1999年10月23日(祝)
空港でも入国審査も特別心配することもなく通過。この辺りはやはり去年のヨーロッパ旅行での経験が活きているといえる。つまり、無駄な考え休むに似たりであるわけだ。
現地係員の方とも何の問題もなく合流。空港の両替所で日本円を韓国ウォンへと両替。その後合流した女性2人のペア2組と一緒の車に乗りソウル市内のホテルへと送ってもらうことになる。
最後にバンに乗ったのが私。空いていたのはなぜか進行方向とは逆に向けられたシートのみ。嫌な予感がした。
バンはスピードに乗り、グングン市内への道を飛ばしていく。
それにしても、韓国の運転は荒い!
割込みなんかは当たり前、道の端、いわゆる歩道にあたるところまで縦横無尽に車が走りぬけている。間違いなく気の弱い人間は目的地に着くことはできないだろう。行ったもん勝ちの世界である。
また、道も結構ひどい。
当然舗装はされているが、結構ガタガタ。90Kmほどで走っている車のよく跳ねること。しっかりと腰を据えておかねば、天井に頭をしたたか打ち付けることになる。
それにしても、お向いの女性と向き合う形というのは実に落ち着かない。普段の私であれば、声でもかけて場をなごますのであろうが、正直そんな余裕はなかった。既に私の身体には冷たい汗が流れ始めていたのである。
時計を覗くと市内まではあと20分ほどはかかりそうだ。なんということだ。こんな所で車酔いにあってしまうなんて。一体何年ぶりだろうか、ここまで気分が悪くなるのは。私の不調に添乗員さんが気付いたようで、しきりに席の交換を持ち掛けてくれたが後の祭りである。ここまで来てしまえば席の位置など関係ない。ただ、はぁはぁと息を吐き、一刻も早く目的地に着いてもらうことを祈るだけだ。韓国到着早々、このようなバトルを演じなければいけない羽目に陥るとは、侮りがたし韓国!
ほぼ予定通りの時刻でバンはソウル市内にある大型免税店の一つである新羅百貨店に到着。既に全身冷や汗でぐっしょりだった私はゆっくりとバンから下りると、吹きぬける風にますます体を冷やされ、一気に体調不良が悪化するのであった。免税店は地下にあり、まず真っ先に襲ってくるのがものすごい香水の香りである。私は本来香水などという物は好きではない。ただでさえ好きではないところに、この体調不良。気分が更に悪化しないわけがないのだ。となれば、向かう先はただ一つ。本日5回目となる洗面所である。
洗面所から出ても依然気持ちの悪さは残っていた。土産の買い物などいつでも出来ると考えていた私は一旦外へと出て風にあたることにした。ここでしっかりと体調を戻しておかねば、夕食に響くのだ。幸いにも胃は空になったことだし、後は精神的な物だけである。
新羅百貨店の向いには小さな薬局があって、全く判読不可能なハングル文字の隙間に「バイアグラ」と、一瞬記号にも見えかねないカタカナを見つけることが出来た。大丈夫だ、こんな小さな薬局ですら日本語を表示している。言葉の壁ぐらいどうにでもなるだろう。その安心感からか、徐々に体調にも回復の兆しが見えていた。
しかし!油断は禁物である。何せあのバンには再び乗らなければいけないのだ。夕食のためにもここで負けるためにはいかない。
集合場所が百貨店の内部であったため、再びエスカレーターを使い地下へと潜る。そういえば、入館時に免税のためのチケットをもらっていたのであった。これをカウンターに見せると何かしら粗品がもらえるらしい。ただでもらえる物は喜んで頂くのがポリシーである私は早速カウンターへとチケットを提示した。制服を身に纏ったちょっときつめのお姉さんは、その外見通りに一言も発せずドンと粗品を置くというきつい行動に出た。やいやいやい!観光客だと思って手を抜いた接客してんじゃねぇよ!しかし、言葉が通じない相手に口論を持ち掛けるほど、私もバカではないので素直に粗品を受け取る。一応こっちも無言で、って質悪いな。
粗品は竹塩石鹸であった。紙箱には全て日本語で印刷がされており、明らかに日本人観光客向けですよという感じだ。それに竹塩というだけあって竹の匂いが紙箱を通り抜けてプンプン漂っている。荷物に匂いが移りそうだったが、土産の代わりになるかもしれないのでそのままポケットへと突っ込んだ。今回の旅行はあまり金をかけたくないというのもあったし。
さて、全員が集まり今度は各々のホテルへと送ってもらうこととなる。今回一緒のバンで移動することになった3組の内、私だけが違うホテルへの宿泊となっていた。というのはホテルを明洞(ミョンドン)地区で指定していたからだ。明洞地区はソウル一の繁華街といってもいい場所であり、ここからならすぐにおいしい物にありつけることができるであろうという考えがあったからだ。
後はホテルまでの道程をガマンすればいいだけだ。当然のように進行方向とは逆向きのシートへ座ることになった私は、大きく息を吸い来るべき脅威に身構えた。
3分後。あっけなくバンはホテルへと到着。
いつもこうだ。こっちが身構えると肩透かしを食らう。かといって油断すると必ず痛い目に遭うのだ。どうも海外では私の行動が裏目に出がちのようだ。むぅ。
到着したのはニューオリエンタルホテル。★
添乗員さんにチェックインをしてもらい、ここで別れる。今度会うのは帰りの迎えの時だ。つまり、これからの2日間は自力で何とかしなければいけないわけである。まあ、何とかなるさ。私の体調は完全に復調していた。いよいよ本格的な旅行のスタートである。
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