歯科医療の本当の目標は、健康な口腔内環境の維持管理にあります。

 つまり、みなさんのお口の中に病気をつくらせないことが本来の目標であり、できてしまった病気を治すというのでは、歯科医療としては既に後手に回ってしまっているわけです。

 乳歯が生え始めた時点からきちんとその子の口腔内の健康状態を管理し始めてやり、健全な永久歯列による咬合状態へと導き、そして、死ぬまで虫歯や歯周病を持たせない・・・このような生涯を通じての口腔内の健康管理こそが歯科医療の本来の目標であり、歯医者の役割なのです。そして、これは決して不可能なことではないのです。

 ちなみに、もし今あなたが歯医者というのは単に虫歯になった歯をなおしたり入れ歯を作ったりするところだと思っておられるのであれば、それは前述のとおり大きな間違いなのですが・・・しかし、日々多くのいろんな歯科疾患をお持ちの方が来院されるというのが歯科医院の現実でもあるわけです。

 そこで、我々歯科医師が考え、実践、展開してゆかなければならない歯科医療というのは、以下のようなことになるわけです。

 そして、みなさんも歯科においては「やっと治療が終わった。バンザ〜イ!」では・・・ダメだということです。

 健康を取り戻せたら、その後はひたすらその維持管理のための努力が必要なのが歯科医療なのですから。


 さて、次は歯科医療における「治療」についてですが、私たち歯科医の治療に対する患者さんの評価が本当の意味で下されるのは、決して治療完了時ではなく、治療後何年も経過してからです。

 「あの時はよかったけど、すぐにダメになった。」・・・では、決して「きちんとした処置が、なされていた」とは言えませんからね。

 例えば、一本の歯に冠をかぶせるという処置をするとします。そのためには・・・

・その歯の虫食いは、完全に取り除いておくこと (例外参照: “LSTR 3Mix-MP法”について

・健康な歯周組織(歯を支えている歯ぐきと骨)の状態をつくっておくこと

・・・少なくとも、この二点が型採り以前の必要十分条件となってきます。

 これらの事をいいかげんにして、さっさと型採りをしてしまうということは、施主は立派な家を建てたいと思っているのに、業者が勝手にゆるい地盤の上や白蟻の食った土台の上に平気で建築を始めてしまうのと同じ事なのです。

 中途半端な、場当たり的、その場しのぎ的処置、或いは、いい加減な手抜き治療の上に出来上がったものは、たとえ一時的には治ったように見えても、それが決して長持ちしないということは自明の理です。

 風邪が治ったというのとは違い、歯科におけるほとんどの治療はあなたのお口の中にずっと残るのです。根本からしっかりと築きあげてゆく治療・・・これこそが、本来の歯科治療のあるべき姿であり、「今」 噛めるように・・・ではなく「これからもずっと」 噛み続けていただくことが、その最終目標なのです。