機械が嫌いなおじいさん


 未来の未来のまた未来、あるところに変わり者のおじいさんが住んでいました。

 おじいさんは大のコンピューター嫌い。
 今や何もかもがコンピューターで制御されているこの世の中で、おじいさんだけは今や化石以上に珍しい自給自足の生活をしていました。

 今までためていたお金を全てはたいて、山や土がある土地を手にいれ、野菜を作ったり、家畜を育てたり。水は雨水をためて使っていました。もちろん家の中にはテレビも電話も何もありません。お日さまが昇ったら起き、沈んだら寝る。はたから見れば面白くも何ともない生活ですが、おじいさんはコンピュータを全く必要としない生活に満足し、毎日楽しく生活していました。

 そんなおじいさんの口癖はこうです。

「機械なんぞに頼りおって、万が一という時に泣きを見ても知らんぞ!」

 そうです。おじいさんはその万が一に備えて生きてきたのでした。
 そんなおじいさんを回りの人達は疎ましく感じ、おじいさんの山や土地には誰も寄り付こうとはしませんでした。


 しかし、その日はやってきてしまいました。
 突如現れた謎のコンピューターウィルスが全世界のありとあらゆるコンピュータに感染しその機能を停止させてしまったのです。

 その影響たるやすさまじい物でした。
 電車や車は暴走し、事故が多発。飛行機や宇宙船の類はすべて墜落、もしくは爆発。電力供給は完全にストップ。同時に人工衛星の機能も停止し、宇宙ステーションはそのまま宇宙の墓場と化しました。世界中のミサイルは誤発射され、大都市のほとんどを瓦礫の山にしました。
 時間にしてほんの数時間の事でしたが、この事件により全世界の80%にも及ぶ人の生命が奪われてしまったのです。
 コンピューター社会の完全なる終結でした。


 おじいさんは幸いにも田舎に住んでいたため生命を奪われることはありませんでした。 そして、今までの生活のおかげでまったく打撃を受けることもなく、いつもと同じ生活を過ごすことが出来たのです。

 おじいさんは「それ見たことか」と鼻高々です。
 そんなおじいさんの元にたくさんの人々が助けを求めにやってきました。
 おじいさんはそんな人々を全て受け入れてあげました。
 やがてアスファルトやコンピュータの下に埋もれていた土を掘り起こし、たくさんの人々が生活出来るだけの野菜づくりが、その人々たちの手によって行われるようになり、おじいさんが住んでいた山や土地は今や大きな村となっていました。

 みんなで育てた野菜や家畜の肉を食べながら、今や村長となったおじいさんはうれしそうです。胸元にデータディスクを忍ばせながら……


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