クール・セラミック・セーフティ・ハーシェル・プリズム その1
Baader Planetarium/Cool Ceramic Safety Herschel Prism
公開:2012年3月23日
更新:2024年7月2日
*Mark.2 を追加。
2012年3月23日記
Baader Planetarium 社から、クール・セラミック・セーフティ・ハーシェル・プリズムCoo Ceramic Safety Herschel Prism がリリースされている。HαはP.S.T双眼で、白色光はハイランダーで楽しんで いるが、また別な太陽が見られるなら、試そうではないか。とにかく粒状斑をしっかり見たい。
という訳で、3月早々に注文した。当初、APM-Bino の対物レンズのコーティングへのダメージを心配して、とある廉価版長焦点10cm屈折に取り付けて見てみた。が、思った程見えない。ハイランダーで見ている白色太陽よりは見えるが、これでは国際光器の誇大広告か、とがっかりしていた。 しばらくして、念のため、とAPM-Bino に取り付けて見てみたら、驚愕! 黒点周囲のツブツブも表面の粒状斑もしっかり見える!
お気に入りの Docter UWA 12.5mm + Zeiss Abbe Barlow
と Leica Zoom でチェック。
とにかく面白くて、アイピースを とっかえひっかえして観望。10分でお休みなんて酷だ。もちろん、アイピース交換の時など、できるだけ太陽から望遠鏡を外す等、注意を払っている。プリズムに太陽が映るので、再導入は簡単だ。いろいろ試したが、一番見ごたえがあったのが、Baader V 双眼装置 + 1.7×リレー・レンズ + Panoptic 24mm 。やはり双眼効果のメリットが極めて大きく、粒状斑がコントラスト良く描出される。黒点とその周囲も見応え十分。対象が十分に明るいので、双眼ではなく双眼装置で十分だ。もう少し短焦点のアイピースでどうなるか、是非試したい。
当初、某10cm屈折であまり見えなかった一番の理由は、最初から比較的高倍率でアプローチした事だった。国際光器の写真に惑わされてしまった。この10cm屈折はとても良く見えるし、低倍なら十分このプリズムを楽しめる。しかし、APM
13cm屈折の優秀さは、単純に像の差として出てしまうようだ。考えてみれば当たり前の話で、太陽だって、優秀な屈折なら、より見える訳だ。
という事で、どうせ見るなら、やはりAPM 屈折で見よう!
シーイングにも大きく左右されるが、良い条件で優秀な15cm屈折で見たら、どんな姿を見せてくれるのだろうか。
手前は、APM純正2”アダプター + ハーシェル・プリズム、後ろはEMSアダプター +
EMS。
当然だが、使わない対物、ファインダーにはしっかりキャップをする必要がある。また、この鏡筒に2”プリズムを付けるためには、EMS接続アダプターの六角ネジを緩めて外し、純正2”アダプターに交換しなければならず、ちょっと面倒だ。そこで、EMS接続アダプターに直接2”バレルが差し込めるようなアダプターを制作してもらう事にした。写真の通り、双眼装置を使う場合にはゼロ・プロファイル仕様にしなければならず、ここは、私にとってのドラえもん・松本さんにお願いしている。
2”特製アダプター (2012年4月1日)
この写真は、以前使っていた旧型EMS用アダプター。65mmφで、私の新型EMSは100mmφに拡大している。この旧型アダプターを忙しい合間に2”アダプターに改造してもらった。それが、これ。
双眼装置を使った場合、バック・フォーカスが不足するので、ゼロ・プロファイルにしないとピントが出ない。そこで、アダプターの内側・奥で固定するようになっている。プリズム+双眼装置は重量級なので、バンド・クランプ、さらに2箇所ネジ止めになっていて完璧だ。
驚く事に、このアダプターは、リヴァーシブルになっていた! 固定リングを反対側・表面にクルクルとはめると、汎用2”アダプターになるのだ。これで、あっという間に普通の屈折望遠鏡に変身する! いかようにも実験・利用して下さい、という訳だ。さらに、もっと驚いた事に、写真・上中央のリングが付属していた。ゼロ・プロファイルで使う時は、アダプターの裏面からのネジの固定になるが、もしネジが緩んでしまったら、プリズムもろとも高価な双眼装置・アイピースが落下してしまう。アダプターにプリズムを差し込んだ後、このリングをアダプター・裏面からプリズムのバレルにねじ込んでおけば、もしネジが緩んだとしても、このリングのフランジがあるので、落下が防止される、という訳だ。写真では質感は伝わらないのが残念だが、このアダプターは飾っておきたい位、精密にきれいに見事に仕上がっている。
ケースには、アダプター・リングも収納できた
依頼者の要求通りに製作するのは、普通の信頼できる業者。これを確実に、精密に、見事に仕上げるのは、優れた業者。松本さんは、それどころか、依頼者の考え、将来をも超越した次元で製作していて、もう流石としか言いようが無い。また一つ、大切な宝物が増えた! いつも書いている事だけれど、優れた製品・工芸品を使う、という事は、設計者・製作者の意匠を感じ対話をする、という事でもある。だから、タイトルが2” 特製アダプター。
で、実際に使ってみた。EMS接続アダプターの長さは45mmで純正2”アダプターより25mm長く、ゼロ・プロファイルでもピントが出なかった。ところが、この特製2”アダプターは、ねじ込みの加減で、マイナス・プロファイルにもできる。やってみたら、この窪みでプリズムのバレル付け根の突起部分が吸収され、見事にピントが出た。
Hαダブル・スタックは太陽表面のコントラストが見事だが、シングルでもじっと見ていると、いろいろ見えてくる。このプリズムも同様で、じっと見ていると、白斑の様子が見事に見えてくる。太陽望遠鏡の真価は、ちょい見では絶対にわからない。
ハーシェル・プリズムは面白い。休日で晴れていて家にいる時は、積極的に覗く。アイピースは、単眼の場合はLeica Zoom のみ。自在に倍率が変えれるだけでなく、解像度も最高だ。このアイピースはHαでも最強だと思う。当初は、Baader V 双眼装置 + 1.7×リレー・レンズ + Panoptic 24mm も使っていたが、もう少し倍率を上げたいので、Pentax XW 20mm もラインアップに入った。Baader V 双眼装置は、ふだんはObsession 用にセットして収納しているので、ハーシェル・プリズム用に使うためには、2”GPC を外して固定リングを外して1.7×リレー・レンズ をはめ、再び固定リングをはめ、T2プリズムからショート・バレルを外して双眼装置に装着し、アイピースをPanoptic 24mm からPentax XW 20mm に交換しなければならない。けっこう面倒くさいのである。
そうこうしていたら、TeleVue の双眼装置:Bino View の中古が手に入った。これにPentax XW 20mm をデフォルトで装着しておけば、Hαの1.25”の双眼にも対応できるし、下の写真のような2”アダプターを装着すれば、ハーシェル・プリズムにも即対応できる。 昔、この双眼装置の前身のAtom 双眼装置+Pentax XL 21mm を使っていた事があったが、20年経って、進化した形で、また手にする事となった。
ケースは、例によってVanguard。またまたカッコ良く収まった。倍率、実視界は、以下の通り。
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焦点距離 | 倍率 | 実視界 | 見掛視界 | アイ・レリーフ | 射出瞳径 |
APM 130mm f6 | 780mm | |||||
Leica Vario Zoom ASPH. | 17.8mm | 44 | 1.4° | 60° | 18mm | 3.0mm |
8.9mm | 88 | 0.9° | 80° | 18mm | 1.5mm | |
Baader V 双眼装置(1.7×) | 1326mm | |||||
Panoptic | 24mm | 55 | 1.2° | 68° | 15mm | 2.4mm |
Pentax XW | 20mm | 66 | 1.1° | 70° | 20mm | 2.0mm |
Bino View 双眼装置(2.0×) | 1560mm | |||||
Panoptic | 24mm | 65 | 1.1° | 68° | 15mm | 2.0mm |
Pentax XW | 20mm | 78 | 0.9° | 70° | 20mm | 1.7mm |
倍率には適正があって、むやみに拡大してもコントラストが落ちて、かえって情報量は落ちる。私の場合は、上記太字のアイピース程度に抑えている。見ていてとにかく面白いので、いっそ撮影でもしてみようか、などという誘惑すら生じているこの頃である(だって、とにかく晴れないので、薄雲越しの太陽位しか相手にしてもらえないじゃないの)。
トラベル双眼望遠鏡として理想的なBORG 125SD Bino を手に入れた。出してすぐに見れるので、日常でも大活躍だ。フォーカサーが2”なので、そのままハーシェル・プリズムが差し込める。ケースの製作や補修のため鏡筒が手元に無い期間が多く、また雨〜曇りが多くてチェックできなかったが、ようやく今朝、見る事ができた。
Leica Zoom 単眼の場合、やや光路長が足りない。TeleVue Powermate 2× を少し抜い て、これで見るようにすると、倍率も丁度良くなる。双眼装置は、そのままでOK。で、像は良好。十分楽しめる。ハーシェル・プリズムは鏡筒の性能に大きく左右されるので、15cm位の長焦点の鏡筒で見てみたいものだ。
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焦点距離 | 倍率 | 実視界 | 見掛視界 | アイ・レリーフ | 射出瞳径 |
BORG 125SD | 750mm | |||||
Leica Vario Zoom ASPH. | 17.8mm | 42 | 1.4° | 60° | 18mm | 3.0mm |
8.9mm | 84 | 0.95° | 80° | 18mm | 1.5mm | |
Powemate 2× | 1500mm | |||||
Leica Vario Zoom ASPH. | 17.8mm | 84 | 0.7° | 60° | 18mm | 1.5mm |
8.9mm | 168 | 0.47° | 80° | 18mm | 1.7mm | |
Bino View 双眼装置(2.0×) | 1500mm | |||||
Pentax XW | 20mm | 75 | 0.9° | 70° | 20mm | 1.7mm |
Mark.2 (2024年7月2日)
ハーシェル・プリズムで活躍しているFOT104。写真のアイピースは、Leica Zoom + PowerMate 2X。
ハーシェル・プリズムはあまり使用はしなかったが、Mark.2が出て、さらに良く見えるようになった、という。好奇心が刺激され、注文してしまった。元々良く見えていたが、確かに解像度が上がって見えるようだ。そうなると、どうしても倍率を上げて見たくなるし、追尾もあった方がありがたい。HAZ46は15cm用なので、FOT104と同時には使えない。軽量・お手軽自動追尾架台があっても良いかな、と手持ちの使用していない架台を処分し、HAZ31も購入してしまった。
当初、テレビューの三脚があったので、これにHAZ31を載せた。HAL三脚+HAZ46は総重量13.6sだったけれど、この三脚+HAZ31は、たった6.7sと約7sも軽くなった。しかし、微振動の収まりが今一だったので、AOK
AYO Digi
に使っていた中型ジッツォ三脚にHAZ31を載せた。総重量は7.2sと0.5s増えたが、微振動の収まりは俄然良くなった。これだと、Ethos SX
4.7mm 138×でも快適に見続けられる。なお、HAZ46で行った改良、クランパー・ネジの交換等は、31でも全く同じように行った。
ちなみに、この架台では五藤の GTL125/1200APO ではブレが収まらず、やはりHAZ46が必要だ。Lunt 15cm も同様。
口径 | f | 焦点距離 | 倍率 | 実視界 | 見掛視界 | アイ・レリーフ | 射出瞳径 | 備考 | |
Founder Optics FOT104 | 104mm | 6.25 | 650mm | ||||||
Apollo 11 | 11mm | 59 | 1.4° | 85° | 15mm | 1.8mm | |||
Ethos SX | 4.7mm | 138 | 0.8° | 110° | 15mm | 0.8mm | |||
Ethos SX | 3.7mm | 176 | 0.6° | 110° | 15mm | 0.6mm | |||
2×PowerMate | |||||||||
Leica Vario Zoom ASPH. 17.8 - 8.9mm | 8.9mm | 73 | 0.8° | 60° | 18mm | 1.4mm | |||
4.45mm | 146 | 0.55° | 80° | 18mm | 0.7mm | ||||
Ethos 8mm だと、きれいに太陽の全景が見え、そして黒点も鮮やかに描出される。しかし、アイピースの出っ張りが後付けPLフィルターに当たって傷が付いてしまった。従って、標準使用アイピースは、Apollo 11 が全景用、Ethos SX 4.7mm が拡大用。時にLeica Zoom + 2× PowerMate を使用するが、解像度は少し落ちる。
続く.....!
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