歯科医療の目標は、「今、噛めるように」ではなく「ずっと、噛み続けていただく」ことにあり、この目標は常に患者さんと私達に共通したものでもあるはずです。

 そして、私達医療人が治療に最善を尽くすのは当然のことながら、歯科診療においては患者さんご自身に「病気と、その治療に対する理解」と「治癒に向けての自助努力」をして頂くことができない限り、決して良好な治療結果を生むことはできません。 

 その良好な治療結果の延長線上でこそ、「ずっと、噛み続けていただく」ことのできる口腔内環境を保ち続けて頂けるのですね。

▲ 私の新しい診療用ルーペです

レンズとレンズの間にLEDのライトがついていて、

視線と同軸で術野を明るく照らしてくれます。

 ちなみに、歯科医療においては以下の4つのステップのどれひとつが欠けても、健康な口腔内環境を作り出し、そしてその健康な状態を保ち続けていただくことは出来ないでしょう。

1st Step

歯周組織(歯を支える歯ぐきと骨)の健康を取り戻す

(建築に例えれば、地盤固め)

2nd Step

一本一本の歯の健全な状態の回復

(土台作り)

3rd Step

つめたり、冠をかぶせたり、ブリッジを入れたり、入れ歯を入れたり・・・

というような機能回復処置

(実際の建築作業)

4th Step

治療完了後もずっと健康な状態を保って頂くための、

患者さんご自身の手によるお手入れ(日々のブラッシング)と、我々の手による手入れ(定期検診)

(保守点検)

 そして、2nd Stepと3rd Stepは私達歯科医の手で進めてゆくわけですが、1st Stepと4th Stepは患者さんご自身にも努力して頂かなくてはなりません。もちろん、そのやり方は私達がきちんとお教えいたしますので、どうか、あなたのお口を・・・私達と共に健康にし、その状態をいつまでも保ち続けていってください。

 参   照 −

「ブラッシングの仕方」

 また、ごく稀にではありますが、十分に保存可能な歯を「もう、抜いてしまって下さい」などとおっしゃる方がおられます。しかし、たいていの患者さんは「歯はできるだけ抜きたくない。」と思っておられることでしょう。 今これを読んでおられるあなたも・・・多分、そうお考えになっておられるお一人だろうと思いますし、それ自体は確かに正しい考え方だとも思います。

 そのせいか・・・私が「この歯は、抜かなければなりませんね。」と申し上げた瞬間、今の今までその患者さんにとっての「味方」であったはずの私が、急に「歯を抜きたがっている敵」になってしまうことがあるようなのですが、このような場合、私は歯科医としての専門知識から、行うべき最善の処置として「抜歯」を選択しているのです。

 あなたのお口を早く健康な状態にもどし、そこでつくり上げた健康な状態をいつまでも保って頂く・・・この目標は、患者さんであるあなたと歯科医である私の 「共通の願い」 であり、この目標を達成するためのワンステップが、この場合は「抜歯」なのだということをご理解頂きたいわけです。

 「歯を失うことによるリスク」を十分に理解している私が「抜歯」という処置を選択する時、そこには必ず明確な医学的根拠(EBM:Evidence Based Medicine)があるのです。

 勿論、処置前には必ず十分なご説明を致しますので、それを十分にご理解いただいた上で歯科医としての私を信頼していただきたいと思うわけです。

 そう・・・全ての患者さん対する全ての治療において、

私たちは、いつも「あなたと同じゴール」を目指しているのです。

 参   照 −

「抜歯と言われたとき・・・」    「医療の根本は、医者と患者間の信頼関係」