ACT.103 無人島に持っていくもの (2001.07.12)

『無人島に1つだけ持っていけるとしたら何を持っていきますか?』

 割とよく聞く質問である。
 この質問の答えとして期待されるものは以下の2つであると私は考える。
 1つは無人島にまで持っていきたい自分の宝物は何か。
 もう1つは、無人島というサバイバルにおいて、自分を助けるものは何か。
 この質問は自分の「物」に対する思いを顕著に表すので、非常に面白い質問であると思う。
 ちなみに私の場合、前者について考えた場合は「本」、後者に着いて考えた場合は「ライター」である。
 前者についてだが、私はいわゆる活字中毒者である。家にいるときも、電車に乗っているときも、トイレに行くときも私は本が手放せない。もし、本が手元にないときなどは、広告や看板など手当たり次第に活字を探し出してそれを読んだりする。ともかく、活字がないと私は死んでしまうといっても過言ではない。いや、過言かもしれない。あえて「本」という漠然とした表現にしたのは、これといった作品が思い浮かばなかったからだ。その時々で私が読みたい本は変わるので、今1冊にしろといわれたら大変困ってしまう。長い時間1人ぼっちだというなら、広辞苑あたりになるのかもしれない。
 後者についての説明はいらないのではないだろうか。まあ、あえていうならば、火を使うということは人間と獣の営みで一番違う点。つまりそれこそが人間としての営みの象徴とも言えることではないだろうか。しかし、火を自らの手で作り上げることは非常に重労働である。生きるために必要な水を作ることや、食料を手に入れることよりも大変であろう。となれば、一番重要なものを簡単に作り上げることのできるライターこそ、サバイバルの必需品と考えるわけだ。

 さて、こんな大して面白くもないネタを書いてきたのは、あるテレビ番組を見たからだ。そのテレビ番組名は「ランク王国」という。
 土曜日の深夜にTBSで「CDTV」の後に放送されているが、多分関東ローカルか、せいぜい全国数局ネットの番組であろう。少なくとも四国では放送していないはずだ。(一時期香川では放送していたこともあったが、半年持たずに消滅した)
 この番組はタイトルの通り、色々な物のランキングを発表するものだ。毎週発表しているのが、レンタルビデオ、コミック、ゲームのランキングで、それ以外に週変わりで色々な物のランキングを放送している。普段の私はだいたい裏番組の「うまなりくん」(フジテレビで放送している競馬番組。競馬に興味はないのだが、爆笑問題とさとう珠緒が見たくて毎週欠かさず見ていたりする)を見ているので、ほとんど見ることはない。が、たまたまある週は時間がずれていたので、久しぶりにこの番組を見たのだ。で、その時に聞いていた質問が一番最初の質問。これを渋谷の女性にアンケートを取り、そのランキングを発表していたのである。
 このランキングを見て私は驚愕した。というよりも、時代の流れというものをはっきりと見てしまった気がする。特にメモをとっていたわけではないので、うろ覚え(多少ランキングの順番に違いがあろうが、あまり細かいことは気にするなということ)で恐縮だが、そのランキングを発表しよう。

 10位 マッチ・ライター

 なんということであろう。私が一番重要であろうと考えたものが10位であるとは。皆さんは映画の「キャスト・アウェイ」をご覧になっただろうか。トム・ハンクス主演のサバイバルヒューマンストーリーだ。この映画の中でも火は重要なものとして扱われているが、それを手に入れるまでの苦労は並大抵のものではないということも表現されていた。火は大事なのよ。そんな大事なものが10位だなんて、この後に登場するものが楽しみである。

 9位 ナイフ

 なるほど、そっちできたか。これもなかなか重要なものだ。特に女性となると、やはり非力であるという点は否めないだろう。それを手助けする点からみても、その判断に間違いはないだろう。ほら、いざとなればもうサバイバルなんてできな〜いって頚動脈のあたりをナイフでス(以下自粛)

 8位 野菜・果物

 いわゆる食料というやつですな。これは一見浅はかな考えにも読み取れるが、そうとも言い切れない。というのも、野菜や果物には種がある。そう、栽培という手段があるのだ。ただ、収穫までにはそれなりの期間を要するということを念頭に入れると、そんなにいい案ともいえないような気がしてきた。ともかく、腹が減っては何とやらという考えであるな。

 7位 マンガ

 これは私の意見に相通ずるものがある。しかし、正直マンガという答えは意外であった。というのも、皆さんは若い女性がマンガを読む姿って見たことあります? そりゃ、家では読んでるのかもしれないけど、外でその姿を見かけることは少ないはず。男なんかと比べれば。まあ、見ている人は見ているということで、まだまだマンガ業界も大丈夫ということで。

 6位 化粧品

 これだよ、これ! 意味わかんないのが。私が男だということもあるであろうが、女性にしてみると化粧とはそれほど重要なものなのであろうか。しかし、どういうわけか私の付き合った女性というのは皆化粧っけのないひとばかりだったので、化粧にそれほど力を入れる理由がさっぱりわからないのだ。だいたい、無人島だぞ。自分のほかに誰もいないんだぞ。誰に見せるための化粧なのだ。てことは、自宅で1人でいるときもあなたは化粧をするのか。化粧を取ると死んでしまうのかあなたは。謎は尽きない。

 5位 テレビ

 これは正直わからなくもない。無人島に行ったところで電気がないのは百も承知。しかし、それでもテレビには我々の気持ちをひきつける魔力のようなものが存在している。しかし、少なくともインタビューに答えている女性たちはそこまで考えているようには見えなかった。改めて言っておこう。無人島に電気はないぞ。

 4位 水

 おお、ここでまともな意見が出てきた。人の生きる源である水。こういう意見を言う人はいわゆる良識派という方々なのだろう。この答えは決して間違っていないが、ちょっと考えが甘いといえるだろう。私が考えるに、水を確保するということはさほど難しいものではないと思う。無人島といえども川ぐらいあるだろう。雨ぐらい降るだろう。無人島ってぐらいだから海があるだろうから、蒸留するっていう手もある。なのにあえて水と言ってしまった貴女。サバイバルはそんなに甘くない。

 3位 ペット

 この答えには私が一番最初に述べた2種類の答え両方を備えているのが興味深い。つまり、愛玩という意味でのペットと、食料という意味でのペットだ。また動物には人間が及びもつかないような能力を持っているという。無人島生活では色々と重宝することだろう。しかし、食料という意味で言った貴女。動物を殺すということは意外と度胸のいるものです。まあ、サバイバルともなればそんなこといってらんないでしょうけど。

 2位 お菓子

 いよいよ佳境となったベスト10の2位はお菓子である。食べ物という点では8位と相通ずるものがあるが、お菓子は食べたらおしまいという大問題がある。しかし、チョコレートなどカロリーなどの点から見れば少量で大量のエネルギーになるので、効果的とも言えなくない。しかし、お菓子は食べだすと止まらないのだ。基本的にお菓子なんて物は一度開封されたら食べきるのが普通だ。日持ちしないのである。何よりも栄養が偏ってしまうのも問題であるな。個人的にはお菓子のような味の濃いものを食べて舌を肥えさせるようなことは後々つらくなると思う。まあ、目先の欲には勝てないという人間の弱さを浮き彫りにした回答といえよう。

 1位 携帯電話

 これなのだよ、これ! この結果があまりにも嘆かわしくてこの文章を書き始めたようなものなんだよ。何だよ、携帯電話って。無人島だぞ。間違いなく圏外だぞ。充電できないんだぞ。一体全体何に使うんだよ!
 このことについてはインタビュワーも疑問に思ったのか、「たぶん圏外ですけど、どうするんですか?」と聞いていた。その答えがまたすごい。
「以前届いたメールでも読みます」
 何だよそれは! 何の解決にもなってねぇよ。
 え? 私の回答の「本」とかぶるところがあるではないって? ちょっと待った。私が活字中毒なのは認めるが、何のために活字を読むのかということが重要なのである。それは知識を蓄えるためだ。自分の知らないことを知り、知っていることはさらに深く知る。まあ、マンガなどは暇つぶしの意味もあるが、それでも漫画家が紡ぎだすストーリに笑ったり泣いたりできるではないか。ところがメールでそれができるのか? しょせんは携帯メール、文章の長さにも限界があるだろう。ほぼ9割方他愛ない内容のものを読み返して、何が得られるというのだ。しかも、電池が切れたらお終いなんだぞ。わかってんのくわぁ!!

 スイマセン、多少取り乱してしまいました。
 しかし、ここまで携帯電話というものが人間と密着した存在になっているとは思わなかった。確かに携帯電話は便利だし、一度使い出すと手放せなくなる。しかし、あくまで単なる道具の1つに過ぎないのだ。そんなものに自分が振り回されてどうする。そんなことだから、コミュニケーション不足に陥って、いろいろな事故や事件が発生するんだよ!

 どうも、最近気が短くていけません。
 ともかくそういうわけなのよ。え? そんな用事で携帯に電話かけてきたのかって? だって、嘆かわしい話題でしょ? これはぜひ伝えておかねばと思って電話したんだけど。
 なんだよ、切りやがって! じゃあ、今度はあいつに電話しないと。あ、もしもし? あのさぁ、無人島に1つだけ……

ACT.102←  TOP  →ACT.104