001【田辺・遠坂・女子生徒/白紙の命令書】

 その人と会ったのは、
 雨が降る、雨が降る降る…。
 そんな中のことでした…。

[屋上]
女子校生A「この、クズ、いや、このグズ!
 否定のしようもないわねー。
 あうあうじゃないでしょ?
 真面目にやってよね!」
田辺「ごめんなさい! ごめんなさい…。」
女子校生B「謝ればいいってわけじゃないでしょ。
 整備ミスでパイロットが死んだら、どう責任取るつもりなのよ?」
田辺「ごめんなさい! ほんとうにごめんなさい!」
女子校生C「あなた、歩兵になって死んだほうが味方のためよ。」
田辺「…。」
女子校生A「…一生懸命だけじゃ、戦争の手伝いなんて出来ないのよ。」
女子校生C「…。」
女子校生B「いい? 今日はそこに立ってるのよ。
 後で私がもういいと言いに来るまでね。」
田辺「…はい…。」
[立ち尽くす田辺。画面夕方→夜。雨が降り出す。]

[プレハブ2F]
遠坂「(…金持ちの子なら…戦争しなくても…いい…か。)
 …なんだ?
 くしゃ…み?」

[屋上]
遠坂「…なっ…。
 …」
 その人は、しばらくこちらを見た後、夜の空を見て不意にポケットから、白紙の命令書を、出しました。
遠坂「…これを持って、生徒会連合まで行きなさい。」
田辺「…え?」
遠坂「いいから。そこで、望みを言えばいい。
 転属でも、何でも。」
田辺「…え?」
 その人は、私の冷たい手を握りました。
遠坂「いいですね。」
 それだけ言うと、その人は、走っていきました。
 それが、その人を意識した はじめてのことでした…。


002【田辺と遠坂/再会】

 その人の後ろ姿を見て、田辺は、息を大きく吸い込んだ。
 思ったより、ずっと小さな声しか出ない。
田辺「…あの。いいですか。」
遠坂「…あなたは…。」
田辺「私のこと…覚えていてくれたんですか。」
遠坂「ええ、青い髪が珍しかったので。」
 髪が、青いのも悪くない、絶対に悪くない!
遠坂「…あなたが、なぜ、ここに?」
田辺「お、お礼を言いたくて。」
遠坂「命令書を、そのために使ったんですか。」
 田辺は、しばらく考えて、うなずいた。
遠坂「馬鹿だな、この女。」
田辺「…あの。」
遠坂「…いいですけれどね。
 せめて、あいつらの墓でも立てれば良かった。」
田辺「…ご、ごめんなさい。」
 嫌われた、嫌われた。
遠坂「…あやまる必要はありません。そろそろ時間ですね。」
田辺「は、はい。」
 遠坂さんのハートをゲットせよ!


003【田辺/ネクタイ】

 田辺は、ショーウインドウに飾られているネクタイを見た。
 遠坂さんに似合いそうだな。
「2万円…か。」
 一家の2ヶ月分の収入とほぼ同額だった。
 どうでもいいが、昔の話ではない。
「がんばってみようかな…。」
 唇に指をあてて、田辺はだいそれた事を考えてみた。
[ごんっ]
 もう少し考えて、突然顔を赤くしたまま、田辺はショーウインドウに頭をぶつけた。
[がっしゃーん]
 ヒビが走るガラス。
 泣きそうになって周りを見た田辺は、立ち止まって見ている人達に頭を下げた。
 ガラスを弁償した! 所持金0円!


004【田辺とご近所さん/田辺さんの不幸(1)】

 家に帰ると、家が、燃えていた。
田辺「…。」
近所の奥さん「あら、真紀ちゃん。弟さんから、伝言預かっているわよ。」
 炎を眼鏡に映したまま、田辺は、よろよろと手紙を開いた。
 全員無事、現在空き地でテントを広げた。
 今日はメザシ。
近所の奥さん「…気を落とさないでね。」
田辺「…。」
 田辺は無一文になった! 所持金0!


005【田辺/田辺さんの不幸(2)】

 田辺は真っ赤になった我が家の家計簿をつけながら、しばらく考えた。
 しくしく泣きながら、ポケットから、遠坂さんへのプレゼント用のお金を出した。
[声、ちゃんと泣いてます…]
 田辺は無一文になった! 所持金0!


006【田辺・老人・コトリ/田辺さんの不幸(3)】

 田辺は、橋の下の水面を見る、悪徳金融業者から年金を奪われた上に、鬼嫁からいじめられていそうな老人を見た。
田辺「どうしたんですか?」
老人「…。」
 自分を泣きそうな目で見た老人に、田辺は、なけなしのお金をポケットから出すと、手渡して微笑んだ。
田辺「元気を出してください。いいことは、きっとありますよ。こんな風に。」
 田辺は無一文になった! 所持金0!
 コトリは、心優しい自分の主人を見て、微笑んだ。
 小神族は心優しい人にしか憑かぬのだ。
 耳元まで歩いて、ささやく。
コトリ「元気を出してください。いいことは、きっとありますよ。」
 首を傾げた主人の横顔を見て、この人の幸せを祈る。


007【田辺と遠坂/プレゼント】 []内、声だけー。アドリヴ?

 田辺は、嬉しさに胸を一杯にして、ネクタイを抱いたまま走った。
 ゆっくりと速度を落としていく。
 遠坂が、こちらを見て少しだけ表情を和らげた。
 その胸に、どこかで見たネクタイが結ばれている。
遠坂「どうしました?」
田辺「…いえ。」
 田辺は、しくしく泣きながらネクタイを隠した。
遠坂「?」
田辺「…え、いえ、何でもないんです。」
遠坂「そう言われると、困るな。」
田辺「…。
 …はい?」
遠坂「僕に渡すものはありませんか。…僕が、幸せになるものを。」
田辺「…。」
 遠坂は左手で落ちてくる金だらいを払った。
 ここでギャグキャラに落ちられるか。
 遠坂の笑顔を見た田辺は、不覚にも、ここで下を見て泣き出した。
遠坂「…いや、その、[あの、]だから…まいったな。」
 結局、遠坂はその後まいったな、しか言わなかった。
 田辺と遠坂は恋人関係になりました。


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