣かせるラブ・ストーリー」を狙ってるのは明らかだが、そもそもこれって「ラブ・ストーリー」かい? どっちかっつーと、厭味な広告業界のパワー・エリートが、奇矯なふるまいのヒロインの出現によって人生を取りもどす Get a life! な話・・・すなわち(またもや)「クリスマス・キャロル」なのである。主人公を目覚めさせてフッと消えてしまうヒロインは、言ってみればゴーストみたいなもんだし。「クリスマス・キャロル」である以上、主役はスクルージ氏と決まっておる。つまり本作はシャーリーズ・セロンの映画のように見えてじつはキアヌ・リーブスの映画なのである。だってそうとでも考えなきゃヒロインが「ハンサムなだけで思いやりのかけらもない最低男を〈11月の恋人〉に選ぶ」という致命的なプロットの破綻が説明できないじゃないか。ただそうであるならキアヌ・リーブスがあまりに大根すぎるのだ。「偶然の恋人」のベン・アフレックにもはるかに及ばないってのは問題じゃねえか? キアヌが「広告業界のパワー・エリート& CLIOの常連」なんてギャグにしか見えん。いや、これが「チェーン・リアクション」なら天才的物理学者の役だろうと何だろうと構わんのよ。あれはアクション映画だから。だけど、この映画にはリアリティってもんが必要でしょう。パット・オコナーいまだ復調ならず。洒落たつもりのラストも、ありゃ客を泣かせ損ねてるだけだ。