お口のケアがきちんとできていないという口腔内に限局された原因以外に、歯周病を悪化させる全身的原因というものがいくつかあるのですが、その代表的なものは何といっても糖尿病でしょう。

 糖尿病とは、膵臓(すいぞう)にあるランゲルハンス島というところから分泌されるインスリンの不足により血液中のブドウ糖濃度が高くなった状態のことをいい、放置しているとあらゆる合併症を招きます。ちなみに、心筋梗塞における罹患率は健康人の3倍以上だともいわれています。

 そして、この糖尿病になると歯周病菌に対する抵抗力が低下するだけでなく、唾液の分泌量が低下するために口腔内が乾燥し、結果的に唾液による自浄作用、抗菌作用、緩衝作用などが低下します。また、唾液中のブドウ糖濃度も上昇しますので、プラーク(歯垢)が付着しやすい状態にもなります。

 また、糖尿病患者の大半がもっているといわれる歯周病は、毛細血管より血中に入った歯周病菌が結果的にインスリンの働きを低下させることになり、このことによって糖尿病を悪化させます。つまり・・・糖尿病と歯周病とは密接に関連しており、互いに悪化の方向へ向けての相乗効果を発揮することになるわけです。

 ・・・ということは、言い換えれば 「糖尿病治療により歯周病の病態が改善され、歯周病治療により糖尿病が改善される」 ということでもあるわけです。

 さて、この糖尿病の実態を知るにはいくつかの方法がありますが、今その中でも最も注目されているのは「ヘモグロビンA1c(HbA1c)値」というものです。

 検査時点での値のみを示す従来の血糖値検査と違い、このHbA1c値には1〜2ヶ月間の平均血糖値が反映されてきます。したがって、この値から長期的に血糖がコントロールされているかどうかを判定することができるわけです。

 それではまず、下表にてHbA1c値と血統コントロールに対する評価との関係をご説明しておきましょう。

評 価

やや不良

不良

不可

HbA1c値

4.3〜5.8

5.8〜6.5

6.5〜7.0

7.0〜8.0

8.0以上

 そして、従来の血糖値に対する評価も表にしておきますので、参考にして頂ければと思います。

評  価

不良

不可

空腹時血糖値 (mg/dl)

80〜110未満

110〜130未満

130〜160未満

160以上

食後2時間 (mg/dl)

80〜140未満

140〜180未満

180〜220未満

220以上

 但し、これらの値については参考資料によって多少の差があります。ついては、だいたいこのあたりの数字を目安にしておいて頂ければいいかと思うわけですが、或いは・・・もう少しシビアに見て頂いたほうがいいかもしれません。

 とにかく、糖尿病も歯周病も慢性疾患としての生活習慣病であり、この両者は必ず平行しての継続的治療が必要なのだということを、決して忘れないで頂きたいと思います。


 ちなみに、糖尿病にはT型(IDDM、インスリン依存型糖尿病、小児期に起こることが多いため小児糖尿病とも呼ばれます)とU型があります。

 そして、糖尿病患者の大半(95%とも、99%とも言われます)を占めるのはU型糖尿病です。T型は病因もU型とは全く異なり、T型糖尿病は生活習慣病でもありません。

 したがって、本サイト内で糖尿病と書いている場合は、基本的にすべてU型糖尿病を指しているものとお考え頂きたいと思います。