歯科領域における病気(疾病)、そして歯科診療とはどのようなものなのでしょう。

 まず、本項では歯科の二大疾患といわれる虫歯(参照:「虫歯」)と歯周病(参照:「歯周病」)についてお話ししてゆくことに致します。

 最初に言えるのは、どちらも「予防ができる」ということと、虫歯の治療後に私達歯科医は患者さんに「これで、治りましたよ!」などと言いますが、それはあくまでも便宜的な言い方であり、実際には内科で「風邪が治った」というのとは違い決してその歯が虫食う前の無傷で健全な状態に戻ったわけではないということです。

 虫歯になった部分を削りとられた歯は、あくまでもその欠損部分を人工的に補う処置を施されたことによって元の機能を回復したわけであり、いったん虫食いに侵された歯は薬を塗ったりすることで元に戻ることは決してありません。

 同様に、神経を抜いた歯は二度と生きかえることはなく、ましてや虫歯や歯周病で抜いた(抜け落ちた)歯は、もう二度と生えてはこないのです。

 ちなみに、「治癒」とは元どおりの健康体に戻ることを意味する言葉ですから、歯ぐきなどに対する外科処置(手術)や抜歯後の傷跡などが治るとき以外、歯科では治癒という言葉をあまり使わないと言っても過言ではないでしょう。

 このような意味合いから、歯科における病気は・・・「予防はできるが、いったん病気に侵されてしまったら基本的に今の歯科医学ではほとんどの場合が元には戻せない。」といって間違いない・・・言い換えれば、歯科疾患に立ち向かうための歯科医療は、「予防処置」と「人工的に機能回復をはかる処置」の二つしかないのだということになるわけです。

 つまり、みなさんの側から見た歯医者の利用の仕方としては・・・そうです!「痛くなったら、歯医者に行く」ではなく、「悪くならないよう、定期的に歯医者に行く」という使い方をして頂くべきなんですね。

 歯科では、予防(健康な口腔内環境の維持管理)が最優先! そして、そのためにも毎日の正しいブラッシングは何よりも大切な事となってくるのです。