風邪薬


「やったぞ!見事実験は成功だ!」
「それはおめでとうございます。先生、何の実験に成功されたのですか?」
「うむ、よく聞いてくれた。この世の中に風邪薬は数あれど、すべて咳や鼻水、頭痛、発熱といった症状のみに対して有効な物ばかりじゃ。しかし、今回わしがが発明した風邪薬は、風邪の根源であるウイルスに直接作用して風邪を直すという画期的な物なのじゃ。そして、その薬をこのハムスターに投与し、見事風邪を完全に完治させることに成功したのじゃよ」
「おお!それはすごい!本当におめで……あ」
「ん?どうしたのかね」
「先生、もしかしてその薬には致命的な欠陥があったりしませんか」
「むむ、するどいな。さすが長年わしの助手をしておるだけのことはある。そうなのじゃ。ちょっと問題点がのお」
「やっぱし……だいたいこんな話が出てくる時はえてしてそんなオチが待ってるものです」
「そんなものなのか?」
「そんなものです。私も伊達に数多くのショートショート読んでませんよ」
「何を言っておるのかよく分からんが、そうか、そんなものなのか」
「では私が長年の経験でその問題点を当ててみましょう」
「ほう」
「薬がものすごく大きいか、治るまでにかなりの量を飲まなくちゃいけないんじゃないですか?」
「いやいや、そんなことはない。大きさは見ての通り、普通の錠剤と変わらん程度じゃし、服用も1回2錠でOKじゃ」
「では、治るまでにかなりの時間がかかってしまうんでしょ」
「そんなこともない。まあ体に吸収されるまでのタイムラグはあるじゃろうが、体に吸収されてから完全なる治癒までは半日とかからんじゃろう」
「わかりました。とてつもなく味がまずくて、とても服用出来るものじゃないんだ」
「薬の味がどうこうまでは考えておらんかったが、そんなにまずいものでもないと思うぞ。まあ、うまい薬というのもどうかと思うがのう」
「それじゃあ、風邪は治る代わりに別の病気にかかってしまうってのは」
「いや、それもない。この薬は風邪のウイルスだけを死滅させる力があるだけじゃ。それにそんなもんは薬とは言わんぞ」
「じゃあ、他に副作用はないと?」
「全くないといってもいいじゃろう」
「逆に風邪を引いていない時に飲むとまずいことが起きるとか……」
「基本的に身体には無害な物質でつくっとるから、それも問題ない」
「う〜ん、それではコストがかかりすぎてしまって、値段がものすごく高いとか」
「今の段階では少し高めじゃが、大量生産出来るようになればその心配もないと考えておる。それ以前に今の薬は何でも高いから、あえて安くして価格破壊をしてやりたいぐらいじゃ」
「まさか、ハムスターには効いたけど人には効かないなんていうんじゃないでしょうねぇ」
「いくらなんでもそれは失礼じゃないかね?人間の風邪を直さんとして何を大発明というのじゃ!!」
「す、すいません。じゃあ、一体何なんですか?その問題点というのは」
「うむ、この薬はちょいとばかり溶解性が弱くてな、完全に溶かすのに大量の水を必要とするんじゃよ」
「まさか、5リットルも10リットルも水飲まなきゃいけないんですか?!」
「水で服用するとなると20リットルは欲しいのぉ」
「そんなに水は飲めませんよ!」
「まあ、そうじゃろ。しかし、先に水で溶かして飲めば問題なかろう」
「ああ、それでしたら何とかなりそうですね」
「20リットルの薬になるがの」

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