この口臭でお悩みの方は、結構多いのではないでしょうか。人間が動物である以上、生理的な口臭は誰にでもあるのであり、これに対してあまり神経質になる必要はないのですが・・・しかし、だからといって無頓着過ぎるのも少々問題です。

 つまり、ノイローゼ的に神経質になる必要はありませんが、他人が不愉快になっていることに気付かないのも、鈍感過ぎるというか、一種のマナー違反かもしれないということであり、そして何よりも、基本的に口臭は口腔内の健康状態を示すバロメーターでもあるということを忘れないで頂きたいのです。

 そこで、この項では意外と皆さんの身近な問題である口臭を、その原因の分類と対処法に分けてお話ししてゆきますので、一時的にそれを紛らわせるような市販の口臭対策商品にたよるのではなく、それらはあくまでも補助的なものとしてお使い頂き、根本的なブレス・ケア(Breath Care)をして頂きたいと思います。

その原因による分類

  

口臭の原因が歯科領域内にあるもの
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歯垢(プラーク)

歯石

これらは歯にこびりついた汚れで、細菌の巣窟です。

そして、この細菌の代謝によって発生するガスが口臭の原因になるのだことは、容易にご理解頂けるでしょう。

A

虫   歯

これに関しては、説明の必要が無いくらいですね。

虫歯になったその穴に食物残渣がつまり、それが腐敗することによって発生した、あるいは進行した虫食いが神経にまで到達し、その結果死んでしまい腐った神経より発する腐敗ガスから生まれる口臭です。これら以外にも、根っこの先にできた病巣からの排膿なども口臭の原因となります。

B

歯 周 病

歯周病によって生み出された膿とガスに由来する口臭です。
C

舌苔(ぜったい)

舌の表面についた汚れによる口臭です。

口臭の原因が呼気にあるもの (歯科領域以外に原因のあるもの)

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消化器系由来

消化器系の病気からくるものであったり、あるいは直前に食べたものの匂いが呼気に混ざっての口臭です。

A

呼吸器系由来

・血液中に食べたりしたものの匂いが混ざり、それが呼気を通じて臭う場合があります。

・蓄膿症やアレルギー性鼻炎などに、原因のある場合があります。

  

原因と対処法

 ここでは上記の分類に従って、その原因が歯科領域内にあるものに関してのみ、その対処法をお話ししてゆくことにいたします。

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歯垢(プラーク)

歯石

これらの原因の除去は、日々の徹底したブラッシングによる歯垢の除去と、我々の手による、個人差はありますが半年に1回程度の歯石除去です。

A

虫   歯

言うまでもなく、その患歯をきちんと処置し終えることです。

B 歯 周 病

これも基本的には徹底したブラッシングにより改善されるものですが、ある程度以上進行した歯周病の場合には、いくつかの私達歯科医による処置が必要となってきます。これに関しては、目次(CONTENTS)に戻っていただき、歯周病関連の項をお読み頂きたいと思います。

C 舌苔(ぜったい)

舌の表面は毛足の長いじゅうたんのような構造をしているため、その中に汚れを巻き込んでゆくことになります。・・・が、この汚れが少々落としにくいのです。

そのために多くの舌苔除去用のアイテムが売り出されているようですが、私は歯ブラシで十分だと思います。

まず、ガーゼか何かの滑り止めを使って舌の先端を自分でつまみ、前下方向に引っ張り出します。「アッカンベ〜」の状態にするわけです。

そして、歯ブラシで奥から前へと汚れ(舌苔)を掃き出すように掃除します。

ただ、舌苔の除去は過度にし過ぎると舌炎を起こすなどの原因になることがあるという報告もありますので、あまり神経質になってやり過ぎないようお気をつけください。

 

唾液と口臭

 基本的に、歯科領域に原因のある口臭は、何らかの形ですべてに口腔内常在菌が関与しています。そして、この細菌の活動を押さえる大きな役割を果たしているのが唾液なのです。ですから、唾液の分泌量が減少すれば、必然的に口臭は増すと考えていただいていいでしょう。

@

唾液分泌量の

低下による口臭

例えば、唾液腺の病気などにより唾液の分泌量が低下している場合です。

これは、口臭への対策を講じる以前に、その病気を治療する必要があります。

A

口呼吸による口臭

口呼吸は口臭の原因になるばかりか、虫歯や歯周病の原因にもなり、他のいろいろな面から見ても絶対にいけません。

口呼吸をする原因はいくつもあるのですが、一部を挙げておきます。

これらに関しては、医師の診断と治療やリハビリテーションが必要です。

@噛み合せの問題

  (これには、上顎前突や開咬と呼ばれるようなものがあります)

A耳鼻科領域に病気がある場合(鼻の病気 → 鼻呼吸ができない)

B口輪筋の筋力の低下(気がづかないうちに、ぼ〜っと口を開けている)

B 起床時の口臭

睡眠中は他の代謝と共に唾液の分泌量も少なくなっており、それによる自浄作用が低下しているため、起床時に口臭があるのは当たり前のことなのですが、食べカスなどを口腔内に残した状態で寝てしまった場合には細菌によって分解されるものが多く口腔内に残っていることとなり、当然起床時の口臭は増すことになります。また、虫歯や歯周病も助長されることになることは、言うまでもありません。このようなことからも、就寝前のブラッシングが大切であることがおわかり頂けると思います。

 口臭に関しては、私の目から見ておりますと・・・気にされる方は、それはもう神経質なほどに気にかけていらっしゃるのですが、そのような方に限って大した口臭はなく、むしろ強烈な口臭を持っておられる方のほうが、いたって無頓着・・・という傾向があるように思えます。

 このことからもわかるとおり、口臭は基本的に口腔内のケアが出来ておられる方には少なく、ケアのいいかげんな方は強いと言えると思います。

 また、口臭は自分だけの問題ではなく、周囲の人に不快感を与えるというネガティブな副産物をも生んでまいりますので、文頭でも書きましたとおり「口臭は、口腔内の健康状態を示すバロメーターである」ということと共に、この意味からもブレス・ケア(Breath Care)を心がけていただきたいと思います。