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「ファントム・メナス」に導入された聖書的世界観

「ファントム・メナス」を見た人は、今までのスター・ウォーズ・ユニバースには希薄であった、聖書的な世界観が導入されていることに気付くかもしれない。

 アナキンの母親、シミ・スカイウォーカーの処女懐胎をにおわわせるセリフ(タトウィーン、クワイ・カ゜ンとシミとの会話)

 アナキンが予言された者であるというセリフ(ジェダイ評議会、メイス・ウィンドゥのセリフ)

 アナキンが奴隷解放の救世主となることをにおわすセリフ
  例えば、アナキンがシミとの別れのシーンで言う「僕はきっと戻ってきて、母さんを自由にすると約束するよ」というセリフ

 アナキンがパドメに話しかけた最初の言葉 「君は天使かい」

 これらの意味ありげなセリフから、アナキンに救世主イエスのイメージが重ねられていることがわかる。
 とすれば、アナキンが思いをよせるパドメ(アミダラ王女)は一体何を象徴しているか。
 キリスト教的にいうと、イエスは生涯独身で、イエスには恋人などはいなかった。しかし俗説では、マグダラのマリアという女性が、イエスの恋人ではなかったかという説がある。マグダラのマリアは、イエスの最期を見届けた一人である。そして、イエスの死後、その墓を見に行って、誰よりも先に復活したイエスに会った人物である。イエスの使徒たちよりも先に、イエスの墓へ行ったマグダラのマリアが、イエスに特別な感情を抱いていた可能性は十分ありうるだろう。
 それにしても、アミダラとマグダラ。何だか似たような名前ではないか。
 アミダラは AMIDALA

 マグダラはMAGDALA
 このように、スペルを並べて書いてみれば、その違いは歴然とする。DALAは全く同じである。
 AMは、反対にしただけで、異なる綴りはIGだけである。これは、アナグラム(文字の並べ替え)である。
 AMIDALAMAGDALAの、アナクグラムであった
 初めてアミダラという名前を聞いたとき、今までのスター・ウォーズ・ユニバースとは、ちょっと違った響きを持っているなあ、と思ったが、その裏にはこんなカラクリが存在していた。

 
 参考研究 旧三部作における聖書的世界観
 
  「ファントム・メナス」では、聖書的世界観が、かなり具体的に提示されていたが、旧三部作において、聖書の引用と考えられる描写が全くなかったわけではない。
 最もわかりやすいのは、「ミレニアム・ファルコン」号の名前である。ミレニアムとは「千年紀」のことである。キリストが再臨し、最期の審判までこの世を統治するという1000年間、千年王国のことである。
「ミレニアム・ファルコン」とは、「千年紀への翼」という意味になり、世紀末的な雰囲気を漂わせる名前である。
 スター・ウォース・サガ自体が、善と悪の対立と対決を扱っていることは、多くの人が理解するところだろう。そこに、神と悪魔の対立をオーバーラップさせることも可能である。
 ESBにおいて、ダース・ベーダーがルークをターク・サイドに誘惑するシーンから、エデンの園で蛇がイブを誘惑するシーン(新約聖書、創世記第3章)、あるいは荒野でイエスが受けた悪魔の誘惑するシーン(ルカ4章1節、マルコ1章13節、マタイ4章1節)を想像することはたやすい。
 このように旧三部作にも、聖書的世界観は既に登場していた。とはいっても、欧米の映画のほとんどは、ユダヤ・キリスト教的(聖書的)な価値観が反映されているわけであるから、スター・ウォーズにもこうした描写があっても何の不思議もないのだ。

  (6月28日更新)