「私の名前は善行。
善行 忠孝(ぜんぎょう ただたか)です。
よろしく。
我が部隊には、いえ、今の人類には優秀な隊士が一人でも必要です。
活躍に期待していますよ。
…こいつは、シャレでも嫌みでもなくてね。
本気のセリフです。」
「要するに、部隊と言うものはね、環境と人間関係で出来ているんですよ。
環境と人間関係です。
まず、作戦会議で炊き出しを可決して備蓄食糧を増やし、校舎修理をする。
作戦会議や陳情で人の配置を換えて、仲の良い人間を配置する。
仕事をしたくなるような、そんな環境と人間関係に換える。
注意ばかりでは環境も人間関係も維持できません。
…え、なぜこんなことを話すのか、ですか?
…さてね。私が死んだときのことでも考えていたんでしょうかね。」
「戦争は、5月上旬までですよ。
5月中旬には自然休戦期が来ますからね。
昔から、夏は幻獣が出ないんですよ。
夏休みがあるのはそのせいです。
だから、我々の戦争も夏までで終り。
運がよければ、山口かどこかに撤退して、戦争を継続することになるでしょう。」
「…隊内に、幻獣共生派が居るようです。
あなたは、そうじゃないでしょうね…。
いや、すみません。こういう仕事に就いていると、親友も疑いたくなる。
不健康ですね。さっさとこういう仕事は辞めてカラオケでも歌いたいもんです。
…ああ、幻獣共生派ですか?
幻獣についた、人間の裏切り者ですよ。
見つかり次第裁判無しで銃殺にしていますが、ゴキブリみたいになかなか数が減らなくてね。
この辺については、人間も一枚岩ではありませんから、難しい問題になっていますよ。
軍上層部にも、例えばあの芝村一族のように、自分の言うことを聞くなら、
…ネズミをとる猫であれば、黒も赤も関係ないという人も居ますしね。
まあお陰で我々のような問題児も好き勝手できるんですがね。」
[打撃音。机を叩く音?]
「…が足りん。弾薬も足りん。錬度が足りん…。
食糧がない。人の補充もない…くそ。
…他の司令なら、もっと転戦するかな。
どうかな。いや…こういう仮定は卑怯だな。
私は、ただ私の判断だけで、部下を死地にやるのだ。
それが、深紅のスカーフを巻くことだろう。
…。
…失礼。いつから居ました。
…。
そうですか。いえ、それならいい。」
「あぶない…あぶない。
…独り言ですよ。
いえね、階級が高くなって、自分が命令する立場になると、人が、単なる駒に見えてくる。
…まったく、因果な商売だ。」
「幻獣共生派は、幻獣を自然破壊する人類に対する警告だと言いますが…まあ、それだと面白くない答えがでますからね…。
つまり、自分達は神と戦っていると、そういう結論は良い気持ちがしない。
だから、幻獣共生派は弾圧されるんです。」
「一つ、教えておきましょう。これは、士官学校でしか教えてないことなんですけどね。
まあ、言いかえれば、一般兵士には教えないことなんですが。
…あなた、幻獣に知能があると言ったら、信じますか。しゃべることが出来る感情があると、言ったら。
ふっ…嘘ですよ。今のは嘘です。
…ちょっと、士官らしいところを見せようと思いましてね。」
「…幻獣というものはね。
いや…我々士官は、兵と違ってね。
色々と、学校では、教わるんですよ。
政治とか、外交とかね。
ここだけの話、幻獣との話し合いが進んでいるようです。
幻獣共生派の仲介でね。
芝村準竜師が迫害されていた幻獣共生派を相当数飼っていたのは、このためでしょう。
情けは人のためならず、ですね。
それはそうと、
戦争が終れば、次は軍の縮小でしょう。
戦争のやり方以外何も知らない少年少女が、ある日突然、放り出される。
次は大失業時代と犯罪の大増加ですよ。
雇用確保のために採用された警官と、食うに困った元兵士が…戦友達が敵味方に分かれて争うことになるでしょう。
ま、それもこれも、戦争に優位な状態を確保できたらですがね。
お互い、つまらない未来のためにがんばりましょう。」
「最近、大人にもクローンが多くなりましたね。
…いえ。最近の芳野先生、見ましたか。
国際法で禁じられているにも関わらず、限定的な記憶書き込みだけで、教師として使っているようです。
…まったく…。
誤動作して、生徒を傷つけなければいいんですが。
…え、知らなかったんですか。
まあ、ニュースなんか見ないかもしれませんね。
普通、クローンといえば我々のような戦争継続のために大量生産されたタイプです。
オリジナルはとうの昔に死んでいますが、我々は細胞強化されて、こうして幻獣と戦っている。幻獣と戦うための種族、我々。
それでも何百年と続く断続的な戦争は、オリジナルの数を減らしていき、日本では、オリジナルは一人きりになってしまいました。
オリジナルは弱すぎますしね。
本来の人間はトキと同じで、絶滅しますよ。
…話がそれました。
肉体のコピーや強化は出来ても、記憶まではコピーできません。だから…、
だから、子供の頃から育てるしかない。
我々のように。でなければ、ただのロボットになってしまう。
…だが戦争は、大人を大量死させてしまった。
だから、…そういうことでしょう。
それにしても…まずいですねぇ。
クローンは実体験が少ない分、ストレスに弱い。
今度、岩田くんにでも相談しますよ。」
善行は、しばしこちらの目を見た後、不意に微笑んだ。
「まったくこの国は…いや、世界は、物言わぬ国民が支えていますね。
今この国がどうにか国の体裁を整えているのは、文句一つ言わず血の池に足を突っ込んで国を支える人々がいるからですよ。
…あなた達のような。」
善行は小声で独り言を言っている。
「…不良すら、子供すら、この国のために戦っているのだ…持たない者が持てる者の全てを賭して。
…この国が、負けるわけがない…。
いや、負けさせてはならない。
私は今、決めました。
私は私の戦友のために…。
あなた方のために私の出来る全力をつくします。友人として…権力者の端につながる者として。
ふっ。意味が分かりませんか…
いずれ、分かるでしょう。」
朝
本田「帰るのか?」
善行「上は上らしく、指揮を執って戦いますよ。
1万人の指揮を執るよりも22人の指揮を取った方が気が楽だと思っていましたが、それは嘘でした。人が死ぬことには変わりない。」
本田「…。
どうする気だ。」
善行「この戦争に、勝ちます。
中央に戻って、人事を刷新して、新型を作らせて…そして、正面をきって指揮します。
私が、私の戦友のためにしてやれることは、これが、最善です。
この国は駄目だと言って、義務から逃げて、やるべきことをやらないことは、卑怯だと知りました。」
本田「…戦争の前に、そう言ってくれる人間が多けりゃな…。」
善行「どれだけでも、責められますよ。
それが、責任を負うということです。
だからといって、今からやることを変えはしません。遅いからと言ってあきらめては、物言わぬ国民達に死んでもわびできない。
…かくて善行 忠孝は、25人の仲間を思って戦いますよ。
陰謀と政治抗争の、その城に戻って。」
本田「………。
分かった。準竜師からは、復帰のための書類を渡されている。元の階級章もだ。」
善行「…いつのまにか、調べられた、という所ですか。分かりました。
ありがたく、利用します。
ご厚意に感謝すると、お伝えください。」
本田「分かった。…△△。」
善行「はい。」
本田「熊本は、どうだった。」
善行「…単なる、回り道でしたよ。
善行 忠孝、現時刻を持って旧命に服します。」
本田「了解しました。…△△。
御武運をお祈りします。」
二人は微笑んで敬礼した。
善行が関東に帰還します。
もう善行は、帰ってきません。
善行「…おひさしぶりです。どうしました。」
司令「…実は、その。」
善行は、しばらく考えた後、にっこり笑って新しい委員長を見た。
善行「いい方法を教えましょう。にっこり笑って。」
司令「…え?」
善行「にっこり笑うんです。すべてはね、そこから始まるんです。」
司令「…。」
善行「人の上に立つ人間は、にっこり笑うのも仕事のうちですよ。部下が不安になるでしょう?
大丈夫、あなたはうまくやります。
それをイメージしなさい。」
司令「はい。」
善行「私はもう、手伝うことは出来ませんが、心はいつもあなた方の側にあります。」
司令「はい。」
善行「よろしい。では涙を拭きなさい。」
「…にしても、芝村さんと話してあなたは、よく、頭に血がのぼったりしませんね…。
どうも…ね。狙っているんだか、地なんだか…。」
「芝村の一族ですか…。
いや、うちの芝村も立派な芝村ですよ。
世界征服を公然と言っていましたからね…。」
「…芝村は血では増えないと言います…。
あなたまで、世界を敵に回すことはないでしょうね…。」
「…今。「我ら」って言いませんでしたか?
…いや、すみません。どうもあなたが、日に日に世界を敵に回していそうでね。」
「幻獣の新型が出ているようです。
単独行動するらしい。
…さてさて、どうしたものだか…。」
「ヨーコさんが、あなたが世界を幸せにすると言っていますよ。ふふ、彼女が幸せそうだと、なんとなくいい気になりますね。」
「作戦会議で出来ることを、お教えしましょうか?」
[選択1-1]
(いりません。)
「そうですか。」[イベント終了]
[選択1-2]
(お願いします。)
「どれが知りたいですか?」
[選択2-1]
(整備・装備関係の議題)
「どれについて聞きますか?」
[選択2-1-1]
(・○番機の改装)
「士魂号の装甲や電子装備を換装して、士魂号の仕様を変更します。
重装甲にしたり軽装甲にしたりできます。」(以下※に続く)
[選択2-1-2]
(・物資調達について)
「物資調達は、補給物資を調達する命令を誰かに下すための議題です。まあ、食糧や弾薬がないとき使うべきですね。」(以下※に続く)
[選択2-1-3]
(・配置換えについて)
「配置換えは、誰かの部署や仕事をかえるための議題です。例えば欠員が出たパイロットに無職の人を置いたり出来ます。」(以下※に続く)
[選択2-2]
(部隊の運営関係の議題)
「何について聞きますか?」
[選択2-2-1]
(・模擬格闘戦)
「模擬格闘戦は、一種の戦闘授業です。
ま、レクリエーションの一種ですから、そこそこみんな楽しめると思いますが。」(以下※に続く)
[選択2-2-2]
(・模範演舞の練習)
「模範演舞の練習は、一種の賭けです。
部隊錬度が高ければ一気に士気を高めることが出来ますが、失敗すると逆に下がります。」(以下※に続く)
[選択2-2-3]
(・訓練の強化週間)
「訓練の強化週間中は、あらゆる訓練の効果が高くなります。」(以下※に続く)
[選択2-2-4]
(・遅刻撲滅週間)
「遅刻撲滅週間は、一時的に遅刻のペナルティを高くする運動です。これで遅刻しがちな人間を社会的に抹殺できますよ。」(以下※に続く)
[選択2-2-5]
(・士気の向上週間)
「士気の向上週間は、士気を高める運動です。
一時的に士気を高くすることができる…、かもしれません。」(以下※に続く)
[選択2-3]
(その他の議題)
「こりゃまた変なものを選びますね。
何について聞きますか?」
[選択2-3-1]
(・○○への罰)
「○○への罰は、誰かに謹慎処分を科す刑罰の議題です。まあ、使わずにすめば良い性質のものですが、秩序維持のためのものです。」(以下※に続く)
[選択2-3-2]
(・キャンプ)
「キャンプは、みんなで休暇を取ってどこかに遊びに行く提案です。まあ、性質から考えて今の時勢では通らないでしょう。」(以下※に続く)
[選択2-3-3]
(・クラス交流会)
「クラス交流会は実戦部隊の1組と整備部隊の2組の交流を促すための催しです。
仲が良いほうがなにかと便利ですからね。」(以下※に続く)
[選択2-3-4]
(・校舎の修理)
「生活環境というのは、要するに、この部隊がどれくらい健康であるかの能力値みたいなものです。
校舎の修理は、低下した生活環境を回復させる議題です。長雨の後や戦争で悪化した生活環境を回復させます。」(以下※に続く)
[選択2-3-5]
(・炊き出し)
「炊き出しは特殊な条件下で現われる議題です。
ハンガー(格納庫)に備蓄されている食糧を部隊に供給します。食糧難対策ですね。」(以下※に続く)
[選択2-3-6]
(・募金活動)
「募金活動は特殊な条件下で現われる議題です。
戦没者や戦傷者への募金活動を街頭で行おうという、まあ立派な議題ですね。」(以下※に続く)
[選択2-3-7]
(・王様ゲーム)
「王様ゲームは、特殊な条件下で現われる議題です。ま、お遊びですね。別に発言力を使ってまでやる必要はないでしょう。」(以下※に続く)
※
「他には、ありませんか?」
([選択1-*]へ戻る)
「…まいりましたね。百翼長以下は、食糧配給が一律半分のようです。
まさか開戦一月でこんなに悪化するとは…」