●ソロアルバム |
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ジョンの魂 〜ミレニアム・エディション〜 ジョン・レノン Amazonで詳しく見る by G-Tools |
まず、ジョン・レノンのソロアルバムについて書きたいと思う。最近は「イマジン」ばかりが有名(もちろん名曲だけど)になるばかりだが、当然のことながら「イマジン」はジョン・レノンの一面でしかない。 |
実はジョン・レノンのソロアルバムは心理的に痛くて、ずっと聞けなかった。でも、没後20年が経過して、ようやくCDを買おうかなという気になってきた。最初の買ったのは高校生の頃、毎日のように聴いた「ジョンの魂」だった。 彼の声をBGMにすることは未だにできないので、最近では珍しくスピーカーの正面に座り、じっくり音と向き合うことになる。久々に聴く「ジョンの魂」は、昔とは随分と印象が違った。 このアルバムは大阪弁で書くと、「お母ちゃん、どこ行ったんや」から始まり、「お母ちゃん、死んでしもた」で終わる。ジョン・レノンのマザコンぶりが伺えると言ってはそれまでだが、ロック史上でここまで個人的で本音丸だしのアルバムを、僕は知らない。でも、その個人的な叫びが一枚の作品としてポピュラリティーを持ってリスナーに届いてしまうのが、ジョン・レノンの凄いところだ。 「ジョンの魂」はジョン・レノンのビートルズ解散までの心境や歩みを知らない人には、少々理解しづらい部分もあるかもしれない。だが、彼の本質を知る意味ではすごく貴重な一枚だ。サウンドもシンプルで、ギター、ピアノ、ベース、ドラム(恥ずかしながら、最近までこのアルバムでクールにリズムを刻んでいるのがリンゴ・スターとは知らなかった)のみで構成されていて、裸のジョン・レノンを感じさせる。しかし、そのシンプルなサウンドに無駄を省いた日本刀のような切れ味と緊張感があるところが、不良でドスの効いたジョン・レノンらしい。 個人的なメッセージが中心のアルバムといっても「ワーキング・クラス・ヒーロー」は、未だにその詩が胸に突き刺さるプロテストソングだし、「ラブ」は日本の中学生でも理解できるシンプルな英語で書かれた無垢で美しいラブソングだ。 いずれにせよ、音楽という形でこれだけ飾らない自分をさらけ出せてしまうのが、ポップスターであるジョン・レノンの才能であり、勇気であり、臆病なところであると思う。 彼はこのアルバムで他のメンバーの誰よりも早く、そしてきっぱりとビートルズという巨大な偶像に決別した。 |
THE PLASTIC ONO BAND 「LIVE PEACE IN TORONTO 1969」 |
「ジョンの魂」の1年前、1969年9月13日、カナダのトロントで開かれた「ロックンロール・リバイバル・ショー」のステージを収録したもの。 アルバムの名義はプラスティックオノバンド。メンバーは強力だ。ジョンとヨーコ(例の声で叫ぶだけだが・・・。ジョンの死後は彼女を批判する声が少なくなったけど、やっぱり彼女の唄は苦手だ)のバックに、エリック・クラプトンのギター、クラウス・ボアマン(「リボルバー」のジャケットをデザインした人)のベース、アラン・ホワイトのドラム。ジョン・レノンとクラプトンのギターバトルが聴けるだけでも価値のある一枚かもしれない。 |
ジョン・レノンはギタリストとして評価はされることは少ないが、僕は彼のギターが好きだ。例えば「オール・マイ・ラビング」のバックで奏でる見事な三連のビート、「ゲットバック」における軽妙なギターソロなど、独特の味のあるギターを弾く。 コンサートの直前に出演が決まり、リハーサルはカナダへの飛行機の中という逸話もあるライブは名演とは言えないかもしれないが、とにかく勢いがある。ぶっつけ本番、一発勝負のライブの1発目に「ブルー・スエード・シューズ」、次に「マネー」を持ってくるあたりにジョン・レノンのロックンローラーぶりがうかがえる。 ビートルズは高度な音楽を作るレコーディングアーチストという評価がまかり通っているけれど、それは「ラバーソウル」以降のことだ。活動がスタジオワーク中心になっていく中でも、ジョン・レノンは常にロックンロールにこだわっていたのだと思う。サンフランシスコでライブ活動の終止符を打ったビートルズ。その解散直前にジョン・レノンが荒削りなロックンロールでステージに復活したのは、なんだか象徴的だ。 解散後のジョン・レノンはあるインタービューで「ビートルズの全盛期はハンブルグ時代だよ」と言っている。レコードデビュー前のビートルズはハンブルグの荒っぽい酒場にあるステージで、ドラッグの力を借りて一晩中演奏し、ライブで様々なテクニックを磨いていた。そんな修羅場でのロックンロール修行の日々を感じさせる一枚が、このライブだ。あまり馴染みのない一枚かもしれないが、あえて聴くことをお勧めしたい。 |